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日曜日なので、今日の更新はお休みします。
総務課の牧野さん、そろそろ終盤です。
明日、1話アップしますので、お時間ありましたら是非~。



ランキング、いつも応援ありがとうございます。
昨日、久々に見たらお陰様で上位にランクインしていました。
皆さんのお陰です。
ありがとうございました!


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 2015_05_31






「怖いか?」

ババァが明日日本に戻ってくる。
邸で会うことになっている。
牧野をババァから守りたい。

「あたしは……大丈夫。
道明寺は?」

「俺?
…………ビビってるかもしれねぇ。」

「プッ……でしょ?だって、怖い顔してるの道明寺の方だもん。」
そう言って俺の頬をつねるこいつ。

そして、俺の前では滅多に見せねぇかわいい笑顔で言いやがる。

「大丈夫。あたしが守るから。」



俺の台詞だろ。
俺がおまえに言ってやりたかったその言葉。
それを得意気に言い切るこの女こそ、
俺が人生かけてでも欲しいと思う運命の女。








次の日
夜7時を回った頃、ババァの秘書から西田に連絡が入った。
1時間後に邸で待ってると。

仕事が終わってマンションに戻ってる牧野を迎えに行くと、上品な濃紺のワンピースに着替えた牧野が、
「こんな感じでいい?」
と玄関で俺を見ながら聞いてくる。

「ああ、似合ってる。」
ついこの間、俺がプレゼントしたそのワンピースは予想通り牧野にピッタリだ。

「もう、出るでしょ?」
そう言って小さな下駄箱から取り出したのは、俺たちが出会った日にプレゼントしたあのパンプス。

「勝負靴だから。」
そう笑いながらそのパンプスに足を通すと、
文句のつけようがないくらい完璧だ。

「全身、俺の見立てだな。」

「そう言われると、なんか……腹立つ。」
そう言いながらわざと嫌な顔をするこいつ。

「いいじゃん、すげータイプ。
外は俺が選んだものに包まれて、中は昨日俺が付けた赤い痕をたくさん残して、
隣にいるだけで我慢出来ねぇんだけど。」

昨日は牧野に怒られながらも、体中に俺の痕を残した。
もちろんワンピースから見える部分に付けるようなヘマはしてねぇ。

玄関で軽く重ねる唇。

「道明寺、グロス付いちゃう。」

「ん。後で俺がつけ直してやる。」








邸のエントランスに着くと、先に来ていた西田が出迎える。
「社長、いえ、奥様は書斎にいらっしゃいます。」
今日はプライベート。
西田のババァに対する呼び名もプライベートなものに変えるところが西田らしい。

「司様、椿さまもご一緒です。」

「ねーちゃんが?」

「はい。…………心強い味方ですので。」





書斎に入ると、その味方のねーちゃんが、
「いらっしゃい、つくしちゃんっ!」
と牧野を抱きしめる。

それを見て、
「ねーちゃん、牧野死ぬぞ。」
そう言ってやると、ごめんっ、と言いながら腕を弱めるねーちゃん。

俺は、そんな俺たちを書斎のデスクからじっと眺めているババァに目線を合わせると、
牧野の手をそっと繋ぎ、
「遅くなりました。」
と頭を下げる。

「時間通りよ。座って。」


書斎のソファに向かい合って座る俺ら四人。
「母さん、紹介します。
こちらが牧野つくしさんです。」

「はじめまして、牧野つくしです。」

「ええ、よく存じているわ。
それで?わざわざ私に会わせようとするのには何か理由があるのかしら?」
まっすぐに俺を見るババァ。

「牧野と結婚したいと思ってます。」

「……フフフ……本気で言ってるの?
牧野さん、失礼ですけど、あなたのご両親は何をされているかた?
お父様の会社のお名前は?
年収は?
財産はどれほど?」
たたみかけるように牧野にそう聞くババァ。
予想してた通りの展開だ。

「ババァっ!」

「司っ、やめなさいっ!」
怒鳴る俺にねーちゃんがとめに入る。

「うちの両親は……経営者ではありません。
年収も財産も、お答え出来るほどのものはありません。」

「牧野、やめろ。何も言わなくていい。
……ババァ、もう知ってんだろ?
牧野の事も俺との事も、 全部調べてるんだろ?
汚い真似すんじゃねーよっ!
知りたいことがあるなら直接聞いてこいよっ!
こそこそ調べて脅しの材料にするような汚い手を使うなっ!」

「道明寺っ。」
俺の手を握り、首を振る牧野。

そんな俺たちを見ながら、
「フフフ……、調べてたことがバレてたようね。
」と笑うババァ。

「息子に監視をつけて楽しいか。」

「……そうね、仕事もプライベートも実に詳細に報告してくれる監視役がいて助かったわ。」
そう話すババァの目線が、俺からゆっくりとずらされていく。

そして、その視線が止まった先には、下を向いて俯く、…………西田の姿。


「ま……さか、……西田、おまえが?」
信じらんねぇ気持ちで見つめる俺に、

「……申し訳ありません。」
と、俯いたまま呟く西田。


その言葉を聞きながら、そういえば…………と思い出す。
俺が牧野と結婚するつもりだと西田に報告したとき、こいつは変なことを言っていた。
『裏でコソコソするのは辛かった』と。

