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俺の胸ぐらを掴んでる堀川に、
「てめぇ、いい度胸してんな。
今すぐ手を離せっ。
そしたら、この事は見逃してやる。」

「ふっ……道明寺さん。俺の方が年上ですからそちらこそ礼儀がなって……」
それ以上、黙ってこいつに好き勝手言わせるつもりはねえ。

俺の胸ぐらを掴んでるこいつの腕を捻りあげて、逆にこいつの首に俺の手のひらを食い込ませてやると、堀川の顔が苦痛に歪む。

「副社長っ!」「副社長っ。」
焦る堀川の秘書と佐々木の声が混ざりあう。

俺は堀川の首に食い込む指に更に力を入れて喉を圧迫してやると、堀川の顔から血の気が引いてくる。
これでも死なねぇように手加減してやってんだぞ。

「副社長っ」「もう、止めてください副社長!」
「大丈夫ですかっ、副社長!」
誰が誰に言ってんのかわかんねぇんだよ。

その時だった。
「道明寺!!」
ひときわでけー声で俺を呼び捨てにする女。
「手を離して、道明寺!」
俺を睨んで怒鳴る女。
「そんないかれ男、ほっといて!」
プッ……さすがだぜ、おまえは。

俺をまっすぐ見つめてくる牧野に視線を合わせたまま、堀川から手を離すと、ゴホゴホと荒い咳を繰り返し、床に座り込むいかれ男。
そのいかれ男を睨み付けて言ってやる。

「おいっ、よく聞け。
ビジネスの世界では年齢なんて関係ねーんだよ。
明日からいやってほどおまえに教えてやるから楽しみにしておけ。」

「帰るぞ」俺は秘書に声をかけ、会場をあとにした。
テーブルに置いたままの堀川の名刺を、ビリビリに破ってシャンパングラスに入れてやることも忘れなかった。


パーティー会場を後にした俺は、西田と佐々木と桜井をその場に残し、
「こいつに上司として説教があるから」
と、強引に牧野の腕をつかみ、リムジンに乗り込んだ。
車のドアが閉まる直前、
「ことあとNYと電話会談がありますので社の方にお戻りください。」
西田の声が虚しく響いた。

リムジンの中、向かい合う俺ら。
俺を上目使いで見つめてくるこいつ。
「副社長……説教って……なんですか?」

「おまえなぁ、俺がいなかったらあのクソヤローに何してた?」

「……だって!葉子さんの元旦那さんだからって、酷い男だったじゃないですかっ。
一発殴って、飛び蹴りしてやっても足りないぐらい、サイテーな男でしたよ。」

「だからって、おまえがするな。
俺がいくまで待てよっ。」

「でも、副社長、サイコーでしたよ!
あれ、すごい技ですね!
首をこうやって締め付けるだけで、なんであんなに苦しそうにしてたんだろう。全然力入れてるように見えなかったのに。」
そう言いながら、俺の首に手を当てて、さっきの真似をする牧野。

「…………葉子さん、なんであんな人と結婚したんだろう。
副社長がいなかったらあの男、もっと酷いこと葉子さんに言ってたかもしれない。
葉子さんのこと助けてくれてありがとうございます!」

「ちげーよ、バカっ。
俺は桜井を助けたかった訳じゃねぇ。
まぁ、結果的にそうなったけどなっ。」

「えっ?じゃあ、なんで?」

「おまえが…………泣きそうな顔してたからだよ。桜井のこと庇いながらも、おまえ泣きそうだったから……。」

「……だって、たとえ過去だったとしても、一度でも愛し合った人にあんなこと言われたら……あたしなら、すごく辛いから……。」
そう言って、自分のことのように、また泣きそうになるこいつがすげー愛しい。

