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小話 13

Category: 小話  



今日は俺の誕生日。
超高層マンションの最上階にある自分の部屋で
顔見知りだけをを呼んだ25回目のパーティー

「あきら、おめでとう」
「美作さん、おめでとうございます」

総二郎と桜子が柄にもなく大きな花束を持ち、
少し遅れてパーティーにやって来た。

「滋さんは?」
桜子のその問いに

「牧野とデザート食ってる。
類もその隣でウトウトしてるぞ。」
と、奥の部屋を指して答えると、

「えっ、先輩も来てるんですか?」
と、桜子が眉間にシワを寄せる。

「ああ。司からあんなに言われたのに、滋が言うこと聞かねーから。」
と、俺も参ったという表情を見せる。


今日のパーティーにはいつものメンバーに招待状を送っていたが、NY住まい3年目の司は来ないだろうと思っていた。
が、思いもよらず
「行くぞ。」
と電話がきて、

「来れるのか?」
と聞き返す俺に、

「久しぶりに顔見てぇし。」
と照れる台詞。

でも、これは俺にではなく、目に入れても痛くねぇほど惚れてる牧野に対してだと理解するのにそんなに時間はかからなかった。

パーティーの日の午前中には日本につく予定だったのに、天候不順で大幅に遅れ、さっき邸に着いたと連絡が来た。

その時にはすでに牧野はここに来ていて、その事を司に告げると、
「滋のヤローっ。牧野は俺が連れて行くからって言ったのに勝手に行きやがったな」
と、舌打ちしている。

今日は俺の誕生日だぞ。
頼むから乱闘だけはやめてくれ。
そう願うしかない俺。


今日の牧野は、司が今日の為に送ったという淡いパープルのドレス姿。
他の女性客はルームパーティーだという事で、肌の露出が高い中、牧野のドレスは肩もすっぽり隠し上品さが際立っている。

さすが、司のセンスだけあって、
幼児体型の牧野にもよく似合ってる。


今来た総二郎と桜子と共に、奥の部屋に行くと
滋と一緒にいると思っていた牧野は
男と何やら楽しそう話してやがる。

あれは、昔からの俺の知り合いで、気の優しい良い奴だ。
普通の状況なら、お似合いだと放っておくのだが、
相手が牧野だからそうも行かない。

この状況をあの野獣が見たら
暴れ狂うだろうから。

そう思って「牧野」と声をかけようとしたその時、
「滋てめぇぶっ殺すぞ」と、低い声が俺の耳に届いた。

後ろを振り向くと、
カジュアルなスーツ姿に身を包み、ポケットに手を入れて滋を威嚇する猛獣現る。

「お、おう、司来たのか。」

「ああ、遅れてわりぃ。
お前の好きなワイン、持ってきたから秘書の竹田に預けてある」

そう言って1本100万するワインをプレゼントに持ってきた司の視線はもうすでに牧野にロックオン。

「あいつは?」

「あー、俺の知り合い。
仕事関係で昔から世話になってる奴で、悪い奴じゃねーから大丈夫。」

と、なぜか必死にこの状況を説明する俺は
何に怯えてるんだよ。

「あら、司、早かったね〜。」

「滋、てめぇ勝手に牧野連れて来んな。」

「だって、司が何時になるか分かんないって言うから、せっかく可愛くドレスアップしたのに部屋で待ってるなんて勿体無いでしょ」

「そんで、連れてきたあとは放置かよ」

「んー、まぁ、つくしが可愛いから色んな虫が寄ってきちゃうのよね〜。」

これ以上、司を怒らせるな滋。
そんなハラハラしてる俺の横を通り過ぎた司は、まっすぐに牧野へ突き進む。

頼むからこんなところで喧嘩すんなよ。
そう心から願う俺の気持ちが通じたのか、
牧野に近付いた司は、さり気なく腰に手を回し、
相手の男に何かを言ったあと、部屋のバルコニーの方へと歩いていく。


