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彼と彼女の一年間 8





あの女の本性を暴く。
その目的のために、今日の俺はいつもより一時間早く起床し、ダイニングルームへ向かった。
俺の予想通り、そこには朝食を食べる牧野の姿。

俺が入っていくと、使用人たちがギョッとした顔で慌てて朝食の用意をはじめ、タマは、
「今日は随分と早いお目覚めですね。」
と、朝から嫌みたっぷりで出迎えた。

それを無視して俺は牧野の正面に座ると、俺のことをチラッと見た後、
「おはようございます。」
と言うこいつ。

「……おう。」
俺はそれに答えた後、
「……おまえに渡すもんがあるから、部屋に戻ったらリビングで待っててくれ。」
そう伝え、タマが運んできたコーヒーに口をつける。

「あたし、すぐに出勤しなくちゃならないんで、夜でもいいです?」

「夜は俺が遅くなる。」

「なら、明日で。」

「急ぎの用だ。」

「…………わかりました。」

お互い視線を合わせることなく交わされる会話。
こいつがこの邸に越してきた日に話して以来、2週間ぶりだろう。

朝食を終えた牧野は、バカ丁寧に使用人たちに挨拶をしてダイニングを出ていく。
それを見送ったタマが俺の側まで来て、
「もう少し婚約者らしい会話は出来ないものでしょうかね。」
と、今日2発目の嫌味。

「うるせぇ。」

「そんな態度だと、あっという間に彼女に逃げられますよ坊っちゃん。」

「ふん…………。」

タマの言葉を鼻で笑う俺に、

「タマは、坊っちゃんには悪くない相手だと思いますけどね。」
と、言い、
「早くしないと彼女、出勤ますよ。」
と、俺の手からコーヒーカップを奪い取った。







部屋へ戻るとリビングに出勤準備を整えた牧野が待っていた。

「あと5分しか時間ないから早く。」
と、俺の顔を見るなり急かす。

「あ?まだ出勤時間まで余裕あるだろ。」

「今日、朝一で外勤だから、その前に打合せしたいことあるし。」
と、腕時計を見ながら険しい顔。

そんなこいつに、俺はポケットから財布を取り出すと、その中からカードを1枚出し牧野へ差し出した。

「おまえの自由に使え。」

「……は?」

「支払いは俺の口座から引き落とされる。
限度額も無制限。
何を買っても干渉しねぇから、おまえの好きに使え。」

そう言って渡したカードを、しばらく見つめた後、こいつの口からは、
「いらない。」
と一言。

「あ?」

「必要ない。あたし、自分のカード持ってるし、普段は現金派だから滅多にカードは使わないから。」
と、言い捨て鞄を肩にかけ出勤モードに入る。

「待てって。
自由に使っていいんだぞ?
食事も買い物もこれだけあればどこでも使える。」

そう言って顔の前にカードを付き出してやっても、
「いらないって。」
と、そっけねぇ。

相変わらずこの女はわかんねぇ。
俺名義のブラックカードを拒否する女がこの世にいるのか。
金が有り余ってる女ならまだしも、給料ギリギリの生活をしてる女に断られたくねぇ。

「……ババァ、いや、お袋からおまえに渡せって言われてんだよ。」

「……社長から?」

「ああ。」

咄嗟に出た嘘に牧野が食いついた。

「婚約者としてパーティーや食事に誘われる機会も増える。
その時に現金の持ち合わせがねぇってことにはならねーだろ。
予備だ、予備として持ってれ。
さっきも言ったように、おまえが何に使おうが干渉しねーし、どれだけ使っても困らねぇぐらいの金はある。
だから、財布にいれとけ。」

そう言ってもう一度手渡すと、

「…………憎たらしい男。」

と、聞こえるか聞こえないかの呟きを残し、
牧野はカードを受け取り部屋を出ていった。



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 2016_07_28


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