彼と彼女の一年間 3






いつかはこの日が来るだろうと覚悟はしていた。
だから、ババァから電話で
『あなたに会わせたい女性がいる。』
といわれた時、とうとうこの時が来たかと妙に冷静な俺がいた。

生まれたときから道明寺財閥の跡取りとして育てられ、人生に選択の自由なんて与えられていなかった。
その事に反発して荒れた時期もあったが、今はこの運命に感謝してる。

親父とお袋から受け継いだDNAは健在で、仕事においては自他共に認めるセンス。
道明寺HDの副社長に就任して以来、かなりの大きな仕事もこなしてきた。

そして、自分の身を道明寺に捧げると決意してからはこの日が来るのを覚悟していた。
それは、政略結婚。

その事に俺自身なんの不満もない。
会社のためになるなら、ベストな方法だ。

元々、女に対して興味はない。
物心付いたときからいずれ俺は政略結婚すると分かっていたから、特定の女を作ることもしなかった。

……といえば聞こえはいいが、
実際は、27歳になる今まで本気で惚れた女などいなかった。
体だけ重ねても、顔も名前さえも覚えていない。

そんな俺のことを総二郎とあきらはいつもからかうが、そんなのどうだっていい。
どうせ俺に待ち構えてるのは、政略結婚なんだから。




ババァから電話で『会わせたい女性がいる』と言われた後、メールで相手の詳細が送られてきた。
そういうところも事務的で笑える。

そして、会議の資料でも開くような気持ちでそのメールを開き読み進めていくうちに、自然と眉間にシワがよる。

ん?
なんだ?
「これが俺の相手か?」
思わず口にしちまうほど、俺の想像とはほど遠い女のプロフィール。

職業はまさかの道明寺HDの社員。
実家がどこかの企業かと思ったが、聞いたこともねぇ中小企業のサラリーマンだ。

自宅も両親は都内の築15年の中古住宅で、本人は会社から駅6つの賃貸マンション。
どこにも不動産の情報がないということは地主でもないらしい。

読めば読むほど謎が深まる。
この女と結婚して、どんなメリットが?

でも、資料の最後にババァから、
『牧野さんには結婚の了承を得たので、○○日の7時に○○レストランに来るように。
くれぐれも失礼のないように。』
と、ババァの本気が伺える一文。

俺はその一文を読んで、はじめて相手が牧野という名だと知った。






*******************

あたしのメールボックスに2通目のメールが届いたのは、社長室に呼ばれてから3日後のことだった。

またしても、送信者は『社長室』
恐る恐る開いてみると、明日の7時に○○レストランで顔合わせをしたいと書いてある。

もちろん、それはこの間お願いされたお見合いの事だろうと分かり、はぁーーー、と思わず深いため息が漏れてしまった。

結局、お見合いの相手が誰かは聞けなかった。
でも、家に帰ってから冷静に考えてみると、社長の紹介で会う相手を無下に断ることが出来るだろうか。

断ること前提なのは申し訳ないけれど、自分の性格は自分が一番知っている。
恋愛体質じゃないあたしが、お見合いというシチュエーションから始まる関係を発展させる自信は全くない。

それでも、ここまで来たら行かないわけにはいかない。


次の日、メールにあったレストランへ時間よりも
大幅に早く到着した。
はじめて来る場所を確認しておきたかったし、はじめてするお見合いに体がじっとしていられなかった。

手持ちの一番上等なワンピースに身を包み、それに合う鞄は安いながらも会社の側にあるデパートで新調した。
せめて、社長の顔だけは潰せない。
粗相のないようにしなくては。



そして、待ち合わせの10分前。
レストランの扉を開け、道明寺の名を告げると、店の一番奥へと案内され、キャンドルが灯る丸テーブルへと案内された。

席は3つ。
ナイフやフォークがずらりと並ぶテーブルを見て必死にマナーの確認をするあたし。
そんなことに必死になっていたあたしの耳に、

「お待たせしたわね。」
と、社長の声が響いた。

「っ!いえ、あたしも今来たところで。」
そう言って慌てて立ち上がったあたしは、社長の隣にいる人物を見て、息が止まった。

…………道明寺 司?

何年ぶりだろうこの人を見るのは。
会社の副社長だというのに、実際に見る機会などなく、この人をなまで見るのは高校の卒業以来。

そして、あたしのこの人への印象は……最悪なものでしかない。
高校の時は、赤札という馬鹿馬鹿しい遊びを立ち上げ、弱いものを常に苛めていた。
幸いあたしはその餌食にはならなかったけれど、餌食になった学生が何人も学園から去るのをあたしは見てきた。

尊敬する社長の唯一の汚点といえば、この息子だろう。

そんな奴がどうしてここに?
いや、…………まさか…………、


必死にその疑問を打ち消そうとしているあたしに、社長は悪魔の宣告をした。



「牧野さん、あなたの婚約者になる道明寺司よ。」



その言葉に、あたしは一番端にあるフォークを床に落としていた。



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 2016_07_23


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    2016-07-23 11:37  

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    2016-07-23 11:49  

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    2016-07-23 18:55  

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    2016-07-24 23:51  

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