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小話 18

Category: 小話  



「おまっ、何やってんだよ!」

あたしの方へ大股で近付いてきた道明寺は、
床に座り込むあたしを見下ろし、
ニヤッと笑いながら言った。

「助けてやろうか?」

「……うん。」

足にシーツが絡まってうまく立ち上がれない。

「手」

「ん。」

手を伸ばせと言う道明寺に、おとなしく両手を差し出すあたし。
勢いよく引き上げられ、そのまま道明寺の胸の中に囲まれる。

「ちょっ、バカっ、離してよ!」

「おまえはいつから邸の使用人に戻ったんだよ。」

「それはっ、ちょっと色々事情があって。」

ようやく腕を緩めてくれた道明寺から慌てて体を離すと、

「おやおや、こんな所に集合してたのかい。」
と、タマさんの声が部屋に響いた。

綺麗に畳まれたあたしのワンピースを持つタマさんが、
ひかるさんの部屋の扉を開けて立っている。

「つくし、アイロンもかけておいたよ。」

「あ、ありがとうございます!」

慌ててタマさんの側に駆け寄ったあたしは、ワンピースを受け取り、

「あたし、片付けがあるのでこれで失礼します。」
と、替えたばかりのシーツを抱えて逃げの態勢。

そんなあたしに、
「バカっ、待てって。」
と言って追いついた道明寺は、あたしの手からシーツを奪うと、それを床に置き

「タマ、あとは頼む。
この使用人は俺が教育しとく。」
そう言って嬉しそうにあたしの手を握って歩き出す。

そんなあたしたちに、
「手加減してやっておくれよ坊っちゃん。」
と、タマさんの呆れた声が聞こえた。






「いつ来た?」

「んー、1時間くらい前。」

「で、服を汚して使用人になってたって訳か?」

この人には説明しなくてもお見通しらしい。

道明寺の部屋がある東エリアまで手を握られたまま歩く。

「あいつの部屋にはなんで居た?」

「あー、たまたま廊下で会って、あたしを使用人さんだと勘違いしたみたい。」

「俺の彼女だって言わなかったのかよ。」

「この格好で言えるはずないでしょ。」

道明寺の口から『彼女』というセリフが出てきて、なぜか照れる。

と、その時、
廊下の向こうから使用人さんが二人話しながら歩いてくるのが見えた。

咄嗟に道明寺の方を見上げると、
道明寺もあたしの顔を見て、
次の瞬間、今来た廊下をあたしの手を引っ張りながら走り出す。

まるでかくれんぼをしているかのように、廊下に人がいないことを確かめながら、走って走って、
ようやく見慣れた東棟に来た所で、

道明寺が懐かしい所に寄っていくか?
と言って優しく笑った。



道明寺が言う懐かしい所とは、
昔あたしが使用人としてお世話になった時に使っていた、屋根裏部屋。

そっと入り、天井から下がる豆電球を付ける。
部屋は昔のままではあるけれど、さすがに使われている気配はなく、
ベッドにはいくつかのダンボールが積まれている。


カチリと部屋の鍵を閉め、
「そろそろ着替えろ。」
と、あたしのワンピースを見ながら道明寺が言う。

「うん。」

返事をしたのはいいけれど、この部屋で着替えができそうなスペースなんてどこにもない。

「道明寺、あっち向いてて。」

「あ?なんで?」

「だから、着替えするからっ。」

「いいじゃん、しろよ。」

この人がこういう顔をする時は要注意だ。
