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牧野から入手した携帯番号を前に、仕事が一段落した頃、躊躇なくボタンを押した。

「もしもし。」

「俺だ。」

「……はじめてかけるときくらい、名を名乗りなさいよ。」

「うるせぇ。今日、これから暇か?」

「はぁ?」

「飯、おごれ。」

「……ほんと、信じらんないこの人。」

俺からの電話をひとつも嬉しそうにしねぇおまえこそ、俺的には信じらんねぇと思いながらも、
「迎えに行くからどこにいる?」
と、言ったこともねぇ台詞を口にしている俺。



30分後、牧野を会社近くで拾い、こいつが行きつけだという店へと入った。

こじんまりとしたイタリアンのレストラン。
家族連れやカップルの客で賑わっている。
その中を俺らは店の一番奥へと案内された。

「つくし、仕事帰り?」
と、牧野へ親しげに声をかける店の女に、

「うん、そう。
優紀、今日のおすすめ適当にお願い。」
と、言ったあと、

「道明寺、嫌いなものないよね?」
と、俺に聞く。

「庶民の味はたいてい口に合わねぇ。」

「あんたって人は……。
ここのシェフは本場のイタリアンで何年も修行してきた人だから大丈夫。
こちらはシェフの奥さん。あたしの幼馴染なの。」

「どうも、はじめまして。」

牧野に紹介されて店の女が俺に頭を下げたあと、
「二人で予約って言うから一ノ宮さんとくるのかと思ったのに。」
と、牧野に小声で言うのが聞こえた。

女が店の奥に行ったのを見て、俺は牧野に言う。

「一ノ宮もここの常連か?」

「ん?一ノ宮さん?
一回だけあたしが連れてきた事あるけど、なんで?」

「いや。………気に食わねぇ。」

俺よりも先に一ノ宮と来たことあんのかよ。
っつーか、一ノ宮とはそんなに頻繁に食事に行く仲になってるのか。

「なに、怒ってんの?」

「怒ってねーし。」

「あっそ。
ほら、前菜きたから食べよ。
庶民の食事が口に合わなくても、サラダとチーズくらいは食べられるでしょ?」

俺のモヤモヤした気持ちなんて知らねぇこいつは、サラダとチーズを取り分けた皿を俺の前に置き、いただきまーす!と言いながら手を合わせる。

そんな仕草が可愛いなんて思っちまう俺はバカか。
慌てて目を逸らし、サラダを爆食いしながら考える。

一ノ宮も、こいつのこういう自然体なところがいいんだろうか。
それとも、もっと俺の知らない牧野をあいつは知っていて、そこに惹かれているのか。

「一ノ宮とはどうなった?」

「え?」

「付き合い始めたのか?」

テーブルに置かれたパスタを見つめながらそう聞く俺に、牧野は驚いた顔で言った。

「なんで、それ、」

「…一ノ宮がおまえの返事待ちだって言ってた。 


「一ノ宮さん、そんなこと」

「どーなんだ?もう返事はしたのか?」

聞いてどうする。
そう自分に自問しながらも聞かずにいられない。

「まだ返事はしてない。
今週末、合う予定だから、その時にきちんと返事する。」

「なんて、返事する?」

「それは、……もちろん、オッケーするつもり。」

予想通りの答え。
相手が一ノ宮なら迷う必要もないだろう。

「あいつは、……すげぇいいやつだ。」

「うん。」

「おまえなんかに、勿体無い。」

「ん。」

「大事にしろよ。」

「分かってる。」


こいつはダチが惚れてる女だ。
それに、俺が好きになるような女じゃねぇ。

だから、こいつが一ノ宮と付き合おうが俺の知った事じゃない。
お似合いだ。
あいつなら、牧野も文句なしの相手だ。

「道明寺、それ、食べないの?」

「あ?」

「パスタ……すごいことになってるけど。」

俺のフォークにげんこつ大くらい大きくグルグルに絡まったパスタ。

「うるせぇ。」

「だから、なんで怒ってんのよ。」




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 2018_05_07





俺は頭がおかしくなっちまったのか。
NY行きのジェットの中で目を閉じると、なぜか牧野の顔が浮かぶ。

赤く酔いが回った顔、潤んだ目、眠る幼い顔。
まるであいつに恋をしているみたいに胸がざわつく。

そんなバカな事、ある訳がねぇ。
あいつの事は何ひとつ知らねぇし、女として特別に見たことなんて一度もない。
それどころか、ダチが惚れてる女だ。
それ以上でも、それ以下でもない。