俺はリムジンの中、牧野の隣に移動すると、
「んな顔するな。
結果的にやっつけてやったからいいだろ?」

「……うん。」コクンと小さく頷くこいつに、俺はグイッと顔を近付けて、

「なぁ、ご褒美はねーの?」と、聞いてみる。

「ご褒美?」
顔と顔の距離はあと数センチ。

「ああ。ご褒美。」

「なんですか、ご希望は。」
あまりに近い俺との距離に困惑しながらも、強気に聞いてくるこいつが可愛くて、俺も強気に言ってみる。

「そのまま、目を閉じろ。」
この一言で伝わってるはず。
この状況でキスしねぇなんてあり得ねぇ。
頼む、目を閉じてくれ。

数秒が数分、数時間に思えた。
ゆっくり牧野が目を閉じる。
俺はそれを合図に吸い寄せられるように、牧野の唇に自分のそれを押し当てた。

何度か角度を変えてゆっくりと重なる二人の唇、
はじめて感じる柔らかな感触と、甘い香り。
もっと先に進みたい……。
そう思いながら、一度、唇を離し牧野を見つめると、

「もう、無理……。」と、俯いて小さく呟いた。

「無理じゃねーよ。まだ足りねぇ。」

「っ!そういうことじゃなくて……。
副社長といると、ドキドキがとまらなくて。
もう無理……。」

その言葉に類との会話を思い出す。
類との関係は安心と安らぎだけで、ドキドキはしないらしい。
こいつにとってドキドキするってことは……。

「なぁ、牧野。
俺はおまえが好きだ。
だから、おまえといるとすげードキドキする。
……おまえもそういうことだよな?
俺といるとドキドキするってことは、俺の勘違いじゃねーよな?」

牧野の頬に手を添えて、俺の方を向かせて、そう聞いてやると、
「…………。」言葉には出さねぇけど、コクンと頷いた。

俺はそれを確認すると、一旦こいつから体を離し、リムジン内の電話を取ると、運転手に、
「会社に戻る前に、俺がいいっていうまで、てきとーにその辺グルグルしてくれ。」
そう告げて、再び牧野の隣に滑り込む。

「ちょっと、グルグルって……」

「いいから、少し黙ってろ。」
牧野の顔を両手で挟み、少しだけ上に向かせると、これから何をするか感じとったこいつは顔を赤くする。

触れた唇はさっきの余韻で潤っていてしっとり温かい。
背中に手を回し、体を抱き寄せて、更に深く求めると、「んっ……」と、牧野から甘い声が漏れた。
その声に煽られて、薄く開いた唇に舌を滑り込ませれば、もう自制することなんてできねぇ。

深くなるキスに、牧野の手が俺の胸を押し返すが、本気で嫌がってる強さじゃねーのはわかる。
それをいいことに、俺はキスをしながら、右手を耳、首すじ、ノースリーブから出ている肩に這わせ、ゆっくりと肌の柔らかさを確認していく。

「ふく……しゃちょう……。」
耐えきれない……というような甘い声に、俺の理性が焼き消されてくが、
その呼び名に、さっきまでの堀川とのやり取りを思いだし、苦い感情が沸き起こる。

「二人の時はその呼び方やめろ。」

「えっ……でも、」

「名前で呼べよ。」

「…………」少し考えてた牧野が、

「道明寺……?」と、呟いた。

「プッ……なんで名字なんだよ。」

「だって、副社長も牧野って呼ぶから。」

「……わかった。それでいい。
おまえぐらいしか、いねーもんな。呼び捨てにするやつは。」
そう言って、その唇を塞ぐ。




残された時間はのこりわずか。
でも、俺たちは今日、ここからはじまる。

はじめて恋した女。
はじめて欲しいと思った女。
その女をきつく抱き寄せて、耳元でささやいた。

「離さねぇよ、覚悟しろ。」


俺は、欲しいと思ったものは逃がさねぇ。
野獣だからなっ。





Fin





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野獣プリンス、出会い編、完結です。
お付き合い編はまた後日。



