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牧野と晴れて恋人関係が復活したはずなのに、俺の気持ちはモヤモヤMAX。

原因はというと……、

「伊藤くん、そろそろ時間じゃない?」

「あーほんとだ。行くか。」

「うん。道明寺、またね。」


このどこから見ても恋人同士のような会話を繰り広げてる、俺の彼女と『伊藤くん』。


NYでの誤解が解けて、俺の部屋でいい雰囲気になって、あいつらに邪魔はされたけど、すぐにそんなのは挽回できるくらいラブラブな関係になると思ってたはずなのに、あれから2週間たった今も俺たちの関係に進展はなし。

それどころか、こいつの生活にはこの『伊藤くん』がかなりの割合、時間を食っている。
その不満を牧野にぶつけると、

「学部も、受けてる教科も、ゼミも、サークルも同じなんだから仕方ないでしょ。
それに、伊藤くんとはあんたが怪しむような関係じゃないしっ。」
と逆ギレされる始末。

それに、いつもなら
「司~、牧野取られるかもしれねーぞ。」
と、からかってくるお祭りコンビでさえ、

「伊藤は無害だから大丈夫だ。」
と笑ってやがる。

確かに人畜無害そうな顔をしてやがるけど、それなりにいい男だし、家柄も悪くねぇ。
それになんといっても、あいつも男だっ。
牧野がなんとも思ってなくても、あいつが牧野を好きだとしたら黙っておけねぇ。






そんな俺の心配もよそに、牧野は平然と言ってのける。
「明日、門限の延長届け出してるから。」

「あ?何でだよ。」

「英会話サークルの集まりがあって遅くなるから。」

「聞いてねーぞ。」

「言ってないし。」

最近は遅くまで会社でババァの手伝いをさせられてる俺は、寝るまでの少しの時間をこうして牧野と共有スペースで会うことだけが唯一の楽しみ。

「この時間にも帰ってねーのかよ。」

「…………たぶん。」

「ダメだ。」

「はぁ?なにがよ。」

「行くなって言ってんだよ。」

「…………。」
無言で睨み付けてくるこいつ。

「こんな遅くに女が一人でウロウロするな。」

「だからっ、サークルの人も一緒なんだって。」

「でも、寮までの道はおまえ一人だろ。」
そう言った俺に、牧野はフフンと鼻で笑い、

「伊藤くんがいるもんねー。」
と言いやがった。

またかよっ。
また『伊藤くん』かよ。
確実に俺よりも一緒にいる時間が長いだろうし、牧野があいつになぜか警戒心がゼロなのも気に食わねぇ。

「絶対ダメだ。
あいつがいるなら尚更ダメだっ!」

「なんでよっ。道明寺に反対されても行くもん。」

「おまえ、俺の言うこと聞けねぇのかよ。
どうせ、サークルの集まりって言ったって、合コンのようなもんだろ?
しかも酒が入ったらどんな騒ぎになるかわかんねーだろ。
俺様というかっこいい彼氏がいるおまえには行く必要はない。」

「合コンって……そんなわけないでしょ。
サークルのみんなでただ親睦を深めるだけ。」

「その親睦を深めるっつーのが怪しいんだよっ。おまえは俺とだけ親睦を深めればよしっ!」

「……ありえないっつーの。」


行く、行くな、の攻防戦はそのまま続き、結局別れ際になっても言うことを聞かねぇこいつに、痺れを切らした俺は、
「どうしても行くっつーなら俺も参加する。」
と、言ってやると、

少しだけ間があった後、
「ダメっ!絶対ダメっ!
道明寺は絶対来ちゃダメだからねっ!」
と、すごい焦って言いやがる。



その焦り顔に無性に腹が立ち、
俺は決めた。


絶対行ってやる!






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 2015_06_30






突然乱入してきたいつものメンバーによって、道明寺の部屋は一気にお祭り騒ぎになった。

「つくし、今日はあたしたちもここに泊まるから~。」
「えっ、はぁ。」
「ふざけんなっ、俺の許可を得てから言えっ!」
「さぁ、まずはお泊まりグッズに着替えようっ」


「あきら、グラス出して。」
「全部で何人?」
「俺とおまえと、類だろ、それと滋、桜子、牧野、6人か?」
「なんか足りなくねぇ?」
「……あっ、司のこと忘れてた。」
「テメェら、殺すぞ。」
「ギャハハハーー」


道明寺の眉間の青筋がどんどん深くなるのもお構いなしに、『お泊まりパーティー』の用意は進んでいく。


あたしは……というと、なぜかお着替え中。
隣の部屋で滋さんが持ってきたパジャマに着替えさせられてるところ。

「滋さん、これどーしたんですか?」
桜子と滋さんに着ていたTシャツを脱がされながら聞くあたしに、

「ここに来る途中、お泊まり用に買ったのよ。」
と嬉しそうに話す滋さん。

「先輩、滋さんお泊まり会、はじめてなんですって。」
「そうなの?……って、……自分で着れるからっ……。」
「桜子だって初めてって言ってたじゃん。」
「まぁ、そうですけど。」
「へぇーなんか意外だな。二人とも小さい時、友達とお泊まり会しなかったの?」
「したけど、いつも温泉とか貸し切りコテージとかそういうので、誰かの家にって言うのはなかったなぁ。」
「あたしもです。」

聞いたあたしがバカだった。
この人たちとは次元が違うことをすっかり忘れてた。

「それにしても、相変わらず下着だけはお金かけてますよね先輩。」
「ちょっとっ、勝手に脱がせないでよっ。
自分で出来るから。」
「ほんと~今日はかわいいピンクですかぁ~。」
「滋さんっ、目がやらしいです。」