それなのに、
何度振り払ってもあいつの顔が頭から離れない。











神崎社長と呑んだあの日から二週間後、
ロイヤルホテルのパーティー会場で、一ノ宮が手がける化粧品のレセプションが開かれた。

会場内はそこそこ賑わっている。
その中に、黒のワンピースで他の女たちと立ち話をしている牧野を見つけた。

この状況で牧野を一番に探す自分にも驚愕だが、それ以上に、やめればいいのに女たちが集まるその場所へ足を向ける自分に腹が立つ。

何やってんだよ俺は。


牧野の傍まで来ると目が合った。

「おう。」

「……どうも。」

俺と牧野を交互に見て、周りの女たちが騒ぎ出す。それと同じタイミングでステージ上で司会者の挨拶が始まった。

会場内の奴らが一斉にステージ前へと流れていく。それに合わせて移動しようとした牧野の腕を思わず掴んだ俺。

「……なに?」

いきなり掴まれたこいつは不審な顔で俺を見た。

「いや、……おまえ、俺になんか言うことねーのか?」

「え?」

「だから、そのぉ、……この間の、」

「あっ、そうだった!」

咄嗟に出した話題に食いついたこいつ。
キョロキョロと周りを見回したあと、

「この間はごめん。
家まで送ってくれたんだよね。
それが、あたし、…あんまり覚えてなくて。」

申し訳なさそうにそう言う牧野に、俺はいい事を思いつく。

「マジで、覚えてないとか有り得ねぇ。」

「えっ、あたしなにかした?」

「何かした?ってレベルじゃねーよ。
酔って俺に絡むしよ、歩けねぇから部屋まで連れて行けって抱きついてきたのは誰だよ。」

「はぁ?ちょっと、それほんと?」

「疑うなら、俺の運転手に聞いてもいいぞ。」

「………最悪。」

顔をしかめてそう呟くこいつに顔がニヤける。

「散々、迷惑掛けられたんだから、この落とし前は付けてさせてもらうぞ。」

「信じらんない……。
あんたに言われるとヤクザよりも怖いんですけど。
で?どうしたらいいの、あたし。」

口を尖らせて俺を見上げるこいつに、俺は携帯を取り出しながら言った。

「とりあえず連絡先教えろ。
借りはゆっくり返してもらうからな。」




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 2018_05_04




邸の運転手に告げて向かった牧野のマンションは、三階建の小綺麗な所だった。

「おいっ、起きれるか?」

車のシートに沈み込むように眠るこいつにそう声をかけると、

「んっ……大丈夫。」
と、小さく答える。

「おまえの家に着いたぞ。」

「うん、ありがと。……お世話になりました。」

今にも転げ落ちそうになりながら車から降りた牧野は、振らなくてもいい頭を大きく下げて、
「お疲れ様でした。」
と、いいマンションへと入っていく。

しばらく牧野の後ろ姿を目で追っていると、
エレベーターのボタンを押したあと、壁におでこを付けながら微動だにしねぇ。

「ったく、そんなとこで寝んじゃねーよ。」
呆れると言うよりも笑いが込み上げてくる。

車から降りた俺は、
エレベーターが来てるのも気付かねぇで目を閉じてるこいつの体を荷物の様に抱え上げると、エレベーターに乗り込んだ。

観念したのか、無理だと自覚したのか、俺に抱きかかえられた牧野から鍵を受け取ると、三階の一番奥の部屋の鍵を開けた。


部屋はリビングの奥にベッドルームが一つ。
どれも綺麗に片付いている。

「鍵、ここに置くぞ。」
リビングのテーブルに鍵を置きながら、俺の肩に頭を置く牧野に話しかける。

「…あり…がとう。」

牧野がそう返事をした時、思いの外こいつとの距離が近くて体がソワソワする。
俺の耳元で牧野の吐息。
今更ながらこいつは女なんだと気付かされて、
ベッドルームへ直行すると、乱暴にベッドの上にこいつを下ろした。

「痛っ…もうっ、もう少し…優しく出来ないかな…」

「うるせぇ、ここまで担いでやっただけ感謝しろ。」

「相変わらず、ひっどい男。」

「ったく、立てなくなるまで呑むな女なのによ。
俺がせっかくおまえを先に帰らせようと神崎に言ったのに、大口たたいて最後まで付き合うとか言い出すからだろ。」

ベッドに寝る牧野と、それを見下ろしながら話す俺。

「だって、……あんた…、あっ!
今、何時?」

急に起き上がりそう叫ぶこいつに、

「あ?…もうすぐ1時になる。」
と俺が答えると、

「嘘っ。あんた時間大丈夫なの?」
と、赤い目で俺を見つめる牧野。

「だって、今日からNYでしょ?」

「…ああ。なんで、おまえ」

「お店の前で車から降りるときに言ってたの聞こえたから。
……呑みすぎてない?……出張なのに大丈夫?」

呑みすぎてるのも、大丈夫じゃねーのもおまえだ、と言ってやりてぇのを抑えて俺はベッドによし掛かるように床に座った。


「おまえさ、もしかして、俺の為にこんなに呑んだのかよ。」

「別に…そういう訳じゃないけど、」

それなら辻褄が合う。
神崎と酒を呑む間も、時間大丈夫?と何度も俺に小声で聞いたり、
日本酒が好きだと言って、俺の猪口まで取り上げて呑んだこいつ。
酒なんて強くないのはすぐに分かった。
それなのに、俺にはあんまり呑むなと言いながら、残った酒を必死に減らし続けたこいつ。

「自分の心配しろっつーの。」

「……。」

「バカ女。」

「……。」

何も返事がないってことは、眠りについたのか。
そっとベッドの上を覗くと、いつもより幼い顔でこいつが目を閉じている。

顔にかかる髪をそっとどけてやりながら、
「鍵、ポストに入れておくぞ。」
そう言って立ち上がった俺。

その時、
眠ったと思った牧野が言った。

「道明寺……ありがと。」


道明寺……。
こいつが呼ぶその響きに胸がギュッと縮むほど痛くなる。
道明寺と呼ぶ女は昔も今もこいつだけ。

胸のざわつきと痛みを感じながら考える。
この妙な感覚はなんなのか。

俺の中で警告音がなる。
このままここにいるべきじゃねぇ。


俺は急いで部屋を出た。



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 2018_05_01




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Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
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