「道明寺さん、暴れなかったですね。」
俺と同じ気持ちだったのか桜子もホッとした声を出す。

「ああ、まぁ、あいつら久しぶりの再会だし、
自らムード壊すほどバカじゃねーだろ司も。
俺らも座ってゆっくりしよーぜ。」

そう言って俺たちは部屋の大きなソファに寛ぐ事にした。
今日は午前中の雨が嘘のように晴れて、空には満開の星が出ている。

部屋は大きなガラス張りになっているので、部屋の中からもその美しさが見て取れる。

それぞれがグラスを手に持ちながら外に目をやると、
そこにはバルコニーにいる司と牧野の姿もはっきり見える。


2人向き合って何やら言い合ってるあいつらは、
まさか喧嘩でもしてんのか?と思ったその瞬間、
司がさっとかがみ、牧野に軽くキスをした。

それを見て、総二郎がヒューっと口を鳴らし、
「見せつけてくれるじゃん」と言う。

あの道明寺司が、女にキスをしたとなれば
パーティーに来ている奴らもコソコソと
視線を窓の外に向け始める。

そんな中、当の本人たちはと言うと、
キスをした司を見上げて牧野が何か抗議したのか、司の胸を軽く叩き、部屋の中を伺う様子を見せる。

そんな牧野の怒った顔を両手で包み込む司は、
さらに上を向かせてさっきよりも長いキス。

「おいおい、どこまでやる司くん。」
総二郎は完全に面白がっている。

「あいつらはこっちから見えてるの知らねぇんじゃねーの?」

「そうかもしれないですね。先輩見られてたら絶対にあんなことさせないと思いますよ。」


その総二郎と桜子の会話に俺はピンときた。
司は確実に確信犯だろう。
この部屋を内装するときにこの窓のことで司に相談したのを思い出した。

司の邸にある大きなバルコニー付きの部屋はガラス張りになっていてカーテンが付いていない。
夜でも開けっ放しか?と聞いたとき、
「特殊なガラスを使っていて、中からは外が見えるが、外からは中が見えないようになっている」
と司に教えてもらい、
この部屋も同じガラスにしたのだ。

ということは、今あそこでキスをしている司は、
中にいる俺たちから完全に丸見えなのは承知のはずだ。

知らないのは牧野だけ。
牧野からしたら、ガラスは真っ暗でまさか見られているとは思っていないだろう。


司からの長いキスに牧野が暴れだし、
唇を離した司は俺らが見た事もないような
甘い顔をしてやがる。

牧野に胸を強く叩かれ抵抗されても、嬉しそうに笑いながらその手を包み込み、牧野の顔を覗き込みながら笑う司。

全く……。
遠距離で喧嘩ばっかして、甘い雰囲気も出さねぇくせに、二人でいる時はラブラブなのかよあいつらは。

俺はグラスを総二郎に預けると、離れたソファに座る男の所に近付いた言った。


「わりぃ、見ての通り、牧野は俺のダチの大事な彼女なんだ。あいつは絶対に牧野を手放さねーから、おまえも違う女あたってくれ。」


遠距離恋愛中の司と牧野。
俺は相変わらずあいつらのキューピット役のようだ。


お久しぶりです。なんとか生きております笑
皆さんもお元気でしょうか?

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 2019_02_07


小話 11

Category: 小話  



昨夜はあのまま牧野の部屋に泊まった。
そして、今日はいつもより1時間早く起きて、熱いシャワーを頭から浴びている。

昨日の牧野はいつもと違った。
酒のせいなのか、総二郎のアホなアドバイスがきいたのか、いつもよりガードが低く俺の攻めを受け入れてくれる。

愛撫だけでたっぷり時間をかけた牧野の体は、指を入れただけでトロトロと溢れ出すほど敏感になっていた。

そんな牧野を見て限界の俺。
そろそろ中に挿れてもいいか……と準備をしようとした時、牧野が動いた。

かなり張りつめている俺のものを口に含みゆっくりと上下しはじめた牧野。
その動きに、堪らず声が漏れる。

「牧野、今日はヤバイ。
もうおまえに挿れたい。」

そんな俺の要求なんてあっけなく無視されて、下半身は熱を増す一方。
何年たっても牧野のその行為は、慎重にゆっくりと俺を傷付けないように優しくて、それがかえって焦らされているようで堪らない。
ずっとしてて欲しい…そんな気持ちにもなるが、もう限界がきてる。

