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牧野の声に死ぬほどビビった。
ヤバイ……。

慌てて携帯をポケットにしまうと、
「俺、仕事だから先行くわ。」
と、逃げるようにカフェテリアを出た。

滋と秘密を共有するぐらいなら、写真なんて貰わなければよかった。
いや、でも、こんな牧野を見れるのは2度とねえかもしれない。





その週末、姉ちゃんがNYから一時帰国した。

大学のあと会社に寄り、9時を過ぎて邸に戻ると俺の部屋に勝手に入っている姉ちゃん。

「おっ、帰ってきてたのかよ姉ちゃん。」

「司、おかえり。遅かったわね。」

「おう、会社に寄ってきた。」

「偉いわね〜。着々と仕事覚えてるのね。」

そう言いながら、俺の頭をわざとにぐちゃぐちゃとかき混ぜる。

「これ、つくしちゃんにお土産。」

「またかよ。」

俺の部屋のデスクの上には綺麗に包装された包みが3個のっている。

「買い物してたら、つくしちゃんに似合いそうなもの見つけちゃって、つい買っちゃうのよね。」

「毎回だとあいつも困るぞ。」

「なんで?困ることあるかしら。」

俺が言うのもなんだが、姉ちゃんは超がつくほどのお嬢様。
プレゼントを貰って困るという感覚は持ち合わせていない。

「いつも姉ちゃんに貰ってるからって、お返し何がいいかってあいつに聞かれたんだよ。」

「え、ほんと?」

「あいつに気遣わせるな。」

牧野は、貰ってありがとう、だけで済ませる女じゃねえって事はこの1年痛いほど知った俺。
どこに行っても自分で金を払おうとするし、プレゼントも理由がなきゃ受け取らねぇ。

「相変わらずね。」

「あ?」

「相変わらず司は、つくしちゃんファーストなのよね。」


姉ちゃんには詳しい事は話してねーけど、お祭りコンビが口を滑らせて、
牧野に振られた過去は知られている。

「いつになったら彼氏に昇格できるのかしら〜。」

「知らねーよ。」

彼氏に昇格できる方法があるなら、俺が一番知りたい。

「押してだめなら引いてみろよ。」

「なんだよそれ。」

「知らないの?全くあんたって…。
好きだ好きだって押してばっかじゃ駄目なの。
時にはツーンと引いてみなさいよ。
そしたらつくしちゃんも不安になって落ちるかもしれないわよ。」

