FC2ブログ



西田のヤロー!
タイミングがわりぃーんだよっ。

せっかく晴れて牧野と夫婦だとわかり、6年ぶりに一緒に暮らすため動き出そうとしてた俺に、
「明日から二週間の出張です。」
そう告げてきた鉄の男、西田。

「あ?ふざけんなっ。」

「ふざけてなんておりません。前々から決まっていたスケジュールです。」

確かにそうだけどよ。
おまえは、この状況がわかんねぇのかよ。
愛しい女と夫婦になれて、新居を探そうかって時になんで二週間もくだらねぇ視察に行かなきゃなんねーんだよ。
空気を読め、空気を。

「せめて、来月にしろ。」

「いえ、出来ません。先月も同じ台詞を言って先延ばしにしたのをお忘れですか?
司様がその態度でしたら、牧野さまにご報告させて頂きますが。」

「やめろっ。あいつには言うな。
また俺と会わねぇとかって言い出すから勘弁してくれよ。
しかも、西田!牧野じゃねーよ。あいつは道明寺つくしだ!」

「明日、8時にお迎えにあがります。」






そんな会話をしたのが二週間前。
俺は今、長い長い出張を終えて、牧野のマンションに来ていた。
相変わらず、俺らはお隣同士。

新居探しどころか、牧野に会うのもあのババァのオフィスで話した日以来だった。
この二週間、マンションもメープルもマスコミが押し寄せていたため、牧野は滋のところに避難していたが、出張から帰ってきた俺に合わせて、久しぶりにマンションに帰ってきた。

そして、ようやく甘い二人の時間を過ごせると思っていたのに…………。



「やだやだっ、泊まっていく!」

「こら、健太。ダメだ帰るぞ。
ママも家で待ってるから今日はパパと帰ろう。」

「やだよっ。つくしの家に泊まる!
おじさんと一緒に寝るんだもんっ。」

俺の脚に絡まりついて離れねぇ健太を必死に引き剥がそうとしてる進とそれを見て笑いを爆発させてる牧野。

「アハハハーっ!健太、道明寺と寝るの?」

「うん!いいでしょ?」
俺を見上げて言ってくるガキにダメだと言いたくても、言えねぇ。

「…………わかったよ。そのかわり早く寝ろよ。」




俺のその言葉に喜んだ健太はすでに部屋の中に入って牧野と着替えをはじめている。

「ほんと、すいません。
寝たら迎えに来ますから。」
進がしきりにペコペコして言ってくるが、

「気にすんな。
あいつは俺の甥っ子なんだしよ。
ちっせーのに俺を気に入るってことは見る目があるってことだ。」
俺がそう言ってやると、ペコリと頭を下げて帰って行った。








ガキっつーのは、なんでこんなに元気なんだよ。
10時を過ぎたからベッドに入ろうと牧野が健太に言うと、俺と一緒じゃなきゃ入らねぇって駄々をこねだした。
しかたなく、俺と健太と牧野で川の字になってベッドに入ったとこまではよかったが、出張明けで疲れがたまってた俺は、そのまますぐに眠っちまったらしい。

ふと誰かに抱きつかれて目が覚めると、健太が俺の体に腕を回して抱きついたまま寝てやがる。
目を開けた俺の視線の先には、健太を挟んで隣に横になっている牧野と目があった。

