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彼と彼女の一年間 17





後になって考えると、とんでもないことをしてしまった自覚は痛いほどある。

あのパーティーの夜、道明寺が帰ってくるのをジリジリとした気持ちで待っていた。
そして日付が変わる頃、物音が聞こえリビングを覗くと、冷蔵庫の前でペットボトルを飲みながら大きくため息をつく道明寺の姿を見て、勝手に体が動いていた。

「道明寺……」

そう呼び掛け、背中に手を置いたあと、
こともあろうか、背中に抱きつくなんてっ!

あたしのばかっ!
何やってんのよっ!


冷静に考えれば「スキンシップ禁止令」が出されてる相手にそんなことをして怒られない訳がないのに、あの時のあたしはどうかしていた。

パーティーが終わって一人先に邸に戻ったあたしは、紅茶を淹れてくれたタマさんから「坊っちゃんとはどうです?」なんて聞かれ、そのあと長々と道明寺のことをタマさんから聞かされた。

幼少期の孤独だった日々や、勉強やマナーの英才教育漬けの毎日。
F4以外には心を開く友達を作らず、姉の椿さんが唯一家での話し相手だったこと。
社長との確執が年々激しくなり、社長への不満をぶつけるかのように外での生活が荒れていった。
最近は自分の置かれた立場を理解したのか諦めたのか、何の感情も表さず過ごす毎日。

そんな道明寺のことを聞いて、あたしは胸が苦しくなった。
学生時代の苛めや暴力は到底許されることではないけれど、金持ちの道楽息子で遊び歩いている悪ガキだとばかり思っていたあいつが、小さな頃から孤独で『道明寺』という名前に縛られて生きてきたのかと思うと、少しだけ心が痛んだ。

だからか、
あたしはあんな抱きつくなんて馬鹿げた行動を取ってしまったのだ。


幸い道明寺は酔っていたからか、その事を覚えていないようで、そのあと顔を合わせてもその事には全く触れてこないのが唯一の救い。

あたしも合わせる顔がなく、今まで以上にあいつを避ける日々で、もうその事が忘れかけていた頃、会社の上司からある事業のプロジェクトチームへあたしが参加することを聞かされた。


それは、数年前から大河原建設と合同事業で建設していた高級リゾート施設の完成が間近になり、マスコミや関係者を招いたお披露目会が開かれることなった。
それに併せ、各部署から数名づつ英語が話せる人材を接待要因として送られるというもので、それにあたしが選ばれてしまったのだ。

「えっー、なんであたしなんですかっ!」

「だって、しょうがないでしょ、牧野さん。」

「英語が話せる人が必要なら、西岡さんがいるじゃないですか!」

「それがね、その日は西岡くん出張なんだよ。」

うちの課のエースと言えば3つ年上の西岡さん。
高校までイギリスで過ごしたバイリンガル。
その西岡さんがいないなんて…………。

苦痛に歪む顔で課を見渡してみても、誰も助け船を出してくれる気はないらしく、
「ごめんね、牧野さん。
牧野さんの英語でも充分通用するから。」
と、微妙な慰めを貰ったぐらいにして。

結局、うちの課からはあたしとひとつ下の山下さんがお手伝いで行くことになった。
山下さんは自分から手をあげたのだ。
その理由は、

「だって、このプロジェクトの総指揮官は道明寺司ですよ!生で見る大チャンスですからっ。」
と、ノリノリ。

道明寺との婚約話が噂になった当初は職場でも大騒ぎになった。
今までそんな態度も微塵もみせなかったあたしが、まさか社長の息子と婚約なんて……。
そんな噂話で持ちきりだった職場も、今では全くその話題にも触れてこない。
婚約話が出てから4ヶ月、その後何も進展しない噂に、彼らは婚約話がデマだったと結論付けたらしい。

誰もあたしが道明寺邸で暮らしてるなんて知らないし、公の場で二人で出掛けたのはあのパーティーくらい。
しかも、婚約者だと紹介したのはほんの数人。

職場の人たちは、婚約話があったことさえ忘れかけているはず。



「プロジェクトの総指揮官が道明寺なの?」

思わず山下さんに聞き返すと、

「そうですよ。先輩と噂になったあの道明寺司です。今度のお披露目会も彼が仕切るらしいですよ。」
と、嬉しそうに話す。


そっかぁ。
知らなかったな。
一緒に暮らしてるとはいえ、あいつがどんな仕事をしてるかなんて知らないし、顔さえもまともに合わせていない。

あたしはあのパーティーの夜以来、少しおかしい。
道明寺を変に意識しちゃう自分がいる。

触れた背中の温かさと、抱きしめた時に感じた逞しい体。
そして、体を離そうとした時に、ギュットあたしの手を握り返してくれた大きな手。
「心配すんな…………もう寝ろ。」
そう優しく言ったあいつの低い声。


思い出すだけで、顔が火照るように熱い。
どうしちゃったんだろ、あたし。




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