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今日は都内のホテルで、神崎社長が運営するショッピングサイトのパーティーが開かれている。
そこで、あたしたちが開発にお手伝いした化粧品のPRとショッピングサイトでの販売が発表されることになっていた。

つい先日、一ノ宮さんにはお付き合いを解消したいと伝えたばかり。
『とにかく、今は牧野さんの気持ちを尊重して友達に戻るけど、』
と呆気なく了承してくれた彼だけど、
『いつでも、彼氏に戻れる距離にいさせてよ。
男として意識してもらえる様に頑張るからさ、』
と、あたしには勿体無い言葉をもらった。



仕事が終わり、パーティー会場であるホテルへと向かう。
一緒に仕事をした仲間と会うのも久しぶりで、待ち合わせであるロビーで一人立っていると、タイトなロングドレスをまとった素敵な女性と目があった。

どこかで会ったことがあるような……。

あたしが脳内の記憶を総動員している間に、女性があたしへと近付いてきた。

「こんにちは。
この間はどうも。」

「あ、こんにちは。」

女性が微笑むのを見て思い出した。
レストランで道明寺と一緒にいた女性だ。

「お一人?」

「いえ、ここで待ち合わせです。」

「そう。
もしかして、この間一緒にいた彼かしら?」

「え?」

一瞬言葉に詰まったが、一ノ宮さんの事だと気付き、

「いえ、違います。」
と、答えたあと、

「神崎社長のパーティーへいらっしゃるんですか?」
と、聞いてみる。

「ええ、そう。
もうすく司も来るはずなんだけど。」

「道明寺も?」

「道明寺…?…それって司のこと?」

「あっ、すみません!呼び捨てにして。」

いつもの癖であいつを呼び捨てにしてしまったあたしに、女性は
「いいの、いいの。気にしないで。」
と、笑ったあと、
「司のバカ、ドSかと思ってたけど、案外Mも入ってるのね。」
と、意味の分からないことを呟いて楽しそうに笑った。

「お名前伺ってもいいかしら。」

「あっ、牧野つくしです。」

「つくしちゃん?かわいい名前ね。」

「ありがとうございます。
失礼ですが、……」

「あ、私はど、……椿って呼んで。」

「椿さん…。」

「仕事の関係でほとんど海外にいるけど、時々こうして帰ってくるの。
日本にいる時はほとんど司にくっついて出歩いてるわ。
司への情報収集は私の生き甲斐だから。」

最後の言葉はピンと来なかったけれど、女性と道明寺が深い関係だと言うことは分かる。

美人でスタイルも良くて、性格もよし。
雑誌の中から抜け出してきたような素敵な女性。

道明寺が好きになるのはこういう女性なんだろう。
大人で落ち着いていてかっこいい。

どれを取ってもあたしとは正反対。

「つくしちゃん、どうかした?」

「…いえ。」

「私、お先に行くわね。
また、会いましょう。」

「はい、……また。」


もう出来ることなら……会いたくない。
会ったら、思い知らされる。
道明寺が遠い存在だって事を。






パーティーがはじまってすぐ、その広い会場で道明寺を見つけた。
相変わらずその目立つオーラはどこにいても分かる。

一瞬、道明寺と目があったような気がした。
けれど、すぐに反らされた。

道明寺の隣には椿さんがいて、みんなそれが当たり前のように挨拶を交わしていく。
道明寺と椿さんは公認の仲。

『お似合いだな。』

そう呟いたあたしの目がなぜかかすむ。
会場の中もお料理もお酒のグラスも、どれもグラグラと揺れている。

涙で目が潤んでいるんだと気付くまでに数秒。
そして、もう一つ気付いた。

この間からの胸のざわつきは道明寺が原因だと。



いつも応援ありがとうございます。


小話11ですが、きっとお叱りを受けるだろうと思っていましたが、意外にも皆さんお優しい!
唯一、お一人『なんてモノを書いてんだっ』と、怒っておられました。
理由を読み進めると、
『このクソ暑い毎日なのに、小話もクソ熱いじゃないかっ。』というお叱り。
真摯にお受けいたしました。

連日、猛暑が続いており大変かと思われますが、どうぞ皆様お体ご自愛くださいませ。
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 2018_07_19


小話 11

Category: 小話  



昨夜はあのまま牧野の部屋に泊まった。
そして、今日はいつもより1時間早く起きて、熱いシャワーを頭から浴びている。

昨日の牧野はいつもと違った。
酒のせいなのか、総二郎のアホなアドバイスがきいたのか、いつもよりガードが低く俺の攻めを受け入れてくれる。

愛撫だけでたっぷり時間をかけた牧野の体は、指を入れただけでトロトロと溢れ出すほど敏感になっていた。

そんな牧野を見て限界の俺。
そろそろ中に挿れてもいいか……と準備をしようとした時、牧野が動いた。

かなり張りつめている俺のものを口に含みゆっくりと上下しはじめた牧野。
その動きに、堪らず声が漏れる。

「牧野、今日はヤバイ。
もうおまえに挿れたい。」

そんな俺の要求なんてあっけなく無視されて、下半身は熱を増す一方。
何年たっても牧野のその行為は、慎重にゆっくりと俺を傷付けないように優しくて、それがかえって焦らされているようで堪らない。
ずっとしてて欲しい…そんな気持ちにもなるが、もう限界がきてる。

