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みなさん、今年はたくさんのコメント、拍手ありがとうございました。

はじめて書いた二次小説をこんなに沢山の方に読んで頂けるとは思ってもみませんでした。

文章を書くということ自体はじめての経験でしたが、こんなに楽しく進めることが出来たのも、皆さんのおかげです。

本当にありがとうございました。


来年も今年同様のペースでお話を書いていきたいと思っています。
よろしければお暇なときに遊びにいらしてくどさいませ~


では、皆さまよいお年を~。
来年もよろしくお願いいたします!



来年はますます司が暴れますように…………。

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 2014_12_31





牧野と付き合いだしてから1ヶ月。
ラブラブな恋人期間を過ごせると思っていた俺は、完全にふて腐れていた。

お互い多忙な仕事に加え、久しぶりに会えたと思ってもF3や滋たちに邪魔をされる。
二人きりで会いてぇと思ってるのは俺だけか。

そんな気持ちを牧野にぶつけると
「皆も一緒の方が楽しいじゃない。
あっ、あんたなんかやらしいこと考えてんでしょっ。」
俺を睨み付けながらそんなことを言う。

あたりめーだろーがっ。
好きで好きでたまんねぇ女が彼女になったっつーのに、何が悲しくてお預けされてんだよ。
男の機微を知れよっ。

そう心の中で反発するが、その反面、こいつを今度こそ大事にしたいという気持ちが俺の中でも強く、なかなか先に進めない。

十分の一でもいい。
百分の一でもいい。
おまえの想いが俺より少なくても構わねぇって思ってたのに、現実にそれを感じさせられると、
焦燥感に襲われる…………。




その日、西田から朝のミーティングで
「今日の午後、楓社長がNYからお戻りになられます。日本での滞在は一泊で、あまり時間がないそうですので今日午後4時より楓社長のオフィスで打ち合わせのお時間を取りましたので」

ババァと会うのは半年ぶりだ。
「わかった。」
俺はそれだけ答えて、資料に目を落とした。

この6年、ババァとは仕事の関係以外、プライベートでは一切関わってこなかった。
牧野との離婚でババァは俺への信頼をなくしただろうし、俺もババァには悪かったと思ってる。
気に入ってた嫁を息子の不甲斐なさで手放さなきゃなんなかったし、跡取りだって期待してただろう。
それなのにこの6年、ババァは一度も俺にプライベートなことで女を強要してこなかった。
俺は正直、政略結婚もさせられるかもしれねぇと思っていたが、一度もそんな話はなかった。


それなのに、なんでこのタイミングなんだよっ。
目の前に座るババァから信じらんねぇ言葉を聞いた。
「司さん、そろそろあなたも身を固めてもいいんじゃないかと。あなたのためにも財閥のためにも。司さんさえよければ、こちらで良い方を探してありますが、」

「ちょっと、待てよ。ふざけんなっ。
俺は自分の相手は自分で探す。
余計なことすんじゃねぇ。」

「…………フフっ。
また逃げられないようにしっかりしなさい。」

久しぶりにババァの母親らしい口調を聞いたが、
腹が立つ。
今の俺の状況を分かっていて小バカにされてるような。


自分のオフィスに戻ってからもイライラがおさまらねぇ。
せっかく牧野とよりを戻せたっつーのに、なんでこのタイミングで政略結婚の話なんだよ。
これが牧野の耳にでも入ったら、ぜってーあいつのことだから俺から逃げようとするだろう。

そんなことをグダグダ考えているうちに無性に牧野に会いたくなってくる。
あいつに会って、大丈夫だって確めたい。
俺は携帯を取り出して牧野にコールした。








午後9時、牧野のオフィス近くの交差点で牧野をひろう。
「道明寺が運転してるなんて珍しい。」
そう言いながら乗り込んできた牧野。
こいつが車内に入ってきただけで、甘い香りがたちこめる。

「メープルでいいか?」

「うん。」

しばらく無言で都内を走る車の中、一言も話さねぇ俺に牧野が、
「道明寺…………何かあった?」
そう聞いてくる。

「いや、なんもねぇよ。」
再び沈黙の俺ら。

そして、車がメープルのそばまで来たとき、信号が赤に変わり車をとめる。
その俺らの前を、二人のカップルが手を繋ぎ肩を寄せあい、楽しそうに歩いていく。
それを見て牧野が、
「フフ……仲良さそう。」
と、ポツリと呟いた。

俺も同じことを考えてた。
あんな風に俺らも他人から見て写っているだろうか。牧野にあんな楽しそうな顔をさせてやれるだろうか。
牧野は俺といて…………幸せなんだろうか。

信号が青になったのにも気づいていなかった。
「道明寺!青だよっ。」
牧野の声にハッとする。

「わりぃ。」
慌てて車を発車させたが、その俺のハンドルを握る手をつかみ
「道明寺、やっぱりなんかあった?」
牧野が心配げに聞いてくる。

俺は深く息をついて、メープルホテルの脇にある木の影に車を停車させた。

「具合悪いの?」俺を見つめて聞いてくる牧野。

「いや、ちょっと、昼間色々あってな。」

「仕事?…………部屋に帰ろうか。
疲れてるならゆっくり……道明寺?」

牧野が言い終わる前に、俺は牧野の腕を取り、ゆっくり優しく俺の方に引き寄せ体ごと抱きしめた。

「おまえといてーんだよ。」
絞り出すように返した俺の言葉に、

「ん。いるよ。大丈夫、一緒にいるよ。」
そう答えてくれる牧野。

こうしてこいつに触れていると、胸におさめてた牧野への想いが止めどなく溢れて胸に留めておくことが出来なくなる。

「牧野」

「ん?」

「すげー好きだ。」

「……うん。」

「すげー惚れてる。」

「……ん。」

「いつもおまえのこと考えてる。」

「…………うん。」

「…………どうしたら、おまえも俺のことそう思ってくれる」

ほんとに答えが聞きたかった訳じゃねぇ。
ただ、どうしようもなく心の声が溢れだした。






「あたしも道明寺のことが好き。
すごく好きなのっ。
いつも……あんたのこと考えてる。
一緒にいると嬉しいし、楽しいし、幸せ。
だけど、素直に言えなくて、道明寺のこと不安にさせてたらごめん。」

