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道明寺に連れられてタクシーに乗り込むと、いつの間に覚えたのか運転手にあたしのマンションの住所を告げる道明寺。

いつもは地下鉄か道明寺邸の広い車に乗っているせいかタクシーの狭い空間に密着して乗るのは落ち着かない。

「ねぇ、……さっきの人、いいの?」

「あ?別にたいした知り合いでもねーし。」

「でもっ、昨日はどうもって言ってたじゃない。」

あたしがそう言うと、なぜかクスッと笑って、
「おまえが気にするような事じゃねぇ。」
とあたしの頭をクシャっと撫でる。

「さっきの女は○○商事の社長の婚約者。」

「婚約者?」

「そう、社長より18歳年下らしい。」

「18歳っ?」

「ああ。昨日の会食に連れてきてたんだよ。
けど、社長が会食の途中で『テレビにしても、本にしても互いの好みにジェネレーションギャップがありすぎる』っつー会話をし出して、なんとなく二人の雰囲気が微妙になってよ。
俺からしてみれば、ノロケにしか聞こえねぇんだけど、たぶんあのあと喧嘩になっただろうなと思って。」

「へぇー。あー、それで昨日は大丈夫だったかって聞いたの?」

「ああ。……っつーか、そんな気になるか?
もしかして、俺とさっきの女が、」

「うるさい、もうすぐ着くよ。」

道明寺が変な誤解をする前にズバッと遮り、鞄からお金を払うため財布を取り出すあたし。

「俺が払うからいい。」

「なんでよ、あたしの家まで乗ったんだからあたしが払う。
あんたはそのまま道明寺邸まで乗って帰るんでしょ?」

「あ゛?」

いきなり大きな声で聞き返してくる道明寺に、
運転手さんもビクリと肩を揺らしている。

「なっ、なによ。」

「なによじゃねーよ。
俺も降りるに決まってるだろ。」

「はぁ?なんで降りるの?邸の車が迎えに来るの?」

「来るわけねーだろ。」

「…………。」

「あぁー、やべぇ、マジ具合わりぃ。
吐きそうだ。」

「嘘つくなっ。」

「久しぶりに酔ったな。おまえうちで少し休ませろ。」

「ふざけないで、バカっ。」



狭いタクシーの後部座席で言い合うあたしたちに、運転手さんが申し訳なさそうに
「あのぉー、着きましたけど。」
と、声をかける。

「運転手さん、この人このまま乗っていきますから。」

「降りるって言ってるだろ。
このままタクシーの中で吐いてもいいのかよっ。」

「お客さんっ、それは困りますっ!!」

「だろ?」


バカみたいに勝ち誇った顔で、ひとつも具合悪そうになんて見えないこいつは、サッとブラックカードを運転手に手渡して支払いを済ませると、
「降りるぞ。」
と、あたしの手を取った。





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 2015_11_30







約束の日曜日。
久しぶりにF4と優紀とあたしで西門さん行き付けのお店に集まっていた。

西門さんに会える日はハイテンションの優紀。
お酒の量もいつもより増えて目が離せない。
だから、このメンバーで飲むときはいつもあたしはほとんど飲まないようにしている。

今日も優紀の目がトロンとして来た頃、なぜか隣に座る道明寺もテーブルに肘をつき、そこに頭を乗せている。

「司、酔ったのかよ。」

「……。」

「珍しいなおまえが。
疲れてるのか?」

「……ここ2、3日、忙しくて寝てねーから。」

いつもあたしの前では何杯飲んでも顔色変えない道明寺が、珍しく酔っている。
そんな道明寺に西門さんがからかうように言う。

「司は心労だろ。」

「あ?」

「牧野に冷たくされて参ってるんだろ?」

「うるせー。」

「牧野、司をとことん苛めてやれ。
冷たく突き放して、もてあそんで捨ててやるんだーっ!」

拳を振りかざしてそう叫ぶ西門さんも相当酔ってるらしい。
そんな西門さんにみんな『バカか』と笑っていると、道明寺だけが笑わずポツリと呟いた。

「冷たく突き放して、もてあそんでもいいから、……捨てるな。」

「…………。」

意外すぎる道明寺の呟きに何も言えないあたし。
そんなあたしたちを見て、美作さんが言う。

「おまえらもう帰れ。」

「……でも、優紀が。」

「優紀ちゃんは俺が送ってくから心配すんな。
牧野、司の話きちんと聞いてやれ。
こいつにはこいつの事情があって、」

「あきらっ、それ以上言うな。
牧野帰るぞ。」

道明寺が立ち上がりあたしの腕を掴む。
花沢類が小さくあたしに頷き、手を振るのが見えた。





道明寺に腕を掴まれたまま店を出ると、半袖のあたしの腕に夜風が冷たくて、思わず縮こまる。
そんなあたしに、道明寺がスーツの上着を脱いで肩からかけてくれた。

「……ありがと。」
小さく呟いて歩き始めると、あたしの耳に、
コツコツコツコツと足音が聞こえ、

「道明寺さんっ。」
と、女の人の声。

振り向くとノースリーブの華やかなワンピースを着たすごく綺麗な女性。
「道明寺さんっ、お店でお見掛けして声をかけようと思ったんですけど、帰られるようなので追い掛けてきました。
あの、昨日はありがとうございました。」
そう言って頭を下げる。