ドタバタでやっと着替えたあたしたち。
ウキウキの滋さんと、どんな服装でも相変わらず綺麗すぎる桜子と、こんな女の子らしいパジャマなんて着たことないあたし。
「さぁ!飲むぞぉ~」
滋さんの掛け声で揃って隣の部屋へ移動する。



**********************


せっかく牧野と甘い時間を過ごせると思った矢先、いつものこいつらの登場。
たぶん、こいつらが来なかったら…………
そう思うと、やべぇ、体が反応する。

「お待たせ~~~。」

そんな俺の良からぬ思考をぶったぎるのは、相変わらず滋のバカ。
声のする方を振り向くと、3人お揃いのパジャマ姿で立っている。
よくみると、色も柄も同じなのに、少しずつデザインが違っていて牧野のは他の二人よりも露出が高い。

「牧野、かわいいじゃん。」
「テメェ、俺より先に誉めてんじゃねーよ、類っ。」
「じゃあ、司も言えば?」
「っ、…………か、かわ……」
「さぁ、用意出来たぞー、乾杯だ。」

こいつらは人の家だということを全く忘れてる。
俺の部屋のバカ高いソファにふんぞり返って、バカ高いグラスで何度も乾杯~を繰り返し、バカ高いワインを次々と空けていく。


牧野にチラリと視線を移すと、滋に隣をがっちりキープされて、ほろ酔いなのか頬を赤く染めて楽しそうにしてやがる。
俺はそんな牧野を見て、奥のクローゼットまで行くと、体のちいせぇ牧野にちょうどよさそうなパーカーとブランケットを持って戻る。

部屋に戻ると、俺の手にあるブランケットを見て
総二郎が
「司、寒いのかよ。」
と、聞いてくるが俺はそれを無視して、牧野のそばに行くと、膝にブランケットをかけてやり、パーカーを渡しながら言ってやる。

「着てろ。」
「…………ん。」

パジャマの広めの襟から、チラチラと見えている。
俺がさっき外したピンクのブラジャーが。

「司~、滋ちゃんにはないのー?」
「ねーよ。」
「なんでよっ。あたしも寒いんですけど。」
「あきら、おまえの上着かしてやれ。」
「俺かよっ。」
「そーいうことじゃなくて、あたしが言いたいのは、女の子には平等に優しくしなさいって言ってるの。」

まだ始まって30分だというのに、もう酔って舌足らずな口調の滋。

「女の子には優しくしなさい。」
口を尖らせて俺にそう言う滋に、はっきりといってやる。

「俺が女だと思ってるのは牧野だけだ。
だから、優しくするのも牧野だけ、特別扱いするのも牧野だけ。」

ヒューー。
総二郎が口を鳴らす。

「その代わり、おまえや桜子にはあきらと総二郎が優しくしてやるから心配するな。
こいつらは女に対してはプロだからな。」

「ゲェーー。」
滋の女らしくねぇうめき声にその場は爆笑に包まれる。



『特別な女。』

今まで2年間、言えなかったこの言葉を、
はっきりと口に出して言えることがどれだけ幸せなことなのか。

だから俺は言う。
これからはどんな場所でも、誰といても、どんな状況でも、

躊躇なく、言う。


『牧野は俺にとって特別な女だ。』




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 2015_06_29


今日は

Category: 未分類  



今日の更新はお休みさせていただきまーす。

先日、何年かぶりに漫画喫茶へ行ってきました。
そして、私が手に取った漫画は、
やっぱり花男。(笑)
最近、家ではゆっくり花男の漫画を見ていなかったので、久々に没頭しました。

そして、その他にも面白いなぁと思った漫画がこれ。

腐女子彼女。 5

腐女子彼女。 5
価格:670円(税込、送料別)



絵も私の好みなんですが、内容も腐女子の年上彼女にメロメロな彼がとってもツボで面白かったです。

ぺんたぶさんという方のブロガーが人気を博し、本と漫画になったそうですが、こんな日常を送っている方がほんとにいらっしゃるんだなぁと思って微笑ましいばかりです。

性格は天と地ですが、一途なところはうちの司と変わらない。
あたしは、こよなく一途な男が大好きです!



では、また明日。











 2015_06_28






「mint」




まるでその言葉が、あたしたちのこの2年間を解き開く鍵のように、画面が切り変わった。

道明寺があたしの後ろからマウスを動かして、カチッとクリック音とともに表れたのは、
2年前からほぼ毎日更新されている日記のような文章。
たった1文の日もあるし、何行にも長く書かれている日もある。

それは道明寺が電話でよそよそしくなって何か態度がおかしくなった頃から始まっていた。

『ごめんな。』
そんな言葉から始まって、読み進めていくと、この2年間で道明寺が苦しんできた事柄が克明に書かれていた。

それを読みながら、あたしは何かの小説を読まされているような気がする一方、でもこれが現実に道明寺の身に降り注ぎ、そしてあたしにまで魔の手が来ていたなんて、信じられない気持ちで
いっぱいになった。

最初の半年分ほどを夢中で読んだあたしに、
「その辺で事情は分かっただろ?」
そう声をかける道明寺。

後ろであたしを見守っていた道明寺にあたしは振り向きながら、
「まだ全部読んでない。」
と言う。

「あとは……まぁ、たいした事書いてねーし、ほとんど同じような内容だから。」
そう言って照れ臭そうにする道明寺が気になって、あたしはカチッと次のページをクリックする。