「牧野、マジでヤバイ。」

「……ん。」

「んっ……もう、…離せ。」

「……気持ちぃ?」


バカ。
この状況でその上目遣いで、そんなこと聞くんじゃねーよ。
必死に抑えてたものが一気に溢れ出す。

「ヤバイっ、マジで離せ。」

「…。」

「うっ、…んっ、……それ以上したら出るぞ。」

これ以上はマジでヤバイ。。
そう思い牧野の身体を持ち上げようとした時、牧野の口内からゆっくりと引き離された俺のものは限界を迎え、先から白濁の汁が溢れ出した。

「バカっ、だから言っただろっ。
口あけろ。ごめんっ、牧野。」

かろうじて口内ではイッてない。
でも、口から抜ける寸前に漏れたのは自覚してる。

「ごめん、我慢できなかった。」

「大丈夫。」

「大丈夫じゃねーよっ。
おまえにそんなことさせたくねぇ。」

「うん、わかってる。
でも、大丈夫、……道明寺のものだから。」

俺はこの言葉を聞いて、
二度とこいつには2杯以上の酒は飲ませねぇって誓った。







熱いシャワーを浴びながら、そんな昨夜のことを思い出し再び熱をおびる下半身。
どんだけ俺は牧野に惚れてんだよ。


バスルームから出るとキッチンで牧野が朝ごはんの用意をしている。
そんなこいつに近付くと後ろから抱きしめて首に顔を埋めた。

「道明寺、仕事に遅れるよ。」

「ん。」

「ちょっと、聞いてる?」

「ああ。でももう少しだけ。」

俺より先にシャワーに入った牧野の体からは俺と同じボディーソープの香りがする。

「牧野。」

「ん?」

「……無理すんな。」

「……え?」

「総二郎がくだらねぇこと言ったかもしれねーけどよ、」

「…うん、」

「俺がおまえのこと一番よく知ってる。
口に出さなくても、おまえがちゃんと俺のこと
愛してるってのは分かってるからよ。」

牧野の頭のてっぺんに俺の顎を乗せながらそう言ってやると、

「あ、あ、愛してるって…。」
と、相変わらずおもしれぇ反応のこいつ。

「愛してねーのかよ。」

「……愛してるよ。」

「だろ?」

「バカじゃないの朝から。
早く用意しなさいよっ。
遅刻したら西田さんに怒られるのあたしなんだから。」

「愛してる、牧野。」

「だーからっ、分かったから、早く準備してっ。」



総二郎。
今回は許してやる。
でも、おまえのアドバイスはいらねーんだよ。
俺らは俺ららしく成長してるから、
心配すんな。




いつも応援ありがとうございます!

ヤバイものが書き上がりました。
書きながら反省してます。
 2018_07_17


小話 10

Category: 小話  



小話9の続きです。

………………………………………


道明寺はあれから20分ほどでお店に来た。

その頃にはあたしは完全に酔っ払い。
道明寺がいつも『2杯までにしておけ』という意味がやっと分かる。

あたしの顔を見るなり、
「俺のいない所で呑ますんじゃねーよ。」
と、西門さんに軽く蹴りを入れたあと、あたしの横にドカッと座った。

「どんだけ呑んだ?」

「…3杯。」

「ったく、相手が総二郎じゃなきゃ説教もんだぞ。」

「ごめん。」

さすがに自分でも酔ってることが分かるだけに、ここは素直に謝るしかない。

道明寺の腕に自分の腕を絡ませながら店を出ると、プライベートで道明寺が乗っている車が店の前に停められていた。

「おまえも乗ってくか?」
西門さんに道明寺がそう聞くと、

「いや、俺はいい。もう一つ約束があるからよ。」
と、相変わらずの返事をして笑いながらあたしたちを見送ってくれた。






「道明寺、こんな時間にごめんね。」

助手席から運転する道明寺にそう言うと、
無言でこの人はあたしの頭をクシャッと撫でた。

運転する横顔も、慣れた手付きも、どれも相変わらず見惚れるほど格好いい。

そんな道明寺をじっと見つめるあたしに、
「どうした?」
と、チラッと視線を向ける。

「道明寺、……西門さんがね……」

「総二郎が?」

「西門さんが……、」

あんたにちゃんと想いをぶつけろって。
道明寺は凄く喜ぶって。
ほんと?

そう心の中で呟く。




あたしのマンションについた頃にはもう12時近く。
明日も仕事だって分かってるけど、このままこの人と離れたくない。

鍵を開けて玄関に入ったところで、
「道明寺…」
と、小さく呼んだ。

「ん?どうした?具合悪いか?」

「違う。
今日、……泊まっていける?」

「……牧野?」

いつもあたしからこんなお誘いしたことはない。
あたしがする前に道明寺が強引に決めるから。
でも、今日はちゃんと言葉にして、

「泊まっていける?」
と、もう一度聞く。

「ああ。」

その返事と共にいつものように優しいキスが降ってきた。
初めてしたキスは何年前だっただろう。
でも、あの時と変わらず道明寺のキスはいつも優しい。
あたしに合わせてくれてるのが分かるキスに、今日はあたしもきちんと答える。