昨日…………、
確かさっき『忙しくて寝てない。』道明寺がそう言っていた。
もしかして、この女性と一緒だったのか。

「いえ。
あのあと大丈夫でしたか?」

「……はい。」

道明寺の問いに照れたようにそう答える女性に、あたしはバカみたいに見とれてる。
綺麗な人……、華奢で手足が長くて、守りたくなるような女性。
そんなことを思っていると、ふと気付く。
彼女のノースリーブから見えるむき出しの肩。

「道明寺っ、」

「あ?」

「これ、彼女にかけてあげて。」

そう言ってあたしの肩にかけてある道明寺のスーツを脱ぎ、道明寺に手渡す。

「あたしはこれで。
じゃあね、道明寺。」
ペコリと頭を下げてダッシュで走るあたし。


やっぱりあたしとあいつは住む世界が違うわ。
あんな綺麗な人あたしは初めて見たけど、道明寺にとっては、『昨日も』『今日も』『明日も』、あんな人たちばっかりなんだろうなぁ。

それだもん、あたしみたいな『ちんちくりん』が珍しく見えるわけだ。
そんな風に納得しながらも、
……やっぱり胸が痛い。

8ヶ月経っても、やっぱり痛いものは痛い。
これって初恋だからなの?
パパがいつか言ってた。
初恋は厄介だって。
一生美化されて記憶に居座り続けるって。
そのあと、ママに怒られてたけどね。

そんなことを思い出しながら、フフ……と小さく笑い歩いていると、
突然、ガシッと腕を掴まれ引き寄せられる。

「バカかおまえはっ。」

抱きしめられたと気付くのと同時に、いつも利きなれたコロンの香りがする。

「道明寺?どうしてっ、」

「どうしてじゃねーよバカ。」

すごい不機嫌そうな声でそう呟いたあと、あたしを解放して正面から見つめる道明寺。

「勝手に行くな。勝手に俺から離れるな。
バカっ、すげー冷てぇ。」

あたしの腕を触りそう言いながら、
さっきと同じようにスーツの上着を肩にかけてくれる。

「これ、さっきの人に貸してあげなかったの?」

「おまえな、……ほんと何も分かってねぇ。」

「……。」

「俺はそんな優しい男じゃねーんだよ。
好きな女以外は凍え死んでもいいと思ってる男だ。
これはおまえにしか貸さねぇ。
俺のものはおまえにしか触らせねぇ。」






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 2015_11_30






おとなしくカフェを出て数メートル歩くと、
「ちょっと!毎回毎回、迎えに来ないでよっ!」
と、怒鳴るこいつ。

「ほんと、店にいるときはおとなしいくせに、1歩外に出たらギャーギャー騒ぐのは変わらねぇな。」

「当たり前でしょっ、自分のバイト先でもめるわけにいかないでしょ。」

「いい加減諦めろ。俺はこれからも出来るだけおまえの事は迎えにいく。
そして、おまえがどんだけギャーギャー騒いでも家まで送る。」

「勝手に決めるなっ。」

「うるせー、行くぞ。」


牧野をもう手離さないと決めてから、俺は今までしたかったことをとことんやることにした。
昼間は会えない分、こいつのバイトが終わる時間に会いに来る。
声が聞きたいときは迷わず電話する。
そして、何より変わったのは、牧野を考えないようにすることをやめた。
そのおかげで、俺の頭の中はこいつで溢れてる。


それなのに、相変わらずこいつはこの態度。
今までの俺のしたことを考えればしょーがねぇのは分かっているけど、想像以上になびかねぇ。

『好きだ。』『付き合おう。』
何度繰り返しても、
『あんたの言うことは信じない。』
と、全く取り合わないこいつ。
おかげで俺たちの話はいつも平行線。



「今度の日曜、暇か?」

「忙しい。」

「少しは考えてから返事しろよ。
総二郎が久しぶりに集まろうってさ。
おまえのダチにも声かけてるらしいぞ。」

「優紀も?」

「ああ。」

「オッケー、バイトも休みだし行けると思う。」

相変わらず可愛くねぇこいつ。

「俺の誘いは断るくせに、他の奴がいるならいいのかよ。」

そんな会話をしながら地下鉄に揺られ、あっという間にマンションの側まで来た俺たち。
マンションの下で、
「じゃあ。」
と俺に軽く手を上げ、階段を上がろうとするこいつに、
「牧野っ。」
と、声をかける。

「ん?」
振り向いた牧野に、

「喉乾いた。部屋でお茶でも飲ませろ。」
そう言うと、

「……はぁ?」
と、ものすげぇ色気のない返事。

「送ったお礼に部屋にあげろ。
まだ15分しか一緒にいねーだろ俺たち。
もう少し……おまえと、」

「道明寺。」

「あ?」

「一人の時に男を部屋に入れるな。
これ、あんたがあたしに口を酸っぱくしていってた言葉。忘れたの?」

「……いや、そーじゃねーけど、」

「覚えてるならおとなしく帰るっ!」



こんなとき、以前の自分の言動が首を絞める。
自分の気持ちを抑えてたあの頃は、牧野を部屋まで送っても決して部屋の中までは入らないように決めていた。
入れば男としての欲求が沸き起こる。
一度触れたら止まらなくなるのは目に見えていた。
だから、『寄ってく?』と誘われてもクールに断っていたのに、それが今は完全に仇となる。