いつもは聞けない牧野からのこんな台詞。
抱きしめる腕をほどいて牧野の顔を見つめると、
赤くして視線をそらしやがる。

「マジで?」

「…………マジで。」

プッ……二人して同時に吹き出す俺ら。

「牧野、キスしてもいい?」

「…………うん。」

想いが通じたあの日以来のキス。
さっきまでのモヤモヤが嘘のように晴れていく。
運転席と助手席のわずかな距離がもどかしく、牧野の体にのし掛かるように距離を詰める。
車内にクチュクチュと卑猥な音が響き、更に俺を煽る。

一度唇を離して牧野の様子を確かめると、
潤んだ目で、こいつは爆弾を落としてきやがった。
「道明寺のキス、すごく好き。
やっぱり全然違う。」独り言のような呟き。

嬉しいはずの発言も何か引っ掛かる。
「おまえ、誰と比べてる?」

「……えっ!!」
我に返った牧野がでけー声で叫ぶ。

「言えっ。」

「なにが?なんのこと?」





さっきまでの甘い雰囲気は吹っ飛んで、車の中で言い争う俺ら。

そんな俺らを反対車線に停まる車からカメラが狙っていたことに俺は全く気付かなかった。




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 2014_12_31





かすかに遠くで聞こえる音に、意識が覚醒していく。
体がいてぇ。いつものやわらかいベッドの感触ではなく、ゴツゴツした固い板に寝かされているようだ。

ん…………?
牧野の声?
そこで、俺はガバッと起き上がった。

そうだった。
昨日、あれからそのまま牧野の部屋で寝ちまったんだ。
腕時計を見ると6時半。

リビングには牧野の姿はなく、玄関の方で声がする。こんな時間に誰と話してんだよ。
そう思って俺は玄関へと続く扉を開けた。

「道明寺さん?」

玄関には今まさに靴を脱いで部屋に入ろうとしている牧野の弟を、牧野が必死に入らせないようにしているところだった。

「おう、弟。久しぶりだな。」

俺の出現に、牧野は深くため息を付きながら

「なんであんたは、起こしても起きないくせに、起きなくてもいいときに起きてくんのよっ!」
朝から機嫌がわりぃ。

「姉ちゃん、どういうこと?」

「…………今度説明する。
それより健太いいの?起こしてくる?」

「あー、俺が行くよ。健太、ベッドで寝てるの?…………もしかして、お邪魔だった?」
俺と牧野を見比べて弟が言ってくる。

「なに変なこと言ってんのよ!」
弟の頭を思いっきり叩きながらリビングに消える牧野を、俺と弟が後をおう。

ベッドでまだ寝ている健太を抱き上げて弟が、
「いつも姉ちゃん、ありがとね。
道明寺さん、今度ゆっくり。」
そう言って、バタバタと部屋を後にした。

牧野と一緒に玄関で見送った俺は、今まで気になっていたことを聞いてみる。
「健太の母親は?」

「今、入院中なの。」

聞いちゃいけねぇこと聞いたか?と思いながらも
「病気かよ。」と言うと、

「ううん。健太、お兄ちゃんになるのよ。
健太のママ、二人目妊娠しててもうすぐ出産なんだけど、仕事無理しちゃって早産になりかけたの。だから、出産まで病院で過ごすことになったの。
進も夜勤の勤務があるから、そういうときだけあたしのところで預かってるの。
ここは広いし、健太のお気に入りみたいでね。」
そう言って笑う牧野。

「そういうことか。離婚でもしたのかと思ったぞ。」

「ちょっと、やめてよ。姉弟揃って離婚してたら両親も泣くでしょ。」

その言葉に俺は胸が痛む。
離婚した当時、きちんと牧野の親に説明することも出来ず、NYに飛ばされた俺は、それ以来牧野の家族とはご無沙汰だった。

キッチンにたつ牧野の側に行き、後ろからこいつを抱きしめる。
「ちょっ!道明寺っ。」

「牧野、ごめんな。ご両親は元気か?
離婚するって言ったとき泣いてたか?」
牧野の肩に顎をのせて聞く。

「ううん。大丈夫。
他の金持ち探せって言ってたくらいだから。」


こいつが強がってんのはわかる。
そして、たぶんあの当時牧野の両親を泣かせたのも事実だろう。
近い将来、ぜってー会いに行く。
そして、心から詫びて、もう一度認めてもらう。
俺は心に誓った。







