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彼と彼女の一年間 28





「どこの店に誰と行くんだよっ。」

後ろから聞こえてきたのは、部屋に戻ったはずの道明寺の声。

「道明寺っ。」

「終電にも間に合わねぇほど飲む気か?」

「そうじゃないけど、っていうか、なんでそんなに怒ってるの?」

「うるせぇ、怒ってなんかねーよ。」

明らかに不機嫌であたしを睨み付けてくるこの男。

「週末だからって、おまえの課は飲みに行くほど暇なのか?」

「別にそうじゃなくて、たまたま会社の近くに新しく出来たお店があるから、みんなで行こうってことになっただけでしょ。」

「みんなって事は男もか?」

「まぁ、西岡さんがワイン飲みたいって、」

その先を言い終わらない内に、

「いい気なもんだなっ。副社長の俺が遅くまで働いてるっつーのに、部下のお前らは合コンかよっ。」

と、今日一番の暴言をはく。

「坊っちゃん!」
タマさんが慌てて間に入ってくれようとしたけど、

「あんたにあたしの行動を制限される筋合いはないっ!」
と、あたしも負けじと応戦してしまった。

そんな睨み合うあたしたちの間に無機質な機械音が鳴り響く。

「道明寺、電話鳴ってる。」

道明寺の胸ポケットから響く携帯の音。
それなのに、取ろうとしないこの男に、
「さっさと出なさいよっ。」
と、言い捨ててあたしは逃げるように部屋へと戻った。





自室に入るとそのままベッドへダイブして、ゴロンと寝転がる。

なによ、あいつ。

久しぶりに話したと思ったら喧嘩腰でいちゃもんばかり付けてきて。
腹立つ腹立つ腹立つ!

ベッドに寝ながら手足をバタバタと動かしストレスを発散させていると、あたしの手に何かが当たった。
ふと見ると、昨日買ったあの雑誌。

あたしはその雑誌を開き、あの一番目に焼き付いた笑顔の道明寺のページを見つけると、
「あたしの前では怒ってばっかりなのに。」
と、思わず呟く。

そして、ベッド脇にあるテーブルからボールペンを取り出し、そのページの道明寺の写真の顔に落書きをし始めた。

頬には赤で渦巻きを入れて、目にはこれでもかと言うほどまつげを書き足し、おでこになんて『肉』の文字まで入れてやった。

それは見るも無惨なアホっぽい顔の出来上がり。

それを見て一人ケラケラ笑うあたしは相当性格が悪い。
でも、あいつほどじゃないと自分に言い聞かせ、更に鼻毛でも足してやろうかと思ったその時、部屋の扉がノックされ、

「おい、入るぞ。」
と道明寺の声と共に間髪入れず扉が開かれた。

「ちょ、ちょ、ちょっと、返事もしてないのに勝手に入らないでよ!」
慌ててベッドに起き上がると、

「さっきは話の途中だっただろーが。」
と近付いてくる道明寺。

あたしは咄嗟にヤバイっ!と落書き途中の雑誌を体の後ろに隠したが、その動作があまりに不自然だったのか、
「なんだよ、なに隠した?」
と、大ピンチ。

「べ、べ、別に?」

「思いっきり動揺してんだろ。」

「ちょっと、勝手に人のベッドに上がらないでよっ!」

この雑誌を見られたらもう一貫の終わり。
こんな事をして笑ってる陰険なやつだと誤解されたらたまったもんじゃない。

雑誌を体で隠しながら道明寺から逃れようとするあたしを、ベッドに上がり込みジリジリと距離を縮めてくる道明寺。

「道明寺、離れてっ。」

「隠したもん、見せろ。」

「何もかくしてないしっ。」

「背中にあるやつ、こっちに出せ。」

あたしも引かないけれど、道明寺も頑固に食らいついてくる。

こうなったら、逃げるしかない。

そう思ったあたしは、後ろ手で雑誌をクルクルと丸め込み、それを片手に握ると、思いきってベッドに立ち上がり道明寺がいる反対側から逃げることを試みた。

昔から足は早いあたし。
運動神経だって悪くない。
道明寺の横をすり抜けて、部屋から出ちゃえばこっちのもの。

そう思って勢いをつけて駆け出そうとした。

けれど、…………呆気なくあたしはこの人の無駄に長い手足に捕まり、ベッドに引き戻された。

そして、クルクルと巻かれた雑誌を取り上げられそうになり必死に抵抗するあたしと、それを奪おうと挑んでくる道明寺はベッドの上で絡み合うように寝転がる。

「そんなに見られて困るものかよ。」

「困るっ。絶対困るっ!」

「それなら、絶対見てやる。」

そんな言い合いをしながら、隣に寝転んだ道明寺の足の間に体を挟まれ身動きできないようにされ、力でこの大男に敵うはずもなく、最後には抵抗むなしく雑誌を奪われてしまった。