「日曜っ、忘れんなよ!」

「ん、わかった。」

部屋に消える牧野を今日もマンションの下から見つめる俺。




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 2015_11_29






「司とより戻したの?」

「バカなこと言わないでよっ。」

「そーなんだ。俺はてっきりまた付き合い出したのかと思ってたけど。」

「花沢類、あたしはそこまでバカじゃないの。
2度も騙されたんだから3度目は引っ掛からないよ。」

ついこの間、道明寺がはじめてあたしに、
『好きだ。』と言った。
あんなに聞きたかったその言葉なのに、
めちゃくちゃ腹が立つ。

今さら…………。

8ヶ月前、道明寺に別れを告げてからあたしの気持ちはかなり整理がついた。
辛かった片想いからようやく抜け出して、前を向いて歩き出したと言うのに……。

それに、ほんの少しだけど気になる人もいる。
同じ学部の同級生で歳は2つ上。
尊敬できて、信頼できて、穏やかな人。



「告白してきた男には返事したの?」

「花沢類っ、あのさっ、あたしのプライベートに首を突っ込みすぎなんですけどっ。」

「だって、気になるんだもん。
面白いし。」

「面白がるなっ。」


花沢類は相変わらず、あたしのバイトが終わる頃フラリとやって来て、気付けばバイト先のカフェで紅茶を飲んでいる。
バイトが終わったあたしも隣に座り、一杯付き合って他愛ない話をしていくのが常。


「あたし、恋愛には向かないみたい。」

「ん?」

「道明寺ともうまく行かなかったし、佐々木さんとも友達の方が楽なの。
恋愛してる場合じゃないっ、勉強とバイトしろって脳に教え込まれて生きてきたから、あたしの体が拒否しちゃってるのかな~~。」

花沢類にも笑ってほしくて、おちゃらけて言ったあたしの言葉は、少しだけ不機嫌な声で欠き消された。

「そんなことない。」

「……え?」

「今までうまく行かなかったのは牧野のせいじゃないよ。
だから、…………臆病になるな。」

花沢類はいつもそう。
言葉数が多い訳じゃないのに、
いつもあたしのほしい言葉をくれるこの人。

「うん、ありがと花沢類。」

「俺、そろそろ行くわ。」

「そう?」

まだ5分ほどしか話していないのに、立ち上がる花沢類にそう声をかけると、 カフェの入り口をチラリと見て、

「うるさい男が来たからね。」
と笑う。

カフェの入り口には今入ってきたばかりの道明寺の姿。
店内に1歩入ったとたん、周りの空気が一変して、女性客が色めき出す。

「はぁーーーー。
どうしてあいつは花沢類みたく目立たないように入ってこようと思わないのかな。」

「プッ……、まぁ、司なりの牽制だろ。」

「はぁ?」

「とことんやることに決めたらしいな司。
牧野、頑張れよ、」



あたしの肩を叩き帰っていく花沢類と少し言葉を交わしたあと、すれ違うように道明寺があたしの前に立つ。

「バイト終わったんだろ?帰ろーぜ。」






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 2015_11_28






牧野の腕を掴み地下鉄の改札へと連れて行く。
「どこまでだ?」
そう聞くと、
「なにがよっ。」
と、睨むこいつ。

「家まで送ってく。」

「いらない。」

「なら教えなくてもいいけど、付いていくぞ。」

「はぁ?ストーカーで警察に突き出すから。」

「手間が省けるように警視総監にでも電話しておくか?」

にらみ合いの末、俺が勝ったようで、牧野は渋々と歩き出した。





三つ目の駅で下りた俺たちは無言のまま歩き、5分ほど行ったところで、
「あそこ。」
と、牧野が少し先のマンションを指差して止まった。

「行くぞ。」

「ちょっと!」

抗議の声も無視して俺はそのマンションへと歩いていく。
前と変わらねぇぐらいの大きさのマンションだが、鍵は暗証番号式らしく、そこだけは評価するところ。

マンションの下から見上げ、
「何号室だ?」
そう聞くと、
もう抵抗することをやめたのか、素直に
「301」
と答えるこいつ。

「あんた、何笑ってんのよっ。」

「いや、」

「笑うなバカっ。」

「おまえの怒る顔も久しぶりに見たなと思ってよ。」

そう言って緩む顔を隠しきれない俺に、牧野は睨みながら言う。

「あんたなんて、あたしの怒った顔しか見たことないでしょ。」

確かにそうかもしれねぇ。
俺はこいつを怒らせてばかりで、
喜ばせたり笑わせたり、
そんな顔をさせてやれなかった。

「牧野、」

「ん?」

「今から俺はまたおまえを怒らせることを言う。」

「……は?」

「俺はおまえが好きだ。」

目の前のちっせーこいつから視線を反らさずそう言うと、 固まったまま動かないこいつ。
そんな牧野にもう一度、
「おまえのことが好……、」
繰り返し伝えようとした俺の言葉は、