薄く開いた唇から道明寺の舌がすべりこんでくる。
それだけで全身が痺れてくるのは酔ってるだけだからではない。

道明寺の首に腕を回し、口内をねっとりと動き回る道明寺の舌に身を任せていると、一度唇を離した道明寺が、

「今日のおまえ、いつもと違うな。」
と、呟いた。

「……別に。」

「なんか、いつもより積極的じゃねぇ?」
からかう様に言った道明寺は、次に言ったあたしの言葉で一気に怖い顔に変わった。

「…西門さんに……」

そう言ったとたん、道明寺は眉間にシワを寄せて怒ったような顔で、あたしを腰から抱き上げた。
そして、ズンズンと部屋に入り、ベッドの上にあたしを座らせる。

「道明寺?」

「おまえ、さっきから総二郎が…って言うけど、あいつになんかされたか?」

「へ?」

「総二郎がおまえになんかしたのかよっ。」

玄関の明かりだけが差し込むベッドルーム。
その暗さだけでも分かる。
道明寺が怒ってる事。

「違うっ、ちがうよ。」

「ちゃんと話せ。」

「だから、違うって。
西門さんに、言われたの。」

「何、言われたんだよ。」

「……あんたに、ちゃんと好きだって伝えろって。
ちゃんと言葉と態度で伝えろって。」

「あ?」

突然の告白に拍子抜けしたようにベッドに座り込む道明寺に、西門さんと話した内容をポツリポツリと話し出すあたし。

全部話したあと、
「心臓が持たねぇ。」
と、道明寺が呟いた。

「え?」

「ったく、おまえは。
総二郎と二人で呑んで、寝落ち寸前まで呑みやがって、挙げ句の果にあいつの名前ばっか言うからよ、マジで…心配になるだろーが。」

今日は素直になって気持ちを伝えて、この人を喜ばせたいと思ったのに、結局はまた心配かけて不安にさせて。

いつもそんな風に、道明寺を満たせてあげれないあたし。


「道明寺…、」

「ん?」

「どうしたら、あたし、あんたを満たせる?」

「…牧野?」

「こんなに好きで堪んないのに、こんなに触れていたくて堪らないのに、いつもうまく言えなくて、だから、いつもあんたが心配し…」

そこまで言ったあたしに、道明寺が噛み付くようなキスをした。

さっきまでの優しいキスじゃなくて、激しくて余裕がなくて、それでいて
……やっぱり優しいキス。

そして、

「続きはあとでゆっくり聞いてやる。
だから、今は、……おまえが欲しい。」




西門さん。
やっぱりあたし、上手に伝えられなかった。
でも、それでも、8対2なんかじゃない。
それだけは言えるの。
だって、こんなにあたしの想いは溢れてるんだから。



応援いつもありがとうございます!

えーと、もう一話続きそうです。。。
 2018_07_15


小話 9

Category: 小話  




「西門さんと二人で呑むなんてなんか変なカンジ……。」

洒落た店の個室。
目の前には、ほろ酔い加減で頬を赤く染め、潤んだ目で俺を見つめる女。

少しでも好意を抱いていれば、このままお持ち帰りするだろうこの状況も、相手がこの女だから絶対あり得ない。

それは親友に殺されかねない自殺行為だから。



「優紀、西門さんと食事するの凄く楽しみにしてたのになぁ。」

「誘われればいつでもOKだけどね俺は。」

「ほんとっ、軽いんだから西門さんは。」

今日は牧野のダチの優希ちゃんに誘われて食事に来る予定だった。
はじめるきっかけは俺だったとしても、優紀ちゃんは茶道の道に興味を持ってくれて、今では月一で俺の教室にも通ってくれている。

『今度食事に行きませんか?』

そんな優紀ちゃんからの誘いを受けたのは先月で、今日がまちに待ったデートの日だったはずなのに、親戚の不幸で来れなくなった。

そして、このドタキャンを急遽埋めたのは優紀ちゃんの親友でもあり、司が目の中に入れても痛くないほど惚れてる牧野。


「牧野、次は何のむ?」

「えー、どうしよ。
もう一杯くらい大丈夫かな。」

えへへーなんて笑いながらメニューを眺める牧野は、相変わらず俺から見たらちんちくりんの女だが、綺麗な肌や髪、童顔の顔なんかはたぶん男にモテるだろうなと思わせるには十分だ。

「こんなに呑んだの久しぶりかも。」
3杯目の酒を注文したあとそう呟く牧野。

「普段はのまねーの?」

「呑んでも2杯までって道明寺がうるさいから。」

「マジかよ。」

何年たっても司は牧野に過保護で甘々だ。
俺らからしてみれば胸焼けするほどこいつにベタぼれなのに、当の本人が超がつくほど鈍感だから、相変わらず喧嘩ばっかしてやがる。

「司はお前が大事なんだろ。」

「そーなのかなー。そういうもんなの?
西門さんも彼女に対してそんなかんじ?」

「まさか。」

即答する俺に、
「でしょ。ほらね。」
と、口を尖らせる牧野。

「束縛しすぎでしょ道明寺は。
酒は飲むな、男と話すな、男に笑いかけるなって、そんな事してたら働けないっつーの。」

「まぁ、そんなに怒んなって。
それだけおまえに惚れてるってことだろ。」

「惚れてるって……。」

今更、顔を赤くして照れるなよ。
司だってきちんとおまえに伝えてるんだろ?
それだけおまえに惚れてるって。

「牧野はどうなんだよ。」

「なにが?」

「司のこと束縛したりしねーの?」

「ないない。そんな事、しないよ。」

即答するこの女はこういう所が鈍感だっつーんだよ。

「おまえさ、司にきちんと伝えてるか?」

「ん?なにを?」

「好きだってこと。」

「はぁ?」

酒で赤い頬を更に赤くして顔を上げるこいつに言ってやる。

「昔からおまえら見てて思うんだけどよ、
俺らの前でも司はきちんとおまえに想いを伝えてんのに、牧野はいつもはぐらかすだろ。
二人のときもそーなのかよ。
だとしたら、司は我慢してんじゃねーの?」

