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3日ぶりのキャンパス。
あれほど学校とバイトは休まず生活してきたのに、色恋沙汰で3日も休むなんて……と、自分でも情けない。

自分自身に自嘲しながら、心を入れ換えてキャンパス内を歩いていると、なぜか周りの視線が痛い。
さっきからヒソヒソと何かを囁きながらあたしを見つめる学生たち。
その目は敵意というよりも、好奇に近い。

不思議に思いながらも講義を終えて、キョロキョロとキャンパス内を目的の人を探して歩く。
そう、あたしは香苗さんに会うために今日ここに来た。

香苗さんに会って、きちんと道明寺とのことを伝えたい。
逃げず、隠さず、道明寺が好きだと言いたい。

そう決意しながらキャンパス内を歩いていると、正面から目的の人、香苗さんが歩いてくるのが見えた。
彼女もあたしに気付き一瞬立ち止まったあと、まっすぐに近付いてくる。

「香苗さん、少し話出来ませんか?」

何度も練習したその言葉を口にすると、
香苗さんはいつもの愛らしいスマイルで、

「私も牧野さんにこれ、返したかったから。」
と、手に持つ袋を掲げて見せる。
そこにはあたしが貸したパーカー。

「あまり時間がないから、そこでもいい?」
と、香苗さんが指差したベンチに、あたしはコクンと頷いて、
「飲み物、買ってきます。」
そう言って近くのカフェテリアまで急いだ。








ベンチに並んで座り、あたしが買ってきたコーヒーに口をつける。
昨夜、何度も考えた。
香苗さんにどう話そうか、なんて説明しようか、
でも、いざ目の前にすると、そんな小細工は吹っ飛んで、素直に口から出たのは、

「ごめんなさい。」
その一言だった。

「フフフ……何に対しての『ごめん』なの?」

「それは、……あたし香苗さんに嘘ついてたから。
道明寺とのこと、黙っててごめんなさい。」

もう一度そう言って隣に座る彼女に頭を下げると、
「嘘つかれた覚えはないわよ私。」
と、香苗さんが言う。

「……え?」

「まぁ、はっきり付き合ってるって話してくれなかったのは寂しいけど、でも、どんなに否定されても司を見れば分かるしね。」
そう言ってクスクス笑う香苗さん。

「私ね、司のことは5才のときから知ってるの。
悪ガキだった幼稚舎の頃も、孤独だった思春期の頃も、全部見てきた。
だから去年のNYでのパーティーで久しぶりに会った司を見てびっくりしたわ。
穏やかっていうか、満ち足りたっていうか、簡単に言えば『幸せ』って顔に書いてあるかんじかな。これは女だなってすぐにピンときた。」

「女っ?」

「好きな人が出来たってことよ。
司のことをこんなに変えるような女がね。」

「はぁ……。」

自分のことなんだろうけど、まったくピンとこないあたしは腑抜けた返事しか返せない。

「なんか、そんな司見てると悔しくてね。
昔から知ってる私には全然構ってくれなかったくせに、彼女にはそんな優しい男の顔するんだーって。
そう思ったらその彼女の顔を見てみたいって思ったの。」

「へ?」

「だから私が日本に来た理由は、牧野さんに会うためだったのよ。
最初から司には彼女がいるって分かってたし、それが牧野さんだってすぐに分かった。
二人は隠してるつもりかも知れないけど、司を見ればバレバレ。
だってあいつ、牧野さんのことずっと目で探してるし、牧野さんが大切だって目が言ってるもんね。」



それはきっと道明寺だけじゃない。
あたしの目も物語ってる。
道明寺が大切だって…………。




ベンチに座るあたしたちの前を学生が何人も通りすぎていく。
そんな学生があたしに気付くと、さっきと同様ヒソヒソと何かを囁きながら見ていく。

さっき感じた違和感を、また同じように感じて首をかしげると、そんなあたしを見て香苗さんが言った。

「司、昨日フライングしたのよ。」

「え?フライング?」

「そう。昨日、図書館で私と勉強してるときに後輩が近付いてきて私たちに言ったの。
『二人は付き合ってるんですか?』って。
そしたら司、静かな図書館で大きな声で言ったの。
『俺が惚れてるのは牧野つくしだ』って。」

「えっ!!」

思わず大きな声で叫んだあたし。
それを見て香苗さんが、
でもね……と続けた。

「あいつ、そんなときでも牧野さんとの約束は守ったんだと思う。
『付き合ってる』とは言わなかったわよ。
ただ自分が惚れてるって。」


そう言ったあと、
「ほんとやってらんないわよね、まったく……」
と香苗さんが呟いた。





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Author:司一筋
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