「酷い男。」
と、牧野の呟きで遮られた。

「酷いっ!ほんと、あんたはいつも酷い男っ。
こんなときに、今さらっ…………。
聞きたくないっ!
そんなでたらめ聞きたくないっ。
大っキライっ、二度と言わないで!」

俺の胸をバシバシ叩きながら怒り、あっという間に目に涙をためるこいつに、
それでも俺は言う。
「おまえが好きなんだよ。
今さらなんかじゃねーよ。
俺はおまえしかあり得ねぇから。」

俺を叩くその両手を掴み、牧野と同じ目線になるよう腰を屈める。

「牧野、おまえ言ったよな俺に。
俺たちには温度差があるって。
今まで俺はおまえへの熱を必死に抑えてきたけどよ、所詮はじめから無理なのかもしれねぇ。
気付けば、抑えきれずに逆に熱が溜まっちまった。
だから、もう抑えるのはやめた。」

「……あんた、何言ってんの?」

「俺に比べたらおまえの熱なんてぬるま湯にもなんねぇ。
俺が教えてやるよ。
おまえの言う温度差っつーのを。」



こいつが大事すぎて、壊したくなくて、
近付くのを躊躇して。

でも、所詮俺の世界は常におまえが中心で、どんなに足掻いても手放すなんて無理だと気付く。



涙目のこいつを見ながら俺は呟いた。
「ごめんな、牧野ほんとごめん。
いつも自分本意の酷い男で悪かった。
俺の人生かけて、おまえを大事にする。」




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 2015_11_27






「そろそろあたし行くね。」

「うん、牧野またね。」

30分ほどで席を立ち帰ると言う牧野に、類もあっさりまたねと手をふる。

呆気に取られながら牧野が店を出ていくのを見て、
「おいっ、類。またねじゃねーよ。
なんで送っていかねぇんだよ。」
と、怒鳴ってやると、

「送るって言ってもいつも断るんだよ牧野。
たぶん、引越したところ知られたくないんじゃないのかな。」
と、呑気に言いやがる。

「あ?だからって、こんな遅い時間に一人で帰すのかよっ。」

「うん。」

「うん。じゃねーだろ!」

「もう、うるさいなー。
心配なら司が送ってあげたら?」

心配ならって……………………、

「んあ゛ーーーーっ、類覚えてろよおまえっ!」

俺はそう言い残してコートをひっ掴むと慌てて店を出た。
俺がこの8ヶ月、どんな思いで過ごしたと思ってんだよっ。
吹っ切ろう、忘れよう、そう思って調べればすぐ分かる牧野のマンションも調べず、バイト先にも行かなかった。

それなのに…………

店を出て左右を見るが、牧野の姿はもういない。
ここから一番近い地下鉄の駅……。
頭をフル回転させ走り出す。

すると、数十メートル走ったところで、通り過ぎたコンビニの店内に牧野の姿を見つけ、急いで引き返す。
息も切れ切れに、コンビニに入るとちょうど出口へと向かってきたこいつ。

「っ道明寺?!」

「……ハァ、ハァ、ちょっと待て。」

店から出ようとしてた牧野の腕を掴み、俺は店内の奥に進むと、棚からペットボトルの水を2つ掴みそのままレジへと向かう。金を払い1つを牧野へ渡すと、
「へ?ありがと。」
と、戸惑いながらも受け取るこいつに、
「行くぞ。」
そう言って店を出た。

牧野のマンションを知らない俺は、店を出て「どっちだ?」と牧野に聞くと、
一瞬考えたあと、
「こっち?」
と、なぜか疑問系。

こいつのそういうとこがむちゃくちゃ堪んなくて、すげー久々に胸が痛いくらい鳴り響いてて、落ち着けと自分に言い聞かせながら水を飲む。

「引越したんだってな?」

「うん。」

「どの辺だ?」

「んー、利便性のいいところ。」

「フッ……答えになってねーだろ。」

「フフ……。」

類にも教えてない住所は俺にも教えるつもりはないらしい。
牧野が言う「こっち」がどこへ向かっているのかなんて分からねぇ。
けど、どこでもいい。
こいつと並んで歩けるなら。

「牧野、」

「……ん?」

車の音に欠き消されそうになりながらも、隣のこいつに聞く。

「相変わらず勤勉してるか?」

「まあね。」

「……弁護士になるんだよな?」

「うーん、なれたらね。
そのために頑張ってるけど、結果的にどうなるかなぁー。」

「羨ましいよ、おまえが。」

「道明寺?」

「俺には選択肢はねーから。」
思わず本音が出て自嘲する俺を、立ち止まって見上げる牧野。

「なにかあった?」

「……いや、」
心配そうに見上げる牧野の頭を、軽く撫でてまた歩きだすと、遅れて牧野も付いてくる。


そのまま無言のまま歩いていると、地下鉄へ下りる階段の前で立ち止まる牧野。

「ここか?」

「うん、もうここで大丈夫だから。
ありがとね、道明寺。」

「……おう。」

ほんとはこの先も送っていくと言いたい。
でも、この先に進めば、また同じことを繰り返すことになるかもしれない。

俺は立ち止まったまま、階段を下りていく牧野を見つめることしか出来ずにいると、半分ほど下りたところで牧野が振り向いた。
そして、俺を数秒間見つめたあと、また階段をかけ上がってくる。