「……我慢?」

「束縛だって、牧野がちゃんと司に好きだから心配すんなって言ってやれば落ち着くだろ。
おまえがそれをはぐらかすから司はいつも不安なんじゃねーのかな。」


別に牧野に説教するつもりなんてねーよ。
でも、もしも、もしも俺が司の立場だったら、
同じかも知れねーから。


「俺からしたら、おまえらは8対2ってとこか。」

「8対2?」

「お互いの想いの強さっつーのが、司が8でおまえが2。」

俺のその言葉に、
「そんな事ないっ。」
と、今日一番のでかい声を上げる牧野。

「あたしの方が……」

「ん?」

「あたしの方が強いくらいだから。」

消えそうな声でそんな事を言うこいつを見てるとなんとなく分かる。
司が堪らなく牧野に惚れる事を。

「牧野、今から司がおまえのことどれくらい大事に想ってるか見せてやる。
だから、おまえも帰ったら司にきちんと伝えてやれ。」

俺はそう言うと携帯で司にコールする。
時計を見れば10時過ぎ。
会社にいるか、それとも邸か。


『おう、どうした?』
コール3回目で司が出た。

「司、おまえ今どこにいる?」

「邸に帰ってきてる。」

「少し出てこねぇ?呑んでるからよ。」

いつものように誘う俺に、
「行かねーよ。明日も早いんだよ。」
と、つれない返事。

そんな司に爆弾投下。

「牧野が酔って寝落ちしそうだぞ。」

「あ?」

「俺がマンションまで送ってやろうか?」

「てめぇ、ふざけんなっ。
どこにいる、すぐ行くから待ってろ。
どうしてそーなったかは、あとで聞く。」

店の場所を説明する間も、司の声の後ろから鍵の音やエンジンをかける音が響く。


「道明寺、来るって?」

「ああ。
牧野の名前だしたらすっ飛んで来るってよ。
なぁ?言ったとおりだろ?
ぜってぇおまえに手なんか出さねぇ俺でさえ、おまえと二人でいるって言っただけでぶっ殺される勢いだからな。」

「ちょっと、それ、なんか失礼なんですけど。」

「まぁ、こんなに分かりやすい司なんだから、おまえももっと分かりやすく優しくしてやれよ。
司はたぶんすげぇ喜ぶぞ。」


だろ?司。
今日はおまえに黙って牧野を独占した罰として、
少しだけおまえに加勢してやるよ。




応援いつもありがとうございます!

この続きも書きたいと思っています。
 2018_07_14






牧野さんと付き合ってから、いや彼女と知り合ってから初めて、彼女から着信があった。

「今日、空いてますか?」

嬉しい誘いのはずなのに、
すぐに返事が出来なかった。
なぜなら、僕たちの関係が変わりそうで怖かったから。



待ち合わせ場所に来た牧野さんは、淡いブルーのシャツに細身のパンツ。髪は一つにまとめ、いつものように清潔感が溢れている。
僕はそんな彼女にはじめから惹かれていた。


「珍しいね、牧野さんから電話くれるなんて。」

「……一ノ宮さんにお話があって。」

僕の予感は的中したようだ。

「この間のキスのこと?」

「えっ?」

「あんな不意打ちでしたから怒った?」

「いえっ、そうじゃなくて。」

「じゃあ、……悲しかった?」

「え?」

「キスしたあと、牧野さん泣きそうだったから。」


軽く触れるだけのキスだった。
でも、司への牽制の意味も込めて顔を近づけたまま彼女から離れなかった。

それで確信した。
司は間違いなく牧野さんに好意を持っている。
それが知りたかったはずなのに、
僕は知りたくない事まで知ることになってしまった。

牧野さんの泣きそうな顔を見れば分かる。
これ以上は僕たちは進めないことを。



「一ノ宮さん、ごめんなさい。
あたし、このまま一ノ宮さんとお付き合いすることが出来そうになくて」

「理由を聞いてもいいかな。」 

「あたし、……恋愛には不向きで……、
自分でも分からないんです。
好きっていう気持ちがどこからが恋愛で、どこからがそうじゃないのか。」

「それってつまり、僕のことが恋愛対象として、好きかどうかはっきりしないってこと?」

「一ノ宮さんのことは好きです。
でも、……手をつないだり、キスしたり、…それ以上のことを……そういうのが想像出来なくて…。」

「想像なんてしなくていいよ。
やってみればいいんだよ。」

「えっ!」

漆黒の瞳を大きく開け、すごく驚いた顔で僕を見る彼女。
僕は彼女のこういう所も好きで堪らないのだと思う。

「嘘ウソ。今のは冗談。
でも、それって男としては傷つくなぁ。
人としては好きだけど、男としてはダメってことでしょ。」

「…そういう訳じゃ……」

「もしかして、他に好きな人でもいる?」

「えっ、いません!」

即答で完全否定してくれる彼女に思わず笑ってしまう。

「例えば、司とか。」

「道明寺?…あり得ない。」


もしかしたら二人はもう、互いの気持ちを確認し合ったのかもしれない、なんて彼女を少しでも疑った自分が情けない。

司が彼女を好きなのは確定事項だが、彼女はそうじゃないのかもしれない。
いや、もしかしたら自分の気持ちに気付いていないだけか。

どちらにしても、目の前の彼女を簡単に手放すつもりなんてないよ。
欲しいなら奪いに来いよ司。



応援ありがとうございます!