押してだめなら引いてみろ。
確かに、恋愛においてそれは有効な法則かもしれねぇ。
でも、

「俺は、好きな女にはいつでも正面から好きだって言っていてーんだよ。」
これが俺の恋愛の法則だから。


「はぁー、あんたって性格は難ありだけど、
彼氏にするなら合格よね。」

「なんだよ、それっ!」

「早く彼氏になれるといいわね。」

そう言いたい放題言ったあと、颯爽と姉ちゃんは部屋を出ていった。






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 2020_01_30




 
金曜の夜、いつものように牧野のバイトが終わる時間に合わせてメールをするが、
なかなか返事が来ない。

10時過ぎには「家に着いた。」とあいつから連絡があるはずなのに、今日は10時半を回っても俺のメールに返事はなし。

何かあったのか?
考えれば考えるほど落ち着かない。

しびれを切らして電話をかけてみるが留守電。
「すぐに連絡しろ。」とメッセージを残しても俺の携帯は鳴らない。

数分おきに何度もかけていると、ようやく携帯が鳴ったが、相手は待ちわびた女からではなかった。

「もしもーし。」

「……滋か?」

「司って、つくしのストーカーなの?」

「うっせぇ!もしかして牧野と一緒か?」

「そう。つくしなら今、お風呂に入ってる。」

「…あ?」

予想もしてなかった返事に戸惑う俺。

「つくしと桜子と3人で温泉に来てるの。
これから部屋でまったり呑もうかって時に、ストーカー並みに携帯がなるから誰かと思えば……。
つくしになんか用?」

「なんか用って、おまえが偉そうに言うんじゃねーよ。
バイト終わりに返信がねえから心配したんだぞ。」

「へぇー。バイトの日は毎日連絡するんだー。」

「……悪いかよ。まぁ、無事ならいい。
風呂から戻ったらメールだけしろってあいつに伝えろ。」

「はいはい、りょーかい。」

そう呆れたように返事をする滋に、柄にもなく弱い声が出る。

「滋……、」

「ん?なによ」

「変なヤローにちょっかいかけられねーように、あいつのこと頼む。」

女3人なら声をかけられないとも限らない。
あいつに直接言ってやりてぇけど、しょうがねぇ。

「あー、もうっ。
今日は強いお酒が呑みたいわっ。」

そう言ってブツっと切れた携帯を眺めながら、
今日は滋が暴れそうだな…と苦笑する。

その夜、牧野から短いメール。
「連絡しなくてごめん!
急に誘われて温泉に来てるの。
明日には帰るから。」






週明け、大学のカフェテリアに行くと滋と桜子、そしてF3が揃っていた。

「司〜、遅ーい。」
俺を見つけてそう叫ぶ滋に、

「英徳じゃねぇ奴に言われたくねぇ。」
と、悪態をついてやる。

牧野と桜子の二人と仲がいい滋は、自分の大学じゃない英徳にちょくちょく顔を出す。
もはや、このカフェテリアにこいつが座っていても、誰も気にも止めなくなった。

「司、これから仕事か?」

「ああ。」
あきらの問いに答えながら俺の視線はカフェテリアの入り口へ。
その視線に気付いた総二郎が、

「牧野か?」
と、聞いてくる。

「……まぁな。」

「牧野ならさっき第3講義室に入って行ってたぞ。」

「マジか…会えねーな今日は。」

このあと会社に顔を出す予定の俺は、
講義が終わるまで待っている時間はない。

「俺らもそろそろ行くわ。」

「おう。」

桜子とF3が立ち上がり、軽く手を上げてカフェテリアを出ていく。
残ったのは俺と滋の2人。

こいつと一緒にいるとろくな事がねえと心で呟いたとき、

「ねぇー、司ぁ〜。」
と、意味深に笑う滋。

「なんだよ、気味悪りぃーな。」

「あんたね、そんな事言っていいの?
司にいいものあげようかなーと思ってここに来たのに。」

「いらねーし。」

「ほんと?
絶対、司は欲しいって言うはず。」

そう言いながら自分の携帯を取り出してなにやら動かしている。

そして、ニンマリ笑ったあと
「この写真欲しくない?」
と、言って携帯の画像を俺に見せてきた。



それを見た俺は、
完全に固まった。



「おまえ、これ、」

「どう?レアでしょ。」

「……合成か?」

「んなわけないでしょ!
この間の旅行でプールに入ったときに撮ったのよ。
つくしの水着姿、可愛いでしょー。
欲しくないなら消すけど、どうする?」

滋の携帯には、ピンクの水着を着てプールサイドでくつろぐ牧野の画像。
上からのアングルで撮られたそれは、ちょうど胸の下までが入っていて、俺の想像よりもはるかに胸の谷間が……。


