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日々、想定外。26

Category: 日々、想定外  



「牧野?……おい、牧野?」

「……はいっ。」

「どうした?さっきからぼぉーっとして。」

「…いえ。」


パーティーは無事に終わった。
普段通り秘書として振る舞えたと思う。

でも、帰りの車の中、思い出したくもないさっきの光景がよみがえってきた。
オフィスで見たあのファイル。

あれが物語っていることは、ただ一つ。
副社長はあたしを疑って調査をしていた。

秘書として信頼されていない…そう感じたのはつい最近だったが、まさか敵だと思われていたなんて。

手が震えた。
目の前が真っ暗になった。
そして、心が凍った。

やましいことは一つもない。
五十嵐課長との仲も疑われるようなことは何もない。
だから堂々としていればいいだけなのに……。

「具合悪いのか?」

「いいえ。」

邸までの数十分。
副社長の隣にいることが辛い。

「少し、目閉じてろ。」

副社長があたしにそういった後

「林、牧野のマンションに行ってくれ。」
と、運転手に告げた。

「副社長?」
戸惑うあたしに、

「今日はこのまま帰れ。」
と、優しく言う副社長。

仕事中は我慢できたのに、一度緊張が溶けてしまうと、思考が逆戻りしてバカみたく涙腺が緩む。
もういい歳した社会人なのに、仕事のことで泣くなんてありえない。

そう思って必死に我慢すればするほど、悲しくなるバカなあたし。
そんなあたしに気付いているのか、

「ったく、分かったから目閉じてろ。」
と、優しく副社長が笑った。




あたしのマンションの前に着くと、
「ありがとうございました。」
と、副社長と林さんに告げて車を降りた。

足早に部屋へ向う。
熱いお風呂に入って、早めに寝よう。
そして、明日から気持ちを入れ替えてもう一度頑張ろう。

そう思いながら、部屋の鍵を差し入れたとき、
「牧野。」
と、後ろから声がした。

「…副社長?」

そこには帰ったはずの副社長の姿。

「どうして?」

「……。」

あたしの問いかけには答えず、無言で正面に立つ副社長は、まっすぐあたしを見つめて言った。

「なんで泣くんだよ。」

「え?」

「ずっと泣きそうな顔してる、おまえ。」

そう言う副社長もなぜだか悲しそうに見える。

「別になんでもありません。」

「俺には言えないことか?」

「……。」

「牧野。」

「いえません。」

そう言ったあたしの目から堪えていた涙が流れてしまう。
見せたくない、見られたくない。

そう思って咄嗟に下を向いたあたしの視界が突然大きく揺れた。
そして、それが副社長に抱きしめられたからだと気付いたとき、

あたしの頭上から
「言いたくねぇのはおまえの勝手だけどよ、」
と、小さく呟くような声がして、

そのあと、あたしの髪に副社長の吐息がかかるように、
「心配になるのも俺の勝手だ。
だから、少しだけこのままでいさせろ。」
と、心臓が震えるほど甘い声で副社長が言った。




副社長の腕に包まれながら、あたしはようやくこの悲しさの意味が分かったのだ。
秘書として信頼されていなかったから…、
五十嵐課長の共謀だと疑われたから…、

ずっとそうだとおもっていたけれど、
そうじゃない。


あたしはこの人に信じて欲しかったんだ。
秘書としてではなく……牧野つくしとして。




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    2018-03-19 09:41  

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