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3年後





会社に入って半年の僕には面倒見のいい先輩がいる。
その先輩のおかげで、右も左も分からない新入社員の僕もなんとか大企業の荒波に揉まれながら奮闘している毎日。

「香田くん、書類出来た?」

「あっ、はい、なんとか。
でも、少し分からないところがあって、」

「どこ?」

僕の手元にある書類を覗き込みながら聞いてくる先輩の牧野さんに、書類を手渡すと、

「んー、ここは訴訟になったときに重要だから、もっと細かく検討した方がいいかもね。
参考資料がファイルにあるから、それ見てもう一度その部分はやり直そうか。
でも、凄いよく出来てるよ、香田くん。
あたしが新人の頃なんか書類作成は全然ダメだったから。」

そう言って、いつものように必ず僕が上がる言葉をかけてくれる牧野さん。


道明寺HDに入って半年。
3つ上のこの牧野さんは法務課の先輩で、僕の教育係。
このスカッとした性格に、童顔の可愛らしい顔。
会社での仕事も、同僚への気配りもかなり出来る。
噂に聞くと、英徳高校を出て、そのまま大学にも進んだいうから、実家もかなりの金持ちなのかもしれない。
それなのに、そんな素振りは一切見せず、上司がお土産で買ってきたお菓子の箱や包装紙まで丁寧にしまっておくような今時では珍しい女性なのだ。

「香田くん、そう言えば今日の夜、大丈夫だよね?」

「あっ、はい。
今日もかなり飲まされますよね?」

「たぶんね。あははは、香田くん課長のお気に入りだから我慢我慢。」

なぜか僕は酒が強いからという理由で課長に気に入られ、よく飲みに連れられる。
野郎ばかりで飲んでも何が楽しいんだと思うけれど、今日は課の全員が参加するというから少し朝から楽しみだったりする。

なぜなら、酔ったときの牧野さんが無茶苦茶可愛いからだ。






「香田くーん、次何飲む?」

酔うといつもより甘くて、舌足らずなしゃべり方になる牧野さんは、こんな席でも周りのお世話係をかって出てくれて、酒の注文から料理の取り分けまでやってくれる。

「牧野さん、牧野さんは次何飲みますか?」

「あたし?あたしはもうやめとく。」

「えっ、まだ2杯しか飲んでないですよね?」

「これを越えると危ないからあたし。」

そう言って酒のせいなのか赤い顔で俺を見つめる顔がドンピシャに俺の胸にズキュンとくる。

「帰りが心配なら、俺が送って行きますよ。」
これを機にプライベートでももっと牧野さんを知りたいと、周りに聞こえないように、声のトーンを抑えて牧野さんに囁いてみる。

それなのに、
「香田くん、カナちゃんも酔ってるみたいだから、帰りお願いね。」
と、同期で新人の気の強い女の面倒を任される。

飲み会もそろそろ終盤に差し掛かり、カラオケ好きな課長の提案で場所を移すことになり、牧野さんもてっきり行くと思っていたのに、
「あたしは、お先に。」
なんて言い出すから、僕はこれはチャンスと、
「僕もこれで、」
と、言いかけたとき、

店の入り口に長身のシルエットが立ちはだかった。

「つくし。」

「……道明寺?」

お会計をしていたカナちゃんが、その人物を見て思わず小銭を床にぶちまけてしまったのもしょうがない。

「専務っ。」

「おう、そろそろ終わる頃かと思ってよ。
こいつ、連れて帰っていいか?」

課長にそう言って、牧野さんの腰に手を当てるのは見間違えるはずもないわが社の専務、道明寺司氏。

「道明寺っ、」

「んだよ、何度も電話したんだぞ。」

「遅くなるって言ってあったでしょ。」

「おまえ2杯までしか飲んでねーよな?」

「飲んでませんっ。」

小柄な牧野さんを今にも腕の中に閉じ込めそうな勢いに、見ているこっちまで赤面してくるけれど、かっこいい人は何をやっても様になって許されるんだなぁーと見とれてしまう。