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 2014_12_09



まずはお詫びです。
長くなってしまい最終話になりませんでした。
次回で終わりにしますので、ご了承くださーい。

********************


さっきから、俺らがいるところから二つ先のテーブルに、酒がだいぶ入ってるのか、声のでかさと下品な振舞いが目立つ男がいる。
顔も見たことねぇ奴で無視していたが、あきらが俺の耳元で情報をいれてきた。

「司、あいつ知ってるか?」

「あ?知らねぇ。はじめて見る顔だ。」

「最近、かなり事業拡大してる大手外食チェーンの堀川だ。
親父が社長で息子のあいつが副社長。
かなりの強引な取引で仕事を取るって有名だ。」

「ふん。俺には関係ねーやつらだな。」

「いや、そうでもないぞ。
仕事では関わりなさそうだけどよ。」

「どういうことだ?」

「あいつ、おまえのとこの秘書、桜井さんの元旦那だ。
学生結婚して、その当時は小さな会社だったけど、家族でなんとか軌道に乗せたらしいが、事業かうまくいきだしたら、酒、ギャンブル、女に手を出して、結局2年前に別れたらしい。
今じゃ手に負えないくらいのクソヤローだ。」

俺はあきらの言葉に耳を傾けながら、チラッと少し離れた所に立つ桜井に目線をうつす。
いつもと変わらねぇ様子だが、堀川の存在には気付いているだろう。


そろそろパーティーも終盤をむかえ、人が少しずつはけてきた。
帰り際、俺に愛想をふっていくオヤジ連中の相手をしていて少し目を離した隙に、桜井の側にあの堀川が立っているのが目に入った。
その横には佐々木と牧野も合流しているが、牧野の顔がすげー怒ってる。
敵意丸出しで堀川を睨み付け、桜井の前に立ちはだかってやがる。

バカか、あいつは。
俺のいない隙に何やってんだよ。
頼むから俺がいくまで大人しくしててくれ。

俺は西田に目配せして、あいつらの元へと急いだ。
「俺の部下が何か?」
堀川の後ろに立ち、声をかけると、

「あー、はじめまして、道明寺さん。
お噂は聞いています。」
そう言って、酒の匂いをプンプンさせながら、隣にたつ秘書に顎で合図を送ると、秘書が俺に一枚の名刺を渡してきた。

堀川 健介
自分で名刺も渡せねぇ、クソヤローだ。
俺は、受け取った名刺をその場のテーブルに無造作に置くと、
「そうですか。
私はあなたのお名前を全く存じませんが。」
頭のてっぺんから足の先までジロリと睨み付けてやる。

「葉子がお世話になってるようで。
何か、ヘマしてませんか?こいつ。
こいつは男に媚を売ることぐらいしか取り柄がないですから。
こういう席にはもってこいですけどね。」
ハハハと笑う堀川。

「随分馴れ馴れしいですね。
それに、うちの秘書を侮辱されては困ります。」

「プッ……こいつは俺の元妻なんてすよ。
その当時から、取引先や上司には色目を使えって教えてきましたから。
もしかして、道明寺副社長もこいつの色仕掛けに引っ掛かったくちですか?」

俺らの会話を聞く桜井の顔が歪む。
牧野と佐々木も険しい表情で堀川を睨み付けている。

「情けねぇ男だな。
いくら仕事だからって、自分の妻に色目を使わせるやつなんて、ろくな奴じゃねぇ。
桜井、こいつと別れてよかったなっ。」

その言葉に堀川がキレた。
酒が入ってるせいか、普段からこうなのかは知らねぇけど、すぐ手が出るタイプらしい。

俺のスーツの胸ぐらを掴み、自分の方に引き寄せてきたが、そんなことぐれぇじゃ、ビクともしねーんだよっ。
むしろ、俺らよりも隣にいる秘書たちが焦って、なんとかとめようとしてくる。