あの言葉はこういうことだったのか。
疑いもしなかった見方が、スパイだったとは。



ソファから立ち上がり、書斎の入り口に立つ西田の方に、ゆっくりと近づく俺を、
「司?やめなさいよっ!」
「道明寺っ!」
そう呼ぶねーちゃんと牧野の声。

それを無視して、俺は西田の前に立つと、
「西田、おまえは今でもババァの秘書だったんだな。」
そう一言吐くと、胸ぐらをつかんで、思いっきり西田の頬に拳を叩き付けた。









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 2015_05_30







きっかけは、長年道明寺の専属デザイナーとして仕えてくれている靴職人の一言だった。

「そろそろ司様もご結婚ですか?」
息子にそんな素振りもなかっただけに、

「浮いた話の一つもないわ。」
そう答えた私。

「……そうですか。
4年前に女性用の靴をオーダーされましたが、つい先日、その靴のお直しを頼まれましたので、長くお付き合いされている女性がいらっしゃるのかと。」
そう話す職人の言葉は初耳だった。
4年前なら司がNYにいるころで、私の目の届く場所にいたはず。
彼女がいれば、いくらプライベートは自由にさせていても、耳に入る。
しかも、いまだに付き合いが続いているような関係の女性がいるのだろうか。

信じられないという気持ちの反面、司の言動には母親として不安がいつもあったため、その職人からの話にホッとしてる自分もいた。

25も過ぎた年頃の息子に今まで全く女性の影はなかった。
それどころか、米社会では同性愛の噂まで立てられて憤慨してたところだった。

「その靴はほんとに4年前に作ったものなのね?」

「はい、もちろん。
私が作ったものですから忘れるはずがありません。」


その言葉を聞いて、私はある人物に連絡を取った。





毎月送られてくる報告書。
それは、今月で12冊目。
少なくとも司と彼女の付き合いは1年が経過していた。

彼女の名前は牧野つくし。
道明寺HD日本支社、総務課勤務。
彼女の今までの経歴も調べさせたが、司が日本支社に異動になる前の接点はどこにもない。
やはり、靴の彼女とは別人か?

家も一般家庭、両親もサラリーマンをやめて沖縄で悠々自適の生活。
出身校もそれほどではないけれど、唯一目を引いたのは、道明寺財閥の入社試験の成績が群を抜いて素晴らしかった。

試験、論文ともにトップといっていいほどの成績。それを見ると、高校まではたぶんお金のかからない所を選んで行っていたのだろうか。

毎年、成績優秀者だけが選ばれるNY本社での新人研修にも参加していて、そこでも見事な英語を披露したようだ。

司とはどこで知り合ったのかは結局分からない。
でも、その報告書に写る司の姿は、母親の私ですら見たことのない優しい顔をしていた。

先日は彼女を邸にも連れていきタマとも会ったようだ。
そして、たぶん今ごろ椿とも会っているだろう。

司、私に話すのが怖いのかしら?
二人の仲を引き裂くと思っているのかしら?
直接対決が待ち遠しい…………。







「もしもし。」

「俺です。……今少しいいでしょうか。」

「ええ、構わないわ。
仕事で何かトラブルでも?」

「いえ。
実は……会ってもらいたい女性がいます。」

「牧野つくしさんね?」

「……もう、そこまで知ってるのかよ。」
少し苛立った司の声。

「ご両親への挨拶は無事に済んだのかしら?」

私がここまで知ってると思っていなかったんだろう、この言葉にしばらく絶句していた司だったけれど、

「そこまで報告があがってるなら話は早いな。
牧野と結婚したいと思ってる。
牧野の両親にも承諾を得た。
あとは…………母さんだけだ。

二人で会いに行く。
近い内、予定を空けてくれねぇか。」

久しぶりに司から『母さん』と呼ばれた気がして、懐かしさに口許が緩む。
中学に入ってからは、親子らしい会話もほとんどしてこなかった。
時を経るごとに、私たちの関係は冷えきって、NYの同じ邸で暮らしている時でさえ、顔を会わせない日が何日も続くような日々だった。

だから、司ことは仕事以外ではほとんど何も知らない。
どんな音楽が好きなのか、どんな服装を好むのか、どんな部屋で過ごしているのか、
そして、どんな女性を好きになるのか。

『会わせたい女性がいる。』
そう、堂々と男らしく言う司に、私の知らないところで成長したわね、と嬉しさが込み上げてくるのと同時に、そんな司を一番側で見てきた女性がどんな子なのか、早く知りたいと思う。





「来週、日本に帰ります。
その時に、牧野さんに会わせて貰えるかしら?」







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 2015_05_29







牧野の両親と別れたあと、ねーちゃんと一緒に邸に戻った俺ら。
3人でダイニングで食事をすることになり、一旦着替えるために部屋に戻ってきた俺。
もちろん、牧野も一緒に連れてきた。

「課長から急に会社に戻るように連絡があって、慌てて戻ったらお姉さんがいたの。」
そう話しながら、俺が脱いだスーツの上着とネクタイを受け取るこいつ。
そのままクローゼットの中まで入っていき、

「それからは、すっごい力で抱きしめられて、何がなんだか分からないまま、お姉さんのペースに巻き込まれちゃった。」
そう笑いながら話すこいつの前でワイシャツも脱いでいく。

「あ、あたし、出てるね。」
俺の裸を見て急に恥ずかしくなったのか、そう言ってクローゼットから抜け出そうとする牧野の腕を掴み、壁まで押しつけると、今日一日我慢していたキスをする。

軽く済ますはずなのに、なかなか止められない。
上半身裸の俺の肌に、牧野の手が触れて、更に体を熱くさせる。
「道明寺、お姉さん待ってるよ。」
そんな声も無視して、こいつのブラウスのボタンをはずしていく。

