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神埼に付き合うこと2時間。
ようやく最後の一杯まできた。

隣に座る牧野は、俺の予想に反して潰れていない。
それどころか、神埼の話に真剣に付き合い、
見るからに神崎が上機嫌なのが分かる。

最後のひと口を神崎が飲み干したあと、
「今日は楽しいお酒をありがとう。
牧野さん、君たちと一緒に仕事が出来ること、とても嬉しく思っているよ。一ノ宮君にもそう伝えてくれ。
道明寺くん、今日は失礼な事も言って申し訳なかった。
いつか一緒に仕事が出来る事を楽しみにしています。」
そう言って少しふらつく足で部屋を出ていった。

料亭の個室に残された俺たち2人。

「見かけによらず酒強ぇーんだなおまえ。」

「……。」

「なんだよ。」

俺の言葉になにも言わずジッと俺を見てくるこいつ。

「おいっ、大丈夫か?」

「帰りたい……。」

「あ?」

「もぉー、気持ち悪いぃー。
はぁーー、もう限界。帰りたい、帰りたいよー。」

さっきまで平気な顔で頑張ってたこいつもかなり限界だったらしい。
テーブルに右頬を付けて目を閉じる牧野。

「おいっ、寝るな。」

「…眠たい。」

「帰るぞ。」

「…先に……帰って。」

「ったく、しょーがねーな。」

もうすでに眠りかけてる牧野。
俺は携帯を取り出すと、今日は上がってくれと伝えた西田にコールする。

『はい。』
勤務外にも関わらずワンコールで西田の声。

「こんな時間にわりぃ。
さっきの店に車用意してくれねーか。」

「分かりました。」

「おまえは来なくていい。
邸の車だけ用意してくれ。」

「…はい。」

今日は会食のあとタクシーで帰るつもりで西田にもそう伝えてあった。
だから、西田は不審に思ってるかもしれねぇが、それを聞いてくる野暮はしねえ所が流石。

電話を切ると、完全に眠りに入った牧野の鞄を開けさせてもらう。
財布の中にある身分証に書かれた住所。

それを頭に入れた俺は、こいつの体を抱き上げて部屋を出た。



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 2018_04_27





並んで座った俺たちの前にグラスが置かれた。
神崎社長は、「まずは一杯」と言いながらそれにビールを注ぎ、
自分のグラスにも同じようにビールを注ぐと俺らが見ている前で一気にそれを空けた。

「さぁ、呑んで。
君たちがそのグラスを空けないと私も次にいけないからね。」

強制的にグラスを空けることを要求してくるクソ野郎。
そんな神埼にヘドが出る。
ここでブチ切れてもいいが、一ノ宮の面子を考えれば俺がこのオヤジにたてつくのは後々めんどくせぇ。

だが、問題はこいつ。
俺の隣でグラスを見つめながら固まる牧野。
俺一人ならいくらでも神埼の相手になってやるのに、こいつの酒の許容範囲が分からねぇ。

チラッと視線を送り、呑めるか?と小さく聞くとコクコクと頷いた。
一気にグラスを空ける俺と、ゆっくりだが一度もグラスを置くことなく空にした牧野。

そんな俺たちを見て、
「おぉー、気に入ったよ。」
と言いながら神崎が再びビールを注ぎやがった。

「社長、あまり呑みすぎると肝心の話が出来なくなりますよ。」

「ある程度呑まないと打ち解けた話なんかできないよ。
君たちまだ一杯しか呑んでないだろ。
さぁ、呑んで呑んで。」

そう言ってまたも自分のグラスに注ぎ一気に空ける。
相当、酒には自信があるのか、呑んでる割には目が冷静で酔っている様には見えない。
このままこいつの言い様に流されるのは避けたい。