カチッ……カチッ……カチッ……。
次のページ、次のページ、次の、次の

「牧野、もういーだろ。」

カチッ……カチッ……カチッ……。

「同じだっつーの。ハズイからやめろ。」

次へ次へ読み進めるあたしに、道明寺が後ろから手を伸ばしてきて、マウスの上にあるあたしの手の上に自分の手を乗せた。

「マジで、あとは全部同じだから読まなくてもいい。」
あたしの耳元でそう話す道明寺。

それがまるで電話越しに聞く道明寺の声のように聞こえ、いつもいつも聞きたくて堪らなかった苦しい日々を思い出す。

「道明寺…………ごめんね。
ほんと、……あたし……バカだから、道明寺が言ってたこのサイトのことも……すっかり忘れて……ごめんね。……ほんとごめんね。」

自分のバカさ加減を棚にあげて、道明寺ばかり責めてきたあたし。
そんな自分に呆れ、悔しくて、そして、道明寺の強い想いに涙が溢れてくる。

「バカっ、泣くなって。」
後ろからあたしをギュッと抱きしめてくれる。

「道明寺。」

「ん?」

「……言葉で言って欲しい。」

「…………。」

あたしの言った意味が分かったのか、道明寺はイスに座るあたしをクルリと後ろに向かせ、床に立ち膝を付いている道明寺と向き合うようにした。
顔の高さはちょうど同じ。
あたしの目を見て道明寺が言う。



「牧野、おまえに会いたい。
いつもおまえのこと考えてる。
おまえに会って、抱きしめて、キスして、
おまえに触りたい。
牧野、……愛してる。」


それは、ほぼ毎日道明寺があたしに送ったメッセージに何度も書かれていた言葉。


「道明寺、……あたしも。」

「ちゃんと言えよ。」

「あたしも、……愛してる。」



お互い引き寄せられるように重なる唇。
いつもの、恥ずかしいとか、どうしようとか、そんな雑念は不思議なくらい浮かばなくて、
全身で道明寺を受け入れてるあたし。

それが伝わったのか、道明寺のキスがどんどん深く激しく、いや、なんかやらしくなってきた。

「……んっ……はぁ……。」
必死に答えようとするけど、もういっぱいいっぱいで。

「道明寺っ……んっ……。」
そんなあたしを更に追い詰めるように、道明寺はあたしの体をイスから床に引き下ろして、耳や首筋にまでキスを落とす。

誰かにそんなところを触られるのも、ましてキスされるのなんて初めてで、どうしたらいいのか分からないけど、…………嫌じゃない。
道明寺になら、何されてもかまわない。

そう思うと、自然と体から力が抜けてきて、大胆にも道明寺の首に腕を回すあたし。
そんなあたしを道明寺は真っ正面から見つめて、
「おまえにそんなことされたら抑えらんねぇぞ。」
と呟いて熱っぽい男の目で見つめてくる。

それが何を意味してるのか考えると一気に熱が上がるけど、
「触っていいか?」
その問いに、コクンと頷いたあたし。




体をその場に寝かされて、道明寺の手があたしの薄いTシャツの中に入ってくる。
床にはフカフカの絨毯が敷き詰められていて、素肌で触れても気持ちがいいくらい。

ブラジャーの上から触れてきた手は、すぐに邪魔だと言いたげに肩紐を引き下ろして膨らみを露にしていく。
あたしの首筋に埋められた道明寺の顔から、興奮した吐息が漏れてきて、それを聞くだけであたしまで変になってくる。

器用に金具を外したブラジャーを引き上げて、大きな手で優しく愛撫されていく二つの膨らみは、自分でも気付かないうちに先端が硬く立ち上がり、それを道明寺が執拗に刺激すると、
「んっ……やぁ……っ……」
と、恥ずかしいほどの甘い声が出る。

そんなあたしに、道明寺は
「すげーかわいい。」
と更に甘い言葉で攻めてきて、
「見せて。」
と、かろうじて薄いTシャツで隠されていた膨らみを露にしようと、シャツをめくろうとした



その時、

ドンドン、ドンドン。
と部屋をノックする音。

あたしは咄嗟に道明寺の胸にしがみつく。

そんなあたしを抱きしめて、
「大丈夫だ。見てくる。」
そう言って立ち上がった道明寺が部屋の入り口までいき、ドアを開けた瞬間、



「司~。」
「つくし~。」
「俺らもタマさんの見舞いに来たぞー。」
「外泊届け出してきてるらしいじゃん。
朝まで飲もうぜぇ~。」
「あたしらが二人を仲直りさせてあげるから、ねっ、司、安心しなっ。」
「道明寺さん、お邪魔します。」



扉の向こうには見なくても分かる。
いつものメンバー。


「てめぇーらっ!帰れっ!」
「あれ?つくしは?」
「もしかしてまた喧嘩したのか司。」


みんなには床に座るあたしがデスクの影になっていて見えないらしい。
その隙に、外されたブラジャーを急いでつける。


「とにかく、今日は朝までコース!」
「題して、司と牧野のよりを戻そう会議!」
「朝まで生討論だなっ!」
「ギャハハハーっ、」
「そんで、牧野はどこいった?」
「勝手に入るな、類っ!」


この状況で出ていけるかっ、そう思って体を縮こませたあたしの頭上で、

「牧野、見ーけっ!」
そう楽しそうに呟く花沢類の姿。


はぁーーー。
仕方なく立ち上がるあたしは、部屋の入り口で頭をわしゃわしゃ掻き回してる道明寺と目があって、さっきまでのあたしはどこにいった?と思うほど恥ずかしくて……死にたくなった。




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坊っちゃんの春は遠いようです。
けど、この辺からラブモード突入です。






 2015_06_27






1時間前、道明寺とダイニングで激しくやりあった。
逃げるな…………。
そう言うあいつにあたしは反発したけど、
この1時間冷静になって考えてみると、道明寺が言ったことは当たってる。
あいつが帰ってきてからあたしは、
逃げて逃げて逃げまくってた。


