FC2ブログ

エンドライン 9

Category: エンドライン  



道明寺邸に入るのは10年ぶりだった。

出迎えてくれるメイドさんも様変わりしていて、当たり前だけどあたしが知っている人は一人もいない。



「道明寺、やっぱりあたし、」

「ここで待っててくれ。」

あたしの言葉を遮るようにして、エントランスから程近い部屋の扉を開けた道明寺。
そこは小さな応接室のよう。

仕方なくコクンと頷いて部屋へ入ると、
「用意したら戻ってくる。」
それだけ言って道明寺は行ってしまった。



あたし、なにやってるんだろ。
道明寺邸の応接室のソファに座りため息が漏れる。

あんな想いをして道明寺と縁を切ったはずなのに、偶然道明寺のお母さんと会って1ヶ月、あれよあれよと時間が回り、まさか道明寺邸のソファに座っているなんて。

はぁーーーともう一度大きなため息をついたとき、部屋に「コンコン」とノックの音が響いた。

「はい。」

「失礼いたします。」

ドアの向こうからそう聞こえたと同時に扉が開く。

「……っ!つくしかい?」

「タマさん…」



人間というのは不思議なもので、感情のコントロールというのは所詮無駄で、見たもの感じたものに瞬時に体は反応するんだと思い知らされる。

タマさんを見た瞬間、あたしの目には抱えきれないほどの滴が溜まっていくのが分かり、溢れても溢れても止まらない。


「タマさん……ウッ…ウッ…」

「つくし、そんなに泣かないでおくれ。」

「ウッ…タマさん……会いた…かった…です」

「あたしもだよ、つくし。」

涙が止まらないあたしの背中をゆっくりと擦ってくれるタマさん。
その手が暖かくて、昔のことを思い出す。
タマさんはいつでもあたしを慰めてくれた。
最後の最後まで、「坊っちゃんを信じて。」と言って手を握ってくれた。

10年ぶりにタマさんと手を握るあたしの背後で、
もう一度小さくコンコンと音がした。

「ったく、」

「坊っちゃん、おいででしたか。」

「タマ、」

「はい。」

「俺のいないとこで、泣かせてんじゃねーよ。」

そう言って難しい顔をしながら近づいてくる道明寺。
その腕には、すでに注射の後なのか小さな絆創膏が貼られている。

「道明寺…、ワクチン打ったの?」

「ああ。」

「主治医に説明とか、」

「俺が適当にしたから大丈夫だ。」


適当にって、あんた……。
じゃあ、なんであたしをここに連れてきたのよっ。
そう文句を言いかけたあたしに、

「タマとの再会は無事に終わったか?」

と、今度はあたしとタマさんを見比べてニヤリと笑っている。




どこまでがこの人の計画で、どこまでが咄嗟の出来事だったのかは分からない。
けれど、この、得意気な顔を見ていると急に10年前に引き戻されていく。


そう、この人は昔も今も分かり辛いけど、

優しい奴なのだ。




応援よろしくお願いします♡
関連記事
スポンサーサイト




 2019_08_09


Comments


 管理者にだけ表示を許可する


08  « 2019_09 »  10

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

プロフィール

司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

最新トラックバック

フリーエリア

お金がたまるポイントサイトモッピー

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR




PAGE
TOP.