「わりぃ、寝ちまったな俺。」

「ううん。疲れてたんだね。」

「それにしても、こいつの寝方、なんなんだよ。」

「完全に抱き枕状態だね、道明寺。」

「……そっち行ってもいいか?」

「健太起きちゃうよ。この状態で起きたら、夜泣き確定だね。しかも朝までコース。」

「マジかよ。嘘つくな。」

「嘘じゃないよ。なんならやってみる?」

「…………いや、やめとく。」

夜泣きで二人の時間が無くなるくらいなら、こうして健太を挟んでいてもゆっくりおまえの顔を見れた方がいい。

「久しぶりだな。おまえの顔見たの。」

「うん。二週間ぶり。」

「もっと長く感じた。」

「そう?」

「ああ。すげー会いたかったから。」

「…………。」
照れ臭そうに俺から目線を反らす牧野。


「なんか言えよ。バカ女。」
いってることとは逆に自然と声が甘くなる。

「…………あたしも。」
牧野が何か呟いた。

「あ?聞こえねぇ。」

「だから、あたしも会いたかったって言ったのっ。」

「マジで?」

「…………マジで。
このタイミングで出張はないでしょ。せっかく一緒にいれると思ったのに。
二週間は長すぎるっ。」

「おまえさっき、俺が二週間は長かったって言ったら、そう?って返事してただろーが。
俺だけが、おまえと一緒にいたいと思ってんのかって不安になるからやめろ。」

「あたしだって、道明寺が思ってることと同じこと思ってるよ。」

「例えば?」

「……はやく、……会いたいとか。」

「その他は?」

「その他?」

「俺と同じだって言うなら、キスしたいとか、抱きしめたいとか、触りたいとか……」

「だからっ、同じこと思ってるって!」
恥ずかしくなったのか急に声をでかくした牧野。

「バカっ、健太が起きるぞ。
なぁ、やっぱ、そっち行ってもいいか?
行くぞ。」



もう、健太が泣こうが騒ごうが、構わねぇ。
牧野が俺と同じことを思ってるなら、こうするのが普通だろ。







牧野の側まで行くと、こいつの体をズルズルとベッドの下に引き下ろして、その上に覆い被さる。

「全然起きねーじゃん。」

「ん?……ほんとだね。」

「とぼけてんじゃねーよ。そういえば、さっき弟が言ってた。健太は一度寝たら爆睡するタイプだって。」

「っ!進、なんでそんなこと言ってんのよ。」

「そりゃ、こうなることを予想してたんだろ。」

「ちょっ!…………ん、……道明寺。
ダメだってばっ。………やっ、……どこ触ってんのよ。…………ぅん…………もうっ、……」

「なぁ、早く俺らも子供つくろーぜ。」







Fin






ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願いいたします!


火曜日から新連載はじめます。
野獣プリンスのお付き合い編、お楽しみに。









スポンサーサイト
 2015_01_16





牧野の両親をロビーまで送ったあと、ババァのオフィスに戻ると、牧野とババァと長塚氏がさっきまでの場所に座っている。

が、牧野の様子がおかしい。

「牧野になにしたんだよっ。」

明らかに涙目になってる牧野を見て、俺は頭に血がのぼる。

「道明寺っ!」
牧野が止めるのも聞かず、俺はババァに怒鳴った。
「なにしたっ!答えろっ。」

すると、それを見ていた長塚氏が、プッ……と吹き出し、
「うわさ通りですね。
牧野さんのことになると、回りが見えなくなる。」

「あ?」

長塚氏にまで睨みをきかせた俺に、ババァが
「いいかげんにしなさいっ!
私は牧野さんに、これを渡していただけです。」

そう言って、小さな箱を指差した。

それは、俺たちが結婚したときにババァが牧野に渡した、道明寺家代々受け継がれている指環だった。
「道明寺、いいからここに座って。」
牧野が俺の腕をとって隣に座らせる。

「離婚した時に私からお母様にこれをお返ししたの。それを、もう一度受け取ってほしいって言って下さって……。」

そういうことかよ。
事情を把握した俺が急に黙り混むと、
牧野が、

「あのー、ひとつ聞いてもいいですか?
もしも、もしも道明寺が誰か他の人と結婚したいって言ってきたらどうするつもりだったんですか?
その時は、私達を離婚させるつもりだったんですか?」

「そんな話し有り得ねぇよ。」

「いいから道明寺は黙ってて!」

「フフ……、牧野さん、司の言うとおり、それは有り得ない話だと私は思ってました。
司はあなたのことを心から愛してた。
そう、体に刻まれた証拠があるそうですからね。」

「あ?…………総二郎のやろうっ!」
俺のタトゥーをババァにばらしたか、あいつは。

「何のことです?西門さんは関係ありませんよ。」

「じゃあ、なんで知ってんだよっ。」
俺の問いにチラッと視線を長塚氏に移したババァ。
その時、ふと今まで引っ掛かってた疑問がスルスルと、絡まったヒモがほどけていくように解けていく。

