彼と彼女の一年間 30





次の日、いつも通り朝食のためダイニングに向かうと、タマさんが言った。

「坊っちゃんはもう仕事に出たけど、伝言預かってるよ。」

「伝言?」

「帰りは迎えに行くから必ず電話しろ、ですって。」

「…………。」

一夜開けてやっと自分を平常心へと戻したというのに、また朝から顔が火照る。

「仲が良いのか悪いのか、分からない二人だね。
でも、坊っちゃんの言うことは聞いておきな。
あとが恐いからね。」

タマさんはそう言ってニヤッと笑った。






金曜の夜といえば、なんとなく誰もがソワソワと浮かれているような気がする。
それはうちと隣の課も例外ではなく、今日は待ちに待った西岡さんと食事が出来ると、朝から女の子達は浮き足だっていた。

メンバーはあたしを含めて男女7人。
西岡さんが声をかけ、男性も3人参加するらしい。

仕事終わりの8時、女の子達とお店に到着するともうすでに男性陣は揃っていて、手始めにビールで乾杯することになった。
そこからは自己紹介の流れで、完全に合コンの様。

道明寺に「合コンかよ。」と言われ怒った手前、かなり居心地が悪かったけれど、女の子達は楽しそうだし、道明寺とのことを勘繰られる様子もないのでこの状況に感謝して、西岡さんがお薦めしてくれるワインを楽しむことにした。

海外を回りワインや料理を味わってきている西岡さんが行きたいと言うだけあって、料理もお酒も美味しくて、あっという間に時間が過ぎ時計は11時を回ろうとしていた。

みんなの話題は次に行く二次会のお店選び。
今の時間から7人入れるお店は……なんて携帯で調べている彼らに、
「あたしは、今日はこれで。」
と、やんわり二次会を断ると、

「行かないの?次の店。」
と、西岡さんが聞いてくれる。

まだ11時だし、次の日も休みだし、いつものあたしならもう一軒くらい……となるところだけど、
朝から「帰りは迎えに行くから必ず電話しろ。」
と釘を刺された以上、遅くなるのも厄介だ。

「明日、早くから用事があって。」
そう言って断ると、

「そっか、分かったよ。」
と、微笑む西岡さん。


店の前で、
「あたしは向こうの通りでタクシーつかまえるから。」と言い、みんなと別れて足早に店から離れ、携帯を取り出した。

2コール目が鳴りやまないうちに、
「もしもし。」
と道明寺の声。

咄嗟に、昨日の会話やベッドでの絡みを思いだし、それを隠すように、
「あたしだけど。」
と、可愛くない声が出る。

「終わったのか?」

「ん。」

「どこにいる?」

「店から出て、○○ビルの前あたりにいる。」

一番目立ち、車が停まれそうな場所を伝えると、
「すぐに行く。」
と、言って電話が切れた。

邸からここまでなら早くても20分はかかるだろう。
ワインの酔いをさますのには丁度いい。
そう思いながら、ビルの横にある植木が並ぶコンクリート壁に背中を預けたとき、

「牧野さん。」
と、声がしてビクッと体が揺れた。

「西岡さん?」

「良かった、もうタクシーに乗ったかと思った。」
そう言って、走ってきたんだろう、弾む息をととのえる。

「どうしたんですか?」

「うん、……みんな若い子達だから俺は抜けてきた。」
そう言って笑う西岡さんに、

「何言ってるんですか、西岡さんだって変わらないじゃないですか。」
と、私も笑う。

すると、
「5つも違えば、話も合わないよ。
それに、……俺は牧野さんと話すのが今日の目的だったから。」
と、あたしの前に立ち、真面目な顔で言う。

「話、ですか?」

「うん、そう。」

「あたしに?」

「うん。」

西岡さんから改まって話とは…………。
戸惑うあたしに、

「牧野さん、今、彼氏とかいるの?」
と、唐突に聞かれ、

「…………へ?」
と、自分でも恥ずかしいほど抜けた声。

「付き合ってる人とか、いるのかなぁって。
明日も約束があるみたいだし、もしかして彼氏と?」

「へ?……いえ、別に。」

「そっか、じゃあ、彼氏はいないってことでいいのかな?」

「はぁ、……はい、……あっ、いえ、」

西岡さんが何を知りたいのかが分からないし、今までこの質問に、即答で
「いません。」
と、答えてきた経験上、思わず、
いないと肯定してしまったあたし。

そんなあたしに西岡さんはクスッと笑ったあと、
「ちょっと歩こうか」
と、言いあたしの肩に手を置いた。



その時だった。

「おい、こいつに馴れ馴れしく触るんじゃねーよ。」
と、低い声が響き、振り向くと、

明らかに不機嫌そうな顔で、スーツのポケットに手を突っ込んだ姿勢の道明寺がそこに立っていた。




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 2016_09_01


Comments

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    2016-09-01 09:13  

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    2016-09-01 09:51  

Re: スイマセン(。>д<) 

こんにちは。
いつもメッセージありがとうございます!
ん?今日、このコメント以外に他に送って頂いていますか?
届いていないようです。ごめんなさい。
スイマセン、なんて謝らないでくださーい。
こちらこそ、誤字脱字がいっぱいで読みづらい文で申し訳ないです。
何かありましたら、もう一度コメント頂けると嬉しいです
司一筋  URL   2016-09-01 10:05  

 

ん~、つくしちゃん鈍感…
鈍感過ぎるのは、罪だよね、相手勝手に期待してるし…
連れ去られる前に坊ちゃん登場(^O^)
つくしは、司のこと好きなんでしょう?
こういうことは、はっきりさせよう!
JUJU  URL   2016-09-01 11:14  

 

今日も更新ありがとうございます!
坊ちゃん(´◡`)
最後に出てきてくれて嬉しい!
坊ちゃんがご立腹で立ってる姿があたしには見えました(笑)
つくしちゃんも素直になってー!
次は素直なつくしが見れるのかな?
次の更新も楽しみにしています(⋈・◡・)✰
今日の楽しみも終わってしまいました(笑)
 URL   2016-09-01 12:41  

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    2016-09-01 13:44  

 

好きすぎる!おもしろすぎる!あなたが好きです笑
更新待ち遠しい!
ぽん酢  URL   2016-09-01 15:47  

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