「ダメだって、……道明寺っ。」
困った顔をしながら抵抗してくるその姿が可愛くて、
「最後まではしねーから、少しだけ触らせろ。」
そう言って、結局牧野にとっては『少しだけ』ではないほど、柔らかい膨らみを堪能した。










ダイニングに行くと、すでにねーちゃんが席について、タマと談笑してる。

「二人とも遅いわよ~。
さぁ、食事にしましょ。」


食事が進むなか、俺はねーちゃんに確認したいことを口にした。

「ねーちゃん、なんで総務課に乗り込んだんだよ?」

「ちょっと、その言い方酷いわね。
勘違いしないでよ。
時間が空いたから司の顔でも見ていこうかと思って会社に寄ったら、西田さんが『今日はもうオフィスに戻らない』って言うから、せっかく来たのにこのまま帰るのはつまらないじゃない?」
得意気にそう話す姉貴。

「つまるとかつまらないの問題じゃねえ。」
そう言う俺に、

「それでね、」
全然、人の話なんて聞かず続ける。

「それでね、来たついでに、つくしちゃんの顔でも見ていこうかなぁと思って。
でも、今日がご両親との顔合わせだなんて知らなかったから…………。
課長さんが気を利かせて、つくしちゃんを呼び戻してくれたんだけど、なんか悪いことしたわね。」

「いえ、大丈夫です。
……ビックリはしましたけど。」
そう答える牧野。

ねーちゃんが、メープルに来たいきさつはなんとなく分かったが、それよりも引っ掛かることがある。

「ねーちゃん、なんで牧野のこと知ってた?
俺は名前も課も言ってねぇよな?」

そう聞く俺に、姉貴は言いにくそうに口を開いた。

「司、お母様にもバレてるわよ。」

予想もしてなかった言葉に、固まる俺。
「…………」

「司から付き合ってる人がいるって聞いて、お母様にもそれとなく伝えたら、もう知ってるような感じだったの。
何で知ったかは分からないけど、つくしちゃんの事も相当調べてると思うわ。
私が日本に行くって言ったら、総務課の牧野さんによろしくって。
はじめはなんのことか分からなかったけど、あとでピンときたの。司の彼女だって。」

ねーちゃんの話を聞いて背筋が冷たくなる。
「ババァが俺たちのこと調べてる……。」

反対なのか、賛成なのか。
俺たちの結婚を阻むものは、あとはババァだけ。
俺は反対だろうが、賛成だろうが、構わない。
ババァにプライベートまで指図される筋合いはない。
ただ、牧野には望まれる結婚をさせてやりたい。
こいつの性格なら、ババァが反対すれば相当辛く思うだろう。
それでも、結婚の意志は変わらねぇけど、出来ればなんの不安も抱かせない結婚をさせてやりたい。

「ババァはなんで何も言ってこねぇ?」

「さぁ?
それがお母様の答えなんじゃない?
司っ!そんな怖い顔したらつくしちゃんが不安になるでしょ!
とにかく、今日はつくしちゃんのご両親に認めてもらえた日なんだから、改めて乾杯しましょ!」







いつかはババァと直接対決する日が来ると思っていたけど、先に知られてるということは、
向こうもすでに答えを用意してるはず。
どうせ、ぶつかるなら早い方がいい。

今日の報告も兼ねて、ババァに伝える決心をした俺は、NYとの時差を確認して受話器を取った。





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 2015_05_28






「ねーちゃんっ!」
突然のことに、他の客のことも忘れて叫ぶ俺に、

「司、他のお客様に迷惑よ。」
なんてのんきに言いやがる。

「どうしてここに、ねーちゃんがいんだよっ」

「ん、色々とね。
それよりも、司、先にご挨拶させてよ。」
そう言って牧野の両親ににこりと笑いかける姉貴。

姉貴の隣に立つ牧野を見ると「遅くなってごめんね。」と口を動かしている。

俺は牧野の両親に向き直り、
「失礼しました。」と頭を下げたあと
「ねーちゃん、こちら牧野の、いや、つくしさんのご両親。
こっちは俺の姉です。」
そうお互いを紹介すると、いつもの椿スマイルでぐいぐいと責めてくる。

「はじめまして椿です。
お会いできて嬉しいです。
どうしょうもない弟ですけど、つくしちゃんだけには優しいですので、安心してください。」

「おいっ!」

「あら、これ沖縄のお菓子じゃありません?」
俺の突っ込みも無視して、暴走する姉貴。

「ええ、そうです。
道明寺さんにと思って持ってきたので、よろしかったらお姉さんも。」

「えっ、いいんですか?
私、このシークヮーサージュース、好きなんですぅ。
よく、シークヮーサーをグレープフルーツと勘違いしてる人もいますけど、私からしたらほんと、味音痴って怒鳴ってやりたいくらいですよね」
そう言いながら両親の向かえ側に腰を下ろす姉貴。

シークヮーサーをグレープフルーツと勘違いしてるやつ…………まさに俺のことだろ、と頭をグシャグシャかき混ぜる俺に、牧野だけじゃなく両親まで笑っている。

それを見て、
「え?何かありました?」
と綺麗に笑う姉貴。

「別に何でもねーよっ。
ねーちゃん、なんでそこに座ってんだよっ。」

「なんでよっいいじゃない!
司、椅子そこに一つ借りてきて、あんたも座りなさい。」
四人がけのテーブル。
もちろん椅子も4つだったのを、姉貴が座ったから一つ足りねぇ。