あたしをからかう様な、それでいて熱っぽい目をしている。

「道明寺っ、」

「でかい声出すと、誰かに聞かれるぞ。」

そう言いながらも、道明寺の手はあたしのブラウスのボタンを器用に外していく。

3つ外したところで、待ちきれないかのように大きな手が入り込んできて、胸を直に触りだす。

「道明寺……や……、」
文句を言おうとするあたしの口は簡単に塞がれて、抗議の声も飲み込まれていく。

狭い部屋に、
クチュクチュといやらしい音が響き、堪らなくなって、首をイヤイヤとふると、
そんなあたしに、一度唇を離した道明寺が言った。

「ごめんな牧野。」

「…ん?」

「あいつと二人で出掛けたこと、
写真撮られたこと、
おまえを怒らせたこと。」

小さな豆電球の下でも分かる。
道明寺が珍しく不安そうな顔をしているのが。

「いとこなんでしょ?
それ以上、何もない?」

「ああ。」

「ほんと?」

「ああ。誓う。」

再び落ちてきたキスに、それ以上何も聞かせてくれない。
道明寺の手によってあっという間にブラウスは脱がされ、スカートもファスナーが下ろされていく。

床にスカートが落ちる音がして、我に返ったあたしは、
「道明寺、着替えるから。」
と、側に置いてあったワンピースを手に取った。

すると、そんなあたしの手をグイッと引っ張った道明寺は、そのままベッドの側まで行き床にペタリと座り込んだあと、あろう事かあたしを正面から抱き寄せた。

座る道明寺の体を跨ぐように足を開いて、向かい合うあたしたち。
持っているワンピースで必死に隠しても、あたしの体は下着しか付けていない。

「道明寺っ、」

「寒くねぇ?」

「そういう問題じゃないっ」

「クッ……文句は後で聞く。」




こんな所で、まさかね、まさかね、
そう思うけれど、
道明寺の手は器用にあたしのブラジャーのホックを外し、

自分の上着を床に敷き、あたしをその上に押し倒す。

胸の先端に道明寺の口内の熱い刺激が走り、思わずビクッと体が弾くあたしに、
エロい…と小さく呟いた道明寺は、あたしのショーツをスルリと引き抜いた。





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あー、司、暴走したなこりゃ。


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 2020_05_30


小話 17

Category: 小話  



メイド服に着替えたあたしに、

「洗って漂白してきてあげるから、ここでしばらく待ってておくれ。」
そう言ってタマさんが部屋を出ていく。

久しぶりに会ったのに、相変わらずタマさんに迷惑ばかりかけて申し訳ない。
でも、この状態から抜け出すには、タマさんにお願いするしかない。

一人おとなしく部屋で流れるテレビを見ていると、無性にトイレに行きたくなってきた。

タマさんの部屋から一番近いトイレはどこだろう。
長い廊下の左?それとも右か?

道明寺が使っている東部屋なら何度か行っているので見慣れているけれど、タマさんの部屋がある西のエリアにはほとんど足を踏み入れたことがない。

恐る恐る部屋を出てトイレを探して歩くと、廊下の突き当りに発見。
まるで高級ホテルのトイレのような豪華さに、
「あたし、ここで暮らせるんですけど。」
なんて、思わず言葉が漏れる。