「分かりました。
ですが、相手は俺だけで。
女性に酒を強要するのはスマートじゃありませんよ。」

「アハハ……、その通りだね道明寺くん。
なら、君が彼女の分も飲むと言うことでどうかな?」

「はい?」

「昔はね、年上の人と会食する時は、その人の酒の量に合わせなさいって教えられたもんだよ。
少なくてもダメ、多くてもダメ。
相手が呑んだら自分も同じように呑む。
それが、礼儀でありビジネスの基本だったけどな、今の若い人たちは違うようだね。
特に2世の坊っちゃんたちはそんな必要ないと思ってる人が多いみたいで、一緒に呑んでも面白くなくってねー。いや、一ノ宮くんや道明寺くんの事を言ってる訳じゃないんだよー。」

神埼のヤロー、完全にナメてやがる。
一ノ宮、わりぃ。
我慢するのは性に合わねーんだ。
ブチギレさせてもらうぞ。

そう思った時、隣の牧野が俺の腕を引いて言った。

「社長、今日は最後まで付き合います!
その代わり、ここにあるお酒だけにしてくださいっ。」

テーブルに並べられたビールや日本酒の瓶を指しながらそう言う牧野に、
「おいっ、」
と俺は慌てて言う。

ここにある酒がどれだけなのか分かってんのかよこいつは。
3人で空けてもかなりの量だ。

「面白いねぇ、君。名前は?」

「牧野です。牧野つくしです。」

「牧野さん、ビールから行く?それとも日本酒?」

「……に、日本酒で。」


神埼の挑発に乗り、まんまと日本酒を注がれている隣のバカに呆れた視線を送ると、
しょうがないでしょっ、って顔で俺を見つめ返し、
「あんた、お酒強い?」
なんて今更ながら小声で聞くこいつに、

「自分の心配だけしてろ。」
と、言い放ち一杯目の日本酒を一気に空けてやった。




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 2018_04_26





一週間後、一ノ宮からメールで教えられた料亭の前で車を降りた。

神崎社長との会食の日。
一ノ宮の他にもプロジェクト開発チームのメンバーも来ているらしい。

『仕事の話が一段落した頃に顔を出す』と、予め一ノ宮には伝え、料亭についたのは会食が始まって一時間ほどした頃だった。

車を降りた俺に、西田が
「明日からNYですので、朝、邸にお迎えに参ります。」
と、頭を下げた時、俺の後ろを誰かが通った気配がした。

店の門をくぐり、両側に広がる庭園を抜けた先に入り口が見えてくる。
そこへ近付いた時、俺よりも頭1つ分小せえ女が女将に、
「一ノ宮さんのお席は……」
と、聞いているのが聞こえ、
「こちらでございます。」
と、女将に案内されるところだった。

後ろの俺に気付いた女将が、
「いらっしゃいませ。」と、頭を下げ、それに女も振り向いた。

「……どうも。」

「……おう。」

濃紺のワンピースに華奢なヒール。
髪はいつもより高めに結い、はじめて見る女らしい姿の牧野。

「道明寺も一ノ宮さんに?」

「ああ。」

それだけで話が成立する。
女将に促され長い廊下を進むと、奥の『椿』という部屋に案内され、思わず笑っちまった。

「え?なに?」

「いや、なんでもねぇ。」

「思い出し笑いとか、不気味なんですけど…。」

「思い出してねーし、不気味とか…てめぇ。」

そんな言い合いを小声でしてる俺たちを横目に、
女将が「失礼致します。」と、椿の部屋のふすまを開けた。
その直後、その目の前に広がる光景にア然とする俺たち。

プロジェクトのメンバーだろう女たちが4人。
そして、その中に一ノ宮と神崎社長がいるが、どうやらこの一時間で相当酒が回ったらしい。

神崎社長の両側には女が座り、ホステスさながら社長が二人の腰に手を回している。
他の二人も困惑と疲労で顔が引きつっているのが分かる。
そして、当の一ノ宮は呑めない酒を飲まされたのか赤い顔でテープルに突っ伏してやがる。


