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タクシーに乗り込んだ俺の携帯に類からメールが届き、
「あんまりいじめるなよ。」
という一言と見知らぬマンションの住所が記されていた。

15分ほどでそのマンションの前にタクシーが到着すると、メールに書かれてある301号室へ今にも壊れそうなエレベーターを上がる。

「ちっ、無防備にも程があるだろ。」

なんのセキュリティーもなく簡単に部屋まで来れちまったことに苛立ちをおぼえながら、呼び鈴らしい小さなボタンを連打しまくる俺の背後で、

「副社長?」
と、久しぶりに聞きなれた声がした。

振り向くと、いつもは結んである髪をまっすぐに下ろした牧野の姿。

「な、何してるんですか?」

「……部下の様子を見に来た。」

「…は?」

何をしてるのかと改めて聞かれると俺自身わかんねぇ。
思わず体が動いちまったなんて説明がつかねぇから、
「類から事情は聞いた。
まぁ、部下が困ってるようだから見に来てやったんだよ。」
と、思わず視線をそらして言ってやる。

「犯人は見つかったのか?」

「…いえ、まだですけど。」

「取られたものは?」

「…まぁ、そのぉ、色々と。」

「色々と…ってなんだよ。」

「いえ、たいしたものは…」

俺から視線をそらしもごもごと答える牧野。
そして、
「心配して頂きありがとうございます。
もう大丈夫ですのでお帰りください。」
とペコリと頭を下げる。

帰れと言われると、どうして俺はここに来ちまったのか…と意味もなく腹が立ち、
「犯人もよくまぁ、こんなオンボロ部屋に入ろうと思ったな。どうみてもお宝があるとは思えねー。」
と、思わずいつもの悪態が口をついちまった。

明らかにムッとした表情に変わる牧野。

「オンボロで悪かったですね。」

「…おう。」

「確かにお宝なんてありませんけどっ。」

「…おう、まぁ、あれだ、
最近はタヌキ貯金っつーのも流行ってるらしいから、見た目じゃねぇってこともあるしよ。」

「…はい?タヌキ貯金?」

「おまえ、知らねーのか?
最近は銀行に預けねーで家の中に大金を隠してる奴らが多いんだってよ。
ニュースを見ろよニュースを。」

昨日たまたま見たネットニュースでそんな事を言っていた。
グッドタイミングだぜ…と威張って言ってやった俺に、

「はぁー。」
と、盛大なため息をつきやがる牧野。 

「なんだよ。」

「副社長、こんな遅い時間に笑えない冗談やめてもらえますか?
それとも本気ですか?」

「あ?」

「タヌキ貯金。」

「おう、タヌキ貯金。」

「やっぱり、本気なんですね。」

冗談だとか、本気だとか意味が全くわかんねぇ。
そんな俺に、

「タヌキ貯金じゃなく、タンス貯金です。
家の中のタンスにお金を保管しておくタンス貯金!
はぁー、日本語に弱いんだから、まったく。」

「タンス?タヌキじゃねーのかよ。」

「タヌキなわけ無いでしょ。
そもそも、タヌキ貯金ってどんな貯金ですかっ。
普通、家の中にタヌキいます?」

「まぁー、最近は人気のペットなんじゃねーの?」

「仮に!仮に人気のペットだとして、そのタヌキをどう利用して貯金するんですか?」

「だからよ、まぁ、……タヌキの腹に袋があって、」

「カンガルーですそれはっ。」

「……。」

「……。」

マジでタヌキ貯金だと思ってた俺に、こいつは相変わらず冷てえ反応。
そんなにキレる事かよっ、と思いながらも、
久しぶりに目の前にいるちいせぇ牧野と言いあえること自体がすげーくすぐってぇ。