そして、そのまま体を拘束されたまま、
「これ、昨日発売された雑誌だよな。」
と、至近距離で道明寺の声が響く。

もう観念するしかない。
雑誌を見られたら怒られるに決まってる。

「最初に言っておく、……ごめん。」
あたしがそう呟くと、

無言で雑誌をパラパラとめくる道明寺。

体を拘束されたままで、あたしからは道明寺の顔が見えない。
二人で並んでベッドに横になり、あたしはこの人の足の間に体を拘束され、顔は道明寺の胸の辺りに押さえつけられたまま。

状況が違えば、こんな甘いシチュエーションはないはずなのに、今のあたしたちはバトル中。
パラパラと雑誌をめくる道明寺の動きが止まり、じっとそのページを見つめているのが気配で分かり、
居たたまれなくなったあたしは、もう一度、

「ごめん。つい、面白くて……、」
とどうしようもない言い訳を言ってみたりして。

そんなあたしに、
「おまえはガキか。」
と道明寺が呟くのが聞こえた。

「俺のおでこに『肉』って描いて楽しいか?」

「……めんぼくない。」

「鼻毛まで書こうとしただろ。」

「それは、その、ちょっとした出来心で……。」

もうここまで来たら全力で謝るしかない。
小学生レベルのイタズラに返す言葉もない。
どんなキツイ言葉で怒られるのか…………そう覚悟したあたしの頭の上で、

「ったく、ヤキモキさせんなよ。」
と、予想もしない言葉が返ってきた。

「……え?」
道明寺が言ったその言葉の意味が分からず、拘束されたままの体勢で顔だけ上げようとしたあたしの頭を、道明寺は片手で押さえ付けまた胸の辺りに沈める。

そして、
「恥ずいから見んな。」
と、呟いたあと、

「おまえがさっき言ってた西岡ってあいつだろ?
リゾート施設でおまえのこと食事に誘った男。
明日もあいつと飲みに行くのか?」
と、聞いてくる。

「……ん、西岡さんもいるけど。」

「…………だから行かせたくねーんだよ。」

「え?」

意味が分からず聞き返すと、あたしの体を突然ギュッと抱きしめる道明寺。

「道明寺っ。」

「おまえが必死に隠すから、あいつからの手紙かと思ったんだよ。」

「…………。」

「この間もあいつに食事に誘われて、ホイホイ付いていきそうだっただろおまえ。
…………好きだと自覚した女が目の前で他の男とイチャついてたらムカつくだろ。」

「…………。」

「…………。」

「…………。」

「おいっ、聞いてんのかよ。」

聞いてる。
さっきから道明寺の言うことを一言一句きちんと聞いている。
けれど、その内容に頭がついていかないあたし。

「……聞いてる、聞いてるよちゃんと。
でも、……どういうことか理解できない。」

そう返すあたしに、クスッと道明寺が笑ったあと言った。

「分かるように教えてやろうか?」




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 2016_08_30


Comments

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    2016-08-30 09:52  

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    2016-08-30 10:02  

Re: タイトルなし 

ありがとうございます!
わぁーーー、と勢いで書いておりますので誤字脱字がわんさかですね。。。
助かりますありがとうございました!
司一筋  URL   2016-08-30 10:06  

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    2016-08-30 10:43  

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    2016-08-30 10:45  

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    2016-08-30 10:48  

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    2016-08-30 11:07  

 

ホントに、連日の更新ありがとうございます
やった~、ついに坊ちゃんが、告白!
このまま、一気にラブラブですか?それとも、まだ波乱の展開?
体調に気をつけて下さいね、更新楽しみに待ってます
JUJU  URL   2016-08-30 12:54  

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    2016-08-30 15:51  

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    2016-08-31 02:52  

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