「副社長っ!」「副社長っ。」
俺も堀川も周りからしたら、副社長だ。
どっちがどっちのことを呼んでるのかわかんねぇけど、こいつは手を離すつもりはないらしい。



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 2014_12_08





パーティー当日、いつもなら開始時間を30分ほど過ぎてから会場入りする俺も
今日はそうゆっくりしてるつもりはねえ。

俺が会場に着くと、すでに橋本と牧野の姿があった。
いつものカチッとしたスーツ姿ではなく、今日はグレーピンクのノースリーブワンピースを着て華奢なヒールまではいている。

俺のとなりに立つ桜井も
「まっきー、可愛いじゃん。」
と、遠くにいる牧野にピースサインを送っている。

俺は橋本と牧野がいるテーブルへ行こうとするが、俺を見つけたオヤジたちが我先に挨拶を…………と、前に立ちはだかり先に進めねぇ。
イライラしながら社交辞令に付き合っていると、
佐々木が小声で、
「大丈夫です。ちゃんと見張っておきますから」
と言い、目線を牧野にうつす。

そんなことをしているうちに、会場内のライトが一気に落とされ、ステージ上がライトアップされオーナーの挨拶が始まった。
その隙に俺は会場内を移動し牧野の側まで来ると、軽くこいつの腕を取り俺の方に引き寄せる。

突然近付いてきた俺に、気付かなかった牧野は体をビクッとさせ驚き、
「副社長!」と、小さく声を出した。
その声に向こうとなりにいた橋本が
「これはこれは、道明寺さん、お久し振りですね。
今日は牧野さんをお借りしまして申し訳ありません。」と、頭を下げる。

俺は牧野の腕を掴みながら、
「橋本社長、このあとまだ仕事がありますので、早めに牧野を返して頂きたい。」
そう宣戦布告する。
俺にしては丁寧な物言いだ。

「ん?今日は有給を取ってオフだと聞いていますが?」

「予定変更になりましたので。」
ガッチリ目線を合わせる俺ら。

「…………そうですか。
わかりました。でしたら、終わり次第会社の方へお送りします。
でも、この綺麗なお洋服では仕事になりませんよね。一度、牧野さんのご自宅に寄ってから着替えて会社にお連れしますよ。」

このエロオヤジ。
どさくさ紛れに牧野のマンションを知ろうとしてんじゃねーかよ。

「いえ、結構です。
パーティーが終わったら俺がこいつと一緒に帰りますから。なっ、牧野。
おまえの着替えなら俺のマンションにもあるし、寄ってくか?」

我ながら大人げねぇと思ったが、こういうしつこいオヤジにはガツンと言ってやらねーとわかんねぇんだよ。
牧野は今にも、「信じらんないっ!」って叫び出しそうな顔をしてるが無視だ。

俺からの不穏な殺気を感じとった橋本は、一瞬黙っていたが、
「……そういうことですか。
どうりで、西田さんも渋ってたわけですね。
わかりました。でも、パーティーの間は私のパートナーでいてください。
一応、面子もありますので。」
そう話す橋本に牧野は小さく、

「もちろんです。」と呟いた。




パーティー中盤をむかえ、徐々に酒が入ってくる客もいる。
俺も二杯目のシャンパに手を伸ばしたとき、後ろから軽く肩をたたかれ、
「司、今日は珍しく早くから来てたんだね。」
と、類が声をかけてきた。

「おう、あいつらは?」

「そこにいるよ。」
類が指差す先には、パーティーに来てる女たちにもう声をかけてるお祭りコンビ。
どーしょもねーなあいつらは。


久しぶりに揃うF4
パーティーに来てる女たちが俺らを見て色めき立つのがわかる。

ちらっと牧野の方を見ると、佐々木も交えて橋本と三人で楽しそうに話してやがる。
「司、顔が恐いよ。」類が渋い顔をしながら言ってくる。

「あのバカ。
少しはこっち見ろよ。
俺が他の女とどーにかなってもいいのかよ。」

「プッ……そこが牧野のいいとこなんだよ。
ところで、司、牧野とは進展あった?」

「…………。
ねーよ。押しまくってるけど、あいつ全然なびかねぇし。」

「そう簡単に落ちてもらったら俺も困るしね。
5年もかけてダメなんだからさ、俺は。」

「……なんでだよ。なんで類じゃだめなんだ?」

「それを俺に聞く?
……3年目ぐらいに言われたよ。
俺と一緒にいるのは楽しいし安らぐけど、ドキドキする感覚ではないって。」

「鈍感女のくせに、生意気だなっ。」

「ほんとそう。俺は恋愛対象じゃないらしいよ。
せいぜいお兄さんどまりかな。
だから、司、俺に気兼ねなくいっていいから。
牧野が司にドキドキするかはわからないけどねっ。」

