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エンドライン 23

Category: エンドライン  



新しい職場で本格的に医師復帰をしたあたしは、覚悟はしていたけれど、毎日激務が続いている。

家に帰れるのは一週間の半分もない。
夜勤が終われば、そのまま日勤に突入し、今何時なのか時間の感覚さえ麻痺していく。

そんな訳で、恋愛に時間を割く余裕もなく、とうとう道明寺と2週間会わずにきてしまった。

電話では時々話しているけれど、それも仕事の合間の数分。まともな会話はしていない。
いつもあたしから切る電話にあいつはどう思っているんだろう。
愛想を尽かされるのも時間の問題かもしれない。

先輩たちから聞いていた『医師と恋愛の両立』の難しさを、ようやく身を持って体験することになるなんて、嬉しいやら悲しいやら。

今日もまた、夜勤の勤務を終えたのは、時間を大幅に超えた午前10時。
緊急の患者さんも落ち着き、4日ぶりにマンションへ帰れることになった。

病院を出て携帯を開くと、道明寺から
「おつかれ。またかけ直す。」
と、着信履歴とメールが残っている。

「お疲れ様。昨夜は夜勤だったの。今やっと解放されたところ。これからマンションで、少し休みます。」
そう返信して電話をカバンにしまった途端、ブルルル…と振動する携帯。


「もしもし?」

「もしもし、俺だ。」

「おはよう。仕事中?」

「ああ。おまえは少し休めそうなのか?」

「うん。明日は休みだからとりあえずこれから少し寝ようかなと思ってる。」

「そっか。………牧野……いや、……また連絡する。」

なんとなく歯切れの悪い道明寺。
いつものこの人らしくない態度に、少しだけ胸がザワっとしたあと、あたしは思いきって言った。

「道明寺、今日会える?」

「あ?」

「今日の夜、会えるかなーと思って……。」
ドキドキしながら誘ったあたしに、

「ああ。俺も会いたかった。」
と、一瞬で不安な気持ちを掻き消してくれる道明寺。






マンションに帰る途中、ママから着信があった。

「常備食のおかず作ったからマンションに届けるわ。いつならつくしいるの?」

ママのおかずがちょうど恋しくなっていた時のこの電話に、
「今から帰るとこ!30分で帰るから部屋に入って待ってて。」
そう言ってあたしはマンションへ急いだ。


マンションの扉を開けると、玄関にママの靴が揃えてある。

「おかえりー。」

「ただいま〜。」

リビングにはママお手製のおかずがお皿に盛られている。

「今すぐ食べるかなと思って、1食分だけ温めたわよ。」

「ありがとー。」

勤務中はろくなご飯を食べていないので、手作りの煮物の香りだけでお腹がグーッと痛いくらいに鳴る。

ママがお茶を入れてくれる間、黙黙と食べるあたしに、
「のど詰まるわよー。」
なんて言いながら笑うママは、
「はい、お茶どうぞ。」
と言ってあたしにお茶を出したあと、言った。

「ねー、つくし。あんた彼氏いるの?」

あまりに突然の質問に、
「グッ……ゴホっ……ゴホっ……」
と、ほんとにのどを詰まらせる。

「な、なに、急に!」

「だってー、あれ、男の人のワイシャツでしょ?」

ニヤッとした顔でママが指差すのは、洗面所にかかる道明寺のワイシャツ。
2週間前、道明寺がここに泊まった時に着替えて行って、そのあと洗濯してアイロンをかけておいたままだった。

「職場の先生?」

「えっ?」

「あのワイシャツ、かなり高価なものよねぇ。
彼氏ってお医者さん?」

「ち、違うっから。」

「別に隠さなくたっていいじゃない。
ママは安心したのよ。
いい歳の娘が、彼氏もいないまま仕事ばっかりしてて、パパもママも心配してたの。
まぁ、つくしが選ぶ人なら心配ないと思うから、今度機会があったら会わせてちょうだい。」


