彼と彼女の一年間 5






それにしても、おかしな女だった。

レストランでの顔合わせ。
ざっと見た感じ、事前に資料にもあったように、どこから見ても普通のOL。
シンプルな服装と装飾品は時計だけ。
靴や鞄もブランドものではなかった。

そして、帰りの車でのあの発言。
思い出して、おもわず笑えてくる。
見合い?
バカかあいつは?

自分のおかれた立場がこれっぽっちも分かっちゃいない。
ババァとどんな話のやり取りがあったかなんて知らねぇけど、ババァがその気なら、この結婚は決まったようなもの。

それに、
俺はあの女が気に入った。

何が不満なのかは知らねぇけど、あいつもこの結婚を喜んでいないことは態度で分かる。
自分が俺の相手に選ばれたと喜び、ベタベタとまとわりつく勘違い女だったらこの先の結婚生活に支障が出るが、あの女ならその心配はなさそうだ。
お互い干渉せず、戸籍だけの関係でいられるだろう。




レストランでの顔合わせから3日後、ババァからオフィスに呼び出された。
開口一番、
「どうやら相当嫌われてるようね。」
と苦笑混じりに言ってくる。

「あ?なんのことだよ。」

「牧野さんよ。
あれから毎日のようにこの話はなかったことにしてくれって言ってきてるわ。」

「ふん……図々しい女。」

泣いて喜ばれることはあっても、断られる筋合いはねぇ。

「彼女、かなり頑固なところがあるようで、このままでは平行線のまま。
順番が逆になるけど、次の手に打つわ。」

ババァはそう言って俺をじっと見つめた後、
「今日にもマスコミに情報を流します。」
と言った。

「マスコミに?」

「ええ。
正式なものではないけれど、わずかな情報でも食いつくはず。
そうすれば、牧野さんも今の生活は続けられなくなり、邸で過ごす方が楽なはずよ。」

なるほど。
嫌がるあいつを邸におびき寄せるっつーわけか。
それにしても、どうしてババァはここまで……

「あの女にどんな秘密がある?」

「どういう意味かしら。」

「俺が見た資料にはどこにもあいつと結婚するメリットは見つからなかった。
それどころか、イメージダウンにもなりかねない。
それなのに、どうして。」

他にどんな秘密を隠してる?
そう思いながらババァに問う俺に、
フッフッフッ……と笑った後嬉しそうに言った。

「目に見えるものがすべてじゃないわ。
目に見える財産もあれば、見えない財産もある。
あの子が持っているものは、あなたが持っていない唯一の財産かもしれない。」

そう意味不明なことを言った後、

「婚約期間は1年。
その間に、どうしても彼女の気持ちが変わらなければ私も諦めます。
すべてはあなたに懸かってるわよ。
楽しみにしてるわ。」

そう言って立ち尽くす俺を置いたままババァは部屋を出ていった。



その日の午後、昼からのワイドショーを狙ったかのように俺の婚約話が世間を賑わした。
相手は英徳高校のひとつ後輩で、道明寺HDの社員。
実家はごく一般的なサラリーマン家庭。
この条件に当てはまる人物を探し出せば、あの女にしか行き当たらないというババァの巧妙な情報操作。
そして、こういう話が大好きなマスコミ連中はこぞってあいつのシンデレラストーリー騒ぎ立てた。





レストランでの顔合わせから5日目の週末。
マスコミに実家もマンションも張られて行き場を失ったあいつが邸に越してきた。

そして俺たちの一年間が始まった。





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 2016_07_25


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    2016-07-25 10:56  

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    2016-07-25 16:05  

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