そう言って離れてく類。
なんだかんだ言ってあいつはいつもそうだ。
昔から、文句を言いながらも最後は俺の好きなようにさせてくれる。
サンキュな、類。



ドキドキかよ。
させるどころか、俺の方があいつといると止まんねぇ。





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次はラストになります。
お楽しみに。






 2014_12_07





俺は今、すげー機嫌がわりぃ。
そのことをわかってか、西田以外、誰も俺に近づかねぇ。

そもそも、俺の機嫌を悪くしたのは西田おまえだ。
こいつが朝から俺にとんでもないことを言いやがった。

明日の夜は、某ホテルのオープニングパーティーに出席予定の俺。
せこいオーナーの考えで、少しでも人数が多い方がマスコミの話題にもなると、俺の他に秘書たちも招待されている。
もちろん牧野もだ。

それなのに、西田が待ったをかけた。
牧野は別の予定があるから欠席すると。
「なんだよ、別の予定って。」

「橋本社長とのお約束がありますので。」

「あっ?」
思わずでけー声が出る。
橋本社長といえば、牧野を気に入ってる、あのエロ社長かよ。

「ふざけんなっ!ことわれ。」

「いえ、仕事ではなくプライベートですので、私に権限はありませんので。」

「プライベート?どういうことだよっ。
詳しく話せ。」

西田が言うには、橋本のやろーもオープニングパーティーに出席するらしいが、あそこは秘書が男だ。
パートナーがいねぇ。
そこで、牧野に同行してもらいてぇと西田に話があったという。
西田も無下には断れねぇ理由があった。
それは、2回も俺が橋本との会談をすっぽかしたからだ。
厳密に言えば、2回目は牧野も共犯だけどよ。

だから西田も、
「わかりました。
牧野さんにはその日は午後から有給を取らせますので、プライベートで、ということで同行させます。」
そう返事をしたらしい。

「ふざけんなっ!!今すぐことわれっ。
できねーなら、俺がするっ!」

「牧野さんも了解してますので、断る必要はございません。」

「うるせー、俺が了解してねーんだよっ。」

「仕事でしたら上司である副社長が断りを入れる理屈が通りますが、プライベートでは副社長が出てくる理由が見つかりません。
それとも、なんですか?
プライベートでも言える立場になりましたか?」

「…………。」
言葉につまる俺。

なってねーよっ。
知っててこいつは聞いてんだよな。
ちくしょー。

「西田、今すぐ牧野をここに呼べ。」

「……わかりました。」







5分後、オフィスに牧野が入ってくる。
「あのー、西田さんから来るように言われたんですけど…………」

窓際に立って階下を見下ろす俺。
「こっちにこい。」
デスクの方を顎を使って指し、呼び寄せる。

言われるがままデスクの横に立った牧野を、俺は腰から持ち上げて強引にデスクの上に座らせた。
「キャッ!!ちょっと、なにするんですかっ!」
突然座らせられた牧野はジタバタと下りようとするが、俺は牧野の両足を割り間に入り込んで、動けねぇようにした。

「おまえはすぐに逃げるからな。
まずは逃げねぇように確保してからだ。」
そう言って、俺はデスクの上に手をつくと、ちょうど俺と牧野の顔の高さが同じになる。

「明日、橋本に会うのかよ。」

「…………はい。」

「なんで、断らねぇんだよ。
俺が代わりに言ってやろーか?」

「…………。」

「牧野!」

「…………前回、約束しちゃったんです。
副社長があたしだけ置いて会食の先を抜け出した時に、あたしもどうしても帰りたくて、その時、次回は絶対お付き合いしますって。
今回、そのこと持ち出されちゃって、断れなくて…………。」