「専務っ、お忙しいのに牧野さんをお借りしてすみません。」

そう言って一回りも二回りも年上の課長が頭を下げるのを見て、慌てて

「課長っ、やめてください。
道明寺も、目上の人には敬語っ!」
と、牧野さんが道明寺HD御曹司の専務に怒鳴っている。

「あ?ったく。
牧野がいつも世話になって……ます。
先に帰らせて貰ってもいい……ですか?」

たどたどしい敬語に見てるこっちまで吹き出しそうになるのを抑えている僕の目の前で、盛大に吹き出してる牧野さん。

「つくし、笑うなっ。」

「だって……ククッ……でも、よく出来ました。」

笑いながら専務を見上げてそう呟いた牧野さんの顔は、僕が今まで見た中で一番甘く、そして、一番可愛い先輩の顔だった。

あぁー、牧野さんって彼氏にはこんな顔するんだ。



ペコリと頭を下げて店を出ていく二人を見つめながらそう思っている僕に、課長が一言。

「牧野さんはやめときな香田くん。
彼女は二ヶ月後には道明寺夫人だからね。
専務を敵に回すと怖いよ。
なんてったって、あの二人は高校時代からラブラブで有名だったらしいからね。」



あー、そういうことか。
今日の飲み会は課長から何も知らない新人の僕への優しい慰め会だったのかもしれない。


「さっ、今日はとことん飲むぞ香田くんっ!」

「はいっ、課長。」






不埒な彼氏
Fin


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 2015_12_15







道明寺HDの入社試験はさすが世界に通用する大企業だけあって、他のどの会社よりも厳しいものだった。

面接のグループディスカッションでは、専門的用語が飛び交って付いていくのにやっとだったけれど、でも今あたしが持っている出来る限りの力を出し切った感は充分にある。

あとは運。
特別な才能もコネもないあたしには、それが一番重要だったりもする。

することは全部やった。
あとは結果を待つだけ。





予定していた就職活動は全部終わり、今のところ大手企業が一社と先輩の紹介で法律事務所からも声がかかっている。
もし、道明寺HDがダメなら、そのどちらかに決めるしかないけれど、どちらにしても就職浪人からは免れてほっとした。


「なぁ、………おまえ何か欲しいものあるか?」

「なによ、突然。」

「何でもいいから言ってみろ。」

闇雲にそう言われても欲しいものなんて
…………ある。

「欲しいものっていうか、必要なものはどっさりあるよ。」

「例えば?」

「例えばー、仕事に必要なリクルートスーツでしょ、それに歩きやすいパンプス、あとは、仕事の書類が入るようなガッチリした鞄。」

「とことん色気のねえ女。」

「っ!あんたが言ってみろって言ったから話したんでしょ。欲しいものと色気になんの関係があるのよっ。」

そう言って拗ねたあたしをクスッと笑いながら見つめて
「おまえもうすぐ誕生日だろ。
その前にはクリスマスもあるしよ。」
と、頭を撫でてくる道明寺。

そんな道明寺に、あたしは
「あー、すっかり忘れてた。
でも、今年はプレゼントくれるんだ?」
と、ニヤリとしながら聞いてみる。

「……まぁな、」

「直接くれるの?
それとも、いつも通りお姉さんから貰えるの?」
そう聞くと、あたしを驚いた顔で見る。

「なんで、おまえそれ…………」

「お姉さんから聞いた。
…………分かり辛い男。」

そう言って睨んでやると、あたしのことを後ろから抱きしめながら、道明寺が耳元で甘く囁いた。

「今年はどっちも一緒に過ごそうぜ。
おまえの欲しいものは全部俺がプレゼントしてやる。」

「はぁ?さっきのは適当に言っただけだし、あんたにおねだりするつもりなんてないし、」

まだまだ言いたいことはあるのに、
あたしの言葉を遮るようにして今度は道明寺がニヤリと笑いながらあたしに言ってくる。

「その代わり、俺にもプレゼントを寄越せ。」

「寄越せって、高いものじゃないでしょうね?
あたし最近バイト減らしてるから、そんな高いもの言われても困るからね。」

「バカ女。
俺がそんなことおまえに要求するかよっ。」

「じゃあ、……なに?」

この男に限ってはどんな難題を言ってくるのか分かったもんじゃない。
警戒しながら恐る恐る、背中にピタリと張り付く道明寺に聞くと、

「24日、空けとけ。」
と、ポツリと呟いた。

「え?」

「だから、……24日のクリスマスに、邸でパーティーがある。
今年は……おまえを連れて行きてぇーんだよ。
嫌か?」

「…………。」

黙るあたしに、何も言わずまた頭を撫でてくれる道明寺。

毎年恒例のクリスマスパーティー。
道明寺邸で盛大に開かれるそれに、一度も顔を出したことがないあたし。
道明寺の彼女として自信がなかったし、道明寺のお母さんに歓迎されるはずがなかったから。

