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彼と彼女の一年間 4





動揺を隠しきれないあたしに対して、目の前の親子は何事もなかったように食事を進めていく。

「牧野さん、お口に合わないかしら?」

次々と運ばれてくるコース料理を大方残したままお皿が片付けられていくあたしに社長がにっこりと笑いながら聞いた。

「い、いえ、すごく美味しいです。」

「そう?良かった。
ここのシェフは私の知り合いなのよ。
NYに本店があって、ここの味が恋しくなったらNYまで行かなくちゃならなかったけれど、昨年日本にもお店を出したからいつでも食べたいときに楽しめるようになったわ。」

「……はぁ。」

あたしが聞きたいのはそんな話じゃない。
社長はこのお見合いをどういうつもりでセッティングしたのだろう。
仮にあたしがこの話に乗ると言ったら、あたしを家族として受け入れるというのだろうか。

考えれば考えるほど、答えが見つからない。
当の道明寺司本人は一言も口を開かずあたしと目を合わせようともしない。
この態度こそが、このお見合いに対するこの男の答えなんだろうと、あたしは少しだけホッとした。


味も会話の内容もほとんど分からないまま約一時間の食事が終わり店を出ると、店の前に2台の車が待っていた。

その1台に社長が乗り込みながら、
「私は予定があるからここで失礼するわ。
司、牧野さんを自宅まで送ってあげて。
牧野さん、今後のことは司に話してあるから司から聞いてちょうだい。」
そう言って軽く片手をあげて車へと消えていった。

それを唖然と見送っていたあたしに、後ろから
「おいっ。」
と声がかかった。

「……え?」

「さっさと乗れよ。」

「…………。」

「モタモタしてると置いてくぞ。」

そう言って自分はすでに車に乗り込んでいるこの男。
置いていってもらえるとこちらとしても有り難い。
でも、あたしが乗り込むのを扉を開けて待ってくれている運転手さんがいる。

仕方なく渋々車に乗り込むと、道明寺はもうすでに何かの書類に目を通しながらあたしの存在は無視。
そっちがその態度なら、こっちだって好き好んで話したくもない。
車が動き出した後も窓の外に視線を泳がせ早くマンションに着かないかとその事ばかり考えていた。

車が動き出してから10分ほどたったとき、
「おまえペットは飼ってねーよな?」
と道明寺から突然の質問。

「え?……飼ってないけど。」

「じゃあ、特に内装の必要はねーな。
いつぐらいに越してくる?」

「…………は?」

全くといっていいほど会話の意図が理解できない。

「ババァの話だと、いや、お袋の話だと来週にはマスコミに婚約を発表する予定だ。
マスコミに知られれば今まで通り生活するのは無理だろな。
だから、発表の前に邸に越してきた方が俺的にも煩わしい問題が減るから、そうしてくれ。」

婚約……マスコミ……引っ越し…………。
この男は何を言っているのだろうか……。

「引っ越し……?……誰が?」

思わずそう口にしたあたしに、今日はじめてこの男は目を合わせた。

「……おまえとダラダラ話してる時間はねーんだよ。
引っ越しは今週末ってことでいいな。
俺は仕事でいねぇから、帰ってくるまでに自分の部屋に荷物片付けておけ。」

「………………。
え?……ちょっと待って、引っ越しって、なんで?あたしが?」

「…………。」

ようやく少しだけ話が読めてきたあたしは、もう一度道明寺にそう聞くと、もうこの人は書類に視線を落としあたしの話なんて聞いていない。

「ねぇ、ちょっと、…………道明寺っ!」

完全に無視するこいつに思わず怒鳴るあたし。
すると、最後の呼び捨てが効いたのか再びあたしの方を見た。

「どういうことかちゃんと説明してよっ。
あたしはあんたとお見合いをすることに同意はしたけど、婚約とか引っ越しとかそんなの全然聞いてないっ。」

そうまくし立てるように言ったあたしに、なぜかこの男はクックックッ……と笑い出した。

「おまえ、頭おかしいんじゃねーの?
見合い?バカかっ。」

「は?」

「そう思ってるのはおまえだけだ。
もうすでに俺とおまえは婚約したも同然。
あとは発表待ち。」

「どーしてそうなるのよっ。
今日はじめて顔を合わせてまだ一時間しかたってないのに。」

「1時間だろーが、1分だろーが関係ねーよ。
ババァがおまえを俺の結婚相手に選らんだっつーことは、もう逃げられねぇってこと。」

淡々とそう話すその内容は現実味を全く帯びていないのに、その世界へとズルズルと引き連れられていく恐怖心だけが残る。

「あんたはそれでいいの?
こんな時代遅れな結婚なんて。」

昔、死んだ祖父から聞いたことがある。
祖母とは19の時に見合いをし、次に会ったのは結婚式当日だったと。

「時代遅れ?
クックック……おまえこそなんにも分かってねーな。」

「え?」

「俺らの世界じゃこれが当たり前だ。
結婚はビジネスでしかねーからな。
お互い余計な詮索はしねーで、利益だけを考えよーぜ。」


利益…………、
この男がいう利益とはなんだろう。
あたしにとってこいつと結婚する利益、そして、こいつがあたしと結婚する利益。

どう考えても……見つからない。

そうこうしているうちに、車はあたしのマンションの前に。
運転手さんが素早く扉を開いてくれて、まだまだ話したいことがあるのに、降りなきゃいけない雰囲気。

でも、この男とはこれ以上会話にならないと判断したあたしは、車をおりた。
すると、そんなあたしに道明寺が言った。

「週末、業者に荷物運ばせるから、用意しとけ。」




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    2016-07-25 07:05  

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