「おぉーー、道明寺様のおでましかー。」

「遅くなりました。神崎社長。」

「待ってたぞ。」

クソっ、ニヤついたエロおやじがっ。
こんな席に来たことに早くも後悔し、くたばってる一ノ宮の背中を軽く蹴ってやる。

「司、来てくれたんだ。」

「おまえ、呑んだのか?」

「ああ。少し。」
そう答えるこいつの酒の弱さはピカイチだ。

俺に目で助けを求める女たちと、この光景にタジタジしている牧野を見て俺は神崎社長に言った。

「社長、ここからは内密な話もあるので、女性たちは先に帰らせてもいいですか。」

「どうして、女の子が帰ったら楽しくないよー。」

「一度社長とじっくりサシで話がしたかったんですよ。今日がその機会なんで、二人で。」

「よーし、分かった。
じゃあ、今日は道明寺くんと呑むとしようか!」

「はい。」

クソジジィの気が変わらない内に、女たちに帰れと合図を送り、一ノ宮の事も頼むと一番近くにいた女に伝え、俺は社長の正面にあぐらをかいて座った。

そして、社長のグラスにビールを注ごうとしたその時、このクソジジィがとんでもねぇことを言った。

「あー、そこの女の子、今来た女の子いたよね?その子は残って。」

「……はい?」

「まだその子とは話してないからね。
お酌もしないで帰るなんてダメだよ〜。」

酔ってるように見えてこのクソジジィは意外に冷静かもしれねぇ。
遅れてきた牧野の事を真っ直ぐに見つめ、コイコイと手を振ってやがる。

「神崎社長、今日は俺とサシで、」

「こんなかわいい子の名前も聞かずに帰すなんて失礼だよ。
ね?ここに座って。」

社長の正面に座る俺の横を指してそう言う神崎社長に、牧野も黙って従うしかねぇ。
俺の隣に座った牧野と、俺、神崎社長の3人だけを残し、グダグダに酔ったままの一ノ宮を抱えた女たちが、申し訳なさそうに部屋を出ていった。



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 2018_04_25





それは懐かしい高校最後の年に出会った女の姿だった。
 
「…道明寺。」

未だかつて俺をそう呼んだ女はこいつがはじめて。

「司と牧野さん、知り合いだった?」

一ノ宮が俺たちの顔を見ながらそう聞く。

「いや………。」
「いいえ……。」

知り合いかと聞かれればそうかもしれねーけど、それも8年前のたった数カ月だけの関係。

「牧野さん、それどーしたの?」

牧野の手には小さなブーケが握られている。

「あっ、さっきチャペルでブーケトスしてたので参加したら取れちゃって。」

「ほんと!すごいじゃん。」

「へへへ、こんなのはじめてです。」

「ブーケ取れたってことは、いい事ありそうだね。」

「そうですかね。そうならいいなぁ。」

こいつが一ノ宮が言う『返事待ち』の女か。
一ノ宮の顔を見ればかなり惚れてる事が分かる。

「そうだ、司。
改めて紹介させてもらうよ。
こちら、牧野つくしさん。
薬剤師なんだ。うちの新しいプロジェクトのお手伝いをしてもらってる。」

一ノ宮のその言葉にペコリと頭を下げた牧野。

「司も知ってるだろうけど、今度うちの会社、化粧品も手がけることになったんだ。そのプロジェクトを親父から俺が任されることになって、若い女性の薬剤師でチームを作って開発してる。
牧野さんはその中の一人。いつもは大学病院の薬局で働いているけど、月に数回研究に参加して貰ってるんだ。」

「化粧品業界に名乗りを上げたっつーのは聞いてる。」

「そうか、良かった。
実は、その事で司に相談したいことがあったんだよ。」

「あ?俺に?業界違いだろ。」

「まぁ、そうだけど、司、〇〇ネットの神崎社長知ってるよな?」

「ああ。昔からうちにも出入りしてる。」

「その神崎社長のネットショップでうちの商品を出してもらう事になったんだが、どうもあの社長には手を焼いてる。
まぁ、簡単に言えばナメられてるってところか。」

「やりそうだな、あのオヤジなら。」

神崎と言えばタチが悪いことで有名だ。
販売元に無理を言って安く仕入れ、ネットで商品を売って利益を上げている。

それだけじゃなく、最近では酒の席での悪い噂もチラホラ。
接待を要求し、豪遊三昧だとか。

「なんで神崎なんかと組んだんだよ。」

「しょうがないよ。
あそこの広告力は大きいからね。
新参者としては頼るしかない。」

一ノ宮も親父からのプレッシャーがかなりあるんだろう。

「俺に何してほしい?」

「来週、神崎社長とうちのプロジェクトメンバーで一席設けることになった。
司も知ってる通り、俺、酒がダメだろ。
だから、同席してくれないか?
神崎社長も道明寺財閥の御曹司がサプライズゲストならおとなしくしてるだろ。」