「…………もしかして、NYの店で?」
長塚氏にだけわかる問い。

「お久しぶりです。
あの時は、こんな風にご縁があるとは思っていませんでした。
あなたにそこまで想われている女性はどんな方なのかと思っていましたが、想像以上の方でしたよ。
お似合いのお二人です。どうぞ、お幸せに。」
そう言って俺らを見つめて長塚氏が笑った。








俺のオフィスに戻った俺らは、深々とソファに体を沈みこませた。

「なんか、色んなことがありすぎて、すごく疲れちゃった。」

「……だな。」

「早く家に帰って、ゆっくりしたい。」

牧野のその言葉に俺はガバッと跳ね起きる。

「おいっ!そうだよ、俺たち夫婦なんだよなっ。
一緒に暮らすんだよな?
どうする?新しくマンション借りるか?
それとも、思いきって家でも建てるか?」
顔がにやけるのを抑えらんねぇ。
それなのに、

「いや、このままでいいんじゃない?
どうせ、隣のマンションなんだし。
ちょっと厚い壁があると思えば、一緒に暮らしてるようなもんじゃない。」

「ふざけんなっ!どこがあれで一緒に暮らしてるって言えるんだよっ。
俺は認めねぇ!一緒に住むぞ。」

「だから、そんなに急じゃなくてもいいでしょ。仕事だって忙しいんだから、お互い時間のあるときにゆっくり物件探しでもしよう、ね?」

「おまえは、そうやって独身気分をまだ味わいてーのかよ。
キョトキョトしやがって。
忘れるなよ。俺らは夫婦なんだからなっ、夫婦!
他の男と出掛けるだけでも、浮気だからな。」

「よく言うよっ!あんたにだけは浮気とかっていってほしくないから。バカ道明寺っ。」

自分で墓穴を掘って、更に牧野も怒らせるという大失態。
それでも、

「おまえも、浮気してんだからな。
キス!他のやつとキスしたんだろ?
誰だよ。言えっ。
そのキスだって夫婦期間中のだから、れっきとした浮気だ。」

「アホらしいっ。あたしはあんたと離婚したと思ってたから自由に行動してただけ。
文句言われる筋合いないし。文句ならお母様に言って。」

「……とにかく、一緒に暮らすぞ。
それは譲れねぇ。」

「自分勝手っ。横暴っ。わがままっ。」
隣に座る俺を上目使いで睨み付けるこいつ。

「……おまえはそれでいいのかよ。」

「なにが?」

「……おまえは、平気か?
俺と一緒にいなくても…………。
ここ数日、おまえとメープルに泊まってずっと一緒にいて、……俺はもうおまえと離れるのは無理だ。
おまえと一緒にいてぇ。」

男がこんなこと言うのは情けねぇってわかってる。
けど、おまえと一緒にいれるなら、いくらでも情けねぇ男になってやる。






「おとなしく俺のそばにいろよ。」
牧野の頬に手を添えて、愛しい女に囁くと、



「しょうがないから、…………いてあげる。」
はにかんで、それでもまっすぐ俺を見つめて言ってくる牧野に、





俺は、今も昔も変わらず、
「おまえだけを愛してる。」



そう、永遠の愛を誓う。






Fin



ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願いいたします!


セカンドミッション、終わりです。
長い連載になってしまいましたが、たくさんの応援ありがとうございました!


 2015_01_15





昨日のババァの会見はその日のうちに新聞各社を賑わせた。

夜、メープルのスイートに戻ると先日と同じ光景が待っていた。
先に部屋に戻ってきてた牧野がソファに体育座りで座り込んで、大量の新聞を前に「んー」だの「うー」だの唸っている。

「どうした?」

「あっ、おかえり。すごい騒ぎ。」
そう言って1紙の新聞を俺に差し出す。
俺はそれを受け取りながら、牧野の隣に座りそれを眺めた。

「御曹司……初恋を実らせる?
遠距離結婚の末、6年ぶりの同居?
なんだこれ?」

「なんか、ますます盛り上がっちゃったみたい」

「……みたいだな。」


高校の先輩と後輩の俺らは初恋を実らせてめでたく結婚したことに加え、その相手が、どこにでもいる庶民の娘だってこと。
そして、その娘は学歴だけで英徳高校に入り、その後司法試験まで突破した才女だということで、マスコミは更に盛り上がっていた。