コンコン。
「道明寺?」
約束の1時間。

「おう、入れよ。」
そうっと部屋を開けると、デスクでパソコンと向き合ってる道明寺。

お互い気まずい雰囲気のままいつものソファに並んで座る。

「あのさ、道明寺。さっきは、」
ごめん。と言いかけたあたしの言葉を遮って、

「悪かったな。さっきは俺が言い過ぎた。
…………ごめん。」
と謝る道明寺。

そんな姿を見て、思わず言ってしまう。
「道明寺、あんた変わったね。」

「あ?」

「昔は人に謝るなんて出来ない男だったのに、いつの間に出来るようになったのよ。」

「おまえに言われたくねーよ。
おまえは他のやつにはすぐ謝るくせに、俺には絶対謝んねーよな。」

「そんなことないよっ。今だって謝ろうとしたのに、あんたが先に言ったから。
俺様なくせに、人に謝ることが出来るようになったなんて、成長したじゃない。」
あたしがからかうようにそう言うと、
なぜか真剣な顔になる道明寺。

「おまえにだけだ。」

「え?」

「俺が素直に謝るのはおまえにだけだ。
おまえとはくだらねぇことで喧嘩したくねーんだよ。
NYに行って痛いほどわかった。
おまえといる時間がどれだけ貴重かって。
だから、おまえといれる時間は1分1秒でも無駄にしたくねぇ。」

そんなことを真顔で言われて、なんて返していいのか分からない。
そんなあたしの顔を見て、

「おまえ、顔がいつも以上にブサイクになってるぞ。」
と笑うこいつ。

「……ちょっと!喧嘩したくないって言ってる人が言う台詞?」
そう言って道明寺の肩を思いっきりたたいてやると、

「ハハハッ、悪かった、ごめんごめん。」
と嬉しそうに言う。




「牧野、おまえさ、さっきデザート食べないで部屋に戻っただろ。
タマがあとで食べろって。」
そう言って道明寺が指差す方を見ると、ワンプレートにきれいに並べられたデザートたち。

「えっ、ほんと?嬉しいぃー。
甘いもの食べたかったんだよね~。」
あたしは、バニラビーンズがたっぷり入ったプリンを手に取り一口くちにいれ「おいしぃー」と唸る。
次はその横にあるチーズケーキ。
ふわふわの食感がたまらない。
そんなあたしをじっと見つめる道明寺。

「道明寺も食べる?」
フォークもスプーンも二人分用意されている。

「いや、俺はいい。」
そう言って、道明寺はデザートプレートの横にあるキャンディーボックス開けて、そこからアメを一つ取り出し口にポンと入れた。

「アメ?珍しいね道明寺がアメ食べるなんて。」

「そうか?」

「うん。なんのアメ?」

何気なく聞いたつもりのその言葉が、実は道明寺が待っていた台詞だったなんて…………。

「食べてみるか?」
そう言って不適な笑みを浮かべた道明寺が、突然あたしに近付いてくる。

「っ!な、なに?」

「なんのアメか自分で確かめろ。」

次の瞬間、あたしの唇は道明寺ので塞がれた。
いつもならゆっくり時間をかけて解きほぐされていく行程も、今日は性急に道明寺の舌があたしの中へ入り込んでくる。

そして、抵抗する間もないほどあっという間に離れていくその唇。

「…………ん?」

「何か分かるか?」

「…………ミント。」

「正解。」

道明寺の口からあたしの口へと渡ったアメ。
あたしの口の中でコロコロと転がしてみると、それはミントの味。

「ウゲェ…………。」

「プッ……相変わらずダメなのかよ。」

「ダメ、無理っ!」

昔からハッカ味のアメは苦手だった。
ミントもそれと変わらない。

「出してもいい?」

「もったいねーだろ。」

「でも、無理。」

泣きそうな顔で訴えたあたしに、また道明寺が近付いてくる。
そして、今度は焦らすようにあたしの唇を味わっていく。

「んー……道明寺っ、……」

そのゾクゾクする感触とミントの苦手な味に思わず変な声が漏れる。

「牧野、口あけて。」

「……んっ……くちゅ……」

言われるがまま薄く開いた唇から、道明寺の舌が潜り込んできて、器用にアメをすくっていく。
そして、口内に残るミントの辛さまで拭うようになかなか離してくれない。

「ど……道明寺っ……ん……くちゅ……」

やっと解放してくれた道明寺は、いつもより熱っぽい目であたしを見て言った。


「牧野、覚えてるか?
前にもこれと同じことがあったよな。
あのときもミントのアメをおまえからこうやって貰ったはずだ。
そして、そのあと、」

「……あ、……思い出した。」







そうだ。そんなことがあった。
あれは、道明寺がNYに旅立つ直前。
道明寺があたしをパソコンの前に座らせて、いつになく真剣な顔で言った。
「俺専用の携帯はいつも持ってろよ。」
そして、
「もしも、もしも何かあったときにこのページを開け。」
そう言って教えてくれたあたしたちだけの秘密のサイト。