「……しょうがねーな。あとで西田に伝えとく。」

「サンキュ。
……あれ?牧野さん、どこ行った?」

俺との話に夢中になってた一ノ宮の傍にはあいつの姿がない。

「また、どこかに行ったか……」

キョロキョロとあたりを眺める一ノ宮に、俺は指を指しながら言った。

「あそこで食ってる。
デザートプレート二枚目だぞ。バカかあいつっ。」



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 2018_04_24




「牧野、ほんとに行かなくていいの?」

「うん。」

「後悔しない?」

「うん。」


ここは英徳の非常階段。
あたしは空を見上げ、一ヶ月前のことを思い出す。

道明寺邸で開かれたパーティーで、あたしはあいつに好きだと伝える寸前だった。
それなのに、

「答えるな。答えるんじゃねーぞ。
聞かなかったことにする。」

そう言われ、好きだと言うことさえ拒絶され、あたしの恋は呆気なく終了した。

あれから一ヶ月。
今日、あいつはNYへと旅立つ。


「空港に急げばまだ間に合うよ。」

非常階段で空を見上げるあたしに、そう言う花沢類。

「花沢類こそこんな所で寝てないで、空港に行きなよ。」

「俺はいいの。司とはいつでも会えるから。」

「あたしも、……いいの。
あいつとは、もう会わなくていいから。」


はじめから実るはずのない恋。
あたしも、あいつに熱い視線を送る女性たちのほんの一人、それは分かっていた。

だから、欲張らない、出しゃばらない。
ファンはファンとして遠くから見つめよう。
そして、恋はきちんと現実味のあるものを。








***************************

それから8年。



今日、俺はNYで知り合った大学の同期の結婚パーティーに出席していた。
NYから帰国して1年。
26歳になった俺の周りでは、結婚ラッシュが続いている。

向こうの大学で親しくなった奴らは道明寺財閥ほどではないが、日本の大企業の息子たちばかり。
そんな奴らが今年に入って3人もバタバタと結婚を決めた。

「司もそろそろ相手ぐらい探したら?」

「うるせぇ。」

大手通販会社社長の息子である櫻井が俺をからかうが、俺には全くその気はねえ。
結婚どころか夢中になれる恋愛さえ未経験。
いざとなったらどこか条件のいい令嬢と、形だけの結婚でもするしかねーか。