「さっき長塚先生から電話がきたの。」

「なんだって?」

「今後のことについて話したいって。
二人の考えがまとまったら連絡してくれって言われたから、あたしは訴える気なんてないって説明した。」

「で?」

「そしたら、長塚先生、よかったって。
…………明日、お母様に会いに行く。」

「俺もついてく。」

「道明寺、怒ったりしないでよっ。
あたしは、ほんとに嬉しかったんだから。」

「うるせー、ひとこと文句でも言ってやんなきゃ気がすまねぇ。
俺たちで遊ぶなってっ。」








次の日、長塚氏に指定された時間にババァのオフィスを訪ねることになった俺ら。

コンコン
「どうぞ。」
ババァの声で扉を開けると、

「パパ!ママ!」

そこにはババァと談笑する牧野の両親と長塚氏の姿があった。

「つくし!元気だったか?」

「うんっ!」
相変わらず仲のいい父娘は手をパチパチ合わせながら再会を喜んでやがる。

「あっ、道明寺さんも、お久しぶりです。」
やっと俺の方に向き直った両親は深々と頭を下げてきた。

「こちらこそ、ご無沙汰しておりました。」

「まぁまぁ、更にかっこよくなられました?
ねぇ、つくし。 」
牧野の母さんが牧野に同意を求めるが、

「そんなことないんじゃない。
態度は昔より確実にパワーアップしてるけどねっ」
さらっと嫌味をいうこいつに長塚氏が必死に笑いをこらえている。。


そんな俺らにババァが、
「とりあえず、みなさん座りましょうか。」
と声をかけ、俺らは応接セットに腰を下ろした。

「牧野さん、あっ、ご両親もいらっしゃるのでつくしさんと呼びますね。
昨日の会見はご覧になって下さいましたね?
わたくしが言ったことはすべて事実です。
つくしさんと司を6年間騙した罪は重いと思っています。
二人がわたくしに対してどのような結論を出したとしても、わたくしは重く受け止めます。」

俺たち二人の目をまっすぐ見つめてババァが言った。

「つくしっ、パパもママも同罪よっ。
私たちも知ってたんだからっ。
道明寺さんだけの責任じゃない!
訴えるなら私たちも訴えなさいっ!」

「そうだっ。パパは牢屋に入っても構わない!
それでおまえたちが幸せに暮らしてくれるなら。
絶対に愛し合う二人は、別れちゃダメなんだーっ!なっ、ママ。」

涙ぐみながら興奮して話す牧野の両親。

訴えるとも許さないとも言ってねぇのに、勝手に話を進めるやつら。
「牧野は訴える気なんてねーよ。」
俺がそう言うと、牧野も

「むしろ、感謝してます。
若気のいたりで別れを選んでしまったけど、とても後悔してました。
だから、離婚してないって聞いて、すごく嬉しかった。
もう一度、あたしたち二人を夫婦にさせてください。」
ペコリと頭を下げる牧野が可愛くて、俺も柄にもなく横で同じように頭を下げた。

「つくしさん、…………ほんとにいいんですか?
許してくださるんですか?」

「許すも何も、今言ったように怒ってません。」

牧野にばかり聞くババァに少しカチンときて、
「俺には許してくれるのかって聞かねーのかよっ。」
そう言うと、

「あなたは論外です。
元々の元凶はあなたですからねっ。」
あっさりかわされる。





牧野の両親も安心したようで、
「あたしたちはそろそろ帰ります。」
そう言って席をたつ。

「えっ!パパもママも今きたばかりじゃないっ。うちに寄っててよ。」
牧野が慌てていうが、

「パパ、仕事、午前中しか休みとってきてないのよ。だから、もう帰らなきゃ。
お義母さまとは先ほどゆっくりお話しできたから、つくしには今度ゆっくり遊びに来るわ。
じゃ、道明寺さん、司さん、また日を改めて伺います。」
そう言ってババァと俺に頭を下げ、
そのあと、
「長塚先生、これからもつくしをよろしくお願い致します。」と言い残した。

