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日々、想定外。12

Category: 日々、想定外  



「準備してこい。」

副社長にそう言われ、焦る頭の中、大急ぎで3日分ほどの荷物を鞄に詰めた。

部屋を出るとマンションの前には黒塗りの車が待機してあり、副社長に押されるように乗り込む。

会社の近くのホテル……、
どこがいいだろう。

そんなことを考えているあたしを横目に車はどんどん加速しもうすぐ社の近く。

「副社長、この辺で…」

隣に座る副社長にそう告げると、

「おまえ、飯は?」
と、的はずれな言葉。

「食べました。」

「何食った?」

「うどんですけど。」

「…なら、果物ぐらい食えるか……。」

難しい顔をしてそう呟く副社長。
この人は、時々こういう顔をする。
仕事でうまくいかなかった時、先行きが読めないとき、こういう顔をして書類をじっと見つめているのを何度も見ている。

何かあったのだろうか。
あたしがしばらく職場を離れている間に難しい案件でも…?

そう考えていたとき、車体が大きく傾いた。
地下に入った?
体がそう感じたのと同時に社内が暗くなる。

そして、すぐに
「到着しました。」
と、運転手さんの声。

「降りるぞ。」

「…えっ?」

どこに?
そんなあたしの言葉を打ち消すかのように運転手さんによって車の扉が開けられた。

促されるまま降りるしかないあたし。
でも、降りたところで暗くてここがどこなのか分からない。

そんなあたしの背中を押すようにしてエレベーターに乗せた副社長は慣れた手つきで最上階のボタンを押した。

「副社長、あのぉーここはどこでしょう?」

完全に借りてきた猫状態のあたしに、

「プッ…」
と、小さく笑ったあと、

「メープル。」
と一言副社長が答えた。

「メープル、……えーと、メープル。」

「メープルホテルだ。」

「メープルホテルですよね。
……えっ!メープルホテルって、えっ!」

思いもよらない回答にあたしはパニックになった。

「どうして、メープルに?
えっ、仕事ですか?いや、会食?
違いますよね、どうして…あのぉー、」

そんなジタバタしているあたしなんてお構いなしに最上階に着いた副社長はスタスタと行ってしまう。

早く来い、とでもいいたげに手をヒラヒラさせてあたしを呼び、カードキーで今開いたばかりの部屋に強引に押し込んだ。







※※※※※※※※※※※※※※

「準備してこい。」
そう牧野に言ってマンションの部屋の前で待っている間、俺は考えた。

俺がこいつに抱いている感情は何なのか。
甘く痺れるような感覚がこいつといると度々訪れる。その正体は……。

それを知る絶好の機会かもしれねぇ。




メープルの部屋に押し込んだ牧野は、その場で呆然と立ち尽くしていた。

「入れよ。」

「えっ、でも、ここは……。」

「しばらくおまえはこの部屋で暮らせ。
犯人が捕まるまであの部屋に戻るのは禁止だ。」
そう俺が言うと、

「…ありえないっつーの。」
と小さく呟く可愛くねぇ女。

「副社長、困ります。
あたしのお給料じゃこんな高価なお部屋代払えませんし、そもそもこんな広い部屋勿体無い。」

「ここは俺のプライベートルームだ。金の心配なんてするな。」

喜ぶかと思って言ってやったそんな言葉も、こいつにかかれば、
「なおさら怖いんですけど。
この見返りに残業代をただにさせられるとか?」
と、相変わらず扉の前でぐちゃぐちゃうるせぇ。

「とにかく、黙って今日はここでおとなしくしてろ。
明日のことはまた明日考える。
食事も用意させたから好きなだけ食え。」

今までうるさかったこいつも、ワゴンにズラリと並べられたルームサービスに引き寄せられたのか、やっと部屋の中まで入ってきた。

「あたし、ルームサービスって初めてなんですけどっ。
その前に、部屋の中探検してきてもいいですか?こんな高価な部屋、たぶん一生入ることないと思うから。」

「好きにしろ。」
はしゃぐ牧野を見ながら思わず顔が緩む。

たっぷり15分はかけて全部屋眺めた牧野は、
「副社長、やっぱりあたし他のホテルを取ります。」
と、マジな顔で言いやがる。


「ここにいろ。」

「いえ、ここは副社長のプライベートルームですし、いくら緊急事態とはいえあたしがここに泊まるのは…。」

「上司の俺がそうしろって言ってるのにか?」

この言葉は専属秘書にとっては痛いだろう。

「……。
一応、あたしの直属の上司は西田さんなので、西田さんに確認してもいいですか?」

そうきたか。
俺の返事も聞かず携帯を取り出し西田にコールする。

すぐに電話に出た西田に、事の経緯を説明する牧野は、「分かりました。」と、見えてもいねーのに頭を下げながら電話を切った。

「西田は?」

「副社長の指示に従うようにと。」

その言葉に内心ガッツポーズの俺。
西田のヤロー、いいとこあんじゃん。

泊まる泊まらないの話し合いはこれで決着だ。
牧野も納得したのか、「一日だけお世話になります。」と律儀に頭を下げ、その後は用意されたルームサービスをまじで嬉しそうに食ってやがる。

そんな光景に心が満たされるってどういうことだよ俺。
強情で可愛げもなくて突っかかってきてばかりいるこいつが、仕事中には見せない緩んだ表情で、

「副社長も食べます?」
と、メロンを差し出す。
そんなことにいちいち反応するな俺。

そして、この日の極めつけはこの言葉。
「副社長はここに泊まって行くんですか?」

「……あ?」

いいのかよ?と聞こうとした俺に、

「他にもプライベートルームありましたよね?」
と、呑気な顔で言いやがる。

おまえは曲がりなりにも女で、俺はれっきとした男だ。
ホテルの一室にいる男女なら危機感っつーのを持ってもいいだろうに、このバカ女は……。
このまま俺がこの部屋で泊まるって言ったらこいつはどんな反応するのか、
それを確かめたくなったのは、もう少しこいつと一緒にいたいと思ったからだろう。


「俺もここに泊まるって言ったらどーする?」

「…それは、副社長のお部屋ですし、ベッドルームもたくさんあるので私はいいですけど……、」

「けど?」

その先も何か言いたそうなこいつに聞き返すと、

「一応、結婚前の男女なので、」

「なので?」

「何もなかったという証人になってもらう為に、」

なんか嫌な予感がすると思った俺に、

「花沢類でも呼びます?」
と、予感的中の鈍感バカ女。

「てめぇ、殺すぞ。」

「えっー、」

「類も男だろーが。」

「花沢類とは温泉に行ったり、京都にお花見に行ったり何度かお泊りしてるので大丈夫ですっ。」

と、自信満々に答えるこいつに頭が痛てぇ。




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