「はぁー、マジでせこい男だな、あいつは。」

「元はといえば、副社長が悪いんですからっ。あのとき逃げたから……。」
そう言って睨んでくるこいつ。
その顔が凶悪にかわいい。

「なぁ、今からでも遅くねぇ。断れよっ。」
更に顔を近付けて言ってやる。

「今さら無理。
……それに、大丈夫ですよ。パーティー会場で待ち合わせして、帰りもそこでサヨナラしますから。
副社長も会場にいるんですよね?」
言ってることは強気だが、目は不安げに俺を見る。

「ああ。俺も会場にいる。
はぁ、ちくしょー。
…………絶対に二人きりになるなよ。
必要以上に接近するな。
酒も飲むな。俺の目の届くところにいろ。」

「プッ……またお母さんみたい。」

そう言って笑うこいつに、俺はいじわるく更に距離を縮めて、鼻と鼻がくっつきそうなぐらい近付くと、

「だから、わかってねーな、おまえは。
彼氏にさせろって言ってんだろーが。」
俺のその言葉に顔を赤くして、

「ここ会社ですって、会社。」
と、俺の肩を押してきた。


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 2014_12_06





佐々木さんにガツンとお説教されてから一週間。
あの飲み会の次の日は、朝から
「昨日はごめん。偉そうなこと言って……」
と、恐縮してた佐々木さんだったけど、あたしは感謝してる。

あれから色々考えてみたけど、副社長に告白されて1ヶ月、あたしは逃げてばかりいたのかも。
こうして2週間も顔を見ないと、なんだか少し寂しいと思ってる自分がいる。

今日もいるはずのない副社長のオフィスに入り、少し窓を開け、空気の入れ換えをする。
そして、副社長がいつも姿勢よく座っているデスクに目をやり、小さくため息をついた。




一日の仕事も終わり家でくつろいでいると、携帯に知らない番号からコールがある。
「もしもし?」
誰だろうと思いながらも、出てみると、

「おまえなぁ、誰かもわかんねぇのに、電話に出るな。変なやつだったらどーすんだよっ。」
副社長の声。

「はぁー?知らない人のようなので切りますよ。」

「バカ、待てって、切るなっ。」

「なんですか、もうっ。」

「…………元気だったか?」
急に甘い声に変わり、一気に頬が熱くなる。

「元気……ですよ。ヨーロッパはどうですか?」

「ああ。すげー寒い。もっとあったけー服持ってくるんだったな。」

「そっちで買ったらどうですか?
2週間もいたんだし。」

「買う暇がねぇくらい西田のやつスケジュール入れ込んでんだよ。
今日もこれから視察に行って、そのあと夜はどこかのジジィと会食だ。」

「どこかのジジィって…………。
忙しいんですね。」

「…………忙しいから、おまえの声聞いて、栄養補給だ。俺のいねぇ間に、他の男と出歩いてんじゃねーだろうな。」

「してません!それに、なんで副社長にそんなこと言われなくちゃいけないんですかっ!」
思わず可愛くない言葉が口から出てきちゃう。

それなのに、
「牧野…………、あと4日で日本に帰る。
帰った日の夜、用事がねえなら、会わねぇか?」
いつも俺様の副社長から少し弱気な誘い。

「…………いいですよ。」

「マジで!?キャンセルなしだからなっ。
絶対だぞっ。」嬉しそうな声。
聞いてるこっちまで恥ずかしくなるくらい……。





4日後。
今日は副社長がヨーロッパ出張から戻ってくる日。
あたしだけじゃなく、佐々木さんも葉子さんもソワソワと副社長の帰りを待っていたけれど、スケジュールがおして、日本に着くのが遅くなると、さっき西田さんから連絡がきた。

