彼と彼女の一年間 15





パーティーでの数時間、これが道明寺と過ごすはじめての長い時間だった。

高校時代に抱いたこの人への嫌悪感は今も健在で、乱暴な言葉に横暴な態度は腹立つこともあるけれど、意外とあたしはこの人といることが苦ではない。

ホテルの入り口に道明寺が姿を見せてくれたときは心底ホッとしたし、慣れないヒールに苦戦するあたしの歩調に合わせて歩いてくれる優しさにも心がやわらいだ。

自他ともに認める食いしん坊のあたしをからかうように、お皿にたくさん料理を取ってくれるような一面もあり、この人と過ごしてあたしははじめて笑顔を見せたり、この人のはにかむ顔を見たような気がする。



パーティーが始まって二時間ほどした時、料理もたくさん食べ、美味しいシャンパンも飲み少し体がフワッとしてきたあたしは、
「お手洗いに行ってくる。」
そう道明寺に告げてパーティー会場を出た。

トイレに行く途中、広いバルコニーがあり少し涼もうと立ち寄ると、男性二人の先客がいた。
それを見てあたしはクルッと引き返そうとしたとき、その二人から
「道明寺……」というフレーズが聞こえ、咄嗟に立ち止まった。

二人はあたしの存在に気付かず、そのまま話している。

「道明寺司がこんなに長くパーティーに顔だしてるのは珍しいな。」

「確かにな。
いつもなら挨拶だけしてすぐ帰るのに、今日は○○会長が来てるからだろ。」

「この間のあの噂は本当らしいな。
会食中の料亭で会長を怒らせて殴られたんだって?」

「ああ、そうらしい。
あの会長も強引な取引内容を持ちかけて、それがダメなら今までの取引からも手を引くなんて横暴なこと言ったんだろ?それで道明寺司がキレたみたいだぞ。
でも、すぐに道明寺社長からお詫びしろと言われて頭を下げた。
気の毒だけどしょうがねーか。あのたちの悪い会長を怒らせたらめんどくせーからな。」


そんなことがあったなんてひとつも知らなかった。
今思えば、二週間ほど前、遅くに帰ってきた道明寺がリビングのソファにスーツのまま寝ているのを見かけたことがある。
珍しい……と思って近づくと、かすかに唇の端が切れていた。
そして、ソファ横のテーブルには飲みかけのウイスキーのグラスが。

飲み歩いて喧嘩でもしたのか?
なんて一瞬思ったけど、道明寺がかすかに動いたので、あたしは逃げるように自室へと戻った。

たぶんあの日のことだろう。
道明寺が殴られた…………。
いつも殴る方の立場にいると思っていたあいつが、ビジネスの世界では殴られてそれでも頭を下げるなんて。

あたしの思い描く道明寺という男の像が今日は砂山のようにゆっくりと崩れていくのを感じながらあたしはその場を離れた。




パーティー会場に戻ると道明寺と目が合い近付いてくる。

そして、
「遅かったな。」
そう言った後、

「このあと少し付き合うことになったから先に邸に戻ってろ。」
と浮かない顔で言う。

「仕事?」

「まぁ、そんなところか。」

そう言う道明寺の視線の先には白髪の老人。
…………たぶんさっきの人たちが言っていた会長というのはあの人のことだろう。

咄嗟に心配になったあたしは、
「大丈夫?」
と聞くと、

少しだけ目を細めて、
「何がだよ。」
と道明寺笑った。




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 2016_08_05


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