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時差恋愛 3

Category: 時差恋愛  



「……おう。」

道明寺の返事のあと、すぐにママとタマさんが病室に帰ってきた。

無事に退院が決まった二人は、荷物の整理も終わっているのであとは着替えるだけ。

「つくし、外で待ってて。」
「坊っちゃん、来てくれたんですか。
着替えるので少しお待ちを。」

ママとタマさんにそう言われ、並ぶようにして病室の前で立つ事になったあたしたち。
道明寺との近い距離に、緊張してまっすぐしか見れないあたしと、壁に背中を預けて無駄に長い足を投げ出して立つ道明寺。

中から
「いいわよ〜。」
なんてママの声がして、緊張から逃げ出したいあたしは急いで病室へと入った。

すでに退院準備完了の2人は、
「それでは、お元気で。」
「退屈しない入院生活だったよ。」
なんて話し深々と頭を下げあっている。

あたしもタマさんに頭を下げ挨拶すると、
「タマ行くぞ。」
と、ぶっきらぼうに道明寺が言い、タマさんが病室を出ていった。



あたしとママも遅れて病室を出て、会計で退院の手続きなどを済ませると、病院に近いタクシー乗り場まで歩くことにした。

タクシーなんて勿体無いからバスで帰ろうというママに、退院した日ぐらい無理しないでタクシーに乗ろうと言うあたしが押し問答をしていると、
あたしたちの横にスゥーと1台の車が止まった。

黒いダックスフンドみたいなその車の窓がゆっくりと下り、さっき別れたばかりのタマさんが顔をだす。

「牧野さん、どうしたんだい?」

「い、いえっ、」

「何か困った事でも?」

「いいえ、ありません。
そこのバス停まで行く途中だったもので。」

あたしの意見なんか聞かず、まだバスで帰ろうとしているママにタマさんが思いもよらない事を言った。


「一緒にお乗りになりませんか?
坊っちゃん、牧野さんにはお世話になったのでよろしいでしょうか?」

そうタマさんが言うのが聞こえ、あたしは慌てて
「け、結構ですっ。」
と叫びママの退院荷物を抱え歩き出した。

道明寺の車に乗るなんてありえないっ。
これ以上近付いたら緊張で死ぬ。

そんなあたしの気も知らずに、
「つくしー、お言葉に甘えましょー。」
と、嬉しそうなママの声がした。






ダックスフンドの車はたぶんリムジンと言うのだろう。
その中は想像をはるかに超えていて、ゴージャスそのもの。

ゆったりとした座席にこじんまりと座るタマさん。
その横にママが座り、その向かい側にあたしと道明寺が並んで座る形になった。

車の中全体に立ち込めるいい香り。
道明寺の隣に座ってはじめて気付く。
その香りは道明寺から発せられているものだと。

チラッと隣の道明寺に視線を向けても、この人はあたしの存在なんて無いかのように窓の外を涼しげに見ているだけ。

そんな道明寺にママが言った。

「お孫さんですか?」

「いいえ。
こちらは、私がお仕えするお屋敷の坊っちゃんでして。」

タマさんが代わりに答えたけれど、『お屋敷』『坊っちゃん』という言葉にママが反応しない訳がない。

「あらまぁ、そうですか。
つくしとそう歳も変わらないように見えますけど、高校生ですか?」

「ママっ、」

「いいじゃない、歳くらい聞いたって。」

「もういいから、そのぐらいにしてっ、」

道明寺を怒らせたら何をするか分からない。
もう、黙っててとママにアイコンタクトを送りヒヤヒヤしながら乗っていること数分で、うちのマンションが見えてきた。

「あっ、ここでいいです。」

そう言うと、道明寺が運転手さんへ合図を送り、ゆっくりと車が止まった。

「ありがとうございました。」

ママとあたしが車から下りようとしたとき、今まで無言だった道明寺が口を開いた。

「おまえの家、どこだよ。」

「え?ここだけど?」

二階建てのマンションを指差してそう答えるあたしに、

「ちっせぇな。」
と、失礼にも呟くこいつ。

「4人家族には充分な広さよっ。
部屋だって3つもあるし。」

「3つ?この建物ならもう少しあるだろ。」

「は?うちは2階のあの部屋だけど。」

どうも、会話が噛み合わないあたしたち。
首を傾げるあたしに、道明寺もさも不思議そうに言った。

「っつーか、この建物全体がおまえの家じゃねーのかよ。」

「はぁ?ここはマンションなの。
あたしの家はあそこの玄関を入ってあの一画だけ。」

あたしが指差して教えてあげると、
隣の道明寺が、
「マジかよっ、英徳にこんな奴がいるとはな……。」
と言って笑った。


笑った。
道明寺司が笑った。

それも、口角が少しだけ上がり、目尻がほんの少しだけ下がる、あたしが今まで盗み見していたそれとは違って、

白い歯が少しだけ見えて、顔をクシャッと崩し、
ほんとに楽しそうに……笑った。


その顔を見て、
あたしは、

この人に本格的に…落ちてしまった。


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 2018_04_16


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