「司さん、ご両親を下までお見送りして。
私はつくしさんと少し話があるから……」

ババァの言葉に俺は素直に頷いた。






エレベーターに乗り込んだ俺と牧野の両親。
先に口を開いたのは牧野の親父だった。

「司くん、本当に今回は驚かして悪かったね。
つくしはああ言ってたけど、司くんは無理してないかい?」

「…………無理ですか?」

「ああ。君は私たち牧野家にとって雲の上の存在だ。君が望めば、他にいくらでも……」

「それは違います。逆です。
俺がつくしを選んだんじゃない。俺がつくしに選んでもらったんです。俺はそう思ってます。」

「そ、そうかい…………でも、」

「もし、もしもこの6年の間に、牧野が他に好きな人が出来て、結婚したいって言ってきたらどうするつもりだったんですか?」
考えたくもねぇことだけど、今まで気になってたことを思いきって聞いてみる。

すると、
「それはねー、ねっ、ママ?」
牧野の親父が牧野のおふくろに目で合図を送る。

「あの子はずっと道明寺さんのことだけを想っていました。
道明寺さん、知ってます?あの子が雨の日が好きなことを。」

「…………いいえ。」
戸惑いながら返事をすると、

「雨が好きなんじゃなくて、雨の日にさす傘が好きなんですあの子。
淡いブルーの傘。
ある日、あの子の家に甥っ子の健太を連れて遊びに行ったときに、帰り際、急に雨が降りだしたんです。
それで、健太が玄関に大事に置いてあった傘を見つけて『貸してっ』って言ったんですけど、どんなときも甥っ子に甘々なつくしが『それだけはダメ、大事な人にもらった最後のプレゼントだから』って、愛おしそうに傘を見つめて言ってたんです。
それを聞いて、あたしたちはわかりました。
まだあの子は道明寺さんを愛してるんだって。」

「牧野が、あの傘を…………。」

「司くん、どうか、どうか、娘のことをよろしくお願い致します。」





「こちらこそ。」




階下までのエレベーターの中、深々とお辞儀をし合う俺と牧野の両親の姿があった。




ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願い致します!



 2015_01_14





とにかく頭を整理させたい。
そう思った俺は、
「少し考えさせてくれ。」
そう言い残し、ババァのオフィスを出た。

廊下を歩いていると、牧野も後ろからちょこちょこと付いてくる。
そして、自分のオフィスに入ると、俺はソファに深く体を預けて、目を閉じた。


俺と牧野は離婚していなかった。
騙されたとはいえ、俺は牧野と離婚したくなかったんだから、良かったんじゃねーのか。
それに、お互いの親も認めてる。
けど、だけどよ…………。

俺が黙って目をつぶったまま動こうとしねーからか、牧野が
「道明寺」と俺の腕をつついてくる。
それでも、無視していると、
「道明寺、怒ってるの?」
そう言って俺の手のひらをこちょこちょとくすぐるこいつ。

「ねー、道明寺?道明寺さーん。」

「…………。」

「黙ってないでなんか言ってよー道明寺。
司さーん、司くーん、こらっ司!」

気配でわかる。
俺の顔の前に至近距離で近付いてきてる牧野。

「もうっ、目開けてよ。開けてくれないと、帰っちゃうよっ。」

そう言って俺から離れようとする牧野を俺は捕まえて
「バカ女、逃がさねぇ。」腕の中にとじこめた。
いつになくおとなしく俺に抱かれたままの牧野。

「なぁ、…………おまえはいいのかよ。
俺と別れたかったんだろ?
こんな風に騙されてたってわかって、怒ってねぇのかよ。
…………なんでおまえはヘラヘラしてんだよ、バカ女。」