「司、鼻の下伸びてる。」

「…うるせぇ。」

文句は言ってやったが、伸びてる自覚はある。

「欲しい?」

「欲し……、いらねーよ!」

「そお?じゃあ、消すね。
でも、その前に類くんにもみせてあげよーっと。」

「おい、待て待て待て。貰う。俺がもらう。」

「クッ……、じゃあ、バレンタインデーのプレゼントって言うことで、ホワイトデーにはお返し期待してるから。」

早速俺の携帯に画像を送ったようで、俺の携帯が短く鳴る。
慌てて開くと、さっきの画像が。

「司も普通の男かー。やらしい。」

「てめぇ、」

そんなやり取りをしていた俺たち。
その後ろで突然声がした。


「ふたりしてコソコソ何してるの?」




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 2020_01_27





30分後、ようやく店内に入れた俺たち。
まるで宝石のようにショーケースに並ぶチョコレートを見て牧野の目が輝いている。

姉貴にはカラフルにコーティングされた店一番の人気の詰め合わせを一箱。
そして、

「道明寺は?」
と、俺を睨んで聞いてくるこいつ。

「くれるのか?」

「欲しいんでしょ。」

「おう。」

素直に頷く俺に、クスッと笑う牧野。

2粒だけ入ったチョコレートのケースを指差して
「これ。」
と言うと、

「これだけ?」
と小さな声で聞いてくる。

「たくさんはいらねーし。」

「でも、せっかくなら、」

「いーんだよ。
チョコが食いてぇんじゃなくて、俺はおまえから欲しいだけだから。」

いつも直球でぶつける俺。
それをいつも通り睨みでかわす牧野。
このやり取りもくすぐったくて堪んねぇ。


混み合う店内からようやく外に出た俺たちは、
車を停めた駐車場までゆっくりと歩く。

「どこかでお茶でも飲んでくか?」

「道明寺、時間はいいの?」

「ああ。ババァからの呼び出しは今のところねぇし、チョコのお礼に奢ってやる。」

俺の手には貰ったばかりのチョコの紙袋がさげられている。

「あったかいものが飲みたい。」

「だな。」

「あの通りまで出たらお店あるんじゃない?」

「歩けるか?」

「うん。」

少し先の大通りまで出て、どこかのカフェに入ればいい。
そう思いながら歩き始めたとき、今すれ違った男の顔に少しだけ違和感があった。

どこかで見た顔だ。
会社の社員か?
いや……、

そう思いながら、振り向いてすれ違った男の方を確認すると、
その男も俺を見ていて目があった。

あの男は、記者だ。

見覚えがあった。
何度かプライベートの写真を撮られたこともある。
でも、記事ネタになるような現場を押さえられた事はなく、結局その写真も世に出ることはなかった。

付けてきてたのか?
それとも、偶然?

どちらにしても、今日の写真はかなりのネタになるだろう。

「牧野。」

「ん?」

「少し走るけどいいか?」

「え?」

「記者にバレた。
撮られる前に撒くぞ。」

俺は牧野にそう言うと、直進しかけていた道をとっさに右に曲がり、
牧野の手を掴むとダッシュで細い道を駆け出した。

途中、振り返ると、さっきの男も急いで追いかけてきているのが見える。
あの仕草からすると、チョコレートの店では撮られていないだろう。
多分偶然すれ違って、俺に気づいたに違いない。

古着屋や雑貨店などがひしめく細い道を走り、
その先の小さなビルが立ち並ぶ入り組んだ道へと入っていく。

ここまでくれば大丈夫だろう。
古いビルの影に牧野の体を隠し、その体を覆うようにして俺が立つ。

走ってきたから息が上がっている牧野は、肩を揺らしながら俺のことを不安そうに見上げている。

「大丈夫か?」
牧野にだけ聞こえるようにそう呟くと、
コクコクと頷くこいつ。

その距離が近くて、走ってきたからだけじゃなく、動機が激しくなる。

「まだいる?」

「いや、多分まいた。
けど、その変にまだいるはずだ。」

記者が簡単に諦めるはずはない。
まだこの辺りをウロウロしているだろう。


人通りのない暗い場所で、好きな女と密着している。
ピンチとはいえ、絶好のチャンス。

向かい合うようにして密着する俺たち。
少し下を向けば、牧野のおでこに唇が当たってしまいそうなほど近い。

それをこいつも今更気付いたのか、慌てて体をずらそうとして動くから、牧野の足が俺の足を少しだけ踏みつけた。

「ごめんっ。」
勢いよく顔を上げて謝る牧野。

バカ、そんなに顔上げたら、マジでキスするぞ。

俺と牧野の唇の距離は数センチ。
一気に顔が赤くなる牧野に、俺もクラクラする。

「クッ……すげぇ顔真っ赤。」

「っ!うっさい。」

「バカっ、押すなって。まだいるかもしれねーぞ。」

俺の体を押し返すこいつの手を握り、さらに距離を近付けてやると

「ちょっと、道明寺っ!近いっ。」
と、暴れだすこいつ。

「分かった、暴れんな。
もう少しだけ、あと少し隠れていようぜ。」

「……。」

「牧野、寒いから近くに来い。」




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司、暴走せずにすんだね。
いや、逆にずっと暴走しまくってんなこいつ……。
 2020_01_26