「道明寺、仕事行くんでしょ?そろそろ帰ったら?」

「ああ。牧野、今日何時に終わる?
今日も来ていいか?」

「ふざけんなっ。」
即答のこいつに苦笑する。

「プッ、おまえなぁ、彼氏に向かってその言い方はねーんじゃねぇ?」

「っ!彼氏って……。」

「牧野、昨日のことは嘘じゃねーよな?
おまえの言ったこと、今更なしはねーからな。」

「…………わかってる。
ちゃんと、……付き合う。」

その言葉を聞いて、俺は牧野の髪をワシャワシャとかき混ぜる。

「んな顔すんな。朝から襲うぞ。」

俯いて顔を赤くしている牧野がめちゃくちゃかわいくて、冗談に出来そうにない本音を言ってやると、ジタバタ暴れだすのは昔から変わらねぇ。

「そろそろ仕事行くわ。また電話する。」

俺はそう言って牧野の部屋を出た。







抱きしめるぐらいしてもいいか。
軽いキスぐらいなら許されるか。
そんなことを思ったが、
一度牧野に触れたら、俺の方が止められそうにねぇから……。


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 2014_12_30





態度も体も大きすぎるこの男が、声を押し殺して泣いている。

道明寺の涙を見たのは6年前のあの日以来。

思わずあたしは道明寺の頬に手を伸ばしていた。

「おまえとあのまま一緒にいれたら、俺らにだってこれぐれーのガキがいてもおかしくねーだろ。」
そう言って、ほんとに悲しそうにごめんと何度も呟く道明寺。

この人はずっとこんな風に苦しんできたんだろうか。
あたし以上に辛かったんじゃないだろうか。

そう思うと切なくて切なくて堪らなくなり、自然と道明寺のことを抱きしめていた。


あたしもあんたと同じ。
どうやったってあんたのことが忘れられなかった。
「おまえは平気だったのかよ……。
俺じゃなくても……平気だったか?」

ううん。全然ダメだった。
どんなにいい人だって分かっていても、あんたと比べたら……。
別れてからこんなに経ってるのに、苦しいほど…………あんたが好き。


でも、もうあんな辛い別れはしたくない。
あんな想いをするぐらいなら、もう二度とあんたには近付かない。
そう決めてたのに……。

真剣な顔で、あたしのことが忘れられなかったと話す道明寺。
その一つ一つの言葉が、まるであたしの心の中を表しているようにシンクロしていた。

目の前のアイスのように、ゆっくりとあたしの心が溶け出していく。
もう一度、素直になってみようかな。
もう一度、道明寺と向き合ってみようかな。






****************************


「あたしの想いはあんたの十分の一くらいかも。」

どこかで聞いた台詞だ。
そう、高校生の頃、はじめて女に告白した俺にさんざん待たせたあと、おまえが返してきた台詞と同じだ。

この俺が、同じ女にこんな台詞を二度も言われるなんて信じらんねーけど、むちゃくちゃ嬉しくて堪まんねぇ。

「十分の一でも百分の一でも構わねぇ。
こうやっておまえと一緒にいれるなら……。」
情けねぇけど、これが俺の本音だ。

「…………コーヒー入れ直す?」
至近距離で見つめられることに恥ずかしくなったのか、牧野は視線を俺からそらして聞いてきた。

「いらねぇ。」
せっかく想いも通じたし、こんなに近くにいるのに離してたまるか。

「ア、アイスが溶ける。」
再びテーブルに手を伸ばしてアイスのカップを取り、わざとらしく
「溶けたアイスの方がおいしいねっ。」
と大袈裟に言うこいつに苦笑しながら、

「やっぱり俺にも食わせろ。」
そう言ってやる。

「ん?食べる?もうドロドロだからもう一つ持ってくる。」

「いらねーよ。」

「どっちよっ!」




俺が食いてぇのは、おまえのことだ。
右手で牧野が持つアイスのカップを取り上げ、左手はこいつの後頭部を押さえ込み逃がさねぇようにする。
そして、ぐいっと顔を近付けると、
「道明寺っ、何すんのよ!
それ以上やったら許さないからっ。」
相変わらず、雰囲気の読めねぇ女。

「なにって、アイスを味わうんだよ。」

「は?なに言って…………んっ、」

少し強引だったか?
いや、この女にはこれぐらいしねーとおとなしくなんねぇからな。



6年ぶりのキスは思っていた以上に甘くてやわらかい。
唇を離したくない欲望をなんとか押さえて、少しだけ唇と唇の間に隙間を開け
「すげー甘い」と俺が漏らすと、

「バカっ、信じらんない。
展開が早すぎんのよっ、あんたは。」
と、顔を赤くして俯く牧野。

その仕草がますます俺を刺激する。
「6年も我慢させたんだから、責任とれよ。」

「ちょっ!なんであたしがっ」

「いいからもうしゃべんな。」







こいつの怒りも俺の悲しみも、全部溶け出すようにと想いをこめて繰り返す甘いキス。
ごめんな、とか、好きだ、とか、おまえしかいねぇ、とか心の声も駄々漏れにしながら、何度も
優しくキスをした。


そして、安心した俺は久しぶりに牧野の胸で目を閉じた。



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 2014_12_29






泣いたのなんていつぶりだろう…………。
ああ、そうか、6年前あいつから別れを言われたあの日以来だな……。



優しく俺の背中を撫で続けてくれている牧野の温もりが気持ちくて、このままずっとこうしていたい。
さっきまで苦しくて苦しくて堪らなかった胸の奥も、牧野に抱き締められていると癒されていく。


「道明寺……少し落ち着いた?
コーヒーでもいれようか。」
牧野が俺にだけ聞こえるようなちいせー声で言った。

「……ああ。」

寝転がる牧野の胸に顔を埋めていた俺は、その言葉とともに顔をあげて、今さらだが、牧野に泣き顔を見られないようソファを背にして座った。

俺の後ろで起き上がった牧野は、
「健太、ベッドに寝かせてくるね。」
そう言って健太を抱き上げようとしているが、
牧野には重そうだ。

「俺が連れてってやる。」
俺は牧野から健太を抱き上げてやると、

「ん、ありがと。
奥の部屋にベッドがあるから、そこにお願い。
コーヒーいれとくね。」
そう言って牧野はキッチンに入っていった。



健太を寝かせてからリビングに戻ると、コーヒーの香りが部屋に広がっている。
俺はさっきと同じようにソファを背にして床に座ると、急に恥ずかしさが込み上げてきた。

好きな女の前で号泣ってありえねーだろ。
今、俺はどんな顔してんだよ。
こんな顔牧野にみせらんねーな。

そんなことを思いながら頭をワシャワシャ掻き回していると、ふとリビングの明かりが小さく落とされた。
牧野の方をみるとコーヒーをカップに入れてる途中だが、リモコンでリビングの電気を調節してくれたらしい。

俺がこんな顔を見られたくねぇと思ってることさえ、こいつにはお見通しなのかもしれねぇ。


キッチンから二つマグカップをもって戻ってきた牧野は、
「インスタントだからね。」
そう言って目の前のローテーブルにカップを置いた。

俺らは無言でコーヒーを口にし、しばらく黙っていたが、急に動き出した牧野がテーブルの上にあるアイスを手に取り、
「完全に溶けちゃったね。」
と笑いながら俺の方をみる。

「ああ。ぐちゃぐちゃだな。」
アイスは袋の中ですでに溶けきっている。

「だって、道明寺遅いんだもん。
健太も待ってたんだよ。」

「わりぃ。仕事のメールが入ったからよ。
まだたくさん買ったろ?食べろよ。」

「道明寺も食べる?」

「俺はいらねぇ。おまえは食べろよ。
せっかく買ったんだから。」

「……そだね。食べちゃおっかな。へへ」
笑いながらキッチンまで走っていく牧野は、
どれにしようかなーって言いながら冷凍庫を眺めていたあと、カップのアイスを一つ持って戻ってきた。

