彼と彼女の一年間 31





不機嫌そうにあたしたちを睨む道明寺に、

「……副社長?」
と西岡さんが呟いた。

「牧野、おまえは車に乗ってろ。」

「え?」

「俺はこいつと少し話してから行くから、おまえは先に行ってろ。」

そう言って車道に停めてある車を顎で指す道明寺に、あたしは少し考えたあと、小さく首を振って抵抗した。

それを見て更に怖い顔であたしを睨んでくるけど、わざとらしく視線を反らし気付かないふり。
そんなあたしたちのやり取りに、

「あのぉ、」
と西岡さんが割り込んだ。

「副社長と牧野さんって、どういうご関係ですか?」

「西岡さんっ、それは、そのぉ、何て言うか、」

「婚約者だ。」


…………。
あんたって人は、どうしてこうも空気を読まない男なの?
ようやく職場でもあたしたちの噂が消えかけているというのに、自分の口からそんなにはっきり言わなくてもいいじゃないっ。

今度はあたしが道明寺を睨む番。
でも、さっきのあたし同様、明らかにわざとあたしの視線を無視して西岡さんに続けた。

「俺と牧野は婚約中だ。
訳あって公に発表はしてねーけど、そういう仲だから、気安く誘ったり触れたり今後はやめてくれ。」

「…………牧野さん今の話、ほんと?」

「………はぁ、まぁ、そんなところ……です。」

「あの噂は本当だったんだ。
それは、申し訳ない。
僕は牧野さんがフリーだと思ったので誘ったまでです。
失礼なことして申し訳ありませんでした。」

西岡さんはどこまでも大人で、どこまでも紳士的。
道明寺に頭を下げ、あたしに、
「悪かったね。」
と、罰が悪そうに微笑んでくれる。

「いえっ、西岡さんは何も悪くないです。」

「ありがと牧野さん。
ごめんね、じゃあ、また来週。」
そう言って去っていく彼。

残されたあたしは西岡さんの後ろ姿をじっと見つめていると、
「帰るぞ。」
と、偉そうに言う道明寺。
それをキッと睨み付けて車に乗り込んだ。




車に乗るとすぐに、道明寺から文句や小言を言われるだろうと覚悟していたのに、運転中の道明寺は黙ったまま。
かえってそれが恐い。
その雰囲気に耐えられなくなったあたしは、

「迎え、早かったね。」
と、なんとなく様子を伺うように話しかけてみた。

「……ああ。そろそろだろうと思って近くにいた。」

「そっかぁ。ありがとう。」

「…………。」

「…………。」

「……あー、あのお店だけど、凄いお料理もワインも美味しかったよ。
道明寺も今度行ってみたら?」

「ああ、そうだな。」

「…………。」

「…………。」

いつもと違う道明寺の態度に落ち着かない。

「道明寺、」

「…………。」

「道明寺っ!」

「なんだよ、うるせーな。」

「怒ってるなら怒ってるって言ってよ。
あんたがそんな風におとなしいと余計に恐いからっ。」

「……怒ってねーよ。」

「嘘っ、今あたしのこと睨んだでしょ。」

そう言うと、運転中の道明寺とバッチリ目が合い、その瞬間、思いっきりため息をつかれる。
そして、突然、車を車線変更した道明寺は車が来ていないのを確認して車線の脇へ車を止めた。


「怒ってるよ。俺は猛烈に怒ってる。」

「…………やっぱり。」

「怒ってる、けどよ、それをおまえに言ってもしゃーねーし。」

そう言ってあたしから視線を反らす道明寺。

「どういうこと?」

「おまえがあいつと飲みに行くのも、二人で歩いてんのも、気安く触らせてるのも、無茶苦茶腹が立つけどよ、それは、俺がおまえを好きだから勝手に腹立ってるだけで、……ダセェだろ。」

「…………。」

「だからって、おまえとあいつを二人にするつもりはねーけど、
……でも、おまえがあいつを好きならしゃーねーし。」


この人はいつだって、俺様なくせに……。
柄にもなく、分かりづらいけど、……やっぱり優しい奴。


「あんたさ、いつもは自己中なくせに、恋愛は自己中じゃないんだ。」

「あ?」

「もっと、俺はおまえがが好きなんだから、おまえも俺が好きだろ?
みたいに考えられないの?」

「…………。」

あたしの言ってる意味が分からないようで、助手席に座るあたしをじっと見つめる道明寺。

「はじめは、婚約なんてすぐに解消して邸から出ようと思ってたけど、あんたが想像してた人と違ったっていうか…………。
いい意味で期待を裏切ってくれたって言うか……。」

そうモゴモゴと話すあたしに、
「なんだよ、それ。」
と、今日初めて見る道明寺の笑った顔。

その顔にあたしの心がほぐれていく。
あたしはやっぱりこの人のこういうところが好き。

「ずっと嫌なやつだと思ってたのに、以外にあんた優しいし、あっ、すっごく分かりづらいけどね。
それに、あたし、あんたといて……嫌じゃないし。」

自分でも嫌になるほど素直じゃないあたし。
そんなあたしに、クッ……と笑ったあと、
「そうかよ、それはサンキュ。」
と、からかうように言ったあとあたしの髪をクシャクシャと撫でハンドルを握る道明寺。

ミラーで後ろからくる車を確認し、車を発車させようとする道明寺の腕を、あたしは咄嗟に掴んでいた。

「道明寺っ。」

「あ?」

このままここで話が終われば、あたしの気持ちはこの人に全然伝わっていない。
そして、また道明寺を不安にさせるだろう。

「あたし、西岡さんのこと異性として意識してないし、今日だって偶然二人になっただけで、特別なことは何もない。
……それに、…………」

「牧野?」

「あたしだって同じこと思ってたから。
道明寺と滋さんを見てヤキモチ焼いたり、こんな風に思ってるのはあたしだけなのにって腹立ったり。
だから、」

「牧野、」

あたしもあんたが好きだと言おうとしたのに、それを遮るようにあたしを呼ぶ道明寺。

「ん?」

「牧野、……キスしていい?」

これ以上、言わなくても伝わってるみたい。




あたしがコクンと頷くのと同時に、あたしたちの唇が重なった。




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 2016_09_02


Comments

 

キスして、いい?なんて、ホントにいつもの俺様坊ちゃんとは、思えない!!
坊ちゃん、かわいい~
さぁ、両想い達成! この後のお話が、楽しみ~
JUJU  URL   2016-09-02 08:46  

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    2016-09-02 09:05  

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    2016-09-02 10:07  

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    2016-09-02 11:27  

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    2016-09-02 13:14  

 

更新ありがとうございます(´◡`)
坊ちゃん可愛いー❤︎
ダメージ受けてションボリしてる姿が可愛すぎる!
いつも俺様な坊ちゃんからは想像もつかない(笑)
素直なつくしが見れて嬉しいです( ›◡ु‹ )
はー、また今日の楽しみも終わってしまいました(笑)
次は少しラブラブな二人が見れるかな?
次の更新も楽しみにしています❤︎
 URL   2016-09-02 14:28  

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