俺は仕方なく隣のテーブルから椅子を拝借して、俺らのテーブルに付けると、
「あたしがそこに座るから。」
と牧野が言う。

「いいから、おまえはそこに座れ。」
そう言って姉貴の隣に座らせようとする俺に、

「道明寺が座ったら、体が大きいから通路の邪魔でしょ。」
と、今持ってきた椅子にチョコンと座る牧野。

仕方なく俺は姉貴の隣に座ったが、本来なら俺のとなりにこいつが座って両親と顔合わせするはずだったのに……と心のなかで愚痴る。

牧野に近付きてぇ。
手を握って言ってやりてぇ。
『結婚を許してもらえたぞ』と。

そんな気持ちを抑えきれず、牧野が座る椅子を俺の方に引っ張ってくる。
ギリギリまで俺に近づけて、満足した俺は至近距離まで近付いたこいつの髪を一撫でしてやる。

そんな俺に、
「道明寺っ、」
と真っ赤になって睨む牧野。

我にかえって回りを見ると、ニヤニヤ顔の姉貴と、照れたように下を向く両親の姿。

そして、姉貴が小さく呟いた。
「独占欲のかたまりみたいな男ですから、許してやってください。」




結局、飛行機の時間ギリギリまで姉貴を交えて5人で過ごした俺たち。
意外にも今日初めて会ったはずの両親とも和気あいあいと話が弾み、あっという間に時間が過ぎた。

飛行場まで送ると行った俺たちに、進が迎えに来るから大丈夫だと言い、メープルのロビーで両親と別れた。

別れ際、
「今度は沖縄にいらしてください。」
と『ママ』が俺に言ってくれたのがすげー嬉しくて、

「是非。次はゆっくり沖縄の海を見に行きます。」
と答えた。









両親と別れたあと、牧野ともっと話したいと姉貴がワガママ言いやがって、
「俺は二人で過ごしたいんだよっ。」
と、反論するも、

「あんた、ほんと独占欲のかたまりだわ……」
とか呟きやがって、強引に邸の車に乗せやがった。

車中、
「なんでねーちゃんが牧野と一緒にいたんだよ。」
と聞く俺に、

「あとでゆっくり話してあげるから……、
それよりも、いいお父様とお母様でよかった。
司だけで会いに行ってるって聞いて心臓止まるかと思ったわよっ。
あんたすぐ暴言はいて、暴れるから。」

「するかっ!いくら俺でも、牧野の両親に暴言吐かねーよっ。」

「……そうよね。今日の司見て、あたしも思った。あんた成長したわね。」



どういういきさつでこういうことになったかは知らねぇけど、いつも以上に明るく振る舞って、会話を弾ませてくれた姉貴。
たぶん、俺を心配して頑張ってくれたんだろう。
そのおかげで、姉貴が来てから両親ともたくさん話すことが出来た。

「つくしちゃん、お腹すかない?」

俺のとなりに座る牧野に優しくそう話しかける姉貴に、
俺は悔しいけど言ってやる。




「ねーちゃん、今日はサンキュ。」

「分かればよろしい。」




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 2015_05_27






約束の午後3時。
30分前に、出先からメープルへと向かう車中で携帯がなる。

「どうした?」
そう聞く俺に、

「道明寺っ?」
と焦った声の牧野。

「あのね、昼から有休取るはずだったんだけど、課長から急に呼び出しがかかっちゃって、会社に戻ってるところなのっ!
パパとママにはあたしから話すから、顔合わせは延期にしてもいい?」

突然の話に一瞬固まったが、もうメープルは目と鼻の先。

「わかった。
両親には俺から話しとく。」

「……はぁ?」

「おまえは仕事が終わったら来い。
俺は予定通り、会いに行ってくる。」

「道明寺っ!」

「大丈夫だ。心配すんな。」

まだ何か言いたそうな牧野にそう言って電話を切った俺は、スーツのネクタイをもう一度しめなおした。









メープルの3階にある奥まったカフェ。
ロビーにあるカフェとは違い、商談などにも使われるそこは、落ち着いた雰囲気がビジネスマンにも人気のカフェ。

その窓際の席にキョロキョロと落ち着きのない様子で夫婦が座っているのが目に入った。
たぶん、いや絶対あれだろう。
なぜなら、夫婦の足元には、沖縄独特のイラストが描かれた紙袋が置かれていたから。

俺は二人のもとにゆっくりと近付いていくと、俺の気配を感じたのか、両親も俺の事をじっと見つめてくる。
そして、二人のテーブルの前に俺が立った時、急いで両親も立ち上がった。


「牧野さんでしょうか?」

「は、はいっ。」

「はじめまして、道明寺司です。」
そう言って軽く頭を下げた俺に、

「牧野つくしの父親です。」
と俺よりもだいぶ背の低い牧野の『パパ』が頭を下げた。

あいつはどっち似なんだろう。
そんなことを考えながら見つめる俺に、照れたように「座りましょうか」と『ママ』が言って、なんとなく気まずいまま席につく俺たち。

コーヒーが運ばれてくる間に、牧野が仕事の都合で遅くなることを伝えると、さっき連絡があったと話す両親。

結婚話をどのタイミングで切り出そうかと迷っているうちに、会話も途切れ途切れになり、なかなかうまく話せない。
そんな俺に、突然『ママ』が

「沖縄にはいらしたことありますか?」
と聞いてきた。

「仕事で2度。向こうにリゾートホテルを建設する話があって視察に行きました。」

「そうですか。お仕事でしたら、ゆっくり海を見て過ごすなんて出来なかったでしょう?」

「はい。ほとんど車とホテルの往復でしたので。」

「あのね、今日は道明寺さんにって、沖縄のおいしいお土産持ってきたのよ。
お口に合うか分からないけど…………。」

そう言って足元に置いてあった紙袋を取りだし、その中からいくつかをテーブルに広げる『ママ』

それは、ついこの間沖縄に帰省していた牧野が、お土産だと俺に見せた、ドーナツのようなお菓子やら、柑橘系のお茶、長寿のカステラ、シーザーのキーホルダーまである。
そして、それをひとつひとつ説明してくれる牧野の『ママ』

