彼と彼女の一年間 19





数年前から仕事の大半の時間を費やしてきたリゾート施設がようやく完成した。
1週間後にセレモニーパーティーが開かれる。

全国から引き抜いた優秀なスタッフと、パーティーのためだけに駆り出された本社のスタッフを前に軽い挨拶をしたとき、その中にあいつを見つけた。

牧野……おまえも来てたのか。

仕事場でこうして顔を合わせるのは初めてで、邸でもあの夜以来、変にこいつを意識してる自分がいる。

そんな自分から抜け出したくて、パーティーまでの1週間はこのリゾート施設に泊まることに決めたと言うのに、おまえがここに来てるなんて……。

ホテルやレストランで打合せする度に視線は牧野を探している。
逆に、すれ違うほど近くに来ても、何か声をかけようかと迷い不自然に視線を逸らしてしまう。




今日も、パーティーで出す予定の料理とワインを決めるため滋とレストランで視察をしていると、レストランを出た中庭で、立ちつくす牧野の姿を見つけた。

うつ向いたまま動かねぇ。
少しだけ見える横顔は、目をつむり辛そうに見えた。
具合でもわりぃのかよ。

そう思って牧野から目が離せない俺は、滋の問いかけにも無視したままあいつを見つめていると、
その視線に気づいたかのように牧野が顔をあげた。

その瞬間、磁石で引き寄せられたように重なる俺たちの視線。



なんでだよ…………、
なんで、おまえは俺の胸をそんなに苦しくさせる?
あの夜以来、絡まないように避けていた視線が、たった1回重なっただけで、心臓が痛ぇほどうるさく鳴る。


俺はその理由が知りたくて、ワイングラスをテーブルに置くとレストランを出ていた。

そして、中庭にいる牧野に近付くと牧野も俺をじっと見つめてくる。
その目が何となく赤いようで、

「具合でもわりぃのか?」
と、柄にもなく優しい声が出た。

「……ううん。」

「こんなとこで立ち止まってどうした?」

そう聞く俺に、ばつが悪そうに目を泳がせたあと、
「ヒールが……慣れないヒールできたから足が痛くなっちゃって」
と、相変わらずの答え。

「ったく、仕事場に慣れねぇ靴履いてきてんじゃねーよ。」

「だって……………………」

「……だってなんだよ?」

「だって、……あたしだってヒール靴きちんと履きこなせるようになりたいしっ!」

そう言って突然軽くキレてるこいつ。

「何、怒ってんだよ。」

「怒ってないし。」

「機嫌わりぃな。」

「……あんたのせいっ!」

怒ってねぇって言っておきながら俺のせいだとキレるこいつが無性にくすぐったくて、

「そういうことにしといてやるよ。」
と、自分でもらしくねぇと思うほど甘い声が出た。


他愛のないほんの数分の会話なのに、全身が満たされていく。
小さいこいつを見下ろしながら、滋と並んで歩いたときの違和感がなんなのか今更気付く。
俺は無意識にこいつの存在を探して、重ねて、思い出そうとしていたと。


「……牧野?」

「ん?」

「…………パーティーが終わったら邸に戻る。」

「…………うん。」


俺の言葉に不思議そうに頷くこいつに、
俺は何を伝えたいのか。

それは、俺自身もたった今気付いた気持ち。




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 2016_08_20


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    2016-08-20 11:49  

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    2016-08-21 13:59  

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    2016-08-22 06:39  

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