約束の土曜日

牧野のマンションに寄ってから、目的の店へと行くと、店の前にはズラリと行列が出来ている。
その行列を見て、思わず顔を見合わせる俺たち。

「マジかよ。」

「すごい人気だね……。」

この行列なら、30分以上は待つことになるかもしれない。

「どうする?違う店にするか?」

「でも、お姉さんが言ってたのって、このお店なんでしょ?」

「……ああ。」

真冬のこの季節に30分も並ぶのは牧野にとってきついだろう。

「さすがに寒いだろおまえ。」

「あたしは大丈夫。
道明寺、車で待っててもいいよ。」

「……バカ。
一緒にいるに決まってるだろ。」

イタリア製のマフラーを首から取ると、この鈍感女の首に巻いてやる。

「えっ、いいから道明寺がしてなよ。」

「俺はダウンだからあったけー。」

「でもっ、」

そんなやり取りをしながら列に並んでいると、
俺らの前の方にいる女達がチラチラとこっちを見てくる。

何度も俺と牧野を横目で見ながら、
ヒソヒソと話している声が聞こえる。

「ねぇ、あの人、物凄くカッコいい!」
「モデルじゃない?背も高いよねー。」
「あれって、彼女かな?」
「えー、でも微妙な距離感だし。」
「女友達?」
「多分ね。お店に入ったら、後で彼に声かけてみる?」
「うん!携帯番号だけでもゲットしたいよね!」

そんなうんざりするようなヒソヒソ話しが聞こえ、チラッと隣の牧野に視線を移すと、
多分こいつも聞こえたのか、女達と視線を合わせないよううつむくように下を見ている。

俺はそんな牧野にだけ聞こえるよう小さく呟く。
「変な奴らに逆ナンされそーだが。」

すると、クスッと笑ったあと、
「どこにいても目立ちすぎるあんたが悪い」
と、横目で睨む。

「助けろよ。」

「無理。」

「薄情なやつ。」

「このまま逃げる?」

からかうように俺を見上げてそう言うこいつに、
俺は「いや。」と言いながら、
隣に立つ牧野の手をぎゅっと握り、俺のコートのポケットへといれる。

「ちょっ、道明寺っ!」
焦る牧野。

「こうしてれば彼女だと思うだろ。」

「でもっ、」

まだ文句を言いたそうな牧野の小さな手を、
ポケットの中でもう一度ぎゅっと握りしめると
一気に赤くなるこいつ。

そんな俺らの仕草に、さっきの女達が明らかに
ガッカリした顔をして視線をそらす。

「道明寺っ、」

「ん?」

「もう、あの人たち見てないから、」

「おまえにマフラー貸したからさみぃー。」

「は?」

「だから、代わりに手ぐらい貸せよ。」


俺の手の中にすっぽり入る小さなこいつの手。
冷えた体がそこからじんわり温まるのが分かる。

完璧に振られた一年前のあの日から、
俺たちの関係は「友達」から変わっていないけれど、
確実に距離は縮まっているはずだ。

それはこいつの態度でも分かる。
俺を避けていたこいつが、今は時折顔を赤くして照れたように視線をそらす。

そんな仕草が堪らなく可愛くて、意地悪するかのように距離を近づける俺。


「牧野。」

「ん?」

「俺にもチョコくれ。」

「は?」

キョトンとした顔で俺を見るこいつに、
無言で店の前にある看板を指す俺。

そこには
『バレンタインチョコレート
大切な人へ……甘い贈り物』
という文字


「っ!そういうのって、自分から催促しないからっ。」

「催促しねーとくれないだろおまえ。」

「そ、それは、」

困った顔のこいつも堪らない。
列が動き出すのと同時に、肩が触れ合うくらい距離を縮める。




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 2020_01_25





週の半分はバイト漬けの牧野。
牧野が高校を卒業するのと同時に、
父親が転職し、両親と弟は東京を離れて暮らしている。

転職先は悪くねぇ会社だからそこそこ給料は
貰っているはずだが、一般家庭で英徳に通うには
厳しいだろう。

だから、牧野自身も3人の生徒を掛け持ちして家庭教師のバイトをし、大学が終わったあとも時間的にハードな生活をしている。

今日も火曜日だからあいつはバイトの日だ。
終わるのは9時半。
マンションにつくのはだいたい10時過ぎか。

俺はいつものように携帯であいつにメールする。

「家に着いたか?」

すると、数分後、いつもの返事が帰ってくる。

「うん。今帰ってきた。」

「鍵、ちゃんと閉めろよ。」

「わかってる。」

「おやすみ」

「おやすみ」

いつもと変わらない会話。
彼氏彼女の関係でもないのにおかしいと笑われるかもしれねーけど、
いつからか俺たちの間で普通となったこの会話。

遅い時間の帰宅を心配してバイトを変えろと言い続けた俺と、変えないと言い張った牧野。
その二人が譲り合う形で、
『バイトの日は帰宅したら連絡する』
というルールが出来上がった。