でも、今年は道明寺のことを信じているし、お母さんとも先日直接対決したばかり。
だから…………、


「道明寺…………、
あたし、ドレス持ってないよ。」

「っ!」

「どうせなら、今年のクリスマスプレゼントはパーティーに着ていくドレスにしてよ。」



こんなに道明寺が嬉しそうな顔をするなら、窮屈なパーティーも悪くないなと思う。






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 2015_12_14






道明寺のお母さんの書斎を出ると、廊下の先にタマさんが心配げにこっちを見て立っていた。

トボトボと近付くと、
「大丈夫かい?」
と、あたしの肩を撫でてくれる。

「はい、大丈夫です。
はぁーーーー、緊張したっ。」
やっと極度の緊張から解放されてそう言うあたしに、

「ちょっと寄っていくかい?」
と、ニヤリと笑うタマさん。





道明寺邸の中で一番落ち着くのはこの畳の部屋。
洋館の中にこんな純和風の部屋が……と思うほどタイムスリップしたタマさんの部屋はあたしのお気に入り。

その部屋に招待されてドアを開けると、部屋の中から小さな物体がパタパタと駆けてくる。

「えっ!タマさんっ!」

「こらこら、そんなに興奮しないの。
お客様だよ、『柴』」

呆気に取られながら、タマさんの腕の中に収まったその『柴』を見つめながらあたしは聞く。

「どうしたんですか、その犬。」

「これかい?
飼い主様が留守だから預かってるんだよ。」

そう言いながら『柴』を抱き抱えるタマさんと、ちゃぶ台に向かい合って座るあたし。
タマさんがお茶と南部煎餅を出してくれる間も、『柴』はタマさんの足元から離れない。

「フフ……タマさんにすごいなついちゃって。
飼い主って誰なんですか?」

「まったく、……坊っちゃんだよ。」

予想外の答えに声が裏返る。

「はぁ?!
あいつ、犬は苦手じゃないですか。」

「そう、それなのにどこからか連れてきたんだよ坊っちゃんが。
犬は苦手なのに、この子は可愛がってるから『犬嫌いは克服したんですか』って聞いたら、『こいつはあいつそっくりだから』ってさ。」

「あいつ?」

「ああ、つくし、あんたのことだよ。」

「あたしっ?」

目の前のこの『柴』があたしに似てる?
どうしても納得できなくてじーっと『柴』を見つめていると、タマさんが呆れたように言う。

「いつもは坊っちゃんに寄り付かないくせに、落ち込んでたり、疲れてるときはそっと側に来て慰めているかのようにじゃれてくるって。
警戒心が強いくせに、好きな相手にはとことんなつく。
そんな『柴』みたいな女を俺は知ってるけど、また傷付けたって、この『柴』相手に愚痴ってるのを聞いたよ。」

「…………。」

そういえば、道明寺はあたしのことを時々『柴犬』と呼んでいた。

「どうせ、つくしとうまくいってない時に、衝動的に買ってきたんでしょ坊っちゃんは。
犬嫌いなんて嘘のように『柴』のことは可愛がって部屋にも連れていったりしてるけどね、
結局、出張とか仕事の間は世話するのはタマなんだから、いい加減にしてほしいもんだね。」

呆れながらも大層腕の中の『柴』を可愛がっているタマさん。

「すみません。
あたしのマンションもペット禁止だし……、」

あたしも同罪のような気がしてそう呟くあたしに、

「いいんだよ。
つくしがこの邸で暮らすようになったら、その時は『柴』を坊っちゃんとつくしに任せるつもりだからね。
それまでは、タマが世話してるから安心しな。」






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 2015_12_11







このご時世、就職はそう簡単に決まるものじゃない。
いくつかの企業に履歴書を出し、今のところ四社の筆記試験を受けた。
そして、そのうち一社は不合格。
二社は面接まで進み結果待ち。
そして、残り一社は道明寺HD。