会社に残って待っていても、副社長は直帰するかもしれないので、帰っていていいと西田さんからの伝言で、あたしたちも社を後にした。

なんだ、今日は会えないのか……。
キャンセルなしだって言ったのは、そっちなのに……。

でも、もしかしたら家に帰る前に社に寄るかもしれない。
もう少し待ってれば会えるかもしれない。
そう思い、いま来た道を引き返すあたし。

社の方に向かいながらも、
会ってどうするのよっ、別に話すことだってないし、お腹だって空いてるし、やっぱり家に帰る?

そう思って立ち止まってみたりする。
そして、数百メートル先にある道明寺HDのビルを見上げ、ふぅーと息をはく。

一応、今日は約束してるんだから、もう少し待ってみよう。
もし、連絡もなくキャンセルしたらキャンセル料、高く取ってやるからっ。
そう決めて、ズンズンとオフィスに向かった。




秘書室で待つこと一時間半。
もう10時になっちゃった。
帰ろうかな。もう来ないでしょ。
もしかしたら、もうマンションに帰ってるかも。

そう思い、鞄を肩にかけ席を立ち、秘書室の電気をパチンと消したとき、ガチャっと秘書室の扉が開いた。

「キャッ!!」

「……牧野?」

「…………副社長?」

明かりを消した秘書室の中では顔が見えないけど、声だけでわかる。

「やっぱりここにいたのかよっ。何度も電話したんだぞ。なんでこういうときに限って電源消してんだよ。」

「えっ!電源消えてます?うそっ!気付かなかった。」

徐々に目が慣れてきて、月明かりでも副社長の顔がぼんやり見えてくる。

「あっ、電気付けますね。」
そう言って、副社長が立つすぐ横の壁にある電気のスイッチに手を伸ばしたら、そのまま副社長に腕を掴まれた。

「いい。今はいい。充分おまえの顔は見える。」

「……でも、」

「連絡つかねぇから、おまえのマンションに行こうかと思った。」

「突然来られたら困ります!」

「でも、会社の横を通りかかったら、ここの電気が付いてたから、慌ててあがってきた。」

「仕事が残ってたので。」

「今日はぜってぇ会うつもりだったから。
どこにいても探しだしてやるって思ってたからよ。」

「それって、恐いんですけど……」

「だから、すげーうれしい。
おまえに会いたくて堪んなかったから。」

人の話なんて全然聞いてなくて、言いたいことを言ってさも当たり前のように、自然にあたしを抱きしめた。

「他のやつらは帰ったのか?」コクン。
抱きしめられたまま、無言で頷くあたし。

「おまえ一人?」コクン。

「仕事してたのか?」コクン。

「俺のこと好きか?」コクン。ブンブン!

流れで頷いちゃったあたしは、慌てて頭をブンブンふると、
「プッ……おまえそんなに必死に否定するなっ。俺でも傷付く。
俺はおまえに会いたくて、すげー仕事頑張ってきたのによ。」

抱きしめられてるから副社長がどんな顔してるのかわからないけど、声は少し切なくて、あたしまで悲しくなってくる。

「仕事大変でした?」

「ああ。」

「お疲れ様でした。」

「おう。」

「…………おかえりなさい。」

なんとなくその言葉が出てきて、あたしが口にすると、一瞬黙ってた副社長が、
ゆっくりとあたしの体を壁に寄せて、抱きしめていた腕を解き、そのままあたしの背中を壁に付けた。


そして、
「なぁ、牧野。
早く俺のこと好きになれよっ。
それじゃないと、限界だっつーの。」
そう言って、あたしの肩に顔を埋めた。


あたしも、限界。
ドキドキが止まらない。

どうしていいのかわからないまま固まっていると、扉の向こうから、コホンと咳の音がする。
その音に副社長が反応し体が離れていく。

その時、一瞬だけ、あたしの頬に副社長の唇が掠れていったような気がした。




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司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
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