唯一、離婚したかったのはおまえのはずだ。
だから、この結末はおまえが望んだものとは違ったはずだ。
それなのに…………。

「だって、…………しょうがないじゃない。」

小さく呟く牧野の声。
しょうがない。
確かに、そうかもしれねえ。
おまえにとって、俺らが結婚してたってことは、
しょうがない事実。

すると、
「嬉しいんだもん。」
そう言って、牧野がクスクス笑いだした。

「あ?」
不機嫌な声で聞く俺に、

「あたし、今、すっごく嬉しいの。
だって、あたしたち離婚してなかったんだよ?
ほんと、すごいっ、お母様。」
そう言ってまたクスクス笑ってやがる。

俺はゆっくりと抱きしめてた牧野の体を離し、正面から向き直った。
「ってことは、おまえはババァを許すってことか?」

「うん。」コクンと頷く。

「訴えることもしない?」

「うん。」コクン。

「俺らは夫婦ってことでいいんだな?」

コクン。

はぁーーーー。俺は全身から力が抜けて、長く深い息を吐く。

それを勘違いした牧野が、
「なによっー、嫌ならいいっ!
今からでも籍抜く?」
相変わらずかわいくねぇ。

「アホかっ。ふざけんな。
すげー、安心したんだよ。おまえがババァを許すって言ってくれて。
俺がおまえと夫婦だったって聞いて、嬉しくないわけねーじゃん。」
俺がそう言うと、珍しく牧野から俺に抱きついてきて胸に顔を埋めてくる。

そして、くぐもった声で
「道明寺、好き。大好き。」
そう聞こえた。
こいつからのこんな台詞は超レアだ。

「離れろよ。」

「やだっ。」

「いいから、離れろ。」

「やだって。」

「おまえわざとだろっ。キスできねーから離れろって。」

「だから、ダメだって!」







夜まで待つって言ったばかりなのに、一度味わっちまうと離れらんねぇ。

夫婦なんだから、いいだろ?


ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願いいたします!



 2015_01_12





『婚姻関係を結んだれっきとした夫婦』


ババァがカメラを構えた大勢の報道陣の前で、
胸を張り、まっすぐと前を向いて言い切った。
それは、まるで俺らに言うように…………。




会見はほんの10分程度だった。

「……長塚先生、どういうことですか?」
俺よりも先に口を開いた牧野が、静かな口調で問いかける。

そう聞かれるだろうと予想していたかのように、長塚氏は俺らの方に体を向き直り、ゆっくりと話はじめた。

「今、ご覧になった会見の通り、お二人は今も婚姻関係で結ばれております。」

「どういうことだよっ!」
声を荒げた俺に牧野がそっと手を添える。

「こちらをご覧ください。」
長塚氏がそう言って足元の鞄から書類を取り出して俺らの前に広げた。

それは、俺と牧野が書いた二通の離婚届け。

「6年前、お二人がお書きになった離婚届です。
こちらは司さんが、そしてこちらが牧野さんが。
お互いご自分で書いてから相手へ渡してほしいと楓氏に託していかれましたね?」

当時、すぐにNYへ飛ばされることが決まった俺は、牧野の最後の願いである離婚届に身を引き裂かれる思いで判を押した。
そして、「牧野に渡してくれ」とババァに頼んで日本を立った。

「お二人は自分の書いた離婚届に相手もサインをして提出したと思っていたでしょうが、実際は楓氏の手元に残されたままになっていました。
ですので、離婚は成立しておりません。」

頭がついていかねぇ。
それは隣に座る牧野も同じようで、
「えっ、えっ!えっー?
そんなっ……でもっ……」

牧野が慌てれば慌てるほど、逆に俺は冷静になっていく。
「俺らを騙してたってことかよっ。」

「騙した……そう言ってしまえばそうですけど、すべて我が子が可愛くてやったことのように私には思います。
離婚の件については楓氏だけでなく、牧野さんのご両親も知っておいでです。」

「うちのママとパパも……」

「楓氏にはどうしてもお二人が嫌いになって別れたとは思えなかった。むしろ、愛し合ってるからこそ時間が必要だったと。
だけど、あの当時のお二人は若すぎたゆえ、結論を急いでしまったことに、深く悲しんでおられました。
そして、手元に残された二通の離婚届を見て、それをどうしても一通にすることが出来なかったようです。

もちろん、最初から騙して離婚を偽造しようとは思っていなかったはずです。
だから、牧野さんとは離婚後についての話しあいや慰謝料についての相談もしていたようですが、あなたは一切受け取らなかった。」

「もちろんですっ。離婚を言い出したのはあたしなのに、慰謝料なんてもらう権利ありませんっ。」

「フフ……楓氏は牧野さんのそういうところが気に入っていたんでしょうね。
離婚したあとは養子にでも迎え入れたいと思っていたぐらいに。」

「あ?養子!ふざけんなっ。
夫婦以外で家族になってたまるかっ!」

俺がそう声を張り上げたところで、ちょうどよく西田がコーヒーを持って部屋に入ってきた。
「少し休憩しましょうか。」
長塚氏がそう言ってソファの背もたれに体を預けた。