「どうした?」

「道明寺っ!
もしもっ、道明寺に選択肢があったら、あんたは何がしたかったの?」

突然問われたその質問。

「…………考えたこともねーな。」

そう呟きながらも、答えはひとつしかないと確信してる。

「考えたこともねーけど、でも、もしも本当に選択肢があるなら…………、
俺は道明寺を捨てて……好きな女に好きだと伝える。そして、そいつを幸せにしてやりたい。」


今思えば、この階段が俺の分岐点だった。
階段を下りずに踏みとどまれば牧野を諦めることが出来たかもしれない。
けど、俺は姉ちゃんに言われた言葉を思い出していた。

他の誰かに不幸にされるぐらいなら、
俺の手で…………。


「牧野、行くぞ。」


俺はこいつの腕を掴み、地下へと階段を下りていった。





 2015_11_26







大学の卒業式。
その夜、行き付けの店でF4揃ってまったりと時間を過ごしていた。

「俺らの青春も終わったな。」

「なんだそれ。」

「だってよ、ここからはひたすら40年働かなきゃなんねーんだぞ?」

「総二郎の口からそんな真面目な話が出るとは思わなかったな。」
総二郎の愚痴に付き合うあきら。

その時、隣の類から携帯の着信音がした。
電話を耳に当て、なにやら話したあと、
「俺、約束があるから先行くわ。」
と、立ち上がる。

「おいおいおいおい、なんだよ約束って。
俺らよりも大事な奴か?」

「うん、そう。」

「類、学生最後の日に他のやつを優先させるってどーいうことだっ。」

いい加減酔いが回ってきてるあきらと総二郎に文句を言われながらも、
「なら、ここに呼んでもいい?」
と、相変わらず呑気に言いやがる。

「あ?俺らも知ってる奴か?」

「うん、牧野だよ。」

「…………。」
「…………。」
「…………。」








それから15分後、店の入り口に8か月ぶりに見る牧野の姿。

キョロキョロと店内を見回し、俺らに気付くと、一瞬固まったあと、スタスタと歩いて近付いてきた。

「みんなもいたんだ。」

「よっ、牧野元気だったか?」

「うん、美作さんも元気だった?
あっ、みなさん卒業おめでとうございます。」

思い出したかのようにそう言ってペコリと頭を下げ類のとなりに座る牧野は、
「西門さんも道明寺も元気だった?」
と、やっと俺の方を見る。

目があったぐらいでドキドキして、バカかと自分に苦笑するが、こいつにしか反応しない俺のレーダーは8ヶ月たった今も健在らしい。

「あっ、これ卒業のお祝いにと思って持ってきたんだけど、まさかみんなもいるとは思わなかったから花沢類のしかなくて……。」
そう言って紙袋の中から取り出したのは、類が好きな白をメインにした花束。

「何がいいか迷ったけど分からなくて、花なら後に残らないし、迷惑にならないかなと思って。」

「サンキュ、牧野。
部屋に飾るよ。」

「うん。」

相変わらず、類が『彼氏候補』と豪語するだけあって、牧野と類の関係は妬けるものがある。
頬を少しだけ赤く染める牧野に、

「俺の分はねーのかよ。」
と、思わず愚痴る。

「……だから、みんなもいるとは思わなかったから用意してないの。」

「でも卒業することは知ってただろ?
なら、祝いの電話ぐらいかけてきてもいいんじゃねーの?」

「……ん、そだね、ごめん。」

口を尖らせながらも素直に謝るこいつに
「俺は青好きだ。
だから、青い花で作った花束でいいぞ。」
と、言ってやる。

「はぁぁ?何言ってんのあんた。」

「だからっ、お祝いの花束は後日受け取ってやるって言ってんだよ。」

「あげるなんて一言も言ってないしっ!」

「それがお世話になった先輩に言う言葉かよっ。」

「誰がお世話になった先輩よっ!」

「おまえが言ったんだろ?俺のお陰で英徳が好きになったって。」

「…………。」

売り言葉に買い言葉。
いつもの俺たちの言い合いに、他の三人は呆れながら酒を飲み始めてる。

「そんなに欲しいなら今すぐあげるわよ。」

「あ?」

「花沢類っ、さっきの花束貸してっ!」

牧野の声に「はいはい。」と、呆れ声で花束を牧野に向ける類。
その花束からほんの少しだけ混じっている淡いブルーの花を強引に引き抜くと、ボキボキと茎を手で折りながら小さくまとめ、
「はいっ、これで満足?」
と、俺に差し出す牧野。