「司、一ノ宮が来たぞ。」

櫻井のその言葉に披露宴会場の入り口を見ると、製薬会社の跡取り息子である一ノ宮がいる。
俺たちに気付くと軽く手を上げ近付いてきた。

「久しぶりだね。」

「おう、NY以来だな。」

「司のことは新聞や雑誌でいつも見てるよ。
相変わらず、仕事のスケールが俺らとは違うね。」

そう言って笑ったあと、会場内をキョロキョロと眺める一ノ宮。

「誰か探してるのか?」
櫻井がそう聞くと、

「ああ、連れがいるんだけど、はぐれたか……。」
そう言って心配そうにあたりを見る。

「連れ?彼女でもできたか?」

「いや、……でも、時間の問題かな。」

「おー、マジかよ。」

「まぁ、彼女の返事待ちって所だ。
見つけたらお前らにも紹介するよ。」

櫻井と一ノ宮のそんな会話を黙って聞いていた俺に、
「そういえば、今日の新婦って英徳の後輩だろ司。」
と、一ノ宮が言った。

「ああ。そうらしいな。」

「俺の連れも英徳の出身なんだ。
新婦とも親交があったそうで、それで今日呼ばれてる。」

「んー、……俺の知ってる奴か?」

そう聞いたとき、
目の前の一ノ宮の顔がパッと明るくなる。

そして、大きく手を上げ「こっち」と、誰かに合図を送った。



「牧野さん、こっち!」

「あっ、はいっ。」

一ノ宮の呼びかけに答えるように、俺らの傍に小走りで近付いてきた女を見て、俺は固まった。

「……おまえ、」

「…道明寺?」



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 2018_04_23





狭い部屋に逃げ隠れたあたしたち。
廊下では時折バタバタと人の歩く気配。

「出ていかなくていいの?」

「ああ。
どうせ、パーティーに戻った所でうるせぇ女たちに囲まれるだけだ。」

あんなにきらびやかな女性たちを前にどんだけあんたは贅沢なのよっ、と言ってやりたいのを我慢して口を尖らせるあたしに、

「類が探してるか?」
と、道明寺が言った。

「あー、花沢類のこと忘れてた。」

「あ?酷え女だな。それでも彼女かよ。」

「はぁ?彼女って、あたしと花沢類はそんな仲じゃないし。」

「そんな仲じゃねえ奴が昼間っから非常階段で抱き合ってるかよ。」

「だーからっ、あれはダンスの練習をしてただけ。それに、あたしには好きな人いるしっ。」

思わず言った言葉に自分でもシマッタと思ったがもう遅い。

「へぇー、類はそのこと知ってるのか?」

「花沢類は関係ない。」

「類はお前のこと気に入って今日もここに連れてきたんだろ。なら、あいつにきちんと、」

「花沢類もちゃんと知ってるからっ!」

あたしはあんたが好きなのに、
あんたは勘違いのまま花沢類の心配ばかり。

「花沢類もあたしの好きな人、知ってるから心配しなくても大丈夫。」

「……類の知ってる奴か?」

「………。」

「まぁ、俺には関係ねーけどな。」

ここまで聞いておきながら、そう言って立ち上がった道明寺は、部屋のドアノブに手をかけた。
その時、あたしは叫んでいた。

「あたしってほんと……バカっ。
どうしてあんたなんかに、」

「……あ?」

「どうしてあんたの為なんかに、こんな不釣り合いな場所に来たり、踊ったこともないダンスを必死に練習したり……、ほんとバカみたい。」

もう自分でも支離滅裂な事を言ってる自覚はあるけれど、告白なんてする気もなかったし、告白の経験さえないあたしにとって冷静になれと言う方が難しい。

でも、言い換えれば今は最大のチャンスではないだろうか。
道明寺と二人きり、誰にも聞かれることなく好きだと伝えることが出来る。
それなら、勇気を出して、

「道明寺、」

震える声でそう呼んだあたしの声を遮るようにして道明寺が言った。

「おまえ、まさか……、
おまえの好きな奴って、」

「………。」

「俺か?」

「……う」

うん。と頷く寸前だったあたしに、

「いや、待てっ、答えるな。答えるんじゃねーぞ。」

「は?」

「答えなくていい。俺も聞かなかったことにする。」

「はぁ?なによそれ。」

「今の話はなかったことにしよーぜ。
そろそろ行くぞ。
類が心配してる。」


なによっ、何なのよっ。
答えるな?
俺も聞かなかったことにする?

ふざけんじゃないわよっ。
誰があんたになんか告白するもんですかっ!

最低な男っ!
二度と近寄るもんですかっ!