「牧野、マジでヤバイ。」

「……ん。」

「んっ……もう、…離せ。」

「……気持ちぃ?」


バカ。
この状況でその上目遣いで、そんなこと聞くんじゃねーよ。
必死に抑えてたものが一気に溢れ出す。

「ヤバイっ、マジで離せ。」

「…。」

「うっ、…んっ、……それ以上したら出るぞ。」

これ以上はマジでヤバイ。。
そう思い牧野の身体を持ち上げようとした時、牧野の口内からゆっくりと引き離された俺のものは限界を迎え、先から白濁の汁が溢れ出した。

「バカっ、だから言っただろっ。
口あけろ。ごめんっ、牧野。」

かろうじて口内ではイッてない。
でも、口から抜ける寸前に漏れたのは自覚してる。

「ごめん、我慢できなかった。」

「大丈夫。」

「大丈夫じゃねーよっ。
おまえにそんなことさせたくねぇ。」

「うん、わかってる。
でも、大丈夫、……道明寺のものだから。」

俺はこの言葉を聞いて、
二度とこいつには2杯以上の酒は飲ませねぇって誓った。







熱いシャワーを浴びながら、そんな昨夜のことを思い出し再び熱をおびる下半身。
どんだけ俺は牧野に惚れてんだよ。


バスルームから出るとキッチンで牧野が朝ごはんの用意をしている。
そんなこいつに近付くと後ろから抱きしめて首に顔を埋めた。

「道明寺、仕事に遅れるよ。」

「ん。」

「ちょっと、聞いてる?」

「ああ。でももう少しだけ。」

俺より先にシャワーに入った牧野の体からは俺と同じボディーソープの香りがする。

「牧野。」

「ん?」

「……無理すんな。」

「……え?」

「総二郎がくだらねぇこと言ったかもしれねーけどよ、」

「…うん、」

「俺がおまえのこと一番よく知ってる。
口に出さなくても、おまえがちゃんと俺のこと
愛してるってのは分かってるからよ。」

牧野の頭のてっぺんに俺の顎を乗せながらそう言ってやると、

「あ、あ、愛してるって…。」
と、相変わらずおもしれぇ反応のこいつ。

「愛してねーのかよ。」

「……愛してるよ。」

「だろ?」

「バカじゃないの朝から。
早く用意しなさいよっ。
遅刻したら西田さんに怒られるのあたしなんだから。」

「愛してる、牧野。」

「だーからっ、分かったから、早く準備してっ。」



総二郎。
今回は許してやる。
でも、おまえのアドバイスはいらねーんだよ。
俺らは俺ららしく成長してるから、
心配すんな。




いつも応援ありがとうございます!

ヤバイものが書き上がりました。
書きながら反省してます。
 2018_07_17


小話 10

Category: 小話  



小話9の続きです。

………………………………………


道明寺はあれから20分ほどでお店に来た。

その頃にはあたしは完全に酔っ払い。
道明寺がいつも『2杯までにしておけ』という意味がやっと分かる。

あたしの顔を見るなり、
「俺のいない所で呑ますんじゃねーよ。」
と、西門さんに軽く蹴りを入れたあと、あたしの横にドカッと座った。

「どんだけ呑んだ?」

「…3杯。」

「ったく、相手が総二郎じゃなきゃ説教もんだぞ。」

「ごめん。」

さすがに自分でも酔ってることが分かるだけに、ここは素直に謝るしかない。

道明寺の腕に自分の腕を絡ませながら店を出ると、プライベートで道明寺が乗っている車が店の前に停められていた。

「おまえも乗ってくか?」
西門さんに道明寺がそう聞くと、

「いや、俺はいい。もう一つ約束があるからよ。」
と、相変わらずの返事をして笑いながらあたしたちを見送ってくれた。






「道明寺、こんな時間にごめんね。」

助手席から運転する道明寺にそう言うと、
無言でこの人はあたしの頭をクシャッと撫でた。

運転する横顔も、慣れた手付きも、どれも相変わらず見惚れるほど格好いい。

そんな道明寺をじっと見つめるあたしに、
「どうした?」
と、チラッと視線を向ける。

「道明寺、……西門さんがね……」

「総二郎が?」

「西門さんが……、」

あんたにちゃんと想いをぶつけろって。
道明寺は凄く喜ぶって。
ほんと?