用を足し、トイレの鏡にメイド服姿の自分が写ったのを見て、いたたまれず慌てて部屋に戻ろうとしたその時、

「あのっ、ちょっとお願いしたいんですけど。」
と、後ろから声がした。

「……え?」
ゆっくりと振り向くあたしに、

「部屋のベッドメイクお願いしてもいいかしら。」
と、こんがり日焼けした肌が魅力的な女性が部屋から顔を出して言った。

「えっ、あのー、あたし、」

「昨日、朝帰りしたからさっきまで寝ていたの。
こんな時間にごめんなさい。でも、お願いできる?」

そう言ってイタズラっ子のように笑う彼女を見て、あたしは思い出す。

あっ、道明寺と写真を撮られていたのはこの人だ。

「あー、えーと、………はい。」
とりあえずそう答えたものの、どうしたら良いものか。
タマさんはまだ帰ってきていない。

メイドさんに頼みに行こうか。
でも、あたしがこんな格好なのが皆にバレる。

高速フル回転で考えるも、結局答えは見つからず、
昔の記憶を頼りに、ベッドリネンが置いてある小部屋を覗いてみると、今もそこは昔のまま。

しょーがない。
誰にも見つからずにベッドメイクだけして帰ってこよう。

あたしは、そこにある一式を手際よく抱えると、彼女の部屋へと向かった。





西のエリアは確か客間だと昔タマさんから教わった記憶がある。

ひかるさんらしき女性の部屋も2つ続きの部屋があり、奥がベッドルームになっていた。

キングサイズのベッドは一人でメイクするにはかなりハードで、一通り終わった頃にはぐったり。
とにかく、早くタマさんの部屋に戻ろう。

そう思って、ベッドルームの扉を開けかけたその時、

「司、おかえり〜。」
と、ひかるさんの声が響いた。

ヤバっ!
道明寺がそこに?
完全に固まるあたし。


「うるせ、司って呼ぶな。」

「いいじゃない、別に。減るもんじゃないし。
メール見た?」

「おまえさ、仕事中に何度もメールしてくんなっ。」

「なによ、名前は呼ぶな、メールはするなって
冷たいんだから。
そんな所に立ってないで、部屋に入ってよ。」

「入らねーよ。文句言いに来ただけだ。」

「いいから早くこっちに来て。」

「うっせぇ、女の部屋には入らねぇ。」

そんな二人の会話に息を潜めながら聞き耳をたてるあたし。

「とにかく、メールはするな。
何か用があるならタマにでも伝えておけ。」

「急ぎの用なら?
仕事中に返信くらいできるでしょ。」

「しねーよ。
返信するのは『彼女』からのメールだけだ。
余計なメールで、あいつからの連絡が埋もれるのは嫌なんだよ。」


道明寺から『彼女』なんて言葉を聞くのは初めてで、
それがあたしの思い違いでなければ、『彼女』とはあたしのことだろう。


「またそれ?
何かあるたびに牧野、牧野って、彼女のことばっかだけど、たまには久しぶりに帰ってきたあたしの事もエスコートしてよ。
彼女に言っちゃおうか〜?あたしのファーストキスは司だってこと。」


ひかるさんのその言葉に、思わずビクッと体が跳ねる。
その瞬間、持っていたシーツ類があたしの手から落ちた。

慌てて落ちたそれらを取り上げようとグイッと引っ張た時、シーツの端を踏んでいた足も同時に引き上げられ、絡まるように巻き付く。

危ないっ!そう思った時は遅く、
シーツに足が絡まった状態で後ろに思いっきり尻もちをつくあたし。


「痛っ!」
自分にだけ聞こえる大きさで呟いたはずなのに、

「あっ、メイドさんにベッドメイク頼んでたんだった。」

と、ひかるさんの声がして、ベッドルームの扉が開かれた。


「あら、大丈夫ですか?」

座り込むあたしにひかるさんが声をかける。

それと同時に、
「おまっ、何やってんだよ!」
と、一番知られたくないこの人に見つかった。







まだ続くようです笑
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 2020_05_27


小話 16

Category: 小話  



道明寺と付き合うようになってから、
遠距離で不安になった事はあるけど、浮気を疑ったことは一度もない。

だから今回も、本気で怒ってる訳じゃない。

ただ、これが逆の立場だったら、
たぶんあいつは物凄く怒っただろう。
男と話すな、笑いかけるな、出歩くな!
その言葉を今回そのまま道明寺に言ってやりたい。

だから、焦った声で「会いたい。」なんて言ってくる道明寺が激辛レアで、
少しだけ笑いを押し殺して
「嫌。」と突き放してやった。
一日だけ反省しなさい!