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 2018_04_21





あれから1ヶ月。
今日、あたしは道明寺邸へと来ている。

卒業記念と題されたパーティーは、あたしが想像していたものより何倍、いや何十倍もの凄さで、花沢類の一言がなければ一生踏み入れることのない世界が広がっている。

招待客は300人以上。
パートナー同伴だからその倍だとしても、この広大なお屋敷にすっぽりとおさまってしまう。

パーティーは道明寺のお母様の挨拶から始まり、そのあと今日の主役である道明寺がステージに上がると、どこからともなくスポットが当たりまさに王子様。

挨拶のあとはバイオリンの生演奏でダンスが始まり、花沢類に差し出された手を取りなんとかあたしも踊りきった。


慣れないことはするものではない。
履いたこともないヒールのせいで踵がズキズキと痛む。
欲張って食べたローストビーフが悪かったのか、胃がキリキリと痛む。

「花沢類、ちょっとお手洗いに行ってくる。」

「わかった。付き合おうか?」

「大丈夫。」

そうは言ったものの、あまりに広くてどこがトイレなのかも分からない。
ウロウロと探しながら歩いていたあたしは、どうやら完全に迷ったらしい。

「はぁー、ここはどこよ。
家の中で迷うなんてありえないっつーの。」

ただでさえ痛む足なのに、ウロウロ歩いている内に痛みが増してきた。
キョロキョロとあたりを見回し誰もいないのを確認すると、あたしは窮屈なヒールをそっと脱いだ。

絨毯がフカフカで気持ちいい。
痛んだ足を包み込んでくれるかのような柔らかさに、嬉しくなって小さくピョンピョン跳ねてみた、
その時、

「何やってんだよ、こんな所で。」
と、どこかで聞いたことのある声がした。

「っ、道明寺!」

「なんで、ここにいるんだよ。」

「……トイレ探してたら迷っちゃって、」

「そんで、裸足で遊んでたって訳か?」

「ちがっ、これは、足がちょっと痛くて、それで誰もいないから脱いでたら、」

事の成り行きをそこまで説明した時、廊下の向こうから人の話し声が聞こえた。
それを聞いた道明寺が、いきなりあたしの腕を掴んで、

「静かにしろ。」
そう言ってあたしたちが立つ廊下のすぐ傍にあったドアを開け、自分とあたしの体を中に押し込んだ。

「えっ、なに?」

「うるせぇ、少しの間黙ってろ。」

道明寺にそう言われコクコク頭で頷いたあたし。
押し込まれた部屋は、四畳ほどの小さな部屋で、
床から天井まである棚にびっしりと絵画がおさめられている。
棚に収まりきらない絵やポスターが床にも積まれ、あたしと道明寺が入るスペースがやっと。