そう心の中で呟く。




あたしのマンションについた頃にはもう12時近く。
明日も仕事だって分かってるけど、このままこの人と離れたくない。

鍵を開けて玄関に入ったところで、
「道明寺…」
と、小さく呼んだ。

「ん?どうした?具合悪いか?」

「違う。
今日、……泊まっていける?」

「……牧野?」

いつもあたしからこんなお誘いしたことはない。
あたしがする前に道明寺が強引に決めるから。
でも、今日はちゃんと言葉にして、

「泊まっていける?」
と、もう一度聞く。

「ああ。」

その返事と共にいつものように優しいキスが降ってきた。
初めてしたキスは何年前だっただろう。
でも、あの時と変わらず道明寺のキスはいつも優しい。
あたしに合わせてくれてるのが分かるキスに、今日はあたしもきちんと答える。

薄く開いた唇から道明寺の舌がすべりこんでくる。
それだけで全身が痺れてくるのは酔ってるだけだからではない。

道明寺の首に腕を回し、口内をねっとりと動き回る道明寺の舌に身を任せていると、一度唇を離した道明寺が、

「今日のおまえ、いつもと違うな。」
と、呟いた。

「……別に。」

「なんか、いつもより積極的じゃねぇ?」
からかう様に言った道明寺は、次に言ったあたしの言葉で一気に怖い顔に変わった。

「…西門さんに……」

そう言ったとたん、道明寺は眉間にシワを寄せて怒ったような顔で、あたしを腰から抱き上げた。
そして、ズンズンと部屋に入り、ベッドの上にあたしを座らせる。

「道明寺?」

「おまえ、さっきから総二郎が…って言うけど、あいつになんかされたか?」

「へ?」

「総二郎がおまえになんかしたのかよっ。」

玄関の明かりだけが差し込むベッドルーム。
その暗さだけでも分かる。
道明寺が怒ってる事。

「違うっ、ちがうよ。」

「ちゃんと話せ。」

「だから、違うって。
西門さんに、言われたの。」

「何、言われたんだよ。」

「……あんたに、ちゃんと好きだって伝えろって。
ちゃんと言葉と態度で伝えろって。」

「あ?」

突然の告白に拍子抜けしたようにベッドに座り込む道明寺に、西門さんと話した内容をポツリポツリと話し出すあたし。

全部話したあと、
「心臓が持たねぇ。」
と、道明寺が呟いた。

「え?」

「ったく、おまえは。
総二郎と二人で呑んで、寝落ち寸前まで呑みやがって、挙げ句の果にあいつの名前ばっか言うからよ、マジで…心配になるだろーが。」

今日は素直になって気持ちを伝えて、この人を喜ばせたいと思ったのに、結局はまた心配かけて不安にさせて。

いつもそんな風に、道明寺を満たせてあげれないあたし。


「道明寺…、」

「ん?」

「どうしたら、あたし、あんたを満たせる?」

「…牧野?」

「こんなに好きで堪んないのに、こんなに触れていたくて堪らないのに、いつもうまく言えなくて、だから、いつもあんたが心配し…」

そこまで言ったあたしに、道明寺が噛み付くようなキスをした。

さっきまでの優しいキスじゃなくて、激しくて余裕がなくて、それでいて
……やっぱり優しいキス。

そして、

「続きはあとでゆっくり聞いてやる。
だから、今は、……おまえが欲しい。」




西門さん。
やっぱりあたし、上手に伝えられなかった。
でも、それでも、8対2なんかじゃない。
それだけは言えるの。
だって、こんなにあたしの想いは溢れてるんだから。



応援いつもありがとうございます!