この度の豪雨により被害にあわれた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
このような大変な時に、被災地からコメントありがとうございます。
私の文章を楽しみにして頂けてるなんて、ほんと嬉しい限りです。

遠い地から私に何が出来るのかずっと考えております。
ささやかな募金とお話の更新が唯一私が皆さんと繋がるものですので、
一話一話エールを込めて送らせて頂きます。
 2018_07_14





胸のざわつきがさっきより激しくなっている。
それなのに、タクシーの後部座席に沈み込む体は、力が抜けて脱力感に襲われる。

どうしたんだろうあたし。

一ノ宮さんに……キスされた。
軽く触れるだけのキス。

本当は嬉しいはずなのに、
なぜかいけないことをしてしまったように感じている。

付き合ってるんだからキスぐらいするよね。
いくらあたしだって、この歳になれば、少ないけれどそういう経験はしてきた。

なのに、なぜこんなに苦しいのか。
それは……。


タクシーの窓からマンションが見えてきた頃、
その答えがなんとなく分かった。


一ノ宮さんはいい人。
すごくいい人だけど、
あたしにとって、恋愛で言う、特別な存在ではないのかもしれない。

一緒にいて、楽しくて癒やされて落ち着くけれど、キスをされて初めて分かった。
彼とそういう事は出来そうにない。

こんなふうに、今頃気付くなんて、
バカなあたし。
でも、気付いてしまった以上、この気持ちを隠せない、もっとバカなあたし。





………………………………………………………


久しぶりに帰国した日本。
仕事帰りの司を引き連れてお気に入りのレストランに来てみれば、なんだか面白い展開に遭遇しちゃった。

席につくなり司が誰かと挨拶するのを見て、私も軽く会釈。
その後も司は事あるごとにその二人に視線を送り落ち着かない様子だから、

「どういう知り合い?」
と、聞いてみる。

「あ?……ダチだ。学生の頃のダチ。」

そう答える司は不機嫌とも違う、怒ってるとも違う、私が初めて見るような顔。

「どっちが司のお友達なの?
彼?彼女?」

「……男の方。NYで一緒だった。」

「じゃあ、彼女は?」

同じ流れで聞いたっていうのに、分かりやすいんだからあんたは。
さっきまで見ないように頑張っていた癖に、
一度見てしまうと彼女から目を離せないバカ。

「…………英徳の後輩だ。」
そう呟いた司は、ようやく彼女から目を離し小さく溜息をつく。


あらまぁ、司。
あなた禁断の領域に入ってしまったのね。


浮いた話なんて聞いたこともない弟が、いつの間にか男として成長していて、嬉しいわよ。
でも、どうやら恋は実らないようね。


それを見せ付けるかのように
タクシーに乗り込む彼女に彼が短くキスをした。
恋人どうしの甘さはないけれど、
キスをする特権は彼が握っている。


司、あなたにとって唯一うまくいかないものがあるとしたら、それは恋愛かもしれない。
自分だけじゃ、どうにもならないものね。


邸までの車の中、
無言で窓の外ばかり見ている司に、
せいぜい苦しみなさ〜いと、
エールを送るスパルタな私。



応援ありがとうございます!
 2018_07_13





一ノ宮さんと正式に付き合うようになって2ヶ月。

一ノ宮さんが他の女性と週刊誌に撮られるなんてハプニングはあったけれど、それでもあたしたちの関係は壊れていない。

壊れていない……と言うか、変化なしと言ったほうがいいのか。
恋人らしいことは何一つない。

それに不満も不安も感じていないあたしは恋愛に不向きな性格かもしれない。


お昼の休憩時、同僚とご飯を食べているとあたしの携帯が短く鳴った。

『今日、ディナーに行きませんか?』

一ノ宮さんからのお誘い。
今日の夜は空いている。
でも、すぐに返事が出来ないのはなぜだろう。

しばらく考えて、休憩時間が終わるギリギリに
『はい。大丈夫です。』
と、送信した。






一ノ宮さんと食事に入ったお店は、あたしでもその名前くらいは知っている高級フレンチの老舗。

「ここですか?」
と、聞くあたしに、

「予約してあるから。」
と、優しく笑う一ノ宮さん。

こんなお店に来れるなんて、もちろん嬉しい。
嬉しいに決まっているけど、
あたしにはもっと庶民的なところがお似合い。

渡されたコースメニューもワインの種類もチンプンカンプン。
すべて一ノ宮さんがリードしてくれるのを見ているしかできない。
呑めない一ノ宮さんも食事に合うワインを一杯だけセレクト。テイスティングも様になって格好いい。

そんな彼にじっと見惚れているあたしを見て、クスッと笑ったあと、一ノ宮さんの視線があたしの後方に移り、
「おっ、」と小さく声を漏らした。

それにつられてあたしが振り向くと、店の入り口に否応でも目立つ人物が。

道明寺。
その隣にはスラリと背の高い綺麗な女性。
道明寺よりは少し年上に見えるけれど、道明寺と比べても引けを取らないオーラがヒシヒシと伝わってくる。

あたしたちの席から少し離れた所に案内された道明寺は、慣れた手付きで彼女の上着を受け取りウエイターに手渡す。
そして、自分も席につこうとしたとき、あたしたちと視線が絡んだ。

