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俺は日本に戻ってきて半年、
この時間が一番嫌で堪らない。

それは、毎朝の出社するタイミングだ。

他の社員同様、入社時間は必ず守るようババァからきつく言われていることもあり、俺の出社時間と社員たちの出社時間が重なる。
女社員に限っては、俺を一目みたいがために、エントランスはいつも飽和状態。

その熱い視線のなか重役専用エレベーターへと直進する約3分が苦痛で仕方無い。
これが総二郎なら、投げキッスのひとつでもして女たちを喜ばせるサービスも朝飯前なんだろーけど、俺はそんな気色わりぃことはごめんだし、視線を送るのもめんどくせぇ。

いつものように痛いほどの視線を感じながら早歩きでエレベーターへと向かっていたとき、一人の女が近付いてきた。

「副社長、おはようございます。」

「…………。」

「NYでの研修の際にお世話になった橋爪です。
覚えていらっしゃいますか?」

「…………。」

「その際はありがとうございました。」

「…………。」


覚えてるわけねーし、俺にとって得になる奴しか記憶に残さねぇたちなんで、完全無視。
それでも、エレベーターホールまで付いてくるその女にエレベーターに乗り込む寸前言ってやる。

「気安く話し掛けんな。クビにされてーのか?」

一瞬で凍りつく女の目の前で無情にもエレベーターの扉は静かに閉まった。

そして、上に昇り始めたエレベーターの中で、
「ふざけんなっブスっ。」
と、自然に悪態をついた俺の横で、

「ぶっ……」
と、小さく噴き出す音がした。



「何、笑ってんだよ。」

「……いえ。」

ただでさえ頭ひとつ分ちいせぇ秘書の牧野が、うつむきながら俺より1歩下がったところに立っている。

「笑ってるだろ、おまえ。」

「いえ、笑ってません。」

その即答した声がいつもより高い。

「ふざけんなっ、おまえの仕事だろーが。」

「は?」

「怪しい奴が近付いてきたら秘書のおまえが全力で立ちはだかるもんだろ普通。
横で笑ってる秘書がどこにいんだよ。」

不満をぶつける俺に、こいつは淡々と言いやがる。

「怪しい奴ではないと判断したので。
それに、……女性社員に好かれるのはいいことだと。」

「あ゛?」

「営業部の橋爪さんは若手の女性社員の中ではトップに人気のある方ですよ。
仕事もできるし、容姿端麗。
副社長が言うブスとはかけ離れた女性ですが。」

そう言って俺を見上げるこいつと目が合う。

「……そうかもな。
おまえの猿みてぇな顔を見てると、さっきのあいつがそれほどブスには見えねぇな。」

「それって、」

「セクハラって言いてーんだろ?」

セクハラでもパワハラでも受けてたってやると勝ち誇ったように言った俺に、牧野は小さな手帳を取り出して言った。

「…………いえ。
でも、今週のスケジュールに健康診断を追加した方がいいかと。」

「あ?」

「眼科の予約が必要ですね。
橋爪さんをブスと言ったり、私をサルと言ったり、副社長の目はかなり重症なのでは。
たぶん、目の奥からぐっちゃぐちゃに腐ってますよ!」

そう言って、ちょうど開いたエレベーターから先に降りていく牧野。



残された俺は、
「ぐっちゃぐちゃに腐ってる…………」
と、あいつの言葉を反復しながら
「かもな……。」
と、呟いた。


なぜなら、俺を見上げてムキになって反抗してきた牧野が、かわいく見えちまったから。



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 2017_04_19






昨日は意外なことを知った。

今、俺の隣で淡々と今日のスケジュールを読み上げる牧野が英徳の後輩だったとは……。

いつものように朝8時。
邸まで俺を迎えに来て社まで向かう車内、タブレットに目をおとしスケジュールを読み上げていくこいつは相変わらずいつもと変わりなくだせぇおばさん縛りのヘアスタイル。

そんなこいつをガールフレンドと呼び密会相手だと優しく微笑んだ類。
この3ヶ月、こいつを間近で見てきたが、類を虜にするオーラも魅力もこいつには微塵もねぇ。

それとも、あれか?
昼と夜の顔は違うんです……みたいな魔性の女ってやつか?