あたしが選ぶ人なら心配ない……。
ママのその言葉に胸がぎゅっと痛くなる。


もし、彼氏だと言って道明寺を連れて行ったら、
ママとパパはどんな反応をするだろう。
きっと、

彼氏だと紹介して1番心配させる人物が
まさに『道明寺』だと思うと、
ママの顔がまともに見れなかった。






その夜、道明寺と2週間ぶりに会った。
隠れ屋的な和食のお店で、向かい合って食事をとる。

絶対に口には出さないけれど、
相変わらずこの男は『かっこいい』

顔がとか、体型がとか、そういう事じゃなく、
「道明寺司」全体が『美』なのだと改めて認めざる終えないオーラ。

ずるいでしょ、美も権力もお金も、全部持ってるなんて神様は不公平だよ……、
そんな愚痴が思わず口からも漏れていたようで、

「おまえ、何さっきから俺に向かってブツブツ言ってんだよ。」
と、頭をワシャワシャにされるあたし。

「もう、せっかく美容室行ってきたのにっ」

「やっぱ?なんかいつもとちげーなと思った。」

久しぶりに道明寺と会うので、一応、仕事も空いたし、美容室に行ってみた。

「美容室って、ほんと至れり尽くせりで至福の時間だよね〜。」

「そうか?」

「他人に頭を洗って貰えるなんて、なんて幸せなんだろうって思わない?」

「まぁ、小せえ頃はいつもそうだったから、別に思わねぇ。」

「あんたと比べると全部の話がおかしくなる。
あたしね、3年間アフリカで生活してたけど、その間髪をお湯で洗ったのは一度もなかったかもしれない。水で石鹸も付けずにバシャバシャ洗うの。それが当たり前だったから、もう日本での生活すべてが有り難くてしょーがないよ。」

そう話すあたしに、少し間を開けたあと道明寺が言った。

「牧野、おまえさ、このままずっとこのペースで仕事してくのか?」

「え?」

「休みもほとんどねーし、身体も心配だからよ。」

本当に心配そうな目でそう聞く道明寺。

「あたしは仕事続けていくつもり。」

迷わずそう呟いたあたしに、道明寺は持っていた箸を置いて言った。

「おまえさ、……俺達の将来のこと考えてるか?」

「…え?」

「俺とおまえのこの先のことだよ。」

「それは、……」

「どう思ってる?」

急にそう聞かれても、答えに困る。
考えていないわけじゃない。
けど、まだまだ未熟なままで仕事を投げ出すつもりもない。

「道明寺は、あたしの仕事に不満?」

「あ?」

「あたしがこうして忙しく働いてる事に、やっぱりよく思わない?」

「牧野、」

「帰りも遅いし、休みも取れないし、全然会うことも出来てないけど、けど、あたし仕事好きだし、このまま投げ出したり出来ない。
あんたとの将来ももちろん大事だよ。会えばホッとするし、仕事の疲れも飛ぶし、ずっと出来れば一緒にいたいって思ってる。だからっ、」

思ってるありのままをぶつけてみると、気持ちが溢れ出して涙腺が緩む。
そんなあたしに、道明寺は、
「勘違いすんな。」
と言って優しく笑った。

「おまえさ、勘違いすんじゃねーよ。
俺は一度だっておまえに仕事をやめてほしいなんて思ったことはねーし、仮に俺のせいでやめる事になるぐらいなら、おまえを手放すしかないとさえ思ってる。
俺が言いてぇーのは、
俺も仕事が大事だ。だから、何週間も出張で会えねぇ時もあるし、大きな仕事が入ったら休みもなくなる。
だから、出来るだけ側にいてぇんだよ。」

「……ん?」

「だからっ、
結婚がまだ無理なら、同棲でもいい。
お互い仕事は今のままのペースでいいから、
俺達もっと近くにいようぜ。」



あたしは大きな勘違いをしていたかもしれない。
ママやパパを1番心配させる相手が『道明寺』だと思っていたけれど、それは違う。

あたしを誰よりも考えてくれて、
そして誰よりも必要としてくれるこの人。
それは間違いなく『安心』する相手なのだ。



「ねぇ、道明寺。」

「ん?」

「うちのパパとママに会ってみる?」




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