一ノ宮さんが軽く手を上げて挨拶すると、道明寺も「おう。」と小さく答える。
そしてそれを見た彼女もニコリと微笑んだ。





料理はどれも素晴らしく美味しかった。
一ノ宮さんとの会話も楽しかった。
でも、
なぜか、
気持ちがソワソワして落ち着かない。

そんなあたしに一ノ宮さんが言った。

「牧野さん、今日は遅くまでゆっくり出来る?」
唐突に聞かれたその言葉に、

「え?」
と、顔をあげるあたし。

「よかったら、僕の部屋にこない?」

「……。」

「いや、別に場所はどこでもいいんだけど、このまま帰るのは寂しいなぁって。」

「…はい。」

「……今のは、OKって意味の『はい』かな?」

「え?」

「違う?」

「えっ、はい。…いえっ、そうじゃなくて、」

噛み合わないあたしたちの会話。
自分でもどう答えたらいいのか分からない。

そんなあたしの後ろから、
「お先に。」
と、声がした。

振り向くと道明寺が立っている。

「俺たちもそろそろ帰るところ。」
一ノ宮さんがそう答えると、

「またな。」
道明寺がそう短く答えて彼女と店を出ていった。



道明寺が出ていってすぐ、あたしたちも店を後にした。
最初から呑むつもりだったのか、今日は自分の車で来ていない一ノ宮さんは店の前でタクシーを止めた。

『僕の部屋に来ない?』

さっきの一ノ宮さんの言葉が頭によぎる。

開けられたタクシーの前で立ち止まるあたしに、一ノ宮さんが
「牧野さん?」
と、呼んだ。

「あのぉ、」

「牧野さん?どうかした?」

「あのぉ、……あたし……、
酔っちゃったみたいで、……ごめんなさい。
今日は帰ります。」

そう。
飲み慣れないワインで酔ったのかもしれない。
さっきから胸がソワソワして落ち着かない。

そんなあたしに、

「……分かったよ。
このままこの車に乗って帰れる?」
と、優しく聞く彼。

「一ノ宮さんは?」

「別のタクシー捕まえるから大丈夫。」
そう言ったあと、
ほんの少し視線を泳がせた一ノ宮さんは、

「でも、……
これぐらいはいいかな?」
と、意味の分からないことを言った。

そして、その意味を考える時間もないほど突然に何かがあたしの唇をかすめた。


それがキス…だと気付くのに数秒。
唇が触れて、離れたあとも、一ノ宮さんの顔はあたしの至近距離で止まったまま。
まるで、キスが続いているかのように。


「いち……のみや…さん?」

「ふっ……ごめん。
こんな形でしたくなかったけど。
牽制しとかなきゃと思ってね。」

と、今度は本当に意味の分からないことを言った。



いつも応援ありがとうございます!
 2018_07_11





一ノ宮さんと入ったのはあたしのマンションの近くにあるファミレス。

この時間はまだ家族連れやカップル、仕事帰りのサラリーマンで混んでいて、それがなぜかあたしをホッとさせた。


「食事は?」
一ノ宮さんにそう聞かれ、

「大丈夫です。コーヒーだけで。」
そう答えながら、今日はカレーは作れそうにないなぁなんて苦笑するあたし。


コーヒーが運ばれてきたあと一ノ宮さんが罰が悪そうに切り出した。

「ごめんね。」

「え?」

「週刊誌の写真、見たでしょ。
ほんとごめん。
言い訳は格好悪いけど、させてほしい。」

そう言った一ノ宮さんは、
知り合い数人と食事をしていた席に彼女たちが来たこと。
他の人たちはみんな飲んでいたけれど、
自分は飲まなかったから、帰りに同じ方向だった彼女を送る羽目になったこと。
写真を撮られたのは店を出てすぐ。
そのあと、彼女をタクシーに一人乗せて見送ったこと。

一ノ宮さんのまじめで紳士な性格そのまま、まっすぐあたしを見て説明してくれる。
そして、最後に、
「彼女とは何もないよ。
僕が好きなのは、…牧野さんだから。」
と、照れたように言った。


「あー、あのぉ、ありがとうございました。」

「え?」

「わざわざ説明しに来てくれて。」
あたしがそう言うと、

「当然でしょ。彼女なんだから。」
と、少しだけ怒ったように言ったあと

「もっと怒ってくれていいのに。
なんだか、拍子抜けするよ。」
と、困った顔で言う。

こういう時は怒るのか。
あんな際どい写真なら普通のカップルなら修羅場になってもおかしくないのだろうか。

そんなことをバカみたいに考えていると、
「ところで、」
と一ノ宮さんが言った。

「司はなんであそこにいたの?」

「え?
あっ、道明寺は、……なんでしょうね……
あの人、なにしに来たんだろう。」

あたしも今更ながらよく分からない。

「読書週間だ…とか言ってましたけど、」

「読書週間?」

「はい。…いえっ、別に何でもないです。」

どう説明したらいいのか、説明するほどの事でもないし……そんなあたしを見て一ノ宮さんが言った。

「前から気になってたんだけど、
牧野さんと司ってどういう関係?」

「え?どういうって」

「同じ英徳だったのは知ってる。
だけど、顔見知りではないって前に話してたよね。」

「…まぁ、そうですけど。」

「だとしたら、この間神崎社長と会食したときに仲良くなったってことかな?」

「仲良くって……道明寺とあたしは別に仲良くは、」

思いっきり否定しようと思ったあたしの言葉を遮るように、

「それ、それだよ。」
と、一ノ宮さんが訳のわからないことを言う。

「え?」

「牧野さん司のこと道明寺って呼ぶでしょ。
さっきもマンションの前で道明寺って司を呼んで、司もそれを普通に受け入れてた。
俺の知ってる司からしたら、あり得ないなぁって。
……二人はどういう関係?」


どういう関係……と聞かれても、
あたしと道明寺はただの、ただの……。


「もしかして、昔の恋人?」

「はぁ?!
ない、ない、ないですからっ。それは。」

「ほんと?」

「ほんとですっ!」


あいつを好きだったことはある。
たった数カ月だったけど。
でも、付き合うなんてこと、有り得ないし想像もしたこともない。

「あたしと道明寺は……英徳の時に少しだけ話す時期があったくらいで、それだけです。
一ノ宮さんが考えているような事は何もありません。」

「そっか、良かった。
司相手じゃ相当厳しいなぁと思ってたから。」


そう言って笑う一ノ宮さん。
一ノ宮さんが道明寺の話ばかりするから、あたしもなぜかあいつの顔が頭から離れない。

あの人は今日、あたしのマンションにどうして来たんだろう。
もしかして、
あたしを心配して来たのだろうか?