今では俺にとって、たった数分のこの時間が、
24時間の中で一番大切だと感じる瞬間だ。

けど、今日はこれだけで終わらなかった。

俺の手の中にある携帯が震え、画面には
「牧野」の文字。
それだけでバカ見てぇに心臓がなる。


「もしもし。」

「道明寺、ごめんねこんな時間に。」

「ああ、どうした?」

「あのね、お姉さんって、今度いつ戻ってくる?」

「あー、確か1週間後に帰るって言ってた気がするけど、姉貴がどうかしたのかよ。」

「ん、この間会ったときに、たくさんお土産頂いちゃって。
何かお返しに…と思ってるんだけど。」

牧野と姉ちゃんは仲がいい。
感の鋭い姉ちゃんが、俺の恋愛に気付かないはずもなく、牧野を好きだという気持ちはすぐにバレた。

弟の弱みを握りたい為なのか、それとも弟の恋路を応援する為なのか、どちらかは知らねーけど
牧野を可愛がってる姉ちゃんは、俺の知らない所でもこいつと連絡を取り合うほどらしい。


「お返し、何がいいかな。」

「姉ちゃんがいつも勝手にお土産買ってくるんだから、お返しなんていらねーよ。」

「でもっ、貰ってばっかじゃ悪いし。」

少し拗ねたようにそう言う牧野の声が耳に響き、
甘く体を痺れさせる。

「道明寺?」

「……あ?」

「聞いてる?」

「ああ。」

「眠くなった?ごめんね、また今度かけ直す。」

電話を切りそうになる牧野に、
俺は慌てて言う。

「切るな。
もう少し聞かせろよ。」

「……え?」

「せっかくおまえの声聞けたのに、
勝手に切んじゃねーよ。」

他の奴に聞かれたら赤面する台詞も、
牧野には惜しみなく言ってやる。

「……。」

「何か言えよバカ。」

「ちょっ、バカって!
もう、切るからね。」

「あー、分かった、悪かった!
切るなっ、絶対切るなよっ。」

相変わらず、甘いムードも長くは続かねぇ。

「牧野、土曜日空いてるか?」

「え?」

「一緒に買いに行こうぜ、姉貴へのお返し。」

「何か案はあるの?」

「ああ。
前に、銀座に出来た有名なパティシエの作るチョコレートが食いたいって言ってたはずだ。」

「分かった、じゃあそれにする。」

「おう。
土曜日、1時に迎えに行く。」

「うん。
じゃあ、……おやすみ。」

「おう、……おやすみ。」


メールじゃなく、声を聞いての「おやすみ」


ヤバイ、眠れそうにねえ。



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 2020_01_24





新連載です

と言っても、あまり長編ではないと思いま〜す。
お付き合いください


……………………………………




あの日、
朝から何度も鏡の前に立ち、
お気に入りのコロンをつけ、
赤いバラ30本を手に、向かったのは、
好きだと自覚したばかりの女の家だった。

古いマンションの一室のベルを鳴らすと、
中から険しい表情で女が出てきて一言言った。

「あんた、何してるの?」

そんなこいつに俺は怯むことなく言う。

「今日から俺と付き合え。」

人生初めての告白。
それなのに、この女は俺を睨みつけ言った。

「はぁー、もういい加減にしてよ。」

「なんだよそれ。おまえ、まさか照れ隠しか?」

「……あり得ないっつーの。」

上目遣いで俺を睨んだあと、そう呟いて部屋に戻ろうとするこいつの手を掴み、

「返事は?イエスか?」
と聞いてやる。

「はぁ?」

「だからっ、こ、こ、告白の返事だよ。」

「告白って…、」

「付き合うだろ?俺たち。」

「……。」

その目はなんだよ。
ため息までつくんじゃねーよ。

「もう一度言うぞ。俺と…」

「ノー」

「……あ?」

「だから、ノーよ。」

仁王立ちで「ノー」と叫ぶこいつ。

「イエスしか受け付けねぇ。」

「はぁ?」

「おまえはイエスって言ってこのバラを受け取ればいいんだよ。
他のことは色々考えるな。
とにかくイエスって言え。」

「あんたって……イカれてる。」

「あ?
おまえ、この俺様が付き合おうって言ってんだぞ。
嬉しくねーのかよ。」

「嬉しくない。」

「ふざけんなっ。
普通の女なら泣いて喜ぶ状況だろ。」

「それは失礼しましたっ。
でも、あたしは嬉しくないの!
だから、泣いて喜んでくれる他の女性をあたって。」


どうしてこうなるんだよ。
いつもそうだ。