キョロキョロと部屋の中を眺めていたあたしに、
道明寺が小声で言った。

「見つかったか……」

「あんたなんか悪いことして逃げてきたの?」

「あ?俺は犯罪者かよ。」

それに近いことはやってると思う…なんて言えるはずはない。

「疲れたからパーティーから抜け出してきた。」   

「はぁ?あんた主役でしょ。」

呆れるあたしの横で、絵画が積み上げられた場所に腰を下ろす道明寺。

「ちょっと、それって座ってもいいの?」

「ああ、たいした絵じゃねーから気にすんな。」

そう言うならあたしもお言葉に甘えて。
もうひとつ別のところに積み上げられていた絵の上にあたしも腰を下ろしたとき、それを見て道明寺が言った。

「一枚1000万の絵だからたいしたことねーだろ。」

「はぁっ!?」

一枚1000万なら、今あたしのお尻の下には一億の価値の絵があるってこと。

「ちょっと!それ本気っ?」

「うるせぇ、見つかるからもっと小さい声で話せって。」

「話せるかっつーの!バカっ!」

「……ックックッ……バカはおまえだろ。」


笑うなバカ。
そんな顔で笑われたら、あたしの胸が痛いほど鳴っている。
どうか、あんたに聞こえませんように。



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 2018_04_20





花沢類の突然のダンス発言があったあの日から、あたしたちの休憩場所である非常階段はダンス練習場となった。

ダンスなんて踊ったこともないあたしは手取り足取り何から何まではじめての事。
なんであたしが踊らなきゃなんないのよ……と愚痴を言いたくもなるけれど、

「牧野、司の家に行ってみたくない?」

その花沢類の悪魔の声に黙るあたしは、どんだけあいつがいいんだろう。
時々思い出すあの笑顔に、いまでもこの小さな胸がドキッと鳴るから始末が悪い。

「牧野、ステップは完璧。
あとは力を抜いて俺に合わせてくれれば大丈夫。」

「うん。」

この2週間、びっちりと花沢類からダンスのステップを習った。
大勢の人がいる中で恥をかきたくないし、花沢類にもかかせたくない。

「花沢類、ありがとね。」

ダンスの体勢のまま彼を見上げてそういった時、
突然非常階段の扉が開けられた。

扉から顔を出したのは、最悪にも道明寺。
でも、あいつはあたしたちを一瞬見たあと、
「おっっ、わりぃ。」
そう言ってすぐに出ていった。

何が起こったのか分からず固まったあたしは、次の瞬間慌てて花沢類から体を離した。
これは、完全に誤解されるでしょ。
ダンスの練習だと知らなければ、ただの抱き合ってるカップルにしか見えない。