そしたら次の日、珍しくタマさんから電話があった。

「つくし、久しぶりに邸においで。」

「え?」

「坊っちゃんの味方をするつもりは全然ないよ。
ただ、弱ってる坊っちゃんを見るのはこのタマも辛いからね。
話だけは聞いてやっておくれ。」

なんだかんだ言って、道明寺に甘いタマさん。
電話を無視しただけで道明寺が弱ってるなんて大袈裟だろうけど、
あたしもこの状態を長引かせるつもりは最初からない。





仕事が終わった後、道明寺には内緒で邸にお邪魔することにした。

道明寺はまだ帰って来ないだろうから、
タマさんの部屋でまったりとお茶タイム。

この部屋はいつ来ても寛げる空間。
学生の頃、あたしがこの邸でバイトをした時から
変わらない憩いの場所。

「坊っちゃんから何か聞いたかい?」

「何かって?」

「だから、写真の相手についてだよ。」

「たしか、いとこだって言ってましたけど。」

「ああ、そうだよ。あの子はひかるさんって言って、楓奥様のお兄さんの子供。
ずっとアメリカにいるけど、夏休みだけ時々帰ってくるんだよ。」

「へぇー、初めて聞きました。」

道明寺にそんないとこがいるとは初耳だった。

「まぁ、ひかるさんも坊っちゃんと同じように、小さな頃から大きな邸で一人ぼっちだったからね、坊っちゃんもあの子のワガママはある程度聞いてやるつもりなんだよ。」

「そっかぁ、そうなんですね。」

タマさんの話にコクコクと頷きながら、タマさんが淹れてくれた抹茶を飲む。

と、その時、
あたしの手から抹茶のお椀がグラリと傾き、見事に胸からお腹にかけて抹茶をぶちまける大惨事。

「わぁっ、やっちゃった!」

「あらあら、全く。
熱いお茶じゃなくて良かったよ。
それにしても、よりにも寄って今日は白い服だね。」

そう、今日のあたしは白いリネンのワンピース。
その大部分が抹茶の深い緑に染まってしまった。

「とにかくすぐに洗ってあげるから脱ぎなさい。」

「えっ、でも、これ脱いだら着替えが……。」

「そうだね。あたしの服じゃまずいだろうし。」

流石にタマさんの服を借りるわけにはいかない。

すると、
「これならつくしでも着れるんじゃないかい?」
と、タマさんが不敵な笑みで指差すのは、

道明寺家のメイド服。

「えっ!これはちょっと」

「なに、昔は着てただろつくしも。」

そうだけど、あれはもう7年も前の事で、
今更ラブリーなメイド服は着る勇気がない。

「無理無理っ、ムリですよ!」

「洗って乾くまでの間だけだよ。
坊っちゃんが帰る頃には間に合うから心配ない。」

そう言って、タマさんに強引に着替えさせられたあたしは、
久しぶりに道明寺家のメイド服に包まれた。



つづく



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 2020_05_25


小話 15

Category: 小話  




まずい…………、


これは、完全にまずい…………。





昼過ぎのオフィス。
西田が一冊の週刊誌を片手に苦い顔で俺の前に現れたのが10分前。

何も語らない西田からその週刊誌を受け取り開いてみると、そこには見開き5ページにもおよぶ俺とあいつの写真。

2週間前、何度もしつこく誘ってくるあいつを助手席に乗せて、深夜、人がまばらになった頃を見計らい都内の映画館へと入った。

あいつが予約していた席は、まさかのカップル席。
深くため息をつく俺をよそに、むちゃくちゃハシャグあいつに、『しょーがねーか。』と笑みが漏れたのをカメラマンは見逃さなかった。

週刊誌に載っている俺とあいつの写真は、見るものにとってはどこからみても仲のいいカップルにしか見えねぇ。

頭をワシャワシャとかき混ぜながら週刊誌を乱暴に閉じた俺に、西田が言った。

「…………牧野さんにはひかるさんのことを?」

「……話してねぇ。」

「では、今ごろ……。」


ああ。
たぶん、牧野の耳にもこの写真のことはもう届いてるだろう。
週刊誌に載れば、いつものようにテレビやネットも黙っていない。
今ごろは俺のスキャンダルをこと細かく伝えているに違いない。