あたしは、それを聞きながらデスクの上にあったアメを何気なく口にいれた。
それがミントのアメ。

口にいれた瞬間、あーやっちゃった、と思ったあたしに道明寺は苦笑しながら、
今みたいにゆっくりと時間をかけてあたしの口からアメを奪っていった。

そして、
「牧野、パスワード設定しろ。
このサイトに入るには必ずパスワードが必要だ。
俺とおまえだけが分かるパスワード。」

その道明寺の言葉に、あたしは少し考えて言った。


「ミント。」








「思い出したか?」

「……うん。パスワードのこと?」

「ああ。」

道明寺はあたしの手を引いて、あの時のようにパソコンの前に座らせる。
画面にはパスワードを入力するメッセージが。

後ろに立つ道明寺にちらっと視線を送ると、
パスワードを入れろと目で合図をされる。
あたしはパソコンに向き直り、恐る恐るキーボードを打った。




『mint』





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 2015_06_26






邸に着いたのは日が暮れてからだった。

「牧野さん、お元気でしたか?」

「はい、皆さんもお元気そうで。」

俺なんか完全に無視して牧野を中心に再会を喜び会う使用人たち。

「牧野、行くぞ。」

「あ、あんた先に行ってて。あたしもう少しみんなと話して行くから。」

ふざけんなっ。
俺ともろくに話してねーのに、置いていけるかっ。

「いいから行くぞ。」

「あっ、ちょっと、道明寺っ!自分で歩けるから下ろしてっ!」

牧野を小脇に抱えあげ、とりあえず東の角部屋に移動する。

「なんか……懐かしい。
変わってないね。」
そう呟く牧野は入り口に立ったまま部屋を見回している。

「部屋の主が留守だったのに変わってたまるか。入れよ。」
昔もそうだったように、部屋に置かれたソファに並んで座る俺たち。

「牧野、おまえに……」
話がある。そう言おうとした俺の言葉を遮って、

「タマさんっ。そうだよ、タマさんの様子見てこなきゃ!風邪で寝込んでるって。あたしタマさんの部屋に行ってくる。」
そう言って立ち上がるこいつ。

都合が悪くなったり、キョドってる時のこいつの特徴は早口でよくしゃべること。
今の牧野がそれ。

俺はそんなこいつに苦笑しながら、
「俺も行く。」
そう言って軽く牧野の頭を小突いた。

まぁ、今日は外泊届けも出してきているし、話はあとでゆっくり出来るだろう。




二人でタマの部屋を見に行くが、誰もいない。
使用人が使う休憩部屋にも……いない。
ぐるぐると広い邸の中をタマを探して二人で歩く。

すると、ダイニングでタマを発見。
「タマ、おまえなにやってんの?」

「坊っちゃん、なにって食事の用意ですよ。」

「それは見れば分かるけどよ、タマおまえ具合は?」

「なんですか具合って?
またタマが死にそうだとか、からかって。」

「ちげーよ。風邪で寝込んでるってババァが言ってたぞ。」
そういう俺に、少し考えている様子のタマが、

「奥様も二人のことになると甘々なんですから……。」
と呟き、
「そうです、タマはさっきまで風邪で寝込んでいましたけど、もう元気になりましたのでご安心を。
さぁ、食事にしましょ!」
そう言っていつも以上にでけー声を張り上げて俺たちを席に座らせた。





隣に座る牧野は相変わらず、うまそうに飯を食う。
時折、「おいしいっ。」とか「これ何だろう。」
とか言いながら目をキラキラさせて食べる姿はすげー可愛くて目が離せねえ。

「おまえ、あんまり飲むなよ。」

「え、だってこれすごく美味しいんだもん。」
そう言う牧野の手にはワイングラス。

「甘いけど、度数は相当きついからな。」

「ん、へーき。」

「それぐらいにしとけ。
残りはあとで俺の部屋で飲もうぜ。」
俺がそう言うと、

「ここで解散じゃないの?」
と言ってくるバカ女。

「…………その冗談、全然面白くねぇ。」

「冗談じゃないし。」

「なら本気か?もっとたちがわりぃ。」

「…………。」

一瞬にしてピリピリとした俺たちの雰囲気に、気間ずそうに視線をそらす使用人たち。

「牧野、ここに来たのはタマの見舞いだけが目的か?」

「……どういう意味?」

「おまえさ、この間の『イエス』は嘘じゃねーよな?」

「え?……それは…………」

「ここでもう一度聞いてやろうか?」
離れた場所にいるとはいえ、俺たちの会話は使用人たちにも聞こえているはず。

「……聞かなくていい。」

「牧野、逃げんな。……頼むから逃げるな。」

「……なにそれ。」

「追いかけて追いかけてやっと捕まえたと思っても、おまえすぐに逃げるじゃん。」
俺はそう言って持ってたフォークを置いて、深くため息をつく。

「はぁ?あたしのどこが逃げてるって言うのよっ。そもそも飽きもせず追い掛けてくる方が問題だと思うけどっ!」

「飽きもせずって………おまえに飽きるわけねーだろバカっ。」

「っ!そういうこと言ってるんじゃなくて、
恋人でもないのに待ち伏せしたり、部屋に押し掛けたり、あんたストーカーだからねそれ。」

「おまえ頭おかしいだろ。
いつから俺たちは恋人じゃなくなったんだよ。」

「ずっと前から。」

「誰がそんなこと言ったっ。」

「あんた。」

「だから、それはっ、」

「道明寺司があたしのことを『友達』だって金髪彼女に紹介したの、あんた忘れたの?」
そう言って一気にグラスを空ける牧野。

「バカっ、一気に飲むなっ。」
牧野の手からグラスを奪い、赤ワインで染められた唇を親指で優しく拭ってやる。

「全部おまえの誤解だ。
そのこともおまえにきちんと話したい。」

「……今更、何も聞きたくない。」

何も聞かず、何も言わず、このまま俺とのことを終わりにするつもりか。
イエスと言った言葉も、深く交わしたキスも、
その時だけの夢だったかのように、
次の日には泡となって消えていく。

「ほらな?また逃げるだろ?
おまえはそういう女じゃねーだろ。
いつだって、逃げずに俺に立ち向かってくるだろっ。
俺はそういうおまえに心底惚れてんだよっ。
だから今回もぶつかってこいよっ!」

