FC2ブログ

日々、想定外。13

Category: 日々、想定外  



時計の針が10時を回った頃、あたしはこの広すぎるスイートルームで大きなため息をついた。

「はぁーー、疲れた。」

思わず出た言葉は小さな声だったけど、感情はぎっしりと詰まってる。

だって、今の今まで、副社長と二人きりだったのだ。疲れない訳がない。

今までだって何度も仕事で二人きりになる事はあったけど、プライベートでこんなに長く接するのは初めてで、正直かなり緊張した。

ガチガチに固まった肩をグリグリと回しながら、家から持ってきた部屋着に着替え、大きなソファに身を沈めるとやっと全身から力が抜ける。

『明日は下に車を用意させておくからいつも通り邸に迎えに来い。』
そう言い残して帰っていった副社長。

帰り際、頭を下げるあたしに、
『類は呼ぶんじゃねーぞ。』
と怒ったように言ったあと、
『じゃあな。』と、笑った。


「今日は……たくさん笑ったよねあの人。」
そう思わずあたしは独り言を呟く。

この部屋に入ってから一時間半ほどの間、副社長は時々……笑っていた。
『バカじゃねーの。』とか、
『部下のくせに、』とか、
口は悪いけど、顔は笑っていて、
その綺麗さにドキドキさせられて心臓が痛かった。

副社長って、あんな風に笑うんだ。
あの笑った顔だけ見たら女の人は落ちちゃうだろうな。

そんなことを考えていると、急激に睡魔に襲われる。
人生、最初で最後のスイートルーム。もっと堪能したかったなぁーなんて思いながらあたしはその夜ソファで眠った。








翌日、いつも通り邸に副社長を迎えに行き車に乗り込むと、一瞬副社長があたしを見て、そのあと明らかに視線をそらし窓の外を眺めている。

「なんですか?」

「あ?」

「何か言いたそうでしたけど、」

「別に。」

昨日はソファで寝ちゃったけど、朝は早起きしたし、シャワーも浴びてきたし、髪だってきれいに整えてきた。
それなのに、あたしをちらっと見て明らかに怪訝な顔をしたこの人。

朝から喧嘩売ってんのか?
そう思いながら、
「今日のスケジュールです。」
と、タブレットを乱暴に副社長に手渡すと、

「なんだよ、機嫌わりぃーのかよ。」
と、やっとあたしの方を見てそう言う。

「いえ、別に。」

「機嫌わりぃーじゃん。」

「いつも通りですっ。」

「プッ、おまえ機嫌わりぃーと鼻の穴広がるからすぐわかるんだよ。」

「はぁ?」

思わず右手で鼻を隠しながら叫ぶあたしに、
「朝から、からかい甲斐がある奴だなおまえは。」
と昨夜何度も見たあの笑顔。

それにまたドキッと胸がなった自分に腹が立ち、

「副社長が失礼な事するからです。」
と、上司に八つ当たりする馬鹿なあたし。

「あ?なんだよ、失礼なことって。」

「さっき、明らかにあたしのこと見て笑いましたよね。」

「笑ってねーよ。」

「そうですか。……ならいいですけど。」

そう言って、おとなしく引き下がったあたしに、

「おまえ、朝シャワー入ってきたのか?」
と、副社長が聞いてきた。

「入ってきましたけど、やっぱりなんかついてます?髪も洗ってきたし、きちんと整えて来たつもりなんですけど。」

シャワーに入ってきたかと聞かれれば焦る。
そんなにあたしの何かがおかしいのか。
慌てて鞄から鏡を取り出そうとしたとき、副社長がボソっと言った。

「いや……。俺と同じ香水の匂いがするからよ。」

「……え?」

副社長はまた窓の外に視線をうつしたままこっちを見ない。

「香水…、あたしつけてませんけど。」

副社長の横顔に向けて小さく反論すると、

「シャンプー、特注で作らせてる。
おまえ髪長いから、すげぇーいい匂いする。」

と、なぜだか怒ったように副社長が言った。





ランキングに参加しています。
よろしければポチッとお願いします!

関連記事
スポンサーサイト

 2017_12_14


Comments

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
    2017-12-14 21:51  

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
    2017-12-15 00:28  

 管理者にだけ表示を許可する


09  « 2018_10 »  11

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

プロフィール

司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR




PAGE
TOP.