それを見て、デシャブだな……と自然と笑みが漏れる俺を不思議そうに見る両親。

「この間、牧野、いや、つくしさんからこれと同じものを頂きました。
そして、今聞いた説明と同じことをあいつも言ってたので……。
あの、なんとかって言うそばも作ってくれて食べました。」

「ああっ、ソーキそばねっ。」

「はい、それです。
プッ……味は正直あんまり美味しいとは思えませんでしたけど、『美味しい?美味しい?』って聞いてくるあいつが可愛くて、おかわりもしました。
それに、長寿のお茶はあいつのマンションに行くたびに飲まされてます。長生きしろって。
このみかんみたいなのは、シークヮーサーって言うんですよね?
俺がグレープフルーツだろって言うと、あいつむきになってシークヮーサーだって怒るから自然と覚えたんです。」

さっきまでの気まずい雰囲気が嘘のように自然と言葉が出てくる俺。
あいつのことを考えるだけで、笑みが漏れる。

そんな俺を優しく見つめていた『パパ』が、
「よかった。」
と小さく呟いた。

「え?」

「道明寺さん、つくしは見ての通り平凡な子です。
それに、私たちを見ればわかると思いますけど、何一つあなたと釣り合うような家庭ではありません。
つくしからあなたとお付き合いしていると聞いて、正直戸惑いました。
つくしがあなたに一方的に熱をあげているのではないかと……。
ですが、今、道明寺さんがつくしのことを話す目がとても優しくて…………。
安心しました。……よかった。」
そう言って明らかにほっとした顔をする。

俺の目を見て一生懸命そう話す『パパ』と
その横でコクコクと頷く『ママ』。
そんな二人に今日ここへ来た本当の目的を、誠心誠意、俺のありったけの気持ちで伝えたい。


「お父さん、お母さん。
俺はつくしさんを……愛しています。
今、あいつのこと平凡だとおっしゃいましたけど、そんなことはありません。
俺にとっては……最高の女です。
あいつ以外、ありえません。
好きになったのも、熱をあげてるのも、俺の方です。
そして、やっと先日、プロポーズに首を縦に振ってくれました。


………お父さん、お母さん、
俺の一生をかけて、つくしさんを守ります。
どうか、……つくしさんを俺に下さい。」


人に頭を下げるなんてしてこなかった俺が、今心から欲しいものを得るためにする。
それは、見せかけでもなんでもなく、純粋にあいつを育ててくれた敬意と、その大事なものを引き継ぐ誠意を持って。


「道明寺さん、娘をよろしくお願いします。」

その言葉を聞いて顔をあげると、涙ぐむ両親の姿。

「はい、大切にします。」







そんな会話が終わり、
お互い肩の力が抜けて、ホッと一息つき、コーヒーに手を伸ばしたとき、
カフェの入り口で俺を呼ぶ声がした。

「司ーーっ。」

ん?
司?
牧野はそんな呼び方はしねぇよな。
そう思って振り向く俺の目の前に、信じらんねぇ光景が。



牧野とぴったり寄り添ってニコニコ俺に手を振ってるのは、
間違いなく、



ねーちゃんだった。





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 2015_05_26






ラーメン屋でのプロポーズのあと、牧野のマンションまで手を繋ぎながら歩く俺に、

「道明寺、パパとママにはあたしからきちんと話すから。近い内に会ってくれる?」
そう話すこいつがすげーかわいくて、
人通りの多い場所にも関わらず、思いっきり抱きしめて怒られた。

それから1週間。
朝、出勤前に鏡の前でネクタイをしめているときに携帯のメール音がした。
開くと牧野から。

「来週、パパとママが結婚式の打ち合わせでこっちに来るから、道明寺の都合がよければ会えますか?」

それに、
「俺の都合はなんとでもする。
いつでも構わねーよ。」
そう返信をして、いつもより早めに邸を出た。








オフィスについて、まずは来週のスケジュールを確認する。
出張もないし、急ぎの案件もない。
夜に会議がいくつか入ってるが、それは昼の時間帯に変更できる。
牧野から急に連絡が来たとしても、対応できる範囲内だ。

そう結論付けてスケジュール帳をパタンと閉じた俺に、いつからそこにいたのか、西田が声をかけてきた。

「支社長、おはようございます。
何か、問題でも……?」
そうスケジュール帳に目線を送りながら言ってくる。

「いや、なんでもない。」
一度はそう答えたが、思い直して西田に顔を向けた。

「西田、来週だけどよ、スケジュールに変更が出るかもしれねぇ。」

「……それは、どういう……」

「牧野の両親が上京してくる。
だから、……挨拶に言ってくる。」

「司様っ!」
久しぶりに聞いた。西田のこの呼び方。
支社長に就任してこの一年、封印されてきたはずのこの呼び方を、西田の口から聞くと言うことは、こいつがすげー動揺してる証拠。