まだまだ聞きたいことは山のようにある。
「おいっ、西田。おまえは知ってたのかよ。
俺らが離婚してねーってこと。」

相変わらずの無表情でコーヒーをテーブルに置きながら
「いえ、先程の会見で知りました。……が、」

「が?」

「司様が日本帰国の際、マンションを探しているときに楓社長からどうしてもここにするようにと、あのマンションを指定されました。
その際、ラストチャンスだから……と呟いていたのを思いだし、このことだったのかと……。」

「すべてババァに仕組まれてたってことか。」

聞けば聞くほど無償に腹が立つ。
操られていたこともそうだが、この6年俺がどんな思いで牧野を忘れようと努力してきたか……。



それなのに、いきなり隣の牧野がでけー声で、

…………笑いだした。

アハハハー、ぷぷっ……へへへー。

涙まで浮かべて笑ってやがる。

「バカ女っ。なに笑ってんだよ。
騙されたんだぞ?親でもやっていいことと悪いことがあんだろっ。
笑ってねーで怒れよっ。」

それでも、プハハハっ、ぷぷ……と笑ってる牧野。
そして、
「戸籍は?戸籍はどうなってるんです?」
当たり前のことを長塚氏に聞いている。

「もちろん、道明寺家に入っているよ牧野さん。いや、正確には道明寺つくしさんだよね。」

「……はい。いや、もともと道明寺つくしなんですけど、牧野って名乗ってただけで、でもやっぱり道明寺つくしなんですよね……ぷぷっ」

訳わかんねぇことをぐちゃぐちゃ言いながら長塚氏と顔を見合わせて笑ってやがる。
「なんだよ、もともと道明寺とか、牧野って名乗ってたとか、意味わかんねーんだよっ。」

笑いがおさまらねぇ牧野に代わって長塚氏が、「司さん、牧野さんは今でも、いや、離婚してからもずっと道明寺つくしだったんですよ。」

「あ?」
ますます訳がわかんねぇ。

「婚氏続称の届はご存じですか?
離婚したあとも、女性がそのままの姓を名乗る際、出す届でのことです。
離婚の際、すでに道明寺の名で大学への入学も済ませていた牧野さんにとって、いくら知られていないとはいえ、姓を変えることは離婚そのものよりも、逆に道明寺家と結婚していたことが知られてしまう。
そこで楓氏と相談して大学を出るまでは道明寺の名を名乗るときめたそうです。
しかし、優秀だったあなたは在学中に司法試験を突破してしまった。
そして、そのままの流れで私の事務所に就職が決まった。
書類上はすべて道明寺つくしになっていましたが、『道明寺』という名はどこへいっても道明寺家を連想させます。
そこで、事情をしっている私たちは普段から牧野さんと読んでいました。」

「つまり、あたしは離婚してその届け出をだしたから道明寺つくしなんじゃなくて、離婚してないから道明寺つくしってことですよね?」

「そういうことです!」

まるで、ハイタッチでもするかのような勢いで、お互いを見つめあう牧野と長塚氏。
俺は深くため息をつくと、それを見た長塚氏が、

「楓氏は牧野さんに離婚の際、ある条件を出しました。
どうしても慰謝料を受け取らないと申し出た彼女に、司法試験の資格を取るまでの授業料と生活費、また離婚に伴って自分で払っていかなければならない税金やその他もろもろのお金について、就職するまでの間、すべて道明寺で払うといった内容のこちらの書類に、牧野さんに判を押してもらったそうです。」
そう言って1枚の紙を俺の前に置いた。


そして、長塚氏はソファに姿勢よく座り直し、
静かにこう言った。
「離婚届、名前の変更、税金などの諸事情、
すべて離婚を偽造するにはうまく整いすぎていました。
それに、お二人のご両親の想いが重なった。


…………それでも、これは決してやってはいけないことです。
お二人は楓氏を訴えることも出来ます。
そして、楓氏もそれを受け止めると申しています。
どうなさるかは、お二人でお決めください。」




ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願いいたします!



 2015_01_10




07  « 2019_08 »  09

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

プロフィール

司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

最新トラックバック

フリーエリア

お金がたまるポイントサイトモッピー

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR




PAGE
TOP.