まっすぐこいつの目を見て言ってやる。
負けず嫌いのこいつなら、きっと…………。

「分かったわよっ。逃げずに聞いてあげるっ。
あたしたちがこんな関係になっちゃった理由をね!
1時間後にあんたの部屋に行くから、逃げずに待ってなさいよっ!」



こんな風にしたかった訳じゃねーのに、結果は最も俺ららしい展開。
「相変わらずですね…………。」
どこから聞いていたのか、タマが呆れた顔で俺を見る。






********************


「さっきのあれって、喧嘩なの?」

「あー、あれ?
お二人は喧嘩してるんだろうけど、聞いてるこっちは赤面しちゃうよね。」

「やっぱり?あたしもなんか恥ずかしくなっちゃって。
牧野さんってすごいわ。」

「司様の甘いノロケも完璧にスルーだもんね。」

「『おまえに飽きるわけがない』とか、
『そういうおまえに心底惚れてる。』とか、
あれ、普通なら一発で落ちるレベルなんだけど、牧野さんには全然通用しないみたい。」

「司様、気の毒だわ~。」





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 2015_06_25







NYに旅立って1年間、俺と牧野はそれまで以上に深く繋がっていた。
日本ではろくに恋人らしい時間を過ごせなかった二人。
キス止まりの関係も、次こそ会えたときには……そんな風に思いながらもどかしい気持ちで電話していたあの頃。

それが1年を過ぎた辺りから雲行きが怪しくなった。
俺の周りで少しずつ嫌な動きが出始めたのだ。
はじめはババァに俺の結婚を打診する動きがあったらしいが、それをババァははね除けた。

そのあと、あるパーティーで俺と同じ歳の娘を連れた男を紹介される。
魂胆は見え見えだった。
その金髪の愛娘を俺の結婚相手にと。
そこで、俺ははっきりと言ってやった。

『俺には好きな女がいる』と。

けど、この男、相手が悪かった。
NYで手広くレストラン業をしている裏で、ラスベガスでカジノも経営していて、総資産は道明寺とたいを張る勢いだった。
その資産と剛腕っぷりで、裏社会でも名が知れる男だったらしい。

だからといって、結婚に関して俺が簡単に従うはずもなく、ましてや牧野を手放すつもりも毛頭ない。
だから、俺は終始強気でいった。

それがかえって逆効果だった。
裏社会でも通用するほど恐れられているやつに怯むことなく突っぱねる若造をえらく気に入ったこいつは、更に強く俺を婿にしたいと誘ってきた。

その誘いが徐々にエスカレートし、全然なびかない俺に腹をたて、怒鳴り、脅しにまで発展していく。
『好きな女がいる。』
俺の言葉を忘れていなかったやつは、俺の周辺を徹底的にかぎまわっていた。

早い段階で牧野のことはバレた。
日本にいる間に付き合ってた唯一の女だと知ったやつらはすぐに俺に話を持ってきた。
『大事な女に何かあってから後悔しても遅いぞ』と。

それが何を意味しているのか…………。
ただの脅しではないことはすぐに分かった。
牧野の普段の姿が撮られた写真が俺のオフィスに送られてきた。

相手はもう牧野の側にいる。
俺は覚悟を決めた。

牧野と、俺の言う『好きな女』は無関係だと相手に分からせるため、あいつと距離をおくことにした。
携帯、メール、邸の電話、すべてが監視されているだろう。
だから、身を引き裂かれる思いで連絡をたった。

そのころ、事情を重く受け止めたババァが、日本に帰り牧野を守るため寮を設立した。
万全の体制で牧野を守ると約束してくれ、俺は自分の手で出来ねぇことを頼むしかなかった。

そんな俺にも唯一救いがあった。
それはやつの愛娘の存在。
彼女は政略結婚の相手でもあり憎むべき女だが、
彼女にも俺と同じように『好きな男』がいた。

幼馴染みとして育ち、今は新進気鋭のグラフィックデザイナーとして芽を出しはじめた男。
彼女は父親の反対を受けながらも、その男を愛していた。

そんな同じような境遇の俺と彼女の利害は一致し、政略結婚を阻止するため協力し合うことで手を組み、長い期間をかけ父親を説得することにした。

牧野がNYに来たときは、まさに俺と牧野の関係が終わったものと思わせたかった時で、しかも俺の背後にはやつらの手下がいて、俺らの会話を盗み聞きしていた。
だから、俺はわざと
『友達だ』と強調して言ったことをあいつは今も誤解してるらしい。

そして、日本に帰ってきてからここ数日まで眠る暇もないほど忙しかったのは、娘とデザイナーの男が晴れて式をあげ、その段取りをすべてメープルで取り仕切っていたからだ。

政略結婚を阻止するため、俺はそのデザイナーの男に目をつけた。
ただのそこらにいるような男なら俺もそんなせこい手は使わねぇ。
けど、その男の作る作品は斬新で繊細、今までにない発想で俺の目を引いた。

すぐにそいつと独占契約を結んだ俺は、メープルの小ホールで個展を開くことにした。
それが…………大当りだった。

NYの有名な雑誌が取り上げる今年最も活躍した芸術家にも選ばれ、その甘いフェイスでCMやテレビ出演も殺到した。
NYでは今じゃ俺よりも有名で、知名度も高い。

そんな男を娘の父親はほっとくはずがない。
今まで俺にしか興味がなかった父親も、地位も名誉も金も作り出す娘の彼氏を手放すはずもなく、手のひらをかえしたように将来の婿として受け入れた。

そして、独占契約を結んでいる俺は、その契約を父親に譲る代わりに、今後一切俺と牧野に近付かないと誓わせた。




言葉で表せば、この2年なんてあっという間に語れるだろう。
けど、その間、俺の精神はズタズタになった。
牧野に何かあったら…………そう思うだけで眠れない日々が続いた。
だからといってあいつの側に行くことも出来ない。
行けば牧野を失うかもしれない。
死ぬほど辛い日々だった。


だから、送り続けた。
牧野へ向けてメッセージを。




3年前、NYへ旅立つ頃、邸の俺の部屋で牧野をパソコンの前に座らせた。

「牧野、俺が渡した携帯持ってるよな?」

「うん、持ってる。」

「いつも持ってろ。俺専用だからなくすなよ。」

そんな会話のあとに俺はパソコンを開いて言った。

「それと、もしも、もしも何かあったとき、このページを開け。」

「……なに、これ。」

「俺とおまえだけが知ってる秘密のサイトだ。
書き込めるのは俺だけだけど、パスワードを知ってるやつは見ることができる。
そのパスワードを知ってるのはおまえだけだ。
いいな?」

「ん、わかった。」




その『もしも』を使うことになるとは俺自身も想定していなかった。
だけど、監視下にいる中、牧野が見てくれてると信じてそこにメッセージを送り続けることしか出来なかった2年間。







牧野は俺とそんな会話をしたことを覚えているだろうか。
「あいつの記憶を信じた俺が間違ってたか?」
そう苦笑しながら、俺は牧野を迎えに行くため寮に向かった。





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 2015_06_24


ちょいと、

Category: 未分類  



ごめんなさい。
今日の更新ですが、まだ書きあがっておりません!