えーと、もう一話続きそうです。。。
 2018_07_15


小話 9

Category: 小話  




「西門さんと二人で呑むなんてなんか変なカンジ……。」

洒落た店の個室。
目の前には、ほろ酔い加減で頬を赤く染め、潤んだ目で俺を見つめる女。

少しでも好意を抱いていれば、このままお持ち帰りするだろうこの状況も、相手がこの女だから絶対あり得ない。

それは親友に殺されかねない自殺行為だから。



「優紀、西門さんと食事するの凄く楽しみにしてたのになぁ。」

「誘われればいつでもOKだけどね俺は。」

「ほんとっ、軽いんだから西門さんは。」

今日は牧野のダチの優希ちゃんに誘われて食事に来る予定だった。
はじめるきっかけは俺だったとしても、優紀ちゃんは茶道の道に興味を持ってくれて、今では月一で俺の教室にも通ってくれている。

『今度食事に行きませんか?』

そんな優紀ちゃんからの誘いを受けたのは先月で、今日がまちに待ったデートの日だったはずなのに、親戚の不幸で来れなくなった。

そして、このドタキャンを急遽埋めたのは優紀ちゃんの親友でもあり、司が目の中に入れても痛くないほど惚れてる牧野。


「牧野、次は何のむ?」

「えー、どうしよ。
もう一杯くらい大丈夫かな。」

えへへーなんて笑いながらメニューを眺める牧野は、相変わらず俺から見たらちんちくりんの女だが、綺麗な肌や髪、童顔の顔なんかはたぶん男にモテるだろうなと思わせるには十分だ。

「こんなに呑んだの久しぶりかも。」
3杯目の酒を注文したあとそう呟く牧野。

「普段はのまねーの?」

「呑んでも2杯までって道明寺がうるさいから。」

「マジかよ。」

何年たっても司は牧野に過保護で甘々だ。
俺らからしてみれば胸焼けするほどこいつにベタぼれなのに、当の本人が超がつくほど鈍感だから、相変わらず喧嘩ばっかしてやがる。

「司はお前が大事なんだろ。」

「そーなのかなー。そういうもんなの?
西門さんも彼女に対してそんなかんじ?」

「まさか。」

即答する俺に、
「でしょ。ほらね。」
と、口を尖らせる牧野。

「束縛しすぎでしょ道明寺は。
酒は飲むな、男と話すな、男に笑いかけるなって、そんな事してたら働けないっつーの。」

「まぁ、そんなに怒んなって。
それだけおまえに惚れてるってことだろ。」

「惚れてるって……。」

今更、顔を赤くして照れるなよ。
司だってきちんとおまえに伝えてるんだろ?
それだけおまえに惚れてるって。

「牧野はどうなんだよ。」

「なにが?」

「司のこと束縛したりしねーの?」

「ないない。そんな事、しないよ。」

即答するこの女はこういう所が鈍感だっつーんだよ。

「おまえさ、司にきちんと伝えてるか?」

「ん?なにを?」

「好きだってこと。」

「はぁ?」

酒で赤い頬を更に赤くして顔を上げるこいつに言ってやる。

「昔からおまえら見てて思うんだけどよ、
俺らの前でも司はきちんとおまえに想いを伝えてんのに、牧野はいつもはぐらかすだろ。
二人のときもそーなのかよ。
だとしたら、司は我慢してんじゃねーの?」

