日々、想定外。37

Category: 日々、想定外  


仕事を早く片付け、二週間ぶりに大阪へ向かっている途中、俺の携帯が短く鳴った。

『牧野、借りるよ。』
類からのそのメールに、
『あのヤロー』
と呟いた直後、1軒の店の名がまたメールで送られてきた。

牧野の仕事が終わる時間にホテルへ迎えに行こうと思ってた俺は、急遽その店にタクシーを飛ばし、店の奥で向かい合って座る二人を見つけた。

久々の再会だっつーのに、牧野の機嫌がわりぃ。
『牧野にイジワルしておいたから、司が機嫌直してあげて。』
そう言って勝手に消える類の席には、俺があいつに貸していた腕時計が残っていた。


「牧野、類に何言われた?」

「…別に。」

「おまえにイジワルしたって言ってたぞ。」

「イジワルっていうか……、」

そう言ってプイっと窓の外に顔を向けるこいつ。

「久々に会ったんだから、顔見せろ。」

「……。」

「おまえに会いたくて堪んなかった。」

こいつには直球が一番効くことを知っている。
案の定、耳まで赤くした牧野が、

「嘘つき。」
そう呟きながら俺の方をようやく見た。

「あ?嘘つきってなんだよ、」

「会いたかった…なんて嘘でしょ。」

この二週間、毎日呪文のように思っていた気持ちに嘘はない。
 
「会いたかった…っつーのが嘘だと思ってんのか?」

「……。」

「そうかもな。『会いたかった』なんて嘘だ。
『会いたくて、会いたくて、死ぬほど会いたくて堪んなかった』っつーのがほんとだろ。」

俺は他の客にも聞こえるようにさっきよりも大きな声で言ってやると、
「ちょっと!副社長っ。」
と、焦るこいつもすげぇ可愛い。

「これ以上
おまえは何が聞きたい?」

「はぁ?もう何も言わなくていいですっ。」

「じゃあ、今度はおまえの番。
類に何言われた?」

「……。
花沢類が、副社長は東京で西門さんたちと夜な夜な遊んでるって……。
こっちに来る暇がないのは遊びに忙しいからだって。」

そこまで言って口をキュットつぼめ、また窓の外に顔をむける牧野。

「牧野。」

「…ん?」

聞こえるか聞こえないかの小さな返事に、

「あとで西田にここ最近の俺のスケジュール、メールで送らせる。それと、タマからも報告させるか?俺が毎日何時に帰宅してるか。
西田とタマのを照らし合わせたら、俺が他の女と遊ぶ暇がねーくらい、おまえと週末過ごすために動いてるかがわかるだろ。」
そう言って牧野の頭をグシャグシャと撫でてやる。

「だっ、大丈夫だから、そんなことやめてよ。」

「でも、おまえは俺のこと疑ってんだろ?」

「疑ってはいないよ?でも、花沢類が変なこと言うから、」

「俺的にはなんかすげぇ…嬉しいんだけど。」
ニヤけた顔が抑えらんねぇ。

「はぁ?」

「だって、おまえそれで不機嫌になったんだろ?ヤキモチか?」

「は?べ、別にっ、」

「久々におまえから好きだっつー、気持ちが聞けて嬉しいよ俺は。」

「言ってないしっ、勝手に変換しないでもらえます?!」

そう言って暴れる牧野の手を掴んで、ニヤけた顔のまま俺は店を出た。






プラプラと夜道を歩きながら、俺の手の中にすっぽり収まる小せえ手をゆっくりと愛撫する。

「…副社長、……やめてくださいっ。」

「……。」
無言で見つめ返してやると、

「くすぐったい」
と、俺の手から逃げようとする。

「なぁ、その『副社長』ってそろそろやめろよ。」

「え?」

「なんか、硬いっつーか。
まだ仕事中みたいな気になって、こういうことするのも悪いことしてるみたいな感じしねぇ?」
そう言ってわざとやらしく指を絡める俺に、

「だからっ、もう、」
と、睨みながら見上げる牧野。

「牧野、名前で呼べ。」

「は?」

「副社長じゃなくて、俺の事も名前で呼べ。」

「名前って……いやいや、無理。ありえない。」

ブンブン頭を振って速攻却下する可愛くねぇ女に、

「俺もこれからはつくしって呼ぶから。」
と、宣言した俺の耳も熱い。

「えっ!副社長は牧野でいいですから。
なんか、急に下の名前で言われても違和感が。
あっ、そうか。あたしも下の名前で呼ぶのはハードルが高すぎるから、上の名前で。
ど、ど、道明寺っ、でいいですか?」

ありえねぇ。
牧野、道明寺、なんて、クラスメイトを呼ぶんじゃねーんだから、そんな恋人なんているかよっ、
と、思う半面、
こいつが『道明寺』と呼ぶその響きに、一瞬でノックアウトされた俺。


「おまえの好きにしろ。」

「へへ、…!はい。」





「牧野、泊まってくか?」

「へ?」

「今日、俺のホテルの部屋に、」

「ううん、いいですっ!」

勇気を出して言った俺に、速攻断るバカ女。


「おまえさ、断るの早すぎだろ。」

「だって!副社長が急に、」

「牧野、名前。」

「え?あっ、ど、道明寺が急に変なこと言うから。」

「変なことじゃねーだろ。」

「そ、そういう意味じゃなくて……。
でも、物事には流れっていうか、順序があってですね、」

照れてんのか、テンパってんのか、
俺から視線をそらしてモゴモゴと一人で喋るこいつがすげぇツボで、

「じゃあ、お前の言うように、順序立てて進むか?」
そう言って俺は隣のこいつを引き寄せた。

「副社長っ、」

「名前。」

「……どうみょうじぃ…」


牧野が俺を呼ぶ最後の音は、俺のキスで掻き消されていく。
はじめて名前を呼んで、
はじめてキスをする。
順序よく進もうぜ牧野。



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 2018_04_04


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    2018-04-05 17:01  

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