そんなことを思いながら、スケジュールを読み上げる牧野を思わずじっと見つめていた俺に、

「……何か不都合ございましたでしょうか?」
と、真面目な顔で聞く牧野。

「あ?……いや、なんでもねぇ、続けてくれ。」

「はい。……午後3時より○○社長と電話会議のあと、」

またタブレットへ視線を戻し読み上げていく牧野。
そんなこいつに気付かれないよう横目で観察してみるが、地味なスーツも黒い重そうな鞄も靴も、見た限りブランドものには見えねぇ。

英徳に通っていたなら実家はそれなりに名の知れた会社だろうか。
牧野、牧野、牧野…………、
思い当たる顔にそんな名は見つからない。


「……副社長?…………副社長?」

「…………あっ?」

思わず自分の世界に入り込んでた俺に、牧野が怪訝そうに声をかけていた。

「以上が今日のスケジュールですが、何か変更はございますか?」

「いや、大丈夫だ。」

「……副社長、どこか具合でも悪いのでは?」

「あ?」

「いえ、なんとなく……二日酔いの薬ならありますけど。」

「二日酔い?」

「昨夜は遅くまで飲んでいたと聞きましたので。」

確かに久しぶりにF3と集まり時間を気にせず飲んだ。
日付が変わる頃邸に戻ったが、使用人たちの出迎えは受けずに部屋へ戻ったはず。

「タマから聞いたのか?」

「いえ。……あ、はい。」

否定したあとの肯定。
そして、一瞬まずいという顔をしたこいつを俺は見逃さない。

「……類か?」

「……。」

「類から聞いたのか?」

「……」

「俺の秘書は上司に返事も出来ねーのかー?」

「……はい、花沢さんからお聞きしました。」


昨夜は類も俺と同じ時間に迎えの車に乗った。
だとしたら、深夜から今の時間にかけて類と連絡を取り合ったということ。

「類の言う、ガールフレンドっていうのは本当のなんだな。類のやつ、女の趣味も変わってるのかよ、クックックッ。」

「はい?」

「おまえが類の彼女っていうのは驚きだな。」

「は?」

「付き合って長いのか?」

「…………。」

類からは聞いたことがねぇ恋愛話を、彼女のこいつから聞き出してやると意気込んだ俺に、

「副社長、そういうのはセクハラです。」
と、バッサリと言いやがるこいつ。

「あ?」

「女性職員にそういうプライベートな質問を投げ掛けるのは気を付けてください。セクハラで訴えられます。」

「うるせぇ、訴えるならやってみろ。
訴えたことを後悔することになるぞ。」

「今のは確実に、パワハラです。
セクハラとパワハラのダブルパンチはさすがにどうかと。」

「てめぇー、ちっ、類の彼女だからって俺に口答えかよ。」

もう目の前には社のビルが見えてきてタブレットを鞄にしまう牧野。
そして、車がゆっくりとエントランスへ向かうのを見ながら牧野が言った。

「副社長、勘違いされているようですが、私と花沢類はただの友達です。
お付き合い期間を尋ねられましたが、ガールフレンドとしての付き合いはもう5年ほどでしょうか。
あくまで、ガールフレンドとしてです。
ガールなフレンド。分かります?
直訳すると女の子のお友だちです。
それ以上の関係ではありません。」

早口で捲し立てるように言ったあと、

「それと、……お疲れなら今日のスケジュールは変更致しますが……?」
と、俺に聞く牧野。

「あ?」

「花沢類から聞きました。
副社長は寝不足の時、髪のカールがいつもより激しくなると……」

そう言って俺の頭に一瞬視線を移したと、
「さぁ、着きました。」
と、何事もなかったように車のドアを開けた牧野。



「っ!てめぇー、人の頭見て何ニヤついてんだよっ!
上司を侮辱した罪で訴えてやるからなっ!
待てっ、おいっ、先に行くんじゃねーよ!」


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Author:司一筋
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司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

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