時計を見ると、11時半過ぎ。
あいつは仕事中だろうけど、いてもたってもいられずメールを入れる。

「今日、会えるか?」

5分後に
「会えない。」の文字

「少しでいい、話がしたい。」

「話すことない。」

ヤバいだろ、あいつは完全に機嫌がわりぃ。

そうこうしているうちに12時を回り、
昼休憩に入ったはずの牧野に電話を入れる。

「もしもし。」

「俺だ。」

「なに?」

「おまえ、見たか?そのぉ、俺が載ってる雑誌だけどよ、」

恐る恐る聞く俺に、

「浮気現場のスクープ写真のこと?」
なんて、言いやがるこいつ。

「おいっ、誤解すんなっ!
おまえに言いそびれてたけどよ、あいつは俺のいとこで、」

「へぇー、そうなんだ。
二人でカップルシートに座るほど、さぞ仲良しなんでしょーねぇ。」

やめろ、その棒読み。
いつも嫉妬でキレるのは俺の方で、
こんな風におまえに静かにキレられると
まじでこたえる。

「牧野、会おうぜ。」

「嫌。」

「頼む。」

「バカ。」

そう言ってプツリと切れた電話。
それを眺めながら、

「結局、会えるのか?会えないのかよ。
はぁーーー。自分を思いっきし殴りてぇ。」

そう呟く俺を、気の毒そうに西田が眺めていた。




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こちら、2018年に下書きして保存していたお話です。
すっかり管理人も書いたことを忘れてましたが、
少し加筆してアップしてみました。