だから、思わず口が滑る。

「……大丈夫なのか?」

「だから、取られるようなお宝はありません。」

「ちげーよ。
おまえは、…怪我はねーのか?」

今更ながら、俺が知りたかったことはこれだけだ。

「……まぁ、無事ですけど。」
急にマジに質問する俺に、牧野は戸惑いながら上目遣いで答えた。


「それならいい。
用意して行くぞ。」

「はい?」

「だから、邸に行くぞ。
早く用意しろ。」


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 2017_08_24




類の携帯を覗き込んだ俺は、思わず
「あのヤロー。」
と呟いた。

私用で3日休むと言っていた牧野が、どうみてもどこかの温泉で寛いでアイスを食ってる画像にしかみえねぇ。

「類、牧野に電話しろ。」

「ん?」

「あのヤローにかけろって言ってんだよ。」

キレかけてる俺に相変わらず呑気な類は、はてなマークの表情。

「あのヤロー、3日も会社休みやがって温泉かよ。
緊急の私用ってやつはこれか?
仕事をナメてやがるっ。」

そう言って類から携帯を奪った俺は発信履歴から牧野という文字を見つけ手早くコールボタンを押した。

「おいおいおい、司が暴走してるぞ。」
「めんどくせぇ事になりそうだな。」

そんな総二郎とあきらの声を無視して携帯を耳にあてる俺に、
「司、なに熱くなってんの?」
と、楽しそうに笑ってやがる類。

そんな奴らを無視して電話を鳴らすと、4回目のコールで
「もしもし、花沢類?」
と、いつもより小声で牧野が出た。

「おい、てめぇ、仕事サボっていい身分だな。」

「……。副社長…ですか?」

「あぁ。温泉入ってアイス食って寛いでやがるてめぇの上司の副社長だ。」

これでもかと言うほど嫌味たっぷりに言ってやる。

「どこの温泉地か知らねーけど、明日は仕事に来るんだよな?
緊急の私用っつーのは、存分に楽しんだんだろーな?」
矢継ぎ早にまくし立てる俺に、
「もう、その辺にしてやりなよ。」
と、類が俺の手から携帯を奪い取った。

そして、
「牧野、今どこ?
あれから連絡なかったから心配してたけど、その後どうなった?」
と、優しく類が聞く。


思いつくだけの嫌味は言ってやった。
3日も休んだ牧野を少しでも心配した俺が馬鹿だった。
どうせ、男とでも遊びに行ったんだろ。

類が携帯で話してるのを横目にウイスキーのグラスをガブッと空ける。そんな俺をチラッと見ながら、
「まぁ、勝手にキレて勝手に騒ぐのは司の得意技だから気にしなくていいよ。
それより、あのマンションにまた戻るつもり?
警察はなんて言ってるの?
なんなら、俺のうちにしばらくいたら?」
と、心配げに類が言う。

「犯人は捕まってないんだろ?
牧野、大丈夫?」

「鍵は新しくした?
ベランダのガラスも替えてもらった?」

牧野がなんて返事してるかは聞こえねーけど、類の言葉からは何やら物騒な単語が飛んでいる。
警察?
犯人?

「……おいっ、警察ってなんたよ。」

「……。」

「犯人ってどーいうことだよ。」

「……。」

「おいっ、類っ!」

俺の質問を完全無視して牧野との電話に集中してた類は、
「じゃあね、何かあったら連絡して。」
と、携帯を切り、一言、
「司、うるさいよ。」
と、言いやがる。

「てめぇが返事しねーからだろ。
警察ってなんだよ、犯人ってなんだよっ。」

「んー、牧野のプライベートなことだから言ってもいいのかなぁー。」

「言え。あいつは俺の部下だから俺は把握しておく必要がある。だから言え。」

「んー、でもなぁー。」

こいつ、絶対にこの状況を楽しんでやがる。
その証拠に、
「教えてほしかったらこれくれる?」
と、先月ゲットしたばかりの世界で3つしか生産していない俺の腕時計をニヤリと見つめる類。


「ふざけんなっ。
やるわけねーだろ。」

「だよね。あー、牧野、大丈夫かなぁ、また犯人に何かされたら、」

「何かってなんだよっ、」

「それは、言えないな。」

「わかった、わかった、時計はおまえにやる!
だから教えろっ!」

「ほんと?」

類、てめぇ、いつかぶっ殺す。


俺の世界に3つしかない時計を手に、類が心配そうに話した内容は、
4日前の夜、牧野が帰宅したときマンションの鍵を開け部屋に入ると見知らぬ男がそこにいてバッチリと目があってしまった。
あまりの驚きに声を上げることが出来ない牧野を突き飛ばし犯人は逃げていったが、その後の警察の調べによると玄関の鍵も窓ガラスも壊された形跡がなく、どうやって侵入したかは未だに不明。
一人暮らしの牧野は戸締まりだけは必ず確認していたらしく、考えられるのは合鍵か…。

この3日間、警察の聴取や病院、マンションの鍵の交換やらで会社も休まざるおえなかった。
犯人が捕まっていないままなので部屋に帰るのも怖く、近くのスーパー銭湯で生活していたらしい。

無事に鍵の交換が終わり、風呂に入ってアイスを食ってこれから部屋に戻るという報告のメールを類に送ったあいつ。

「牧野らしいよね。」

アイスを食ってる画像を見ながら呑気にそう言う類に、
「らしいからやべぇーんだろ!
犯人も捕まってねーのに、のこのこマンションに帰る気かよあのバカは。
類、いますぐあいつに電話してそこから動くなって伝えろ。」


ったく、あのバカ女。
なにが緊急の私用で休むだよ。
上司の俺にきちんと話せよ。

そんな愚痴をブツブツ呟き、酒を飲んじまった事に後悔しながら、店を飛び出しタクシーに乗った俺を、

「珍しく熱くなってるんじゃない?司くん。」
と、F3が笑っていたらしい。




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 2017_08_02




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Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

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