そして、また俺のとなりにちょこんと座り込み
「こんな時間にチョコレートアイスはまずいかな……」と言いながらひとくち口に入れる。
そして
「おいしいよ。道明寺も食べればいいのに……」
そう言って俺の方をみるこいつ。

「俺にも食わせろ。」

「ん?持ってくる?なに味がいい?」

「ちげーよ。おまえのそれ食わせろ。」

俺が指差す牧野の食いかけのアイス。
牧野は俺の言葉に一瞬固まってたが、すぐに
「やっぱり同じの持ってきてあげる。」
そう言って立ち上がりキッチンに行こうとするから、俺はすぐにこいつの腕を取り強引に座らせた。

「いらねーって。
…………なぁ、牧野。
なんで、俺は無理なんだ?」

「え?」

「この間、おまえ言ったよな。
俺だけは無理だって。それってどういう意味だよ。」
直球で聞いておきながら、情けねぇけど答えを聞くのが怖くて牧野の目を見れねぇ。

「だって、……もう終わったでしょあたしたち」

「……俺はまた始めたいって言ったら?」

「だからっ、どうしてあたしなのよ。
一度ダメになってるあたしなんかじゃなくて、
他の人の方がいいでしょ!」

「…………おまえは平気だったのかよ。
俺じゃなくても……平気だったか?」

「え?……道明寺?」

「俺は甘く見てた。おまえのこといつかは忘れられると思ってた。
だから、必死に考えないようにしてきたし、おまえが夢に出てくる度に罪悪感からだと思うようにしてた。
けど、違うんだよっ。
おまえと再会して、どうやっても自分の気持ちを誤魔化すことが出来ねぇってわかった。
俺はどうしようもなくおまえに惚れてる。
それは、あの頃からずっと変わってなくて、いや、あの頃以上かもしれねぇ。」

俺がここまで言っても牧野はじっと正面を向いたまま俺の方を見ようともしねぇ。
総二郎が言った言葉を思い出す。
今度こそ牧野を失うと立ち直れねぇほどズタズタになるかもしれねぇと。

すると、牧野がカタンと持っていたアイスをテーブルに置いた。
そして、隣に座る俺の方を向き、
「あんたって、どこまでも自己中。
付き合ってたときも、別れてからも、再会してからも。」
そう言って上目使いで睨んでくる。

「まぁ、確かに付き合ってたときも再会してからも、おまえのこと振り回してきたかもしれねーけど、この6年の別れてた期間は責められることはねーんじゃねぇ?」

「いや、その期間が一番たちが悪いわよっ。
いっつもあたしの頭の中にいて、全然出ていってくれないし、それなのに会いたいときには会えないしっ。
やっと忘れようと思ってた頃にまたあたしの前に現れるしっ。
ほんと、自己中すぎるっ!」

「牧野?」

「アイスが溶けちゃった。」
テーブルに置いてあるアイスのカップを取り、再び口に運ぶ牧野。

「いや牧野、アイスはあとでいいから、おまえ今なんて言った?
それって、俺のことを忘れられなかったってことだよな?」

「…………」

「だから、アイスを食うのはあとにしろ。」
俺は牧野からアイスのカップを取り上げる。
そして、正面を向いたままのこいつの顔を強引に俺の方に向かせて、確かめるようにゆっくりと聞いた。

「俺たち両想いってことだよな?」






長い沈黙のあとこいつが言った言葉は
「あたしの想いはあんたの十分の一かもしれないけどね。」
どこまでも可愛くねぇこいつ。
だけど、俺はどうしようもなくこいつが好きだ。




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 2014_12_28






「そんなに買ってどうするのよっ。」

コンビニのかごいっぱいにアイスを買い込んだ俺と健太に、笑いながら牧野が言う。
どんだけ買ったって大した金額になんてなんねーし、牧野が笑っていてくれればそれでいい。

あたしが出すと言ってきかない牧野を押さえ付け、俺が強引に金を払って店を出ると、健太が俺と牧野の間に入ってきた。
そして、ちっせー手を俺の手に絡める。

俺ははじめての感覚に戸惑って、一瞬何が起きたのか分からなかったが、健太に手を握られてるんだと気付いたときは、なぜだか泣きたくなった。




あっという間に着いちまったマンションまでの道。
エレベーターに乗り込んで、36階に下りた俺は、そっと健太の手を離す。

「じゃあな、健太。」
そう言って頭を撫でてやる。と、

「えっ?おじさんアイス食べないの?」
俺の顔を見上げて聞いてくる健太。

「ああ。全部おまえにやる。
少しだけ牧野にやれよ。」

「やだよっ、おじさんの分も選んだのに……」
健太は駄々をこねて再び俺の手を握りしめた。

それを見て、
「健太っ。道明寺にもアイスあげたら?
買ってもらったんだし、こんなにあっても食べきれないでしょ。」
牧野が健太に買い物袋を差し出してそう言ったが、健太は首をブンブンふって、

「おじさんと一緒に食べるっ!」
と声を張り上げた。

どうすんだよっ、と俺は牧野の方に視線を向けると、牧野も困惑顔で俺を見つめ返してくる。
その間も、健太は俺の手を引いてぐいぐい牧野の部屋に行こうとする。

「健太っ、わがまま言っちゃダメ。
道明寺、いやおじさんは忙しいの。
だから、ねっ、もう手離して。」
そう言って健太の手から俺の手を引き離そうとする牧野を見て、これはチャンスなのか?と俺は感じはじめた。
そして、たぶんこれを言ったら牧野はすげー怒るんだろーなと思いながらも、にやける顔をおさえらんねぇ。

「健太、一緒にアイス食べるか?
おじさんもそっちの部屋に行ってもいいか?」

「ちょっ!ダメダメ。
ね、健太、道明寺はもう寝るんだって。
たから今度ねっ。」

「まだ寝ねーよ。
早く鍵あけろ。アイスが溶けるぞ。
なっ、健太。おじさんと食うだろ?」

「うん!」

健太を見方につけた俺は得意気に牧野を見ると、
「なにが、おじさんよっ、お兄さんじゃなかったの?こういうときだけ上手いんだからっ!」
俺のことを睨み付けながらポケットから鍵を取り出した。