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 2018_07_09





俺の脳内を占領していたあいつは、もうダチの彼女。
いくら俺でも恋愛のルールくらいは分かってる。
もう、あいつには近づくな……ということを。

それなのに、ようやく整理しかけたこの気持ちに波風が立ちやがる。

オフィスで開いたパソコンに大学時代のダチからメールが来ていた。
仕事の内容の文章の最後に、
『一ノ宮もおとなしい顔してやるよな。』
という1文。

はじめはどういう意味か分からなかったが、仕事が終わる頃になって一ノ宮の名前が世間を賑わせていることを知った。

若い奴らに人気のアイドルグループの一人と一ノ宮が深夜のデート現場を週刊誌にスクープされたのだ。
酔った女が一ノ宮の体に寄り添う姿は、さすがに『友達』と言い切るには無理がある。

「何やってんだよあいつは。」
思わず漏れた愚痴に、

「どうかされましたか。」
と、西田が顔を上げた。

「いや、なんでもねぇ。
………西田、わりぃ。
今日は先に帰るわ。」

まだ途中の仕事を投げ出して帰り支度をする俺に、
「……了解しました。」
と、西田が大きく頷いた。






オフィスを出て向かった先は、前に酔ったあいつを送り届けたマンションの前。
ここに来てどーすんだよ、と自分にツッコミを入れながらも足は止まらず部屋の前まで来ていた。

牧野の部屋のチャイムを鳴らしても返事はなし。
時計を見れば8時過ぎたところ。
仕事ならとっくに終わってるはずだ。

携帯を取り出してあいつの番号を呼び出そうと思ったその時、
「道明寺?」
と、後ろから声がした。

振り向くと買い物袋を手に下げた牧野の姿。
そして俺を見てもう一度、
「道明寺、どうしたの?」
と、聞いた。

「おまえ、……大丈夫か?」

「はぁ?…大丈夫だけど、なにが?」

俺が予想していたのは落ち込んだこいつの姿だったのに、現実はケロッとしてやがる。
もしかして、こいつは知らねぇのか?

「飯は?飯は食ったか?」

「まだだけど。」

「食いに行くか?」

「なんで?カレー作ろうと思って買い物してきたから。」

この返事に俺は確信する。
こいつはたぶん一ノ宮のスキャンダルをしらねぇ。
知ってたらこの状況でカレーを作って食わねぇだろ。

「道明寺、仕事は?」

「あ?…今日は早く終わった。」

「そうなんだ。ところでなんか用だった?」

「いや、……あのよ、
おまえさ、……そのぉ、」

「なによっ、さっきから何?」

「だからっ、おまえ今日はテレビもネットも見るなよ。
いや、今日から1週間、テレビもネットも見るな!
特に、芸能ニュースとかゴシップ記事はデタラメばっかだから見る必要はねえ。
読書しろっ、今週は読書週間だっ。」

自分でもバカなこと言ってるのは分かってんだよ。
でも、こいつが知らねぇなら、そのままにしてやりてぇ。
余計な心配や不安は少しでも取り除いてやりてぇ。

「読書週間って、……なによそれ。
プッ……あんたってほんと、思考回路メチャクチャ。」

そう言って笑うこいつを見て、安心したその時、

「牧野さん。」
と、声がした。

「…一ノ宮さん?」

振り向くと、マンションの廊下の先に一ノ宮が立っている。
ゆっくりと俺らの側まで近付いてくる一ノ宮を見て、牧野の顔が辛そうに歪むのが分かった。

「おまえ、やっぱり知ってたのかよ。」
思わずそう呟く俺。

「牧野さん、少し話せるかな。」

「……はい。荷物置いてくるから待ってて。」

慌てて部屋の鍵を開ける牧野の背中に向かって俺は名前を読んだ。

「牧野、」

「道明寺、ごめん。
一ノ宮さんと二人にして。」
背中越しに牧野がそう言う。


分かってる。
こいつはダチの彼女だ。
俺がつべこべ言う立場じゃねえ。

ただ、これだけは言わせてもらう。

一ノ宮の横を通り過ぎる時、奴にだけ聞こえるように言ってやった。

「牧野を泣かせたら、ぶっ飛ばすぞ。」





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 2018_07_07


小話 8

Category: 小話  



邸に戻ったのが9時すぎ。
エントランスに迎えに出ていたタマが、
「つくしが待ってますよ。」
と言う。
それだけで仕事の疲れがぶっ飛ぶほど、俺は牧野に相変わらずベタ惚れだ。