「なんだよっ、そんな驚くことか?」

「いえっ、ただ、……あまりに突然で。」

「突然じゃねーよ。やっと牧野からOKもらって、ここまで来るのに俺としては長かった。」
安心したからか西田にまで愚痴が漏れる。

「支社長、OKを貰ったということは、結婚に向けて動き出すということでしょうか?」

「ああ、そのつもりだ。」

「楓社長には……?」

「まだ言ってねぇ。」

「…………早めに話されては?」

「ああ、そうするつもりだ。
けど、まずは牧野の両親に挨拶してから事を進めたいと思ってる。
ババァが賛成しようが反対しようが構わねぇけど、あいつの両親には許して貰いてぇから。
俺にとっても家族になる人たちだからな。」
その俺の言葉に、なぜか西田が下を向く。

「西田、仕事するぞ。」
そう声をかけても動こうとしねぇ。

「西田?」
もう一度呼ぶと、

ガバッと顔をあげた西田が、
「司様、ほんとうによかった。私は心から嬉しいです。
裏でコソコソするのは、本当に辛かったですけど、私はいつも司様と牧野さんの末永い幸せを祈ってました。
だから、大丈夫ですっ。楓社長もきっと賛成してくれるはずです。
私はお二人を応援します。」
そう声を張り上げて言ったかと思うと、そのままの勢いでオフィスを出ていった。

内容に少し気になるところはあったけど、とにかく西田も俺と牧野の結婚に賛成なんだと理解して、俺はあまり深く考えなかった。







そして、それから1週間。
牧野から、明日の夜の便で両親が沖縄に帰る予定だから、と連絡がきた。
ちょうど明日は日中もオフィスでの仕事しかなかった俺は、3時にメープルで会う約束をした。

「あたしも昼から有休とってるから、先にパパとママと合流してるね。」

「ああ、わかった。
会社出るときに連絡する。」

「ん。」

「……はぁーーー、」

「……なに?」

思わず漏れた深い息に牧野が反応して聞いてくる。

「いや、…………緊張するだろ。」
かっこわりぃけど、そう口にすると、

「……えっ?……緊張してるの?」
と驚いた声。

「するだろ普通。」

「いや、するけど。えー、道明寺も緊張とかするんだ。」

「あ?」

「だって、道明寺に緊張とか似合わないでしょ。いつも俺様で堂々としてるのに、」

確かにここ最近、緊張したことは、と聞かれても答えらんねぇくらい、覚えがない。
だけど、結婚してるやつらがみんな通ってきた道とはいえ、相手の両親に初めて会って、結婚させて欲しいと言う状況に緊張しねぇ男なんているのかよ。

「おまえさ、俺でもこういうときは緊張ぐらいすんだよっ。」

「そーなんだ。」
そう言ってケラケラ笑うこいつに、ついこの間ふと思ったことを口にする。

「俺さ、初めてかもしれねぇ。」

「ん?」

「今まで欲しいもんは何でも手に入った。
それこそ、欲しいと思う前から目の前に用意されてきた生活だったけど、初めてなんだよ。
欲しいもんを自分から頭を下げて貰いにいくって。」

「……ん?」

「俺にとっておまえは、まさに一番欲しいものなんだよ。
俺のこれからの人生かけて大切にする。
だから、おまえの両親に頭下げて貰いにいくから。」

「うん、……ありがと。」



牧野と付き合ってもうすぐ1年。
25年間、大切に育ててきた両親に、
明日、こいつを貰いにいく。




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 2015_05_25




今日の更新はお休みします。
明日、1話アップする予定です。
よろしければ覗いてみてください!


 2015_05_24







道明寺に進の連絡先を教えて10日あまりたったころ、昼休憩に総務課のフロアで同僚たちとおしゃべりしている時に携帯のメール音がした。

開いてみると珍しく進からのメール。
内容を見てあたしは……固まった。

『結婚式の日取りが決まったよ。
メープルのチャペルですることになった。』

その一文を読んで、目を疑う。
メープルのチャペルといえば、誰もが憧れる場所。そこで式をあげるのは芸能人や財界人、とにかく一般ピープルが使えるほど庶民的な式場ではない。

驚きを通り越して怒りが込み上げてくる。
身の程知らずにもほどがある。

あたしは同僚たちに、
「ちょっとごめんね。」
そう言ってフロアを抜け出し、ひとけのない会議室の前まで行くと、回りに誰もいないのを確認して道明寺の番号をコールした。





*******************

昼休憩を挟んで、午後の仕事に入ろうかとパソコンに向き合った俺の胸ポケットで携帯が鳴る。
画面を確認すると、珍しく牧野から。
この時間にメールじゃなく電話があるのは滅多にないことだ。

「もしもし。」
いつものようにこいつにしか出さないプライベートな声が出る。

それなのに、
「ちょっと、どーいうこと?」
と、はじめから闘争モードのこいつ。

「なにがだよっ。」

「進からおかしなメールきたんだけどっ。」

「あ?おかしなメール?」

「そう、メープルで式あげるってバカなこと言ってきたけど、道明寺がなんか言ったんでしょ。」

「…………。」

「余計なことしないでよっ。
進には進の身の程っつーのがあって、メープルで式をあげるなんて、百年早いのっ!
支社長権限振りかざして知り合いだからって、簡単に口利きしたりして、そういうことしていいと思ってんのっ?」
完全にぶちギレてやがる。