一次面接は通過したとこの間書類が送られてきたけれど、そのあと何も音沙汰がない。
もう二次面接の案内が来てもいい頃なのに。
そう思ってヤキモキしていたところに、
あたしの携帯がなった。

「もしもし。」

「牧野さんでしょうか。」

「はい。」

「わたくし、道明寺HDの、」

咄嗟に面接の日時を知らせる連絡だと勘違いしたあたしは、近くにあるボールペンとメモ用紙を慌てて用意した時、その電話の相手が思いがけないことを言った。

「明日の7時、道明寺邸に来ていただけますでしょうか。」

「……え?」

「奥さまがお待ちです。」

その言葉に、電話の主が誰なのか分かった。

「……西田さんですか?」

「はい、ご無沙汰しておりました、牧野さん。」

「あのぉー、道明寺邸にって、」

「はい。
明日、来ていただければ分かります。
…………大丈夫ですよ。お待ちしております。」

そう言って切れた電話を眺めながら、少しだけあたしの手が震えた。







約束の時間に道明寺邸を訪れると、タマさんが出迎えてくれた。

「つくし、…………大丈夫かい?」

「はい。」

「まったく、こんな時に限って坊っちゃんは出張なんだから。」

道明寺は先週から出張に行っている。
こんなときに限って……、でもこんなときだからこそ呼ばれたんだと自覚してるあたしは、強ばる顔をグニュグニュと手でほぐし、無理矢理笑顔を作って言った。

「面接、行ってきます!」






道明寺邸には何度も来ているけれど、この道明寺のお母さんの書斎に入るのは初めて。
ノックのあと、「失礼します。」
と、声をかけて中に入る。

書斎のデスクに座る圧倒的なオーラを持つ楓氏。

「どうぞ、かけて。」
いつも通りなんの抑揚もない声で言われたあたしは、ソファに腰を下ろした。

「単刀直入に聞くわ。
道明寺HDの入社試験を受けたそうね。」

「はい。」

「あなたの狙いは何?」

狙いは……と、聞かれても。
入社試験用に各社の志望動機は用意していたけれど、それでいいのか?

「えーと、御社の……、」

とりあえず道明寺HD用に作成した面接マニュアルを思い出して言ってみる。
すると、目の前の楓氏が「フッ……」と、鼻をならして笑った。

「相変わらずね、あなたは。」

「はい?」

「私を目の前にして動揺しないのはあなたくらいね。」

いえいえ、完全に動揺してますからっ、
そう思ったけれど、なんとか口に出すのは免れた。

「あなたがどんな真意でうちの会社に入りたいと思っているか聞いておきたかったの。」

まっすぐにあたしを見つめてそう言う楓氏が、なぜかあたしは道明寺HDの社長としてではなく、道明寺のお母さんとして聞いているように思えて、姿勢を正した。

「志望動機はさっき話した通りです。
ですが、……もう1つ私には道明寺HDに入りたい理由があります。
それは、……道明寺司がいるからです。
あいつ、前にあたしに言ったんです。
将来の選択肢があるあたしが羨ましいって。
でも、よく考えたらあたしには選択肢なんてないんです。」

「どういう意味かしら?」

「あたしは未来を想像するとき、必ずそこに道明寺がいます。
道明寺のそばで、道明寺のために、何が出来るかって。
だから、あたしには選択肢はありません。
道明寺HDに入って、どんな小さな仕事でも道明寺のために働きたい。
…………でも、受かったらの話ですけどね。」

最後は情けないほど自信のない声になった。

「フッ……受かる自信はないのかしら?」

「……ええ、それが全く。」

「あはっ、あはははは。
あなたらしいわね。」

初めて見た。
道明寺がいつも言う『ババァ』が、それはそれは楽しそうに笑ってる。

「あのぉー、これは面接なんでしょうか?」

「ええ、そうね。個人面接よ。
でも、合否には全く関係ないわ。」

「え?」

「新入社員の人選は人事部に任せています。
私が直接口出すことはないし、司が口利きしてもダメよ。
だから、あなたが道明寺に入社出来るかどうかはあなた次第。」

「……じゃあ、これはなんのために……」

「そうね、強いて言えば…………、
道明寺の嫁に相応しいかどうかの面接かしら、
あははははー。」


いつもの表情のない顔も怖いけど、
楽しそうに笑う楓氏はもっと怖いと思ったあたし。




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 2015_12_10






司法書士。

牧野が合格した。
弁護士を目指してたはずなのに、いつの間にか司法書士の試験に2年連続で挑戦していたらしい。

合格したと聞いて素直に喜んで、素直におめでとうと伝えた。
だけど、牧野の夢は弁護士であり、それは今も変わっていないと思っていた。
だからそのまま大学院にでも進んで勉強を続けさせようと思っていたのに…………、