「……我慢?」

「束縛だって、牧野がちゃんと司に好きだから心配すんなって言ってやれば落ち着くだろ。
おまえがそれをはぐらかすから司はいつも不安なんじゃねーのかな。」


別に牧野に説教するつもりなんてねーよ。
でも、もしも、もしも俺が司の立場だったら、
同じかも知れねーから。


「俺からしたら、おまえらは8対2ってとこか。」

「8対2?」

「お互いの想いの強さっつーのが、司が8でおまえが2。」

俺のその言葉に、
「そんな事ないっ。」
と、今日一番のでかい声を上げる牧野。

「あたしの方が……」

「ん?」

「あたしの方が強いくらいだから。」

消えそうな声でそんな事を言うこいつを見てるとなんとなく分かる。
司が堪らなく牧野に惚れる事を。

「牧野、今から司がおまえのことどれくらい大事に想ってるか見せてやる。
だから、おまえも帰ったら司にきちんと伝えてやれ。」

俺はそう言うと携帯で司にコールする。
時計を見れば10時過ぎ。
会社にいるか、それとも邸か。


『おう、どうした?』
コール3回目で司が出た。

「司、おまえ今どこにいる?」

「邸に帰ってきてる。」

「少し出てこねぇ?呑んでるからよ。」

いつものように誘う俺に、
「行かねーよ。明日も早いんだよ。」
と、つれない返事。

そんな司に爆弾投下。

「牧野が酔って寝落ちしそうだぞ。」

「あ?」

「俺がマンションまで送ってやろうか?」

「てめぇ、ふざけんなっ。
どこにいる、すぐ行くから待ってろ。
どうしてそーなったかは、あとで聞く。」

店の場所を説明する間も、司の声の後ろから鍵の音やエンジンをかける音が響く。


「道明寺、来るって?」

「ああ。
牧野の名前だしたらすっ飛んで来るってよ。
なぁ?言ったとおりだろ?
ぜってぇおまえに手なんか出さねぇ俺でさえ、おまえと二人でいるって言っただけでぶっ殺される勢いだからな。」

「ちょっと、それ、なんか失礼なんですけど。」

「まぁ、こんなに分かりやすい司なんだから、おまえももっと分かりやすく優しくしてやれよ。
司はたぶんすげぇ喜ぶぞ。」


だろ?司。
今日はおまえに黙って牧野を独占した罰として、
少しだけおまえに加勢してやるよ。




応援いつもありがとうございます!

この続きも書きたいと思っています。
 2018_07_14


小話 8

Category: 小話  



邸に戻ったのが9時すぎ。
エントランスに迎えに出ていたタマが、
「つくしが待ってますよ。」
と言う。
それだけで仕事の疲れがぶっ飛ぶほど、俺は牧野に相変わらずベタ惚れだ。

足早に自室に戻り扉を開けると、部屋の中央にあるソファに座り、雑誌を読んでいる牧野。

「来てたのか。」

「あ、おかえり。」

「連絡しろよ、もっと早く帰ってきたのに。」

「あたしも少しだけ残業してきたから。」

社会人になって5年目。
もう俺らの付き合いも8年目。
来年はようやくこいつに道明寺の姓を名乗らせる事が決まってる。


牧野の隣に座りネクタイを緩めると、そんな俺をギロッと睨みながら、牧野が見ていた雑誌を俺の方に突き出した。

「なんか、すごく楽しそう。」

そう言いながら不機嫌そうに雑誌を指差す牧野につられて、俺もそのページを見ると、
そこには先日出席したパーティーの写真が数枚。

仕事の付き合いでどうしてもエスコートしなきゃならなかった女と腕を組んでレッドカーペットを歩いている写真もある。

一瞬、顔が緩んだ隙を撮られたようで、この写真だけを見ればタイトル通り『お似合いのカップル』かもな。


「さすがプロだな。」

「は?」

「自分では笑ったつもりなんてねーのに、一瞬の隙を見てシャッターをきるなんてこのカメラマンもプロだな。」

「はぁ?なにが一瞬の隙よ。
ずっとこんなデレデレ顔してたんじゃないの。」


そう言って雑誌の写真にベチッとデコピンをする牧野に、今まさにデレデレ顔が止まらない俺。

「おまえさ、もしかしてヤキモチ焼いてんの?」

「はぁ?」

「この写真見て拗ねてんのかよ。」

「馬鹿じゃないのっ。拗ねてなんかないから。
あたしはね、猛烈に怒ってるのっ。」

「だからヤキモチかよ。」

「違うっつーの!」

ムキになって怒るこいつにはわりぃけど、
会えると思ってなかった平日の夜に、こうしてこいつが隣に座ってるだけで全身が癒やされていく。

スーツの上着を脱ぎながら牧野の頭を軽く撫でてやると、

「道明寺、この間あたしに言ったこと覚えてる?」

「あ?」

「あたしが社員旅行で撮った写真見て、あんた言ったでしょ。気安く男と写真なんて撮るなって。」

「言った。」

「その言葉、そっくりそのままあんたに返すわ。
あたしがダメなのに、あんたは笑顔で写っても言い訳?」

「俺とおまえは別だろ。」

しれっとそう言い放つ俺に、小せぇ手で拳をつくり俺の胸をパンチしてくる牧野。
その手を掴み言ってやる。

「おまえは男に優しくされたら、すぐキョトキョトするだろ。
だから、おまえはダメだ。」

「キョトキョトなんてするかっつーの。
自分だって綺麗な女の人に腕組まれたらデレデレしてるくせにっ。
自分のことは棚に上げて、いつもあたしばっかり。そんなに信用ないかなあたしは。」

