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牧野と言う不思議な生き物 26





牧野に書かせた婚姻届を持って、今度は二人で邸のババァのところに行った。

『今日中に出したい。』
そう言ってサインをしろと言う俺を無視して

「牧野さん、本当に司でいいの?」
なんて聞きやがる。

そんなババァの言葉に、
「はい。」
と、笑いながら迷わず答えてくれるこいつが、……愛しい。







結局、11月の最後の日曜日、俺たちは結婚した。
何かの記念日でもなければ、覚えやすい語呂合わせの日にちでもない。
でも、俺にとってはじめて出来た『大切な日』

役所に婚姻届を出して正式に夫婦になった俺たち。
牧野を部屋まで送る車の中、

「なんか、凄い一日だったなぁ、」
と牧野が呟く。

「ああ。」

「やっぱり道明寺もそう思う?
だって、予定ではうちの親に挨拶に行くだけだったのに、結局は婚姻届まで出しちゃったもんねー。」

俺は最初からそうするつもりだった……とは言わない方がいいかもな。
とにかく、俺的には今日の流れは想像していた通りうまく行った。


車が牧野の部屋の前に着く。
時計をチラッと見ると、もうすぐ9時になる。

「…………それじゃあ……」

「……おう。」

夫婦になったとはいえ、お互い帰る場所は別々。
なんとなく、気間づい挨拶をして、牧野が車から降りていく。

振り向いて小さく手を振ったあと部屋に入っていく牧野を俺は黙って見つめていた。







**********************



部屋のドアがパタンと閉まり、あたしはそのままドアに背中をもたれかけた。

『寄ってく?』
そう聞けばよかったかな。

でも、朝から散々動き回って疲れてると思うし、
明日も仕事だから。

そんな風に自分に言い聞かせるけど、心ではそうじゃないと分かってる。
もう少し……一緒にいたかったのかも。

やっぱり勇気を出して言えばよかった。
『少し寄ってく?』


はぁーーーー。
そんなことを考えながら、靴を脱ぎリビングに行く。
パチンとリビングの明かりを付け、着ていたコートを脱ぎ、ソファにパサッとそのコートを置いたとき、テーブルの上に見慣れないペンがあるのが目に入った。

それは、婚姻届を書いたときに道明寺が渡してくれたボールペン。

「忘れていったんだぁ。」
そう小さく呟いたあたしは、

次の瞬間、脱いだコートのポケットから携帯を取り出して、はやる気持ちで道明寺の携帯へとボタンを押した。


もうどの辺まで行っちゃっただろう。
確か別れたのは5分前だよね。
もうかなり行っちゃっただろうか。


2コール目で
「もしもし。」
と道明寺の声。

「道明寺っ、」

「どうした?」

「あのね、今どのあたりにいる?
もうあたしの家からだいぶ離れた?」

「…………、」
何も言わない道明寺。

「あっ、ごめん、運転中だよね。
あとでかけ直す。」
と、慌てて切ろうとしたあたしに、

「いやっ、まだいる。」
と、道明寺が言った。


「…………え?」

「おまえの家の前にまだいる。」

「えっ、なんで……。」

あたしは、その道明寺の言葉に、携帯を耳に当てたまま玄関に走りだし、ドアを開けた。

そこには、さっき別れたはずの道明寺の車が、そのままにある。

「なんで?」

「…………。」

「道明寺……」

その先の言葉が続かない。
だから、靴を履いて道明寺がいる車まで行こうとしたあたしに、電話の向こうの道明寺が、

「来るな。」
と、一言言った。

「え?」

「来るな。
おまえ、上着着てねーだろ。
俺が行くから、おまえはそこにいろ。」
そう言って切れた電話と同時に、道明寺が車から降りるのが目に入る。

小走りであたしのところまで来る道明寺。
そして、玄関の外にいるあたしの肩を押して、玄関の中に入らせた。

リビングからの明かりが少しだけ届く薄暗い玄関。

「道明寺、どうして……」

「おまえこそ、どうして」

「あっ、あたしはボールペンが。」
そう言ってテーブルにあったボールペンを道明寺に見せると、

「忘れてたか。」
と、それを受け取って胸ポケットにしまう。

そんな道明寺に、もう一度だけ、
「道明寺は……」
と言いかけると、

「なぁ、俺たち結婚したんだぞ。
だから、おまえも道明寺だよな。」
と、少し怒ったように言ってくる。

「……まぁ、……そうだね、」

「じゃあ、お互い呼び名は変えなきゃな。
…………つくし。」

はじめて呼ばれるその響きに、暗闇でも分かるほど赤くなってる自覚はある。
そんなあたしの顔を覗き込み、『おまえは?』と聞いてるような道明寺の顔。


「つ……かさ?」
思わず疑問系になるあたしに苦笑しながら、それでも、すごく嬉しそうに笑う道明寺を見て、あたしはチクチクと胸が苦しくなった。

それは……その正体は、自分が一番自覚してる。

あたしは、この人が……好き。
一緒に過ごす時間が比例するかのように、あたしは道明寺に惹かれていく。


目の前にいる道明寺を見つめるあたし。
そんなあたしの気持ちを見抜いたかのように、
もう一度、
「つくし……」
そう優しく囁いて、




たぶん、抱きしめようと……してくれた……はず。



その瞬間、道明寺の胸ポケットにある携帯が鳴り響いた。
その音にビクッとなるあたしたち。

それで、魔法が溶けたみたいに、慌てて距離を取る二人。

「もしもし、……おう……わかった。
……邸に戻ったら確認して、メールで送る。」

道明寺が話す仕事の電話を聞きながら、
恥ずかしさMAXのあたし。

電話を終えた道明寺も、なんとなくさっきまでの甘い雰囲気が恥ずかしいようで、それを打ち消すかのように、あたしの髪をグシャグシャとかき混ぜた。

「寒い服装で外に出るなよ。
俺がやったマフラー必ずしてろ。
それと、……今度の休みに指輪見に行こうぜ。
……つくしの、気に入ったものをお揃いで作るから。」


そう言って、最後は髪を整えるかのように優しく撫でて、部屋を出ていく道明寺を、
今度は車が見えなくなるまで見送った。

結局、道明寺がどうして帰らずにここにいたかは聞けなかったけど、
あたしと同じ気持ちだったらいいなぁと、
バカみたいに「夫」に恋するあたし。





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 2015_10_25


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    2015-10-25 11:24  

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    2015-10-25 12:16  

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