FC2ブログ

彼と彼女の一年間 2





『牧野さん、結婚する気はあるかしら?』


社長室に呼ばれ、張り裂けるほど緊張していたあたしに、楓社長は思いもよらないことを聞いた。


「…………え?」

「あなたもそろそろ結婚適齢期よね。
お相手はいらっしゃる?」

「いえ…………いえいえ、……いませんけど。」

「そう?じゃあ、いい人を紹介するから結婚してみない?」

「へ?……いや、あたしはまだ、そのぉ、」

「何か問題あるかしら。」


何か問題あるかしら……って、問題大有りだっつーの!
まだ、恋愛さえもまともにしたことないっていうのに、突然『お茶でもどう?』なんてノリで『結婚してみない?』なんて冗談にも程があるっ。



「あのぉ、でも、まだ仕事を覚えたばかりですし、結婚は…………」

「大丈夫よ。仕事の方はこのまま続けて貰いますし、その方が私も助かるわ。」

「いえ、でも、…………来年弟の結婚を控えているので金銭的に、」

弟の結婚話を持ち出して暗に結婚は考えていないと伝えたところで、

「心配しないで。あなたは身一つで来てもらって構わないから。」

と、バッサリあたしの抵抗は切り捨てられる。

どうしたものか。
こんな話をされるなんて夢にも思ってなかった。
どうやって、この『見合い話』を断ればいいのだろう。

ん?お見合い……?
そういえば、さっきから社長の言葉に『見合い』という言葉は一言も出てきていない。
それどころか、すべてのハードルをなぎ倒して『結婚』と…………。


「あのぉ、社長。
その『お見合い』相手という方はどちらの方でしょうか?」

あえて、『お見合い』という言葉で質問したあたしに、社長は数秒あたしを見つめたあと、

「フフっ……フフ……アハハハハ……」
と、はじめて聞く甲高い声で豪快に笑った。

「あのー、……あたしなんかおかしなこと言いましたか?」

「アハハ……いや、いいのよ。
牧野さんって意外と古風なタイプなのね。」

「へ?」

「今時お見合いだなんて若い人でもやるのね。」

「…………。」

完全に話が噛み合わない。
見合いを進めるためにあたしをここに呼んだのは社長の方でしょっと突っ込みたくもなる。
でも、尊敬する人を前に、そんなことを言えるはずもなく、出来るだけ丁重に丁重に。

「社長、申し訳ありませんが、私はお見合いするつもりはありません。
仕事もようやく慣れてきたころですし、今は恋愛よりも仕事を、」

そう言って深く頭を下げたあたしに、
「牧野さん。」
と、社長の凛とした声が部屋に響いた。

「牧野さん、私はあなたがいいの。」

「……え?」

「あなたが英徳高校に入学してからずっとみてきました。
初めは一般入試で入ってきた成績優秀な子がいると理事長から聞いて興味を持ったのだけど、あなたの頑張りは私の想像を越えていたわ。
決して裕福なご家庭ではないのに、安くない英徳の授業料も自分で働いて大学までの7年間、苦労してやり遂げたのも見ていました。
そして、自らこの道明寺HDを選んでくれた。
私はあなたしかいないと思うの。」

「社長……」

まさか、社長が高校の時からあたしを見ていてくれたとは思ってもみなかった。
尊敬して追いかけて近づきたい、そう思っていたあたしの想いは一方通行ではなく、社長もあたしのことを見ていてくれた。
そして、『あなたしかいない』と言ってくれた。



「牧野さん、結婚のこと考えてみてくれないかしら。」

デスクに座ったままだった社長が立ち上がり、あたしと目線を同じにしてもう一度問う。

誰よりも尊敬して、誰よりも憧れてきた人に、
こうしてお願いされて、無下に断ることができる人はいるのだろうか。

あたしには……出来ない。


「……分かりました。よろしくお願いします。」




この言葉があたしの人生を大きく変えることになるとはこの時は思ってもみなかった。
形だけの『お見合い』をセッティングしてもらうことに了承して、お願いしますと頭を下げたつもりだったのに、この2週間後には、あたしはある人の婚約者として世間を賑わしていた。




ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願いいたします!
関連記事
スポンサーサイト

 2016_07_22


Comments

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
    2016-07-22 09:47  

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
    2016-07-22 13:17  

 管理者にだけ表示を許可する


08  « 2018_09 »  10

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

プロフィール

司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR




PAGE
TOP.