足早に自室に戻り扉を開けると、部屋の中央にあるソファに座り、雑誌を読んでいる牧野。

「来てたのか。」

「あ、おかえり。」

「連絡しろよ、もっと早く帰ってきたのに。」

「あたしも少しだけ残業してきたから。」

社会人になって5年目。
もう俺らの付き合いも8年目。
来年はようやくこいつに道明寺の姓を名乗らせる事が決まってる。


牧野の隣に座りネクタイを緩めると、そんな俺をギロッと睨みながら、牧野が見ていた雑誌を俺の方に突き出した。

「なんか、すごく楽しそう。」

そう言いながら不機嫌そうに雑誌を指差す牧野につられて、俺もそのページを見ると、
そこには先日出席したパーティーの写真が数枚。

仕事の付き合いでどうしてもエスコートしなきゃならなかった女と腕を組んでレッドカーペットを歩いている写真もある。

一瞬、顔が緩んだ隙を撮られたようで、この写真だけを見ればタイトル通り『お似合いのカップル』かもな。


「さすがプロだな。」

「は?」

「自分では笑ったつもりなんてねーのに、一瞬の隙を見てシャッターをきるなんてこのカメラマンもプロだな。」

「はぁ?なにが一瞬の隙よ。
ずっとこんなデレデレ顔してたんじゃないの。」


そう言って雑誌の写真にベチッとデコピンをする牧野に、今まさにデレデレ顔が止まらない俺。

「おまえさ、もしかしてヤキモチ焼いてんの?」

「はぁ?」

「この写真見て拗ねてんのかよ。」

「馬鹿じゃないのっ。拗ねてなんかないから。
あたしはね、猛烈に怒ってるのっ。」

「だからヤキモチかよ。」

「違うっつーの!」

ムキになって怒るこいつにはわりぃけど、
会えると思ってなかった平日の夜に、こうしてこいつが隣に座ってるだけで全身が癒やされていく。

スーツの上着を脱ぎながら牧野の頭を軽く撫でてやると、

「道明寺、この間あたしに言ったこと覚えてる?」

「あ?」

「あたしが社員旅行で撮った写真見て、あんた言ったでしょ。気安く男と写真なんて撮るなって。」

「言った。」

「その言葉、そっくりそのままあんたに返すわ。
あたしがダメなのに、あんたは笑顔で写っても言い訳?」

「俺とおまえは別だろ。」

しれっとそう言い放つ俺に、小せぇ手で拳をつくり俺の胸をパンチしてくる牧野。
その手を掴み言ってやる。

「おまえは男に優しくされたら、すぐキョトキョトするだろ。
だから、おまえはダメだ。」

「キョトキョトなんてするかっつーの。
自分だって綺麗な女の人に腕組まれたらデレデレしてるくせにっ。
自分のことは棚に上げて、いつもあたしばっかり。そんなに信用ないかなあたしは。」

8年目の長い付き合いの俺ら。
こいつへの愛情はいつだってブレることなんてねえ。
だから、こいつには束縛だと言われようが関係ねぇ。ダメなものはだめだ。


「牧野、着替えてきてーんだけど。」

「ん、行ってきて。」

「行こうぜ。」

「はぁ?ちょっとっ!」

暴れるこいつを横抱きにして奥のクローゼットルームへと連れて行く。
電気を付けなくても、部屋は月明かりで薄っすらと明るい。

壁一面に貼られた鏡の前で牧野を下ろすと、
「なんであたしまで。」
とブツブツ言ってるこいつに、牧野の前でしか出さねぇ甘えた声でおねだり。

「牧野、脱がせて。」

「っ、バカじゃないの。」

「疲れてんだよ。
昨日も一昨日もほぼ徹夜だったんだぞ。
着替えぐらい手伝えよ。」

徹夜だったのは嘘じゃねぇ。
週末にこいつとゆっくり過ごすために。

「駄々っ子……。」

そう呟きながら俺のワイシャツのボタンを外していく牧野に、バカみてぇに体がほてる。

細い指で一つ一つボタンを外す仕草に堪らなくなってキスをすると、唇に力を入れて抵抗しやがる。

「まだ怒ってんのかよ。」

「怒ってますとも。」

「ブサイクになってるぞ。」

「っ、ブサイクで悪かったわね。
綺麗な女の人ばっかり見すぎてるからでしょ。」

また拗ねる牧野はいつだって俺の愛情を過小評価しすぎてる。
だから、クドいほど分かりやすく言ってやるしかねぇ。

「なぁ、おまえさっき言ったよな、『そんなに信用ないかなあたし』って。
その言葉、そのままおまえに返してやる。
そんなにおまえは俺のこと信用してねーのかよ。」

「……ん?」

「俺は目の前にどんな女が来ようとも、おまえに1番惚れてる。
他の女を見るたびに、おまえが1番好きだって再確認の毎日だ。」

「あ、あんた何言ってんの。」

「でも、おまえは違うだろ。」

「え?」

「他の男がいれば、その男のいい所を探して、それを褒めてそいつに優しくするだろ。
それはおまえの長所かもしんねぇけど、勘違いする男もいるだろ。
だから、おまえに他の男と接触してほしくねえ。
いい歳してバカかと言われても、俺はおまえのことだけは譲れねぇ。」

「……道明寺。」

「おまえを信用してねぇ訳じゃねーよ。
ただ、
俺は俺のやり方でおまえを守る。」


俺がありったけの想いをぶつけると、いつもこいつは泣きそうな顔をする。
そして、そのあと必ずいつも俺の欲しい言葉を言ってくれる。

「道明寺、あたし……、
あたしも、……ちゃんと道明寺だけだから。」

こんな言葉足らずの言葉でも、普段照れて言わねぇ牧野の口から聞けるだけで、それだけで十分。


ボタンが全部外されたワイシャツを脱ぎ捨てると、牧野の体を鏡の壁へと追い詰め、さっきは固く閉じられていた唇に自分の唇を押し当てる。

牧野のすべてを知っても、まだ足りない。
何年一緒にいても、こいつに触れることが最大の甘美。

「今日、泊まっていけるんだろ?」

「……行けない、明日も仕事だし。」

「なら、俺がおまえの部屋に行く。
その前に、……ここで……しようぜ。」

「ちょっ、…道明寺っ。」



fin




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 2018_07_05




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プロフィール

司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
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司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

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