こいつと一緒にいると、いつも言い合いになって
喧嘩ばかりの俺たち。

でも、俺はこいつが気になって、
目で追いかけて、近寄りたくて。
それが好きだって感情だと気づいてからは
想いが止まらない。


「分かった。
とりあえず、今日は帰る。
けどな、またすぐ出直してくるからな。」

「何度来ても答えは同じだから。」

「考え直せ。」

「変わらない。」

「おまえな……。
ったく、男に告られてんだから、少しは嬉しそうな顔しろよ。」

「べ、別に…頼んでないし。」

「はぁーー。可愛くねぇ女。」

こいつのこういう強気な所も、めちゃくちゃ可愛いと思ってるくせに、売り言葉に買い言葉だ。

「可愛くなくて悪かったわね!」

「ああ。素直にイエスって言えば許してやるよ。」

「だから、ノーって言ってるでしょ。」

それでも、何かを言おうとする俺に向かって、こいつはまっすぐに俺を見返して言った。

「ちゃんと、ちゃんと好きだと思える人が出来たら自分から言うつもりっ。
イエスかどうかは、自分で決めるから!」





あれから1年
俺の隣には未だにあいつはいねぇ。

「おい、司。
今日のパーティ来るだろ?」 

「行かねーよ。毎回、俺を誘うな。」

「俺らはおまえが来るまで何度でも誘うぞ。
だって、おまえはキスだって未経験のお子ちゃまだろー。」

大学のキャンパス内。
いくらVIP限定の場所だからといって、
他の奴らに聞かれないとは限らない。

「うるせぇバカ。」

「いってぇ、蹴るなよ司。」

総二郎のケツを軽く蹴ってやった俺に、
あきらがマジな顔で言いやがる。

「司、牧野とはどうなってる?」

「あ?」

「進展ありか?」

「……ねーよ。」

一年前のあの日から、俺らの関係は進みも下がりもしてねぇ。

「好きになったら牧野から告るから、それまで近寄るなって言われたんだろ?クッ…まじで半端ねーなあいつ。」

「総二郎、もう一発蹴られてーのか?」

「落ち着けって司。
でもよ、俺から見たら、お前ら悪くねーと思うんだけどな。
まぁ、これだけ司におされても落ちねぇ牧野がある意味すげぇよ。」


確かにそうだ。
あの日、振られたとはいえ、
この1年俺の気持ちは変わることなく、いやむしろ
あいつへの想いは膨らむ一方で、

それをなにかにつけて牧野に伝えてきたつもりだ。
あいつが言う、
「好きになったら自分から言う。」
というのを待ちながら、

おまえは俺の特別な女だと自覚させるよう、
態度で示してきたつもりだ。





はじめてあいつと話したのは俺が大学一年のとき。
英徳高校の卒業式のダンスパーティーで、
大勢の生徒を前に類が牧野の手を取り踊ったのがきっかけだった。

どこかの令嬢か?
と、気にも止めなかったが、その後牧野が英徳大学に来てからは会う機会が増えていった。

いつも俺に対して突っかかってくる女も初めてだったし、俺を道明寺財閥の御曹司としてではなく、一人の男として見ている女はこいつぐらいだった。

だから、俺が牧野に落ちるのも時間はかからなかった。
唯一、気になったのは、牧野の初恋が類で、
類には一度好きだと告白したこともあるという。

その時類には静という好きな女がいたから、
恋愛に発展することはなかったけれど、
他の奴らが見れば疑うくらい、類と牧野の
「友情」というやつは理解し難い。

いつ類に取られるか…と焦った俺は、
あいつを好きだと自覚してすぐに
マンションに押し掛けて告白し、
こっぴどく振られたのだ。




今思えば、あれは失敗だったな。
好きだという気持ちだけで暴走しまくった。

でも、一年たった今、
あの頃よりも強く思う。

牧野が好きだ。



だから、俺はいつまでも待つつもりなんだよ。
あいつがイエスと言ってくる日まで。




良ければポチっと応援お願い致します★


ジレジレ、甘々の新連載でいきまーす。
毎日更新はできないと思いますので、
時々、お暇なときに覗いてみてください★

 2020_01_23




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プロフィール

司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

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