はじめて入る牧野の部屋。
あの頃もそうだったが、こいつは意外と女らしいこまごました雑貨が好きだ。
間取りは俺と同じなのに、全然違う雰囲気と香りに包まれて、懐かしさが込み上げてくる。

「道明寺、そこに座ってて。
健太のことまず着替えさせてくる。眠たくなったら困るから。」
牧野は俺にソファを指差して言ったあと、健太を連れて奥の部屋へと入っていく。

俺は言われるがままリビングにあるソファに座った。
独り暮らしにしては大きくてゆったりとしたソファ。
二人が着替えて来るのを座って待っていたが、ふと俺も立ち上がって奥の部屋へと声をかける。

「牧野っ。」

「んっ、なに?」奥から牧野が答える。

「俺も着替えてくる。すぐ戻るから。」

「……うん、わかった。」

せっかく牧野の部屋に入れたのに、なんとなく、スーツ姿の自分だけがこの空間で他人のように思えて居心地が悪かった…………。







急いで自室に戻り着替え終えた俺に、秘書の西田からメールが入る。
急ぎの用件があり、パソコンを開いたりしている間に、牧野の家から戻って15分もたっちまっていた。
もしかして牧野のことだから鍵をかけてるかもしれねーなと思いながらも、ラフな服装に着替えた俺は再び牧野の部屋に戻った。

一応、玄関を入ったところで、
「牧野、入るぞ。」
と声をかけてみるが返事がねぇ。

まだ奥の部屋にいるのか?と思いながらもリビングの扉を開けると、そこにはさっき俺が座っていた大きめのソファに二人で寝転んでいる牧野と健太の姿。

近付いてみると、歩き疲れたのかスースーと寝息をたてて眠る健太と、その横で寄り添うように眠る牧野。
テーブルには3人分のアイスが封を開けずに置いてある。

待ってたのかよ。そんで待ちくたびれて眠っちまったか?

俺はソファの横に膝をついて二人を覗きこんだ。
久しぶりにみる牧野の寝顔。
化粧を落としたのか、いつもより幼く見えるその顔は、昔俺が愛してやまなかった女の顔だった。

規則正しい二人の寝息を聞いているうちに、
俺はなぜだか、胸が苦しくて苦しくて堪らなかった。
その感情が何なのか、分からないような、分かりたくないような……。


すると、ふと牧野の瞼がかすかに震え、
そして、ゆっくりと目を開けた。

ソファに横たわる牧野と、ソファの横に膝まずいて座る俺の視線が絡まる。
そして、次の瞬間、牧野が言った。


「道明寺、どうして泣いてるの?」





その言葉で、俺ははじめて気が付いた。
そう、俺は泣いていた。



そんな俺を見て、牧野はそっと俺の頬に手を置く。
そして、
「どうして、そんなに泣くの?
あたしが、意地悪したから?」
子供をあやすように優しく話す牧野。


「ちげーよ。」そう答えても、俺の涙はあとからあとから止まらねぇ。
どうしても、止めることが出来なかった。
だって、これは反則だろ。
こんな光景を見せられたら、我慢してたものが堰を切って溢れ出す。



「道明寺…………。」
心配そうに俺を見つめる牧野に、俺は言わずにいられなかった。







「俺らも、こんな風に家族だったかもしれねーんだろ?おまえとあのまま一緒にいれたら、俺らにだってこれぐれーのガキがいて、3人で暮らしてたかもしれねーんだろ?
なにやってんだよっ、俺は。
すげー後悔してる。
ごめんな、牧野。ほんと、ごめん。……ごめん」






涙がとまんねぇ俺は、久しぶりに牧野の胸の中に包まれた。




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 2014_12_27






「マジか…………それはきついな……。」

俺の前で頭を抱える総二郎。

俺のオフィスにふらりと立ち寄ったこいつは、あきらから昨日の店でのドタバタを聞いたらしく、はじめはからかい気味に俺のことを冷やかしてたが、俺が牧野との別れ際に言われた言葉を総二郎に話したら、さすがのこいつも渋い顔をした。

「司とは無理って、他のやつならいいってことだよな?恋愛をしたくないってことじゃなくて、司限定で無理って言うことだろ?」

「うるせーっ。…………けど、そういうことだよな。」

「で、どーすんだよ、司。諦めるのか?」

「…………それこそ無理だろ。」

「プッ、だろーな。
でも、司、今度こそほんとにおまえ立ち直れねぇほど傷付くことになるかもしれねーぞ。
それでもいいのか?」

「……よくねーよっ。けど、あの時よりもっとズタズタになっても構わねぇ。
もう一度、俺はあいつが欲しい。」

「…………すげーな牧野は。
司にそんな顔させるのはあいつだけだ。」









完全に牧野に拒絶されたのは分かってる。
だからって、はいそうですかと引き下がれるほど出来た男じゃねぇ。

仕事帰りの深夜、右手に大きな紙袋を抱えて牧野の部屋の前で立ち止まる俺。
さすがにこの時間にチャイムをならすことはしねーけど、出来れば顔を見たかった。

久しぶりに鞄から小さな付箋を取り出す。
そして、
『健太に渡してくれ。誕生日プレゼントだ。』
そう書いて紙袋に張り付けると、それをドアノブにかけた。

ガキを使うのは卑怯な手かもしれねえけど、牧野が『大事な男』だと言ったやつの誕生日だ。
聞いたからにはプレゼントぐらい……そう思って、今日は朝からリサーチした。
あの年齢のガキが何を喜ぶか。
そして、そうそう簡単に手に入らねぇものを。
そして、選んだのは日本の老舗メーカーから出ている限定販売の電車のおもちゃ。
マニアが喉から手が出るほど欲しがるプレミアものだ。
それをそっとドアノブにかけて部屋に戻った。


次の日の朝、俺の部屋にキリンが貼ってある。
『受け取れない。』
たった一言と紙袋。
想定内だ。
あの頑固な女が、簡単に受けとるとは思っていない。

俺は付箋を取り出すと、
『おまえにじゃねえ。健太にだ。
健太がこれを見ていらねぇって言うなら捨ててくれ。』
そう書いて貼り付ける。
貧乏性のあいつがものを粗末にするとは考えにくい。
きっと健太に渡してくれるはずだ。
そう願って再び紙袋をドアノブにかけた。






