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パーティーのあとに見たあいつの涙の一件以来、俺の中で牧野に対する距離が縮まった。
それは、あくまで俺の中で……というもので、
あいつにとっては相変わらず上司以外の何者でもない。

それを証明するかのように、俺の前ではいつものポーカーフェイス。
そして、俺以外の前では笑ってやがる。

まぁ、秘書と距離が縮まったからといって特別得るものもねーし、逆に馴れ馴れしくされても困るけどよっ、と思ってみるが、面白くねぇ。

あの時のように、牧野の感情に触れたいと思う俺はおかしいのか……。





それから一週間後のこと、
いつも邸に迎えに来る車に、今日は牧野じゃなく西田の姿があった。

タマもそれに気付き、
「つくしは?」
と聞いているが、

「牧野さんは私用でお休みです。」
と、西田が答えているのが耳に入る。

そして、次の日も迎えはあいつじゃなく西田。
そして、次の日も。

さすがにこれは聞いてもいいレベルだろうと、誰に言い訳するでもなく、
「牧野はどうした?」
と、西田に聞いてみると、

「私用でお休みです。」
と、端的すぎる答え。

「私用ってなんだよ。」

「それは、聞いておりません。」

「あ?3日も私用で休むっておかしいだろ。」

「初日に、緊急の私用が出来たので3日休ませて欲しいと連絡が入りましたので、明日からは出社する予定です。」

一緒に働くようになって半年以上。
あいつの勤労っぷりは俺も認めてる。
だから、突然の私用休暇が気になるところだけど、明日出勤したら上司として根掘り葉掘り聞いてやる、あくまで上司として。


その夜、久しぶりにF4でメープルのバーに集まった。
いつものようにお祭りコンビのバカ話に付き合ったり、類の掴みどころのない趣味話を聞かされたり、ゆったりとした時間が過ぎた頃、類の携帯が短く鳴った。

隣で携帯を確認した類が小さくプッと吹き出す。
そして、「全くどうしようもないなぁ」と優しい顔で笑った。

「なんだよ、類。女か?」
すかさず総一朗がからかうと、

「そう。」
と、にっこり笑う類。

「おいおい、聞いてねーぞ。どこの誰だよ。」

「秘密。」

「俺らにも紹介しろよ。」
そう言った総一朗に、

「もう、みんなも知ってるよ。牧野だよ。」
と、携帯を俺らの方に向けて見せる類。

そこには、3日私用で休んでいるはずの牧野が、
頭にタオルを巻き、浴衣のような出で立ちでアイスを食ってる姿がカメラにおさまっていた。



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 2017_06_16






ホテルの前に用意された車に乗り込むと、いつも通り隣に牧野が座る。
その顔はさっきまでの泣き顔ではなく、相変わらずの秘書モードに戻っている。

けれど、俺はほんの少しの胸のくすぐったさを無かったことにするほど大人でもねえ。

「それで?」

「…はい?」

「あのタイミングでおまえが泣く理由はなんだよ」

「別に泣いてません。」

逃げ切れると思うな、とばかりに赤い鼻のこいつの顔をのぞき込んでやる。

「おまえがそう言い張るならそれでいーけどよ、目の下が化粧が取れて真っ黒なのはどう説明すんだよ。」

その俺の言葉に慌てて目の下を押さえて俺の嘘にひっかかる牧野。

「マスカラとれてます?」

「知らねーよ。」

「副社長、鏡…」

「持ってねー。」

「ですよね。」

実際、こいつがマスカラなんてしてるのかさえ知らねーけど、はじめてこんなに間近で見るこいつの目は、長い睫毛が綺麗にカールされ吸い込まれそうなほどの漆黒の瞳。

「牧野…」

「はい?」

「なんで泣いてた?」

牧野の大きな瞳を見つめたまま、俺はさっきまでの声とは違って自分でも驚くほどマジで聞いていた。

それがこいつにも伝わったのか、

「……悔しくて。」

ポツリと牧野が答えた。

「悔しい?」

「…はい。
だってあり得ないじゃないですか!
副社長と神崎社長の仲を疑うなんて。」

狭い車内に響くでかい声。

「だって、神崎社長は親子ほども年の離れた方ですよ。」

「……。」

その先を聞きたくて黙ってる俺に、相変わらず馬鹿なこいつが驚いたように言う。

「えっ!まさか、神崎社長とそういう仲なんですか?」

「てめぇ、殺すぞ。」

「……。」

「……。」

「じゃあ、どうして好き放題言わせておくんですか?
違うって否定するなり、黙れって脅すなり、殴って歯の一本でも折ってやればいいじゃないですか。」

「それは、一流企業の副社長がやっていいことか?」

「……ダメですけど。昔の副社長ならやってましたよね。」

確かに英徳時代の俺はそうだったし、それをこいつも見てただろう。

「昔はな…、でも今はもうちげーんだよ。
俺も大人になったってことだ。」

「大人になったら、理不尽なことでも黙って聞き流すんですか?
昔は横暴でどうしようもないボンボンドラ息子だったのに、大人になったらすっかりおとなしくなっちゃって!」

興奮してる牧野の口からは上司に向かっての発言とは思えねぇ言葉のオンパレード。

「横暴ボンボンドラ息子っておまえ…」

「だってそうじゃないですか!
手当り次第殴ったり蹴ったり、好き放題してたくせに……、なのに、全然違うんですよ。
それが無性に腹立つというか、拍子抜けするというか、」

何が言いてぇのか分かんねぇけど、なぜか牧野の目に再びじんわりと涙がたまる。

「…だから、なんで泣くんだよ。」

「泣いてませんっ。」

「…ったく、バカだな。」

目の中だけではおさまりきれなくなった滴がポロリと溢れ、牧野の頬をつたう。
それを一瞬で拭い、小さく息をついてポツリと話し始めた。

「半年、副社長の側で働いて分かってるんですあたし。
昔はどうしようもないドラ息子だったけど、今は誰よりも仕事に熱心で、頑張ってるってこと。
だから、あんな下品な噂話、あるわけないし、許せないです。
あんな風に影で面白おかしく言われてるなんて悔しくて。」

悔しい……
そう言って牧野が泣いた理由が、俺が期待してたものと同じだったんだろう。
俺の胸に広がる満足感がそれを証明している。


「心配すんな。
さっきの奴等の顔は覚えてる。
今の俺は、仕事で借りを返すことにしてるから、おまえが泣く必要はねーよ。」





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 2017_06_13




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Author:司一筋
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