「おまえさ、なんか勘違い、」

「とにかく、あたしから進に言っておくから、式の件はキャンセルして……」
俺の話なんて聞く耳持たず、一方的に怒って勝手に話をたたもうとするこいつ。

それに、俺はキレて言ってやる。
「おいっ、おまえこそ弟の結婚に首つっこみすぎだ。
どこでやろうと、弟の自由だろっ。
おまえが文句言う権利はねーんだよっ。」

「…………。」

「とにかく、キャンセルはしねぇ。
おまえも弟に余計なこと言うなよ。
…………6時に仕事終わらせる。
会社で待ってろ。」
それだけ言って俺から電話を切った。











とにかく、話し合う必要がある。
さっきの電話は切り方が一方的すぎたか。
6時きっかりに仕事を終らせて牧野に電話すると、
「10分後に会社前の公園で待ち合わせよう。」
といつもより固い声で返ってきた。


広い公園内をあいつを探してブラブラ歩いていると、
「道明寺。」と、うしろから牧野の声。

振り向いてこいつを見ると、意外にもきちんと俺に目を合わせてくれて、近付いてくる。
すげー怒ってて、すげー睨んできたりするのかと思って俺は少しだけ拍子抜けしたけど、
こいつのこういうまっすぐなところが好きだと改めて感じる。

「クレープ」

「あ?」

「クレープが食べたい。」
そう言って公園で車販売しているクレープ屋を指差す牧野。

思わずプッと吹き出しながら、
「いいぞ。」
そう言って頭をグシャグシャかき混ぜてやる。




すげー甘そうなクレープをうまそうに食べるこいつと並んで公園内をゆっくりと歩く。

「ん。」
俺の目の前にクレープを近付けて、食べろと目で訴えるこいつに、

「すげーあめぇじゃん。」
と文句を言いながらも一口くう俺。

そのあと数歩歩いてから、こいつが小さく切り出した。
「…………進と会ったの?」

「ああ。」

「いつ?なに話したの?」

「10日程前か。色々とな…………。
おまえが気にしてる式のことも話した。」

「それで?進からメープルでしたいって頼まれたの?それとも道明寺が言ったの?」

「んー、別にどっちでもねーよ。」

「どういうこと?じゃあ、なんで会ったの?」

「それは言えねぇ、男同士の秘密だからな。」

「またそれ?
……あたしは反対だからね。
メープルで式をあげるなんて……」

「だから、それはおまえが決めることじゃ、」

「ラーメンっ!」

「あ?」
話の流れをぶった切って唐突にまた食いもんの話題に変わる。

「ラーメン食べに行こう。」

「マジかよっ。」

「絶対今日はラーメンの気分なの。
嫌なの?」
おまえにそんな顔で睨まれて、嫌だと言えるわけがねぇ。

「行くぞ。」








ラーメン屋のテーブルに向かい合って座り、水を飲む俺ら。

「今ならキャンセル出来るでしょ?」
また唐突に式の話題をぶちこんでくるこいつ。

「出来るけどする必要がねーだろ。」

「あるでしょ。うちの親だって、メープルでするなんて言ったらビックリすると思う。
それに…………道明寺にだって……迷惑かけたくない。身内でもなんでもないのに、メープルで便宜をはかるなんてそんな無理しないで。」

そこまで言ったとき、二人の前にラーメンが運ばれてきた。
それを嬉しそうに見ながら、
「もう、この話は終わりっ。
ね、ラーメン食べよっ。」
そう言って、俺に割り箸を渡すこいつ。

俺はそんな牧野の手から箸を受け取り、更にこいつの箸も奪ってやる。
そして、どうしても言葉でしか伝わらねぇこいつに、黙っていようと思ってた男同士の秘密まで
話さずにいられなくなる。


「おまえさ、なんか色々と誤解してるみたいだけどよ、メープルで式をあげることに決めたのは、弟自身だぞ。
俺が口利きした訳でもねーし、便宜もはかってねぇ。
いや、確かに弟には、俺に連絡すれば何とかしてやるって言った覚えもあるけど、結局あいつは連絡してこなかった。」

「でもっ、メープルで式をあげるなんて進には金銭的にも無理なのに、」

「そうでもねーよ。
メープルにはマスコミに知られてる豪華なチャペルのほかにも3つあるんだぞ?
しかも、それが今、若いやつらの中で人気になってるみたいで、キャンセル待ちまで出てるくらいだ。
メープルも時代に合わせて、若いやつらにターゲットをうつした戦略もしてるっつーことだよ。
だから、おまえが金銭的なことを心配するほどメープルは高くねーよっ。」

「……けど、……じゃあ、二人で会ってなに話したの?男の秘密って何よっ」

黙ったままニヤっと笑う俺をじっと睨んだあと、ズルズルとラーメンを食い始めるこいつ。

黙々と何も話さずラーメンを食い続けるこいつをチラッと見ながら思う。
なぁ、おまえの気持ちはどこまで進んだ?
まだ迷って立ち止まったままか?