それから3日たったある日、仕事を終えてマンションに戻った俺は、エレベーターを下りたところで牧野と健太にばったり会った。
牧野とはこの間の、
「道明寺とだけは、無理」発言以来だ。

お互いちょっと気まずい空気が流れたが、それをぶち破ったのは健太だった。

「あっ、この間のおじさん!」

「プッ、健太、おじさんじゃねーって教えたろ?お兄さんだ。」

「あっ、そっか、おにいさん。」
人懐っこい笑顔で俺を見る健太。

「今、仕事帰り?」
牧野が俺に聞いてくる。

「おう。おまえらどこ行くんだよ。」

「ん、ちょっとそこまで買い物。」

「買い物?こんな時間にかよ。」
腕時計をみると10時近い。

「どうしても健太がアイス食べたいってきかないの。そこのコンビニまで行ってくる。」

確かにすぐそこにコンビニはあるけどよ、こんな時間に女と子供が出歩くのはまずいだろ。
いや、どうでもいい女ならほっとくが、牧野はどうでもいい女じゃねぇ。

俺はエレベーターに乗り込もうとしてるこいつらの後について、一緒に乗り込むと閉まるのボタンを押した。

「えっ、ちょっと道明寺?」

「俺も行く。」

「えっ!」

「おじさんも行くの?アイス食べるの?」

「ああ。俺もアイス食べたくなった。」

エレベーターが一階に着くと、三人で歩き出す。
牧野は黙ったままだ。
牧野と健太は手を繋ぎ、健太の歩調に合わせて歩くから、歩くスピードがすげー遅い。
大人の感覚ではすぐそこのコンビニも、ガキの感覚ではかなりの距離なのかもしれねぇ。
途中で疲れてきた健太が、道端でポツリと
「疲れた」と呟いた。

それを聞いた牧野が、
「プッ、だから言ったでしょ。
いつもならもう寝てる時間なのに、健太が歩けるって言うから来たのよ。」
そう言って、ちっせー体で健太を抱き上げた。
俺から見たら子供が子供を抱っこしてるようにしか見えねーよ。

俺は二人に近付くと、牧野の腕から健太を抱き上げた。
そして、肩車をしてやる。

「わぁ!おじさんすごいっ。高い高いっ!」
今まで疲れたとぐったりしてた健太が、俺の肩で興奮して暴れてる。

「健太!動かないの、危ないでしょ!
道明寺、大丈夫?
無理しないでっ!」
咄嗟の出来事に牧野は慌ててるが、今までだんまりだった牧野が、いつものペースに戻ってくれて俺はほっとしてる。




俺のでも、牧野のでもねえ、ガキだけど、
三人での夜の買い物は、俺の心を温めるのには充分だった。







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 2014_12_26


小話 1

Category: 小話  



時期、設定はご自由に~。






「牧野、わりぃ、今日会えそうにねーんだわ。」
突然のデートのキャンセル。

「そうなの?わかった。」
久しぶりに会えると思ったのに。会いたかったのに。でも、そんなことを言えるほど可愛いげのある女じゃないあたし。

電話を切った後も、道明寺のことが頭から離れない。
出張つづきで久く会っていないあたしたち。
今日はゆっくり二人で過ごしたかった。
道明寺の仕事が忙しいのも分かってる。
あたしとの時間を無理に作ろうとしてくれてるのも分かってる。

けど、時々思ってしまう。
もしかして、他に誰か好きな人でも出来た?
あたしで満足してる?
もっと女らしい人がいいんじゃない?


そんなことを悶々と考えているうちに、一人で部屋にいるのが悲しくなってきちゃった。
優紀に会いに行こうかな。
滋さんとぱーっと遊ぼうかな。
桜子とお茶しようかな。

でも、もう一度だけ道明寺の声が聞きたい……。
ワガママだと思ってるけど、もう一度だけ。

「もしもし?道明寺?」

「…………牧野、どうした?」

「……今度はいつ会える?」
普段なら絶対口にしない台詞。
でも、どうしても聞いておきたかったから。

「おまえっ、こういうときに限ってそういうこと言うしな。」

「なっ、ごめん。違うのっ、忘れてっ!」

「バカっ、切るなよっ。
……牧野、すげー会いたい。
今すぐ会いたい。
邸に来れるか?」

「えっ?でも、仕事なんじゃ……。」

「いや、ちょっと、風邪引いてよ。
熱があるからおまえにうつしたら、」
そこまで聞いて、あたしはすぐに鞄と鍵を持って家を飛び出していた。

「行く。すぐ行くから、待ってて。」








タマさんに促され、邸の東部屋に入ると、ベッドに横たわる道明寺の姿。

「道明寺?」
小さく呼び掛けると、ブランケットから顔を出す道明寺。

「牧野。…………さみぃ。あっためて。」
ブランケットを少し持ち上げて、あたしを呼び寄せる。

いつもは俺様で横暴で強引な道明寺なのに、すごく甘えた声であたしを呼ぶから、あたしまでいつものペースを乱されて、

「うん。」
上着を脱いで、薄いTシャツになり道明寺の横に滑り込んだ。

「あったけー。久しぶりの牧野だ。
会いたかった。」

「なんで、風邪だって言ってくれなかったのよ。言ってくれればすぐに来たのに。」

「おまえにうつしたらと思って……。
会いたかったけど我慢した。」

「我慢なんて、道明寺らしくない。」

「あ?これでもすげー色々我慢してんだぞ。」

ブランケットにくるまりながら、おでことおでこをくっつけて話すあたしたち。
この距離がすごく安心する。

「我慢しないで、ちゃんと言ってよ。
それじゃないと、あたしも……不安になる。」

「不安?」

「……そう、不安。
あたしと会いたくないのかなぁとか、他の人と会ってるのかなぁとか……。
そういうこと考え……ちょっ、……んっ、」

突然のキス。
それも、深く激しい、それでいて蕩けそうなほど優しいキス。

「色々我慢してんだから、可愛いこと言うな。
今おまえが言ったような不安なら、もう二度とするな。俺はおまえしか考えらんねぇから。
もし、不安になったらすぐに言え。
わがままでもなんでもいい、我慢するな。
おまえのわがままなら全部受け止めてやる。」

「道明寺…………好き。大好き。
あたしもすっごく会いたかった。
だから、道明寺も我慢しないで、なんでも言って。」

「ばーか。
俺は我慢しねぇと、おまえが泣くようなこと、たくさん要求するぞ。頭の中は、そういう妄想ばっかりだからよっ。
なんなら、今するか?」

「ばかっー!」





いつも素直じゃないあたしにとって、道明寺の一言一言が、あたしを一人の女の子にしてくれる。
そんな唯一の大切なひと。


メリークリスマス!




