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彼と彼女の一年間 23





遠い昔の『初体験』も、若い頃に経験した一夜だけの関係も、そのどれもが俺の記憶にはほとんど残っていない。
相手がどんな女で、どこで知り合いそうなったのか、そんなことは重要ではなく、ただ欲求に従っただけの無意味な時間。

そんな経験しか味わったことのない俺にとって、牧野と体を合わせたこの時間は心の底から満たされるものがあった。

優しくしたいと思う反面、もっと乱れさせたいと男としてのエゴからか、無理をさせた自覚はある。
短時間に立て続けに2度も求め、全身に唇を這わせ、体位も何度も変えた。

そして、ようやく満たされたあと一時間ほど眠っただろうか、かすかに鳴り響く携帯の音で目が覚めた俺は、隣で眠っている牧野を起こさないよう気を付けながら、脱ぎ捨てたスーツから携帯を取り出した。

着信3件。どれもが西田から。
チッ…………。
パーティーを途中で抜け出してこんなことになっちまったから、西田は相当ヤキモキしてるだろう。

仕方ねぇ、少しだけ顔を出してくるか。

そう思い、ベッドに眠る牧野の側まで近づくと、むき出しになったままの肩に小さくチュッと唇を寄せる。
そして、肩までブランケットをかけてやろうと思ったそのとき、シーツにわずかに残るその小さな赤いシミに気がついた。

ん?…………血か?

どこか怪我でもしていて、そこから付いたのか?
そう思ったが、ふと、さっき感じた違和感が頭を駆け巡る。

牧野の秘部に指を差し入れた時の異様な狭さや、挿入したときに見せた辛そうな顔。
前髪が張り付くほど額に滲んだ汗。

まさか…………、
いや、それはねーだろ。

そう頭で否定してみても、さっきまでの牧野の態度すべてがそうだと物語っているように感じてやまない。

マジかよ…………、
そう思いながらもう一度眠る牧野の背中に手を置くと、それと同時に俺のもう片方の手の中にある携帯が鳴り出した。

画面には西田の文字。
牧野を起こさねぇように慌てて取ると、西田が何か言う前に
「すぐに行く。」
と、だけ言ってやる。

「今どちらに?」

「部屋だ。」

「○○様が副社長と飲みなおしたいとお探しになっています。」

「……分かった。すぐ行く。」

明日も朝からゴルフなんだからさっさと寝ろと言ってやりてーところだが、そこはぐっと我慢して脱ぎ捨てた下着に手を伸ばすと、

「……道明寺?」
と、小さく俺を呼ぶ声がした。

「わりぃ、起こしたか?」

「……ん、寝ちゃったんだあたし。」

そう言ってブランケットを胸まで引っ張りあげた牧野はベッドに横になったまま俺の方を向く。

うす暗い部屋でははっきり分かんねぇけど、青白く見えるこいつの顔は疲れたように見えて、俺は迷ったが、こいつにさっき抱いた疑問をぶつけることにした。

「牧野、おまえ…………」

「…………なに?」

「もしかして、……初めてだったか?」

俺の問いが何を意味してるのか理解するまでに数秒かかったようだが、そのあと視線をそらして

「……うん。」
と、小さく答えるこいつ。

その答えを聞いて、俺はベッドに座ったまま思わず頭を抱えた。

「マジかよ…………はぁー……」
咄嗟に漏れる本音。

「ごめんっ、言うタイミングがなくてっ。」

「…………。」

「ごめん……。」

「バカっ、おまえが謝ることじゃねーよ。」


どこまで俺はバカなんだよっ。
初めから、感じた違和感をきちんと確認してやれば、こんな風に抱いたりしなかった。

初めてなら、初めてらしく、もっとやりようがあっただろ。
痛かったかもしれねぇ。
もっとゆっくり挿れてやればよかった。
慣れてねぇのに、何度も無理な体勢で揺らしちまった。

さっきまで満たされていた気持ちが一気に後悔へと突き落とされる。
戻れるものなら数時間前に戻って、もう一度優しく抱いてやりたい。

そう思うと、ますます自己嫌悪に陥る俺。
そんな俺のどん底な気持ちなんてお構いなしに、また手の中の携帯が鳴り出した。

「んだよっ!」
思わず怒鳴って電話に出ると、

「そろそろ戻ってきなさいよ。」
と、滋の声。

「分かってる。」

「あたし一人じゃ限界なんだから、遊んでないでさっさと来て。」

「すぐ行く。」

そう言って電話を切ると、ベッドに起き上がった体勢で牧野が言った。

「仕事でしょ?急いで行って。」

「…………ああ。
おまえは俺が戻るまでここで寝てろ。」


今はそれだけ言うのがやっとだった。
どうやって、こいつに謝って体を気遣ってやればいいか言葉が出てこない。
心底大事にしたいと思った女なのに、欲求のまま抱いた自分は今までと何も変わっていなかった。



「すぐ戻る。」
もう一度、牧野にそう告げて精一杯優しく頬を撫でた。



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 2016_08_25


Comments

 

あ~、これは、誤解させたね、初めての面倒くさい奴、滋の声も聞こえちゃって、遊びで…
必要なことは、口にしないで、駄目じゃん、部屋に帰ったら、居ないんじゃない?
JUJU  URL   2016-08-25 09:04  

 

誤解したよね〰 上手く恋愛できない司くん… 一悶着ありそうで待ち遠しいです‼
いつもドキドキさせられて 楽しいです✨
ありがとうございます➰✨
nao  URL   2016-08-25 09:13  

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    2016-08-25 10:27  

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    2016-08-25 10:49  

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    2016-08-25 12:47  

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    2016-08-25 17:17  

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