差し出されたのは、五センチほどに縮小された頼りない花たち。
あきらなんて、それを見て吹き出してやがる。

「お祝いの言葉も言ったし、お祝いの花束もあげたからねっ!
これで文句ないでしょ!」

そう言って俺を睨むこいつは、たぶん俺が反撃してくると思ってたらしい。

でも、手のひらにおさまるほどの小さな花束を、大事そうに見つめながら素直に「サンキュ」と呟く俺に、なぜか居心地悪そうに水をかぶ飲みした。




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 2015_11_26




本日、2話目です。
読み落としのないように。




************************

姉ちゃんが1年ぶりに帰国した。
NYでは顔を会わせていたが、姉ちゃんが日本に帰って来るのは1年ぶり。

「司、いよいよ卒業ね。
卒業したら、あんた死ぬまでお母様にこき使われるわよ~。」

「笑えねぇ冗談やめろ。」

「冗談なんかじゃないわよ。
道明寺家の男として生まれたからにはそう言う運命を背負っているの。諦めなさーい。」

「自分が女だからって簡単に言うな。」

「うん、ほんと……申し訳なく思ってる。」
そう呟いて、急にしんみりしだす姉ちゃん。

「姉ちゃん?」

「司、道明寺の名の元に生まれたから、あなたの人生は生まれたときから決められたようなものだった。
けどね、心は違う。
心は司の自由にしていいと私は思ってる。」

「なんだよ、急に。」

「つくしちゃんのこと。」

「…………。」

「司とお母様の話、立ち聞きしちゃったのよ私。
司が高校生の頃だったかしら。
邸につくしちゃんをよく連れてきてたわよね。
あの頃の司は、ほんとキラキラしててつくしちゃんが好きで好きで堪らないって感じで、」

「やめろ、姉ちゃんっ。」

「ほら、またそう。
そうやって、いつしかつくしちゃんへの気持ちを圧し殺すようになったでしょ司。
お母様に言われた言葉がきっかけ?」

「…………。」

「つくしちゃんを道明寺家の犠牲にしたくない…………そう言うこと?」






5年前、俺はババァから恋愛のことで忠告をうけた。
その頃の俺は牧野に夢中で、邸にも暇さえあれば連れてきていた。

「あの子とはどういう関係なのかしら?
あまり親しくし過ぎると別れるときに困るわよ」

「あ?別れる気なんてねーよ。」

「本気ということ?」

「ああ。」

即答する俺に、笑いながらババァは言った。

「それなら尚更別れなくちゃならないわね。」

「どういう意味だよ。」

「あなたは、あの牧野さんを将来私のようにしてもいいのかしら。
道明寺家の嫁になるということは、もしかしたら私のような人生を歩むことになるかもしれないのよ。」

確かにババァは、若くして恋愛結婚で親父と一緒になった。
でも、俺が小学生の時親父が亡くなって、そこからはババァが道明寺を一人で支えてきた。
親父が死んでババァは変わった。
それまでの生活が一変して、仕事仕事に追われ、
家族を顧みない冷徹な社長へと変貌していった。

「あなたが生まれたときから道明寺の跡取りとして決まっているように、あなたの嫁になる人も嫁になった瞬間から人生は道明寺に捧げるしか道はないの。
だから、私からの忠告よ。
愛してるなら、別れなさい。
愛してる人を愛し続ければ、その人を不幸にするだけよ。
恋愛だけなら『本気の相手』で結構だけど、
結婚はビジネスでするもの。
それを忘れないで頂戴。」



愛してるなら……別れろ。
愛してるからこそ……本気になるな。

そんなこと出来そうもねぇ。
あの頃の俺は牧野のすべてが欲しくて、こいつしかあり得ねぇと思ってて……、
でも、愛せば愛すほど、こいつを不幸な道へと連れていくかもしれない。

こんなに惹かれてる女をいつか手離すくらいなら、深入りしないほうがいいのか……。
もし、これ以上近付きすぎれば別れられねぇ。
それは同時に、こいつを不幸にする道でもある。







「司、つくしちゃんとは別れたの?」

「……ああ。」

「やっぱり。
今日も3人で会いましょうって誘ったら、断られたわ。忙しいんですって。
嘘が下手すぎて笑っちゃう。
何かあったのかと思ったけど、司の顔を見て一発で分かったわ。
あんたほんと酷い顔してる。」


あの高校生の頃のように、熱い気持ちは圧し殺した。
そしていつしかあいつへの本気の恋愛はやめた。
側で見守ってるだけでいい。

そう思ってたのに、突然牧野は大学を編入して俺の前からいなくなった。
あのときは焦った。
久しぶりに熱くなった。

久しぶりに会ったあいつを抱きしめて、思わず本音が出そうになっちまった。
ずるいのは分かってる。
不幸にすることを恐れて手に入れるのを諦めてるくせに、目の前からいなくなるのはもっと怖い。

結局、「付き合おう」の言葉で繋ぎ止めて、
でも、近付きすぎる関係に躊躇して、
あいつを何度も傷つける。


「司、愛してるんでしょ、つくしちゃんのこと。」

「うるせーよ…………。」

「ほんっと、可愛くないんだから。
つくしちゃんに言えばいいじゃないっ、
おまえを愛してる、おまえを不幸にはしないって。」

「……言えねぇから……苦労してんだよ。
あいつには、夢があんだよ。
弁護士になって、バリバリ働いて、苦労してるやつを救うんだって。
そのために朝から晩までバイトして……、
そんなやつに言えるかよ、道明寺の名前で縛り付けるようなこと……。」