仕事も終わって昼過ぎから考えているのですが、なかなかまとまらない。
こういうパターンは初めてだなっ。

道明寺のNYでの出来事が明らかになるストーリーなので、なんとか丁寧に書きたいなぁと思っていたら、こんな時間に!

何度も何度も訪問して下さってる皆様、ごめんなさい。
もう少し考えさせて下さいっ。

今日中に書き上がらないかもしれませんが、なんとか頑張ります。
夜ご飯も作らなきゃーーーー!


もうしばらくお待ちくださいね。






 2015_06_24






デジャブ…………。

ついこの前もこの場所でこんなやりとりをした記憶が。
目の前には理事長である道明寺のお母さん、そしてあたしたちは二人ならんで立たされている。

「先程、何者かに寮の電気ブレーカーが壊されました。
カメラで確認すると、あなたが写っていたわ。
どういうことかしら?」

「わざとじゃねーよ。
たまたま出てた線を引っ張ったらそうなっただけだ。」

言い訳もここまで適当だと、逆に清々しい。

「そう。でも、ここからが問題よ。
あなたはそのあと自室ではなく牧野さんの部屋に行ってるわね。
それもカメラに写っています。」

「あの暗い中、カメラに写ってるのが俺だと特定出来るのかよ。」

「ええ。出来ます。
ここに取り付けてあるカメラには暗視カメラもありますからね。
あなたが言ったのよ。
牧野さんがこの寮に入ることが決まったときに、セキュリティも警備もカメラも完璧にしてくれって。
自分がそれに引っ掛かってどうするんですか。」

「ッチ。」

あたしはただ道明寺と理事長のやりとりを黙って聞いてると、急に名前を呼ばれてドキリとする。

「牧野さん、今回もあなたが計画したとは思えないけれど、司を部屋に入れた時点で同罪とします。」

「…………はい。」

「二人はペナルティ2回目。
あと1回で停学よ。
門限7時は10日間延長。いいわね?」

「はい。」
「おう。」

「もう遅いから戻っていいわ。」

あたしたちは揃って理事長室を出ようとしたところで、後ろから声がかかる。

「もっと計画的に行動しなさい。
なにも規則を破らなくても二人で過ごすことは可能でしょ?
9時までに延長届けや外泊届けを出せばいくらでも二人でいれるはずよ。」


「罰則期間中は無理だろ。」

「いいえ、例外はあるわ。」
そう言って不適な笑みを浮かべる理事長。

「親族もしくはそれに近い人に病人が出た場合は罰則期間中も届けを出せば認められる。
確か…………昨日からタマが風邪を引いて寝込んでいるはず。
あなたたちにとってタマは親族に近い人じゃないかしら。」

さすが、この人は道明寺の母親だ。

「サンキュッ!」

そして、確実にその血を受け継いだこの暴走男は嬉しそうにそう言ってあたしの手を取って部屋を出た。








男子寮と女子寮の境目。
そこに立つあたしたち。

「明日、外泊届けだしとけよ。」

「はぁ?」

「夕方には仕事終わらせる。
ここに迎えに来るから用意しとけ。」

「なんでよ。」

「なんでよっておまえ、さっきのババァの話し聞いてなかったのかよ。
タマが今にも死にそうなんだぞ?それなのにおまえは見舞いにも行かねぇのか。相変わらず冷てー女だな。」

死にそうなんてひとつも言ってない。
自分の都合のいいように解釈するのが得意中の得意な男。

「とにかく、迎えに来る。
残りペナルティは1回しかねーからな。
俺に暴走させるなよ。」

暴走させてるのがあたしのせいだとでも言いたいのか、あたしの頬をムギュッとつねる道明寺。

「わかったからっ。じゃあね。」

「おう。」








************************

女子寮に消えていく牧野を見つめる俺に、

「坊っちゃんのそんな顔を見るのは初めてですよ。」
と寮母の鶴の声。

「鶴か。」

「タマさんから、坊っちゃんが牧野さんを溺愛してるとは聞いてましたけど、まさかここまでとは知りませんでした。」
と笑う鶴。
タマと鶴は旧知の仲だ。
ババァに気を許された信頼おける数少ない使用人だった。

「ったく、捕まえても捕まえても逃げるんだよあいつは。」
愚痴りたくもなる。
やっと言わせたイエスの言葉も、どこまでが本気でどれだけの効力があるのかわからない。

「4年たった今も、俺の片想いなのかもしれねぇ。」
少しだけ弱気になってそう呟いた俺に、
鶴が笑う。

「坊っちゃん、あの子もいつだったか同じことを呟いてましたよ。」

「え?」

「坊っちゃんが日本に帰ってくる前、寮の共有スペースにいつも朝早く彼女がいるんです。
新聞を熱心に読んでいる姿が印象的で、『いつも偉いわね』って声をかけてその新聞を見ると、NYタイムズ紙だったんですよ。
それから何回か話すようになって、いつだったか彼女が言ったんです。
もう会うこともないかもしれないけど、あの人には元気でいてほしい。幸せでいてほしいって。
だから、私言ったんです。
『会いに行けば?』って。
そしたら、一言、『あたしの片想いだから』って。」