「あたし、就職するから。」

「あ?」

「今、就職活動中。」

「聞いてねーぞっ!」

「だから、いま伝えてるでしょ。」
と、呑気に言いやがる。

「弁護士の夢はどうしたんだよっ。」

「うん、それね、
大学で勉強してるうちに進みたい進路が変わって。だから、司法書士の試験を受けたの。」

「進みたい進路?」

牧野の部屋の小さなソファに並んで座ってたこいつが、ソファの上に体育座りをしながら俺の方を向く。

「そう。
あたしね、企業で司法書士の資格を活かして働きたいの。
行く行くはもっと英語も勉強して、会社のために……、」

目をキラキラさせて話すこいつに、ここ最近久しく感じてなかった感情が沸く。

こいつは昔からやると決めたら全力で突き進む。
そこに俺の存在なんてまるで影響しねぇ。
でも、そんな牧野が好きで、そんなこいつの自由さと賢さに心底惚れた。
だから、こいつを不幸にしたくねぇ…………と、臆病になってた時期もあったが、またそんな感情が甦る。

正直に言うと、
牧野にはあと2年は学生のままでいてほしかった。
大学院で法律の事を学びながら司法試験の準備をさせたかった。

「夢を途中で諦めるなんておまえらしくねぇな。」

「だから、諦めたんじゃなくて、」

「投げ出したのか?」

そう言うと、みるみるうちに牧野の顔がこわばっていく。
せっかく苦労して取った資格に、こんなことを言ってやりたい訳じゃない。

「あんたには、そう見える?」

「…………。」

「弁護士が無理だから、諦めて司法書士にしたって思ってる?」

まっすぐに俺を見つめて言ってくるこいつを見ればそうじゃねぇってことは分かってる。

「……道明寺には、分かってほしかった。」

小さな声でそれだけ言ってソファから立ち上がろうとする牧野。
その腕を俺は掴み、

「そうじゃねぇんだよ、わりぃのは俺だ。」
と、牧野の体を再びソファに座らせる。

「……まだ、……俺の準備が出来てねぇんだよ。」

「準備?」

「ああ。
おまえがそう簡単に司法書士試験に合格するとは思ってなかった。」

「ヒドっ!」

俺を睨み付けてくるこいつが、こんな時でさえ無性に可愛くてギューっと腕の中に閉じ込める。

「俺も専務っつー肩書きはあるけどよ、所詮会社に入って一年目だ。
だから、おまえが勉強に集中してる間に、少しでも一人前になる準備がしたかったんだよっ。」

「一人前にって……別にあたしが就職したからってなんか関係ある?」
抱きしめられたまま、俺を見上げるこいつ。

「あるだろ。
半人前のままじゃ、おまえと結婚出来ねぇ。」

「っ!はぁー?け、け、結婚って、」

「そんな驚くことかよ。
恋人同士で、やることもヤって、あとはしてねぇのは結婚だけだろ。」

俺的には分かりやすく言ってやっただけなのに、
「やることヤって……って、あんた……」
と、真っ赤になる牧野。
そんなこいつに、俺の決意を教えてやる。

「ババァにもこの間NYに行ったとき啖呵きってやった。
俺はおまえしか考えらんねぇって。
もし、反対するなら道明寺を出るって。」

「…………お姉さんから聞いた。」

「そうか。
なら、あとはおまえの返事だけ。」

「え?」

「今すぐとはいかねぇけど、
俺と結婚してくれ。
……牧野、返事は?
なぁ、……じらすなって……クチュ
ベッドの中で聞くか?
…………返事するまで寝かせねぇぞ。」




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司一筋

Author:司一筋
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