8年目の長い付き合いの俺ら。
こいつへの愛情はいつだってブレることなんてねえ。
だから、こいつには束縛だと言われようが関係ねぇ。ダメなものはだめだ。


「牧野、着替えてきてーんだけど。」

「ん、行ってきて。」

「行こうぜ。」

「はぁ?ちょっとっ!」

暴れるこいつを横抱きにして奥のクローゼットルームへと連れて行く。
電気を付けなくても、部屋は月明かりで薄っすらと明るい。

壁一面に貼られた鏡の前で牧野を下ろすと、
「なんであたしまで。」
とブツブツ言ってるこいつに、牧野の前でしか出さねぇ甘えた声でおねだり。

「牧野、脱がせて。」

「っ、バカじゃないの。」

「疲れてんだよ。
昨日も一昨日もほぼ徹夜だったんだぞ。
着替えぐらい手伝えよ。」

徹夜だったのは嘘じゃねぇ。
週末にこいつとゆっくり過ごすために。

「駄々っ子……。」

そう呟きながら俺のワイシャツのボタンを外していく牧野に、バカみてぇに体がほてる。

細い指で一つ一つボタンを外す仕草に堪らなくなってキスをすると、唇に力を入れて抵抗しやがる。

「まだ怒ってんのかよ。」

「怒ってますとも。」

「ブサイクになってるぞ。」

「っ、ブサイクで悪かったわね。
綺麗な女の人ばっかり見すぎてるからでしょ。」

また拗ねる牧野はいつだって俺の愛情を過小評価しすぎてる。
だから、クドいほど分かりやすく言ってやるしかねぇ。

「なぁ、おまえさっき言ったよな、『そんなに信用ないかなあたし』って。
その言葉、そのままおまえに返してやる。
そんなにおまえは俺のこと信用してねーのかよ。」

「……ん?」

「俺は目の前にどんな女が来ようとも、おまえに1番惚れてる。
他の女を見るたびに、おまえが1番好きだって再確認の毎日だ。」

「あ、あんた何言ってんの。」

「でも、おまえは違うだろ。」

「え?」

「他の男がいれば、その男のいい所を探して、それを褒めてそいつに優しくするだろ。
それはおまえの長所かもしんねぇけど、勘違いする男もいるだろ。
だから、おまえに他の男と接触してほしくねえ。
いい歳してバカかと言われても、俺はおまえのことだけは譲れねぇ。」

「……道明寺。」

「おまえを信用してねぇ訳じゃねーよ。
ただ、
俺は俺のやり方でおまえを守る。」


俺がありったけの想いをぶつけると、いつもこいつは泣きそうな顔をする。
そして、そのあと必ずいつも俺の欲しい言葉を言ってくれる。

「道明寺、あたし……、
あたしも、……ちゃんと道明寺だけだから。」

こんな言葉足らずの言葉でも、普段照れて言わねぇ牧野の口から聞けるだけで、それだけで十分。


ボタンが全部外されたワイシャツを脱ぎ捨てると、牧野の体を鏡の壁へと追い詰め、さっきは固く閉じられていた唇に自分の唇を押し当てる。

牧野のすべてを知っても、まだ足りない。
何年一緒にいても、こいつに触れることが最大の甘美。

「今日、泊まっていけるんだろ?」

「……行けない、明日も仕事だし。」

「なら、俺がおまえの部屋に行く。
その前に、……ここで……しようぜ。」

「ちょっ、…道明寺っ。」



fin




よろしけば応援お願いしまーす。
 2018_07_05




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司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

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