 2014_12_25





「戻ってこないと思ったら二人して何やってんの?」

「司、それ、ある意味犯罪だから。」

うす暗い廊下の影で、ジタバタ暴れる牧野を強引に腕のなかに抱え込む俺の背後で、あいつらの声がした。
振り向くと、そこには帰り支度を整えたやつらの姿。

「そろそろ帰るぞ。ったく、司、場所を選べ場所を。」
総二郎にまで呆れられた俺は、仕方なく牧野を離してやると、こいつはすかさず、俺の膝下を蹴ってきやがる。

「いってーなっ。」

「痛いじゃないでしょ!何すんのよ、変態!」

そう言って俺の腕から逃げた牧野は、滋たちとズカズカと店の外へと歩いていった。

今日はこれで解散となった俺らは、それぞれタクシーに乗り込んでいくが、俺は牧野の腕を掴み、
「おまえも一緒に乗ってけ。どうせ、帰り道はおなじだろ。」
そう言って、後部座席に押し込んだ。

文句を言いたげなこいつのことは無視して、運転手に行き先を告げると、牧野は観念したのか窓の外に視線を向けた。
そしてそのまましばらく俺らは無言のままタクシーに揺れていた。

マンションが近付いてきたころ、俺は牧野に聞いた。
「なぁ、健太は今日も来てるのか?」

「えっ?ううん。今日は来てないよ。」

「会ってきただけかよ。」

「そう。……あの子、明日誕生日なの。
だから、プレゼント渡してきただけ。」

「紛らわしい言い方すんなよ。
健太なら健太って言え。男とかって言うなよ。」

「あんたが、男かって聞くから、男だって答えただけでしょ。
それに、いちいち反応しないでよ。
それと、…………いや、何でもない。」

そこまで言うとタクシーがマンションに到着した。
二人でエレベーターに乗り込み、36階に着くと、そこからは左右に別れなきゃなんねぇ。
もちろん、俺はもっと牧野と一緒にいてえ。
けど、それを言うのはあまりにも早急すぎるのか…………。

エレベーターの前で立ち止まる俺とは対照的に、牧野は無言で自室へとゆっくり歩きだした。
それを見て、俺も牧野に背を向けたとき、

「道明寺。」
小さくあいつが俺を呼んだ。

振り向くと、まっすぐに俺を見つめる牧野。
こいつがこういう顔をするときはろくなことを言わねぇって俺は知っている。

「道明寺、あたしたち昔みたいには戻れない。
もし、道明寺がそれを望んでるなら……諦めて。
あたしは、もうあんたとは……ダメなの。」

おまえがそんな顔をして、泣きそうになりながらも俺のことを真っ直ぐに見るときは、必ずおまえは自分の中で勝手に答えを出してる時だったよな。

あのときもそうだった。
泣きながら俺に別れを告げたときも、今みたいな顔をしてやがった。
だから、俺はおまえのその顔に弱えーんだよ。

そんな顔で言われたら、あのときみたく、わかったって言ってやんなきゃいけねぇのは分かってるんだけど、今回は言ってやれそうにねぇ。

俺はもう二度とおまえと離れたくねえから。





「牧野、わりぃ。
今回はおまえのお願いは聞いてやれねぇ。

俺はおまえが好きだ。
ずっとおまえのことを考えないようにしてきたけど、この6年おまえのことが忘れられなかった。
…………俺のこと許せねぇのは分かる。
けどもう一度、俺を見てくれねーか?」


牧野との距離はあと数歩。
手を伸ばして近寄れば、すぐに抱き締めることができる距離。
それなのに、おまえと俺の間には見えない厚い壁がある。





「道明寺だけは……無理……。」


そう呟いて、牧野は部屋に消えた。


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 2014_12_25





総二郎と三条の話を聞いたあと、トイレに立った俺が個室へ戻ると、牧野の姿が見えねえ。

絡んでくる滋に適当に話を合わせながらも、俺は気になって扉の方を何度も見るが、あいつはなかなか戻ってこねえ。

どこに行ったんだよ。
トイレにしては遅すぎる。
電話か?

そこでさっきの会話を思い出した。
男と会ってきたのか?そう聞いた俺に、
関係ないと言いながらも否定しなかった牧野。
あいつに付き合ってる男がいてもおかしくねぇし、むしろ男がほっとく訳がねえ。
天秤にかけられても…………、さっきまではそんなことを考えていたが、実際現実となれば…………。

グルグルと頭の中でそんなことを考えていたが、あまりにも戻ってこねぇ牧野にしびれを切らしてソファから立ち上がると、個室を飛び出した。

うす暗い店内の廊下をトイレの方に突き進む。
途中、二人組の女たちとすれ違うと、一人が泣いているようでもう一人がしきりに慰めている。
俺はそいつらに目もくれず、廊下を歩いていくと、少し奥まった柱の影に人影がある。

チラッと視線を向けると、それはあきらの後ろ姿だった。
俺は牧野を知らねぇかあきらに聞こうと、その後ろ姿に近付くと、どうやらお楽しみの最中らしい。

あきらが女に覆い被さるように密着し、壁に背を付けている女はジタバタもがいてる。
俺はいつものことだと呆れつつも、その場を離れようとしたとき、何かが引っ掛かった。

あきらに迫られてるその女の足元をよく見てみると、それは牧野が履いていたパンプスと同じだ。
肩越しに見えるのはストレートの黒髪。
小さく聞こえる「美作さんっ」と、焦ったような牧野の声。

