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日々、想定外。29

Category: 日々、想定外  



夕方から知り合いの社長との夕食会に顔を出し、社に戻ったのが9時を回っていた。
オフィスでスーツの上着を脱ぎ、時計をはずす。

いつものようにデスクの一番下の引き出しを開けるとそこには時計の箱が2つ。
今はずしたばかりの時計をそれにしまい、もう一つの箱からいつも身に着けている時計を取り出したとき、
さっき感じた違和感がまた押し寄せてきた。

食事会に行く前にここを開けて時計を付け替えたとき、なぜだか感じた違和感。
それは、微妙にいつもと時計の箱の位置が違っている。
強いて言うならば、妙に整いすぎている。

そして、俺はふとあの日のことを思い出した。
パーティーに行く直前、牧野に時計を取りに行かせたことを。


そして、次の瞬間、俺は床に膝をついてデスクの中を覗き込んでいた。
下から2段目の引き出しの底の裏側に貼り付けたファイル。
普通に開ければどこからも見えない場所に、
ファイルは今もそこにあった。

だが、なぜか確信があった。
牧野はこれを見たに違いない。

だが、これを見た事とあいつの涙の訳が繋がらない。
やはり俺の勘違いか?

俺は今脱いだばかりのスーツを着ると、秘書室へと急いだ。



「牧野いるか?」

秘書室に軽くノックをしたあと、返事も聞かず開けた俺に、

「副社長。
牧野さんでしたら、今日は先にあがりました。」
と、西田が言う。

「もう帰ったのか?」

時計を見ると9時半。いつもなら、邸まで俺に付き添うのが牧野の仕事だ。

「引っ越しの準備があるので、私の判断で帰らせました。
何かございましたか?」

引っ越し……。
もう、あと数日で大阪に行くあいつ。
ようやく、大切だと自覚した女なのに、距離を縮められないまま離れることになる。

「西田。今日はおまえもテキトーにあがってくれ。」

俺はそう言い残し、駆け足でエレベーターへ向かった。






牧野のマンションの前に着くと、少しだけ迷ったが、そのまま部屋へと向かった。
こんな時間に……とは思ったが、電話では逃げられそうでそれは避けたい。

部屋のチャイムを鳴らすと、しばらく間があったあと、
「はい?」
と、小さく牧野の声。

「俺だ。」

「副社長?」

「おまえに確認したいことがある。
開けてくれ。」

「……確認ですか?」

「ああ。」

「…少し待ってて下さい。」

そう言った数分後、部屋の扉が開き牧野が俺を見上げた。

仕事時のスーツではなく、リラックスした部屋着のこいつに、視線をどこに合わせていいか分からない。

「どうしました?」
と、俺を見上げるこいつに、

「少し、外に出られるか?」
と、聞くのがバカ見てぇに精一杯だった。



マンションの下で待っていると、さっきの格好にコートを着て出てきた牧野。
俺が無言で歩き出すとその後を付いてくる。
しばらくして小さな公園に入ると、そこのベンチに並んで座った。

「牧野。」

「はい。」

「おまえ、俺のデスクに入ってたファイル、見たか?」

「……。」

ビンゴ。
無言なのが肯定の証拠。

「どう思った?」

「…どう思ったって……」
そう言って俯くこいつ。

「まぁ、勝手に調べたのは俺が悪りぃけどよ、しょうがなかったっつーか、あの頃はまだ俺の思い違いかもしれねぇと思ってたし、」

「ショックでした。」

「……だろーな。
確かにやり方は間違ってたけどよ、情報は先に仕入れておきたいっつーか、そういう性格なんだよ俺は。だから、」

「いつ頃からですか?」

「あ?」

「いつからあたしのこと、」

「それはまぁ、……だいぶ前からかもしれねぇ。」

さすがの俺もこんなことを口にするのは恥ずい。
思わず下を向く俺に、牧野がなぜか声を詰まらせながら言った。

「慣れないながらも一生懸命秘書という仕事を頑張ってきたつもりです。
でも、副社長や西田さんに疑われていた事はショックでした。
もう、調査は終わっていると思いますが、私からきちんと言わせてください。
五十嵐課長とは数回食事に行っただけでそれ以上のことは何もありません。」

必死に話す牧野の言葉の意味が分かんねぇ。

「おまえ、何言ってる?」

「…え?」

「疑うって何のことだよ。」

「……はい?」

「はい?じゃねーよ。こっちが聞きてーよ。
疑うとか、調査とか、おまえはあのファイルをなんだと思ったんだよ。」

「えっ、だから、……あたしが五十嵐課長の共犯だと、」

「………ちげーよっ!バカかおまえはっ!」

公園に響き渡るほどの声で俺は怒鳴っていた。

「んなこと、疑ってねーよ。
もしかして、おまえっ、それで泣いてたのか?」

「……。」

あのファイルと牧野の涙の意味がようやくつながった。

「俺も西田もおまえのことを疑ったことは一度もねー。」

「じゃあ、あれは……。」




おまえの存在が気になって調べさせたあのファイル。
好きな女の情報を少しでも知りたかったから…なんて、言いたくねぇけど、言わないとこいつには伝わらない。


「おまえが気になって西田に調べさせた。」

「気になって?」

「ああ。……好きになったみたい…だからよ。」

人生初の告白。
これであってるか?
照れくさくてまともに顔をあわせらんねぇ俺に、隣のバカ女が言った。

「好きって…何をですか?
まさかっ、…五十嵐」

「あ゛?てめぇ、バカかっ!
どこまで鈍感なんだよっ。
俺の好きは一択だ!牧野つくし一択だ、バカっ!」



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 2018_03_20


Comments

日々、想定外 

やっと道明寺さん、牧野つくしさんに告白しましたね。
でも 牧野つくしの反応は?
自分の調査書見てしまったの自分が好きになっている自覚、其れなのに自分が傍にいると副社長に迷惑になるなんて、いかにも牧野つくしの考えそうなことですね。これで急に転勤願を提出した理由に納得しました。展開が少し早かったので、え??どうしてなんて前のお話を読み直したのです。
大阪支社のへの転勤はどうなるんでしょう。
今日もハラハラです。楽しみです。
みっちゃん  URL   2018-03-22 07:50  

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    2018-03-22 15:22  

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    2018-03-22 16:21  

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    2018-03-23 11:09  

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