このあと、二人はどうなるんでしょう。
過去の自分に聞きたい笑
こうご期待あれ〜〜。
 2020_05_25


お知らせ

Category: 未分類  


「欲しいのはイエスだけ」の9話ですが、
少しシナリオ修整しています。

以前にお読みになった方も、
もう一度読んでいただけると幸いです。

10話も修正して早めにアップしたいと思っています★




 2020_05_25





ホワイトデーの当日。
あたしと道明寺との約束は夕方から。

その前に、滋さんと道明寺はパーティーに出ると言っていった。
同じパーティーかは分からない。
滋さんが気になると言っていた相手が道明寺とは限らない。

けれど、最近の二人の様子から、違うという結論は何度考えても出せなかった。
昨夜からずっとこの事ばかり考えていて殆ど眠れず頭が痛い。


もしも、二人が付き合うとしても、何も行動してこなかったあたしが悪い。
もう手遅れなんだよと道明寺から冷たくされても文句は言えない。

今更後悔しても遅いけど、道明寺の優しさに甘えてた自分が憎い。



部屋の時計を見るともうすぐ2時。
もうパーティーは始まっているはず。

ソワソワと落ち着かない自分に、「落ち着け」と言い聞かせるよう、甘ーいピーチティーをカップに注ぎソファに座った。

とりとめない会話がテレビから流れてくる。
お茶と暖房の暖かさで体がホカホカとしてきて、
昨夜寝れなかったつけが回ってきた。

少し眠ろう……そう頭では分かっているのに、
神経が休もうとしない。






眠れずぼぉーとしたまま3時間が過ぎた頃、
道明寺からメールの着信。

「少し遅れる。
あとで迎えに行くから用意して待ってろ。」


とにかく、道明寺に会って確かめることしか今のあたしには出来ない。

考えすぎて強くなっている頭痛と、
道明寺にこれから会う緊張で、
手足の先が冷たくなってくるのがわかった。






「着いたぞ。」

メールが鳴って、窓からマンションの下を見ると、
いつもの車がとまっていて、その側に道明寺が立っている。

あたしは急いで部屋を出ると、
階段を駆け下りて行った。


「おまえっ、あぶねっ、そんなに急いでくんなって!」

「だって……、」

「転んで怪我するぞっ。」

「ん。」

あがった息を整えて、まっすぐに道明寺を見る。

「…どーした?」

「し、滋さんと会ってきたの?」

「おう、どうしてそれ知ってる?」

「滋さんから聞いてたから。」

そう答えるあたしに、道明寺はクスっと笑い、
「あいつの頼みは聞いてきた。」
と、優しく言う。

「…いいの?」

「あ?」

「道明寺、ここにいていいの?」

「どーいう意味だよ。」

あたしの言葉に眉を寄せるこの人。

「滋さんの頼みって、道明寺と一緒にいることじゃないの?」

「あ゛?」

「滋さんの気になる人って道明寺でしょ?」

一度堰を切ると溢れるのを止められない言葉たち。


「告白されたの?」

「…おまえ、」

「なんて答えたの?」

「牧野」

そして、もう一度聞く。
「道明寺、……ここにいていいの?」

泣くつもりなんてさらさら無いのに、視界がゆらゆらと揺れるから情けない。

こんな顔は見られたくない。
そう思って咄嗟に下を向くあたしに、

「どーしょもねー奴。」
そう呟いた道明寺はあたしをすっぽりと腕の中に閉じ込めた。

いつもは隣にいる道明寺から香る香水のにおいが、
今はあたしの全身を包むように香る。

「一人で勘違いして、一人で泣いたりすんなよバカ。
滋に何聞いた?」

「気になる人がいるって。
今日のパーティーで告白するって。」

「で?それが俺?」

「…違うの?」

抱きしめられたまま、少しだけ顔をあげてそう聞くと、

「滋はそんなに馬鹿じゃねーだろ。」
と、あたしの頭を軽く小突く道明寺。

「どこからどーみてもおまえにしか興味のねえ俺に、告白しようなんて思うか普通。」

「そ、それは、」

「あいつが気になってるのは、俺の知り合い。
パーティーで紹介してくれって言われて、まぁ、滋にはちょっとした借りがあるからよ」

そうなんだ。
そういう事だったんだ。

道明寺の口から真相が聞けて、一気に今までの緊張が溶けていく。

すると、道明寺の腕に包まれているこの状況が急に恥ずかしくなる。

慌てて離れようとするあたしを、さっきよりも強い力で引き寄せた道明寺は、ニヤッと笑ってあたしの耳のそばで囁いた。

「泣くほど心配だったか?」

「っ!ちょ……」

「逃げんなって。答えろ。」

耳にかかる道明寺の息と低音の声に、体が熱くなる。

抱きしめられたまま顔を上げると、あたしを見つめる道明寺と視線が絡む。

熱っぽい目でじっとあたしを見たあと、
急に腕を緩めて
「牧野、行きたいとこ決めたか?」
と、視線をそらして言う。

もっとあのままでいたかった。
道明寺の腕の中に包まれていたかった。


「…ううん、決めてない。
でも、……欲しいものがある。」

「欲しいもの?ああ、何でも買ってやるよ。」

そう言って嬉しそうに笑う道明寺。
あたしは大きく息を吸い込んで言った。

「欲しいものは物じゃなくて、言葉なの。
今からあたしが言う事に、イエスで答えてくれる?」

「…あ?」

「道明寺、
好き…なの。
あたしと付き合ってください。」


1年前、道明寺があたしに言ってくれた言葉。

『牧野、お前が好きだ。付き合うぜ。』

それをそのまま、今度はあたしから。


道明寺からの返事は、
ただ一言『イエス』を期待していたあたし、

けれど、実際は違った。



返事の代わりに、
道明寺に体ごと引き寄せられ、
そのまま唇を優しく塞がれる。

キス……、
ようやく思考が追いついた頃、
少しだけ離れた唇の隙間から


「イエスに決まってるだろ。」
と、道明寺が言った。

それを聞いた途端、なぜかあたしは力が抜けて目の前が真っ暗になった。




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 2020_05_25




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司一筋

Author:司一筋
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