何度も何度も考えた。
その度に答えのでない堂々巡りを続けてきた。

俺はあいつが好きだ。
言葉になんて出来ねぇほど、愛しくて堪らない。
けど、この想いは伝えるべきなのか、
どうしても答えがでない。


そんな俺の堂々巡りを、姉ちゃんは一蹴する。

「司がつくしちゃんを諦めたからって、つくしちゃんが幸せになるとは限らないじゃない。
つくしちゃんが、司以外の男に不幸にされるぐらいなら、自分の手で不幸にしてやりなさいよ。」







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 2015_11_25







あの日から牧野は完全に俺と距離を取った。
電話も出ねぇ。
バイトもかなり減らして勉強に時間を費やしてるらしい。
そして、引越ししないはずだったマンションも引越していた。

どれもこれも類からの情報で、そのことにも腹が立つ。
「なんでおまえはそんなに牧野と連絡とってんだよっ。」
完全な八つ当たりだと分かっていてもおさまらない。

「次期、彼氏候補だからかなぁー。」

「あっ?ふざけんなっ!」

「司はさ、元カレなんだからもう論外。
『友達』に戻りましょって言われたんでしょ牧野に。」

カフェで別れを告げられたあの日。
あれから8ヶ月たった今でも、あの日のあいつが言った一字一句を鮮明に覚えてる。
なんどもリピートして自分自身に投げかけてきた。

「司、そろそろ牧野のことは忘れろっ。
久しぶりに俺らと飲みにいこうぜっ。
今日は女三人連れで来るらしいから男の人数が一人足りねぇんだよ。」

父親の仕事の手伝いしながらも、相変わらず遊び歩いてるお祭りコンビ。

「うるせーっ!おまえらの合コンに二度と付き合うかっ。
おまえに借りを返すために一度だけ付き合ってやっただけだろっ。」


あきらの実家に久しぶりに行った際、珍しいものを見た。
2本の日本刀。
あきらの親父がどこかの骨董人から仕入れたものらしく、かなり価値のあるレアなもの。

それに興味をそそられた俺は、少しだけ……と触らせてもらい、ふざける総二郎とやめればいいのに殺陣の真似事をした。
すると、迂闊にも俺ら二人の刀が当たってしまい俺が握っていた方の刃先がほんの少し欠けてしまったのだ。

あきらの親父に詫びを入れて弁償するしかねぇと思ったが、あきらに言わせると、収集することに夢中なだけで、その価値には興味がないコレクターだから、この2本の刀も倉庫に入れられるだけ、だから心配するなと。
その代わり…………、
一度だけでいい、明日の合コンに付き合え。


確か、合コンに行ったあの日も牧野と映画の約束をしていた。
あいつか珍しく見たいと言った映画。



はぁーーーーーー。
ため息を付きながらテーブルに肘を乗せ、両手で顔をおおう。

「おいおい、またため息かよ司。」

「…………うるせー。」
反撃の言葉も頼りない。

何かを考えると、それがどうしても牧野へと繋がってしまう。
あいつと交わした言葉も、
あいつと歩いた道も、
あいつのことを目で追ってた日々も。



「類、あいつは元気なのか?」
自分で確かめることさえ出来ないほど、今の俺は牧野から遠い。

「ん、元気だよ。
彼氏出来たみたい。」

「あっ?!
おまえが次期、彼氏候補じゃねーのかよっ!」
思わずそう叫ぶ俺に、

「そうだよ、今の彼氏と別れたら……の話。」
と、淡々と答える類。

「……どんなやつだ?彼氏って。」

「ほんとに聞きたいの?」

「…………いや。」

そうでしょ、と言いながら笑う類。




相手のことを考えると眠れなかったり…………、
それが本当の「好き」。

あの日、牧野が言ったこの言葉。
今の俺がまさにそれだ。
毎日目を閉じる度におまえが瞼に浮かぶ。

でもよ、おまえは知らねぇかもしれねーけど、
今までだって何度も、そう言う夜を俺は過ごしてきたんだぜ。



「司、そんなに怖い?」

「あ?」

「牧野にほんとの気持ちをぶつけるのが。」





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 2015_11_25




本日2話目です。
読み落としのないように。



****************************



道明寺邸を出てからもあたしの携帯は鳴りっぱなし。
相手は見なくても分かる。

バイトも勉強も、今日一日は全部休むつもりでいたから、行くところもなく途方にくれたあたしは、結局こんなときでさえバイト先に足が向かっていた。

休みなのに店に現れたあたしを見て、スタッフはシフトを間違えたと思ったらしく、
「折角来たなら、手伝って」
と、有無を言わせずショップのエプロンをあたしに被せた。

平日の3倍は混む店内。
スタッフが総出で頑張ってもレジの列は途絶えることがない。
いつもは厨房が担当のあたしも、今日はいつもよりおめかしをしていること見抜かれ、レジ担当へと回された。