それを聞いて、俺の中の何かがブツッと切れた。

「あきらっー!てめぇー、何してやがるんだよっ!」
後ろを向いていたあきらの肩を思い切り引っ張り、牧野から引き離すと、
俺の声に驚いた二人が、
「わぁっ!」「ぎゃぁ!」
と、すげー勢いで飛び上がる。

怒りのおさまらねぇ俺は、あきらの胸ぐらを掴み締め上げながら、
「牧野に何したっ!あきらっ!」
怒声を浴びせると、

「待て待て、司!落ち着け。」
慌てた様子であきらが叫ぶ。

「ふざけんなっ。これが落ち着いていられるかっつーの!おまえ、まさか牧野とそういう関係かよっ!」

「勘違いすんな、司!
牧野、頼むからおまえからも何か言ってくれよ。」

俺は牧野の方に目線をチラッと移すと、
「道明寺、違うの。
何でもないの。だから、美作さんのこと離して。」
そう言って、俺からあきらを引き離そうと間に入ってくるこいつ。

「何が違うんだよっ。ちゃんと説明しろっ!
あきらっ!」

「わかったよ。だから一旦離せ。
…………牧野には協力してもらっただけだ。
ちょっとしつこい女に付きまとわれてて、偶然その女が店にいたから、牧野に彼女の振りをしてもらっただけだ。
司が怒るようなことは何もしてねーよ。
悪かったな。」
牧野の方を向いて謝るあきら。

「ほんとか?牧野!」

「ほんとだってばっ!なんであんたがそんなに威張って怒るのよっ、バカっ!」
相変わらず口の減らねぇ女だ。

「あ?ふざけんなバカ女。焦るに決まってんだろーがっ。おまえも気安く何でも引き受けんじゃねーよ。キョトキョトしてっから誤解されんだよっ!」

「ちょっと!なんであたしまでバカ女って言われなきゃいけないのよっ。そもそも、あんたたちF4が揃いも揃って女たらしだからいけないんじゃないっ!」

「あ?誰が女たらしなんだよ!」

「あんたらでしょーがっ!」

俺らのヒートアップした言い合いに、
「まぁまぁ、落ち着けよ。
今回は俺が悪かった。なぁ、司。
機嫌なおせっ。部屋戻ってるぞ。」
あきらが言いたいことだけ言いやがって、さっさと逃げた。

「もうっ!美作さんずるい。
さっきの彼女、泣いてたんだから。
いくら付きまとわれてるからって、こんなやり方じゃ彼女がかわいそうじゃないっ。
ちゃんと断ってあげればいいのに。
マダムキラーだとか言っておきながら、若い子にも手を出すから悪いのよっ……。」

さっきまでの俺への悪態とはうって変わって、女への同情をしんみり語る牧野を、俺は壁にジリジリと攻める。

「ちょっと、なによ道明寺。
近いっ。はーなーれーろっ。」
距離を縮める俺に、必死に手を伸ばして逃げる牧野だが、俺はそのまま近付いて確実にこいつとの距離をゼロにした。

牧野の肩に俺は頭を乗せ、今思ったままを口にする。
「すげー焦った。おまえとあきらがそういう関係かもって、あり得ねぇって分かってんのに焦った。
ふざけんなっ。ビビらせんじゃねーよ。
心臓がもたねぇ。
…………おまえが他のやつとどうにかなるなんて考えただけでも頭がいてーよ。
…………おまえ、男いるのかよ?なぁ、牧野。」

「道明寺…………。
あんた、おかしいよ……。」

「ああ。…………おまえのこと考えすぎて、おかしくなってきてんだよっ。
それなのに、おまえは男と会ってから来たりしやがって。…………ふざけんなっ。」
情けねぇほど声が震える。

「男って…………、まぁ男だし……。
でも、……んー……うー……。
道明寺、色々言いたいことがありすぎて、どこから言えばいいのか分かんないんだけど、とりあえず、離れてよっ。」

「いやだ。」

「ちょっと。誰か来たらどうすんのよっ!」

「どうもしねーよ。」
そう言って牧野の肩に乗せてた俺の頭を持ち上げ、今度は牧野の頭に俺の顎を乗せた。

身長差が頭1つ分以上ある俺らにとって、この体勢はさほど無理でもなく、むしろ、さっきより体が密着して俺的にはすげーいい。

しかも、
「やっ、道明寺、なにしてんのよっ!」
そう言ってわめき出す牧野の吐息が俺の喉仏にかかり、ゾクッとくる。

「おまえの男ってどんなやつ?」
聞きたくねぇけど、聞いておきたい。

「どんなやつって?」

「ああ。今日会ってきた男だよ。
付き合ってんだろ?」

「プッ……うん。結構な頻度で会ってるね。
凄い親密な仲なの。
切っても切れない縁って感じかな。」

「…………好きなのか?そいつのこと。」

「うん。大好き。」

その言葉に迂闊にも涙が出そうになる俺。
喉の奥にすげーでかい石を埋め込まれたような感覚で苦しくて苦しくて、声さえもでねぇ。

「……道明寺?」
なにも言わねぇ俺に、牧野は顔を上に向けた。
その拍子に、牧野の頭から俺の顎も外れて、俺らは正面から向き合う形になった。

上目使いで俺の顔を見た牧野が、
「道明寺、泣きそう……。」
そう呟いた。

「泣くだろふつう。ここまでノロケられたら。」
不貞腐れていった俺に、

「のろけるって……プッアハハー、
健太だってばっ!健太。
今日会ってた男は、健太。
なに、本気にしてんのよっ!
あーおもしろ。
さぁ、戻るよっ、行くよっ、道明寺。」

笑いながら勝手に言い捨てて、勝手に俺の腕の間から抜け出して戻ろうとする牧野を、我にかえった俺は逃がさねぇ。

「てめぇー、ちょっと待て。
おまえ、分かっててグダグダ話してたなっ。」
取っ捕まえた牧野を再び壁に攻め立てると、
俺は強引に腕のなかに閉じ込めた。

「んー、んー、やーめーろ。」

「焦らせた罰だ。いかげにしろ。
マジでおまえあり得ねぇからっ。」

そう言いながらも、きつく牧野を抱き締めて腕のなかに包み込む。




何年も忘れてたこの香り。
何年も心の底で欲してたこの温もり。





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司一筋

Author:司一筋
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司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

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