彼と彼女の一年間 11






進からとんでもなく分厚いご祝儀の袋を預かると、あたしは邸へと急いだ。

日曜日の夕方、邸の道明寺の部屋をノックしても返事はない。
数えきれないほどの部屋数がある邸のどこかにあいつはいるのか……。
探す手段もなく廊下をひたすら歩いていると、

「何か探し物かい?」
と、タマさんの声。

「あ、タマさん。
道明寺って邸にいます?」

「坊っちゃんなら、仕事に行ってるよ。」

「えっ、日曜なのに?」

「坊っちゃんに曜日は関係ないよ。」

確かに、この邸に来てからずっと、週末も道明寺と顔を合わせることはなかった。
でも、仕事に行ってるとは思っていなかった。
金持ちのどら息子といえば、毎夜飲み歩いて豪遊しているイメージを持つあたしにとって、あいつも例外じゃないと思っていたから。

その後、待っても待っても道明寺は帰ってこない。
やっぱり遊びに行った?
そんな疑問が頭をよぎった頃、部屋の扉が開かれ、スーツ姿の道明寺が現れた。

リビングにいるあたしの存在に少しだけ驚いたようだけど、そのまま何も言わず自室へ行こうとする道明寺に、
「待って。少し話があるの。」
と声をかけると、

「フッ……」と、鼻で笑ったあと、
「また何か頼みごとかよ。」とからかうように言った。

「これ、返す。
今日が弟の結婚式だって、どこで知ったの?」
ご祝儀袋を差し出しながらそう聞くと、

「まぁ、色々な。」
と、質問をはぐらかす道明寺。

「こんな大金…………。
受け取れないし、進からも返してきて欲しいって頼まれたから。」

そう言ってもう一度道明寺の胸元へご祝儀袋を突きつける。
進からこの袋を預かってからずっと考えていた。
道明寺はどういう意味でこれを用意したんだろう。
金持ちの世界ではこれが当たり前なのか。

道明寺と進は一度も顔を会わせていない。
世間ではあたしたちは婚約したことになっているとはいえ、現実は、社長はパパとママに挨拶に来てくれたが、道明寺本人とうちの家族は未だに顔合わせさえしていない。



「とにかく、これは受け取れない。」

「お前にやったんじゃねーよ。弟の結婚祝いだ。」

「そうだけどっ、こんな大金、受け取る理由がない」

「子供が生まれれば何かと金がかかるだろ。」

「…………どうして……子供が生まれることまで知ってるの?」

道明寺からの思いがけない言葉に驚くあたしは、すぐにその情報の出所に行き着く。

「社長から聞いたの?
もしかして、このお金も社長からの指示?」

「あ?ババァから?」

「そうなの?」

聞き返すあたしに、さっきまで淡々と話していた道明寺がなぜか不機嫌な顔つきになる。

「ババァは知ってたのかよ。」

「……え?」

「弟の結婚式のことも、子供が生まれるっつーことも、ババァには話したのか?」

道明寺の突然の不機嫌モードに戸惑うあたし。

「っつーか、おまえさっきから金は返すだの、受け取れねぇだの言ってるけどよ、おまえの方が非常識じゃねーのかよっ。」

「……は?」

「身内が結婚式上げるのに、祝いの金もやらねぇほど俺はケチじゃねーよ。
確かに桁は多かったかもしれねーけど、弟の結婚式上げるためにおまえも苦労したんだろ?
それを知ってて見て見ぬふりするほど小さくねぇ。」

「……身内って…………」

道明寺が発したその言葉に違和感があり、思わず口に出すあたしに、道明寺はますます不機嫌な声で言った。

「結婚相手の家族だろ?
嫁になる女の弟にご祝儀渡して文句言われる筋合いはねーよ。」


結婚相手…………。
家族…………。
嫁…………。


道明寺の口から次々と出てくる不可解な単語。


折を見て、社長に婚約解消の話をしに行こうとタイミングを見計らってるあたしとは反対に、この人の口からは『結婚』という文字まで出るなんて。


ねぇ、道明寺。
あんたはもしかして、ほんとにあたしと結婚するつもりなの?


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 2016_08_01


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