そう思うと、無性に確かめたくなる。
これを言っておまえがどう反応するか……。

「俺から弟に頼んだんだよ。」

「え?」
ラーメンを食いながら俺のことを見るこいつ。

「弟の式に俺も出席させてほしいって。」

「はぁ?!……道明寺が?」

「ああ。
……おまえの両親に会えるチャンスだろ。
おまえはまだ早いって言うかもしんねーけど、俺はきちんとおまえの両親に挨拶しておきてぇから、おまえには内緒で会うつもりだった。
だから、弟に頼んだんだ。弟から紹介してほしいって。
まぁ、言わねぇつもりだったけど、
これが、男の秘密っつーやつだ。」

そう言って俺は完全に伸びきったラーメンを口に入れる。
相談もなしに親に会うつもりだったことや、それを内緒にしておこうと思ってたことに、こいつはどう思うだろうか。

正統派じゃないやり方を俺自身が痛感してるだけに、こいつの顔を真っ直ぐに見れねぇ。
ラーメンを食うふりをして俯く俺に、何も言わずこいつも再び食い始める。

俺たちの間にそれ以上の会話がないまま、お互い食い終わろうとしていたとき、
突然牧野がポツリと呟いた。

「道明寺、……しようか。」

よく聞き取れなかった俺は、顔をあげてこいつを見ると、あと残りわずかなラーメンを箸で持ち上げながら、こんどは俺が聞き取れるほどの声で言った。

「結婚しようか。」

「…………牧野?」

「……ん?」

「なんて言った?」

「…………。」

「顔あげろって。」

その言葉にゆっくりと顔をあげるこいつ。

「今、何て言った?」

「だから、……けっ、」

「あぁーっ!ちょっと待てっ、ストップ!」
俺は慌ててこいつの口に手を当てて、黙らせる。

「なっ、何よ。」

「バカっ、いいからおまえは何も言うなよ!」



あー、ちくしょーっ!
なんで、いつもタイミングがわりぃんだよっ。
だから、もっと雰囲気のあるレストランで、片手には指輪を用意して、最高級のワインで乾杯しながら、言うはずだったこの言葉を、
今日はよりによって、どうしてこんなラーメン屋で言わなきゃなんねーんだよっ。
しかも、このチャンスを逃すと、またこいつの気持ちが後戻りしかねない最大のピンチ。

もう、時も場所もタイミングも構ってる暇はねぇ。
俺が欲しいのはただひとつ、
こいつからの『イエス』だから。



俺はこいつの手から箸を奪い、器の上に二人分きれいに並べると、真っ直ぐに牧野の目を見て言った。



「牧野、俺と結婚してくれ。」



「……うん。お願いします。」






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 2015_05_23







「結婚しよう。」

ずっと牧野に伝えたかった言葉だけど、あの日あの時言うつもりはなかった。
もっと眺めのいいレストランで、片手には指輪を用意して、最高級のワインで乾杯しながら……
そんなシチュエーションを用意するはずだったのに、実際はあいつの部屋で二人座るのがやっとのソファに座り、何の前置きもないまま唐突に言っちまった。

けど、口に出してあいつに伝えたことで、更にその想いは強くなり、言葉通り結婚に向けて俺の心は動き出している。


「道明寺、くすぐったい。」

「いーじゃん、もう少し。」

今日も仕事帰りに牧野の部屋に寄り、ソファの前にまったりとくつろぎながら、肩まであるストレートのこいつの髪をクルクルと指に絡ませ遊ぶ。

「そろそろ美容室にいく時期かな。」

「切るのか?」

「んー、思いきって短く切ろうかな。
毛先も痛んできてるし……。」

「あんまり長さは変えるなよ。」

俺のその言葉に、少しだけ驚いた顔をして、
「長い髪がタイプなの?」
と、からかうように聞いてくる。

「ちげーよ。」

「じゃあ、なんで?」
そう首を傾けながら聞くこいつの髪を、うしろからひとつにまとめてやり、アップに持ち上げる。
そして、顔を覗き込むようにして言ってやる。

「ウェディングドレスには髪はアップがいいんじゃね?」

「っ!……ウェディング……って、まだまだ先の話でしょ。」

「そうなのか?まだ決心してねーのかよ。」

「うー、…………。」


最近の俺らの会話にはちょくちょく結婚というキーワードが出てくる。
こいつからはっきり返事をもらった訳じゃねーけど、一緒にいれば分かる。
こいつもきちんと考えてくれてるってことを。

現に、今も少しだけ顔を赤くして俺の熱い視線から目線はそらしているけど、たぶん、いや絶対に、こいつは髪を短くは切らない。
それが、今こいつからの精一杯の答えだと思って、焦らないで待つつもりだ。


「なぁ、弟の連絡先、教えろ。」

「え?なんで?」

「なんでもいーだろ。男同士の秘密だ。」

「はぁ?気持ち悪いなぁ。」

「いいから教えろよ。」


弟がこの部屋を出ていってから、会う機会がなかった。
結婚式のことも俺に任せろと言ったはずなのに、弟から何も言ってこない。
確か、結納は先月に済んだはずだから、あとは式の日取りだろう。










「よぉ、弟。」

「支社長っ!」

あれから数日後、牧野からゲットした番号にかけると、驚いた声で弟が電話に出た。

「元気か?」

「はいっ!ど、どうかされましたか?」

「ああ。近いうちに会えねぇか?
話があるんだけどよ。」

「話……ですか。
まさか、ねーちゃんと何かありました?
別れたんですか?」

「弟、冗談でもそういうこと言うな。
別れるはずねーだろっ。」

「すっ、すみません!」

「今週、弟の都合のいい日に連絡してくれ。
男同士で少し飲もうぜ。」

「……はいっ!」



結婚までの道のりには小さな山から大きな山まで待ち受けている。
数日で登りきれるのものと、もしかしたら数年かかるものもあるかもしれない。

牧野と二人でその山を登りきるために、俺は先に地ならしをしておくつもりだ。
牧野が安全に、安心して登りきるために。




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今日、ちょっと短くてごめんなさいっ。



 2015_05_22




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司一筋

Author:司一筋
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