そんな慌てるあたしとは対象的に、花沢類が扉に向かって言った。

「司、そこにいるんでしょ。
入っていいよ。」

その言葉に扉がガバっと開き、
「ったく、昼間っからイチャつくんじゃねーよ。」
と道明寺が現れ、非常階段に座った。

「イチャつくって、勘違いしないでよっ。
あたしたちはダンスの練習してたんだからっ。」

今日の道明寺は学園の制服ではなく、スーツ姿。
いつもより少し大人っぽく見えるその姿にキュンと鳴るバカな胸。

「司、なんか用だった?」

「おう。類おまえ、喜多川かおるの連絡先知ってるか?総二郎に聞こうと思ったらあいつ帰りやがってたからよ。」

「喜多川かおるって、喜多川建設の娘?」

「ああ。」

「俺は連絡先知らないけど…。
司はなんで知りたいの?」

「今日の約束、遅れるって連絡してーんだ。」

道明寺のその言葉に思わず顔をあげるあたしに、花沢類はクスっと笑い、

「もしかしてデート?」
と、道明寺に聞いた。 

「あ。んな訳ねーだろ。」

「じゃあ、何?」

「ババァに勝手にセッティングされた。」

その言葉に今度は声を出して花沢類が笑った。

「それは、デートじゃなくてお見合いだね。
司の母さんにセッティングされたって事は相当本気かも。」

「ふざけんなっ。」

道明寺はただでさえクルクルの頭を、ワシャワシャと自分で掻き乱しため息を付いている。

お見合いか……。
しかも、喜多川建設のご令嬢と。
だから今日はそんなスーツ姿だったのに、バカみたいにかっこいいと思ってしまった自分を殴ってやりたい。

そんなあたしの気も知らずに、

「牧野、司お見合いだってさ。
いつもと違うスーツ姿はどう?」

なんて、いじわるな質問をしてくる花沢類に、あたしは即答でかえす。


「全然、似合ってない。
すっごくダサくてかっこ悪い。」

「ブッ……腹痛い……。」
「……てめぇーー!」




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 2018_04_19





『司が好きなの?』

唐突に聞かれたその言葉にうまく返すことが出来ないあたしを見て、

『へぇ〜、新鮮。』

と、クスクス笑い花沢類は非常階段から去って行った。



それから今日まで一週間。
あたしは地獄のような日々を送っている。

なぜかと言えば、
「ま〜きの。」
と、どこからともなく聞こえる花沢類の声。

あたしを校内で見つけるたびに、ニッコリと笑いながら呼ぶ花沢類に、あたしは一生の汚点である秘密を握られているのだ。

「ま〜きの。」

ほら、今日もまた花沢類の声に背筋がゾクッとしながら振り向くと、そこには最悪、まさかの道明寺の姿も。
F4勢揃いであたしの方をみている。

「こんな所で食事?」

あなたに会いたくないからここでお昼を食べていますだなんて、その栗色の瞳に言えるはずもなく、

「あ、はいー、天気がいいので…」
なんて曖昧な返事で誤魔化したけれど、

「誰?類の知り合い?」
と、西門さんと美作さんが興味ありげにあたしのお弁当を覗いてくる。


「2年の牧野つくし。
非常階段でよく会うんだ。
それに、司に興味が」

「花沢類っ!」

「あー、ごめんごめん、他の女子みたいにオープンじゃないんだったよね牧野は。」

「はぁ?」

「秘密の」

「花沢類っ、それ以上言ったら殴りますっ。」

「ハハハ…新鮮すぎる。」


あたしの弱みを握り確実に楽しんでいるこの人は、ある意味道明寺よりも極悪だ。

あたしをからかって楽しそうに笑う花沢類。
その隣に立つ道明寺にチラッと視線を送ると、
あたしの話になんか興味も無いようで携帯をいじっている。

そんな態度をみると腹が立つ。
勝手に抱いている恋心だってことは充分理解しているけれど、ここまで一方通行だとドキドキを通り越して腹が立つ。

「タ、タマさんは元気?」

「ああ。」

唯一の共通の話題も呆気なく終了。

「なに?司と牧野って知り合い?」

「…ああ、ちょっとな。
それより、おまえが食ってるそれ、なんだよ。」

あたしのお弁当に入っているおかずを指差しそう言う道明寺。

「あ、これ?
きゅうり入りちくわ。こっちはチーズ入り。
道明寺、食べてみる?」

「いらねぇ。」

「…あっ、そう。」

せっかく交わした会話も、またまた呆気なく終了。

そんなあたしたちの様子を眺めていた西門さんと美作さんが、なぜかニヤニヤした顔で言った。


「つくしちゃん、お兄さんたちは君のこと気に入ったよ〜。」

「はい?」

「司のことなんて呼んでるの?」

「……道明寺…ですか?」



「プッ……クックック……腹痛てぇ。」
「司おまえ、呼び捨てにされてんのかよ。」

「うるせぇ。
てめぇも、俺のこと道明寺様って呼べ!」

「はぁ?なんで様なんかつけなきゃなんないのよっ。」

「…てめぇ、ぶっ殺されたいのかっ。」

「やれるもんならやってみなさいよっ。
名前くらいでちっちゃい男ねっ!」


好きな男にこんな事を言ってしまうバカはあたしぐらいだろう。
恋愛なんてする環境になかったあたしは、どうやら恋愛に向かないらしい。

「ケンカすんなって二人とも。
司、こんど司の邸で開かれる卒業パーティーだけど、俺、牧野同伴で行ってもいい?」

「あ?」

「パートナー同伴でって書いてあったよね?
牧野、ダンスは踊れる?」

「え?ダンス?」

「俺のパートナーとして踊ろう。」


何を考えているのだろう。
ニコリと笑う花沢類があたしには悪魔に見えてしょうがない。




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 2018_04_18


雑談

Category: 未分類  



こんにちは、司一筋の管理人です。
いつもコメント、拍手ありがとうございます!

コメントは返信をさせて頂いておりませんが、とても嬉しく読ませて頂いています。
私の毎日の楽しみです。

2週間ほど前のコメントにとても面白い質問がありましたので、ここで回答させて頂きたいと思います。

質問
管理人さんの書いたお話の中でどの司が1番エロいですか?

回答
ずばり総務課の牧野さんです。
読んで頂けるとちょいちょいエロい司が出てきます。

っていうか、この質問、爆笑してしまいました。
そして、一週間ほど悩みました(笑)
一番エロい司探しに必死の一週間を過ごさせて頂きました。貴重な時間を下さいまして感謝です!




今日は『花のち晴れ』が放送されますね。
楽しみのような怖いような。

原作の漫画はつい最近まで読んでいませんでしたが、この間一巻から九巻まで大人買いをし、一気に読みました。
やっぱり面白かったです。
神楽木さん、最高でした。
彼の『〜だが。』という話し方にやられました。
まだ読んでいらっしゃらない方、是非どうぞ〜。


これからも原作に負けないよう、キュンキュンさせる司を目指していきたいと思っております。
よろしくお願い致します。




ほんとにいつも応援ありがとうございます。

 2018_04_17




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Author:司一筋
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CPはつかつくオンリーです。
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