急遽働くことになったけれど、かえってその方がいい。
一人でいると色々なことを思い出すから。

レジでの作業も二時間を過ぎた頃、
「お次のかた……」
と、並ぶ客に視線を移すと、そこにはジーンズにシャツ姿の道明寺。

「ご注文は?」

「何時に終わる?」

「……店内でお召し上がりですか?」

「牧野、悪かった。終わるまで待つから、」

「お飲み物はいかがなさいますか?」

「頼む、俺に少し時間……」

「他にご注文がなければお帰りください。」

レジのマニュアル通り相手の目を見て、お決まりの質問を投げ掛けて、流れるような動作で席へと案内するところを、今日は出口へと案内したあたし。

そんなあたしに、
「…………牧野、おまえの時間を買いたい。
10分でいい。今日中に。
いくらだ?いくらでも出す。」
と、無理な注文を出すお客さま。


何事かと店長が慌ててレジまで駆けてくるのが視界の隅に写る。
「牧野さんっ、どうしたの?
何かございましたか、お客さまっ。」
店長が道明寺にペコペコ頭を下げる。

「牧野、俺はこのままここで話してもいいけどよ、かなり混んできてるぞ?」
そう言いながら後ろの列を指差すこの男は、このままおとなしく帰るはずがないだろう。

「店長、今日はこれで帰ってもいいですか?」

「えっ、あっ、いいよ。
もともと休みのはずだったんだから……」

モゴモゴと言いながらあたしと道明寺を見比べてる店長を横目に、あたしはエプロンを脱ぎながら
「鞄取ってくるからいつもの店に行ってて。」
と、道明寺に言い捨てて店の奥へと入った。









バイト先からすぐのいつも利用してるカフェ。
あたしが店内に入ると、店の奥のいつもの席に道明寺が腕を組んでこっちを見つめている。

正面の席に座ると、待っていたかのようにいつも注文するパイナップルジュースがあたしの前に置かれた。

「牧野、」

「道明寺、悪いと思ってるなら、もう何も言わないで。
そして、これからあたしが言うことを黙って聞いて従うこと。
いい?」

「なんだよ、それ。」

「いいかって聞いてるのっ、いい?」

「……ああ、わかった。」

今からあたしが言うことは道明寺にとって悲しいことなんだろうか、それともホッとすることなんだろうか、それさえも分からないあたし。
でも、確実に分かることは、
バカみたいな片想いからあたし自身が解放されるってこと。


「道明寺、あたしたちの関係がもしもまだ『付き合っている』っていうものだとしたら、それは今すぐ解消するべきことだと思う。」

「あ?どういう」

「黙って聞いてっ!
あたしはあんたから約束をすっぽかされる度に悲しくて落ち込んで……、
でも、良く考えたらあたしにとっての『付き合いかた』と、あんたにとっての『付き合いかた』に違いがあるだけで、あんたが悪いんじゃない。
むしろ、あたしの方が勘違いしてただけなのかも知れないって気付いたの。」

「意味がわかんねぇ。もっと分かりやすく言えよ。」

「そう?分かりやすく言うとね、
あんたはあたしのことなんてこれっぽっちも好きじゃないってこと。
それをあんた自身が分かってないから、あたしたちの関係はおかしくなっちゃうの。
もしもあんたがあたしのことを好きだったなら、あたしがそうだったように、
近くにいるときは会いたいと思うだろうし、
会える日は何日も前から楽しみにしただろうし、デートを忘れるなんてことは……なかったと思う。」

「牧野、」

「黙って聞く!」

「…………。」

「あたしたちには温度差がありすぎる。
だから、…………あたしだけが辛い。
これって、恋愛において致命的らしいのっ。
この間ね、ちょっとバイトまでの時間空いちゃって、駅下の本屋さんで立ち読みしてたら、恋愛書にそう書いてあった。」

「くだらねぇ本参考にすんな。」

「うん、くだらないってあたしも思ってる。
けど、誰かに言って貰いたかったんだと思う。
そんな恋愛うまくいかないって……。
道明寺ってさー、もしかしたら初恋まだなんじゃない?」

「あ?」

「たぶん、きっとそう。
だからあたしみたいな何でも話せる女友達を『恋愛』だと勘違いしちゃったんじゃないかなー。
あのね、『友達としての好き』と『恋愛対象としての好き』は違うんだよ。
もっとね、一緒にいてドキドキしたり、相手のことを考えると眠れなかったり、好きだと口にして相手に伝えたいと思ったり…………、
そういうのが、ほんとの『好き』なの。
あんたがあたしに抱いてるのとは、全然違うもので、もっと、何て言うか、熱いものなんじゃないかなぁ。
…………だから、今度はきちんとそう言う相手を見つけて、同じ温度で恋愛してあげて。」

「牧野、俺は」

「黙って聞いて従うっ!
『友達』からのアドバイスは素直に聞きなさい。
分かった?
うん、じゃあ、あたし行くね。」



道明寺と過ごしてきて、ずっと感じていたことを改めて口に出してみると、呆気ないほどストンと府に落ちた。

温度差のある恋愛は、熱が高い方が辛い。
でも、あたしたちの場合は勝手に熱をあげていたのはあたしだけで、道明寺なんて目盛が動いたことなんてあったのだろうか。
あたしへの熱なんて、友達であるF3に抱いてる熱量ぐらいにしか、いやもしかしたらそれ以下かもしれない。



道明寺に言った言葉を、そのまま自分にも言ってあげたい。

『今度はきちんとそう言う相手を見つけて』





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司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

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