「……牧野が……?」

「その時の彼女も今の坊っちゃんと同じ顔してました。
好きで好きで堪らないって…………。
青春ですねー。」




死ぬほど恋しかったこの数年。
電話も、会うことさえも控えていた理由をあいつに話さずにいられるならそうしたい。
なぜなら、怖がらせたくないから。

でも、
『元気でいてほしい。幸せでいてほしい。』
そんな風に俺とのことを終わらせようとしていたあいつを思うと、牧野を守ろうと必死だった俺の考えが間違っていたのかもしれねぇ。

俺にとっておまえがすべてだ。
それはおまえと出会ってから一度も変わらない
俺の想い。





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 2015_06_23





「10分後にそっちに行くから待ってろ。」

道明寺がそう言って電話を切った。

時計を見ると10時を回っている。
まさか、まさかね…………。
あいつ、本気じゃないよね?

きっと冗談だよという気持ちと、あいつならやりかねないという気持ちであたしは電話を切ったあとも落ち着かずに部屋の中をウロウロと歩き回る。

と、その時、突然部屋の電気がプツっ……という音とともに消えた。

「……え?」
一瞬あたりが静寂に包まれる。
暗闇のなか、カーテンから漏れる月明かりを頼りに窓側に行き外を見ると、外灯はいつも通り灯されている。

停電ではなさそう……。
そう思っていると小さく扉がノックされる音がした。

あたしは慌てて駆けていき、部屋のドアを開けると、その隙間から大きな図体が滑り込んできた。

「っ!道明寺っ!」

「うるせー、でかい声出すな。」
そう言ってあたしの口を大きな掌で押さえる。

真っ暗な部屋の中、信じられないものを見るように道明寺を見つめるあたしに、

「たぶんそんなに長くいれねぇ。」
と言うこいつ。

「あんた、どうやってここまで来たのっ?」

「寮の電気、ぶっ壊してきた。」

「はぁぁぁー?」

「バカッ、声がでけーんだよ。」

「壊してきたって、この真っ暗な原因はあんたかっ!」

「ブレーカーの機械から出てる線をいくつか引っこ抜いてやったらこうなっただけだ。」

呆れてものが言えない。
この間は一客何万もするカップやグラスを割ってきたというのに、今度は寮全体のブレーカーを破壊してくるなんて。

暗闇に慣れてきて道明寺の顔が少しずつ見えてくると、なぜかすごく嬉しそうな顔をしてる。

「あんた、何ニヤニヤしてんの。」

「あ?そりゃ嬉しいからに決まってんだろ。」
そう言って只でさえ至近距離にいるのに、更に1歩詰めてくる。

「なによ。」

「さっきの電話のつづき。
聞かせてもらおうかと思って。」
そう言う道明寺は確実にいじわるな顔をしてる。

「…………何でしたっけ?」

「この期に及んでまだ逃げるかおまえ。」
更に1歩詰めてきた道明寺とあたしの距離はもうほぼゼロ。

「考えとくって言ったでしょ!」

「だから10分やっただろ。」

「そんなっ、……チュ」
文句を言おうとしたあたしの口に突然チュッと音をたててキスをしてくる道明寺。
そして真剣な顔であたしに言った。

「牧野、俺の質問にイエスかノーで答えろ。」

「え?」

「いいな。」

真っ暗な部屋の扉の前で、道明寺を見上げるあたしと、あたしを包み込むように見下ろす道明寺。

「俺のこと、もう顔も見たくないほど嫌いか?」

少し考えて小さく首を振るあたし。

「他に好きなやつでも出来たか?」

ううん。そんなはずない。もう一度首を振る。

「俺以上におまえを好きだと言う男がいるか?」

あんた以上に自分の気持ちをぶつけてくる男なんてどこにもいない。

「牧野……俺はおまえが好きだ。」

ほらね、また。

「おまえも俺のこと……好きだよな?」

言ってることは俺様なのに、泣きそうな顔してバカなんだから。

「それもイエスかノー?」

「…………いや、イエスしかダメだ。」




あたしはこの男がきっと好きで好きで堪らない。
俺様なのに寂しがりやで、乱暴なのにどこまでもあたしには優しくて、意地悪なのにいつも助けてくれて。

言葉に出せないだけで、たぶんあたしの方があんたよりずっと想いがつよいはず。
だから、……観念するしかない。




「たぶん…………イエ……ス……んっ……。」



あたしが言い終わる前に、道明寺がキスをした。
「たぶんはいらねぇ。」
そう言いながら強くて深く、それでいてすごく優しいキス。

道明寺の大きな掌で顔を包まれて、何度も何度も愛撫されていく。
その掌の感触や温かさに迂闊にも気持ちいいと思ってしまうあたし。

それを感じ取っているのか、容赦なくあたしの口内に道明寺の舌が入り込み、飲み込めない唾液を器用に絡みとっていく。

「道明寺……んっ……」
やっと出した声もすぐにくちゅくちゅとしたやらしい音にかき消され、立っていることも出来ないほど翻弄されていく。

「牧野、首につかまれ。」
言われるがまま道明寺の首に両手を回すと、そのまま抱えあげられ子供が抱っこされるような体制で部屋まで連れていかれた。

その間も道明寺のあたしへのキスは止まらない。
ベッドまで来たあたしたちは、倒れ込むようにそのまま横になり、更に密着度が増した道明寺の唇があたしの首をつたい、手は背中を這い、服の上から胸を刺激されていく。



このままあたしたち…………、




そう思ったとき、また再びデジャブかと思わせるようにあたしの部屋の扉がノックされた。








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 2015_06_22




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