FC2ブログ




牧野の部屋で一夜を過ごした次の日の夜、
俺はNYへと帰るジェット機の中にいた。

あいつと離れるのは辛い。
だけど、俺は心に決めた。

『これから先の人生は牧野と共に過ごす。』

もう待つ必要もないし、それだけの準備はしてきたつもりだ。
だから、あとはババァと直接対決するだけだ。








トントン。
「失礼します。」
時差ボケなのか、昨夜の睡眠不足なのか、若干ボーとした頭もそのままで、ババァのオフィスをノックした。

「どうぞ。」

部屋に入るとコーヒーカップを片手に応接セットに腰かけるババァの姿があった。

「先程、日本から戻りました。
社長、少しお話があります。」
俺の言葉にババァが少しだけ笑ったような気がしたが、

すぐにいつもの声で、
「こちらに座って。」
と、自分の正面を指した。



どう切り出そうか少し迷ったが、話す内容は変わらない。
ならば、直球で。

「牧野と会ってきた。
あいつともう一度やり直すことにしたんだ。
二人で話し合って、近い内にこっちに部屋を借りる予定だ。
まだ一緒にいれる時間は少ねぇけど、それでもお互い空いた時間は出来るだけ一緒にいれるように……」

そう、牧野とは昨日の夜、ほとんど寝ずに話し合った。
日本で二人の部屋を借りてもいいが、いずれ籍を入れれば将来的にNYに移住することになるだろう。
そのため牧野も、何年かかっても国際弁護士の資格を取ると決めていてくれたらしい。

「道明寺財閥のお嫁さんになりたいなら、それぐらい努力しないとなれないでしょ。」
と、当たり前のように言う姿に、俺との将来を覚悟してくれてんだと胸が熱くなった。



それなのに、
「…………それは困ったわね。」
そうオフィスに冷たいババァの声が響いた。

「…………。」
そういうババァの態度も予想していただけに、やっぱりか……という暗い気持ちが広がり咄嗟に返す言葉も出てこねぇ。

床に敷かれた絨毯に目線を落とした俺に、
ババァがクスッと笑い、
「あなたには来月から日本に行ってもらう予定でしたのに、NYに部屋を借りるですって?
それは、困ったわね……。」
そう言って再びコーヒーカップに手を伸ばした。

「あ?……日本に行く?……俺が?」

「ええ、そうよ。
来月からあなたに日本支社を任せるわ。」

あまりに突然の話で言葉を失う俺に、
「あら、自信がないかしら?
それとも、まだ私と一緒にNYにいたい?」
確実にからかいモードのババァ。

「んなわけねーだろっ!
…………っつーことは、日本で牧野と、」
その先を言おうとした俺の言葉を遮り、

「とりあえず、明日、記者会見を開きます。
あなたの日本支社長就任の会見ですので、粗相の無いように準備すること。
会見の内容は私の方で用意します。
あなたはそれを読み上げるだけでいいわ。
わかったわね?」

話はこれで終わりというように、立ち上がるババァ。
それを見て、動揺を隠せないながらも俺もオフィスを後にした。




日本に戻れる。
あいつのいる日本。
ババァが何かを企んでいようとも、関係ねえ。
今度こそ、あいつと共に歩む。








会見の15分前。
NYのメープルホテル大ホールを貸し切っての異例の会見。
NYだけでなく、世界各国から集まった報道陣の数は半端なく、さすがの俺も圧倒されるほどだ。

それなのに、
「西田、まだかよっ!」
肝心の会見原稿が届いていない。

粗相の無いよう……って言ってたのはどこのどいつだよっ。原稿も届かねぇんじゃ、準備のしようがねーっつーの。

その時、俺らのところにババァの秘書が姿を現し
原稿らしきものを手渡した。
「社長から伝言です。
牧野さんにも必ず会見を見るように伝えなさいと……。」




その伝言を不思議に思いながらも、渡された原稿に目を通した俺は、
「マジかよ…………。」
と、呟きその場に座り込んだ。

その態度に、
「司様っ、」
と、西田が慌てて声をかけてくるが、俺はそれを手で制し、そのままズボンのポケットから携帯を取り出した。


「あ、牧野か?俺だ。
昨日話した会見だけど、もうすぐ始まる。
日本でもLIVEで見れるはずだから、どこでもいい、必ず見ろ。

それと、牧野。
もう一度おまえの気持ちを確認させてくれ。
俺とこの先ずっと一緒にいてくれるか?」

ほんの数分の会話。
携帯を切ると、俺は深く息をはき、
ネクタイを直しながら会見場へと急いだ。














NY時間、午後3時。
道明寺財閥、次期日本支社長、道明寺司の会見が始まった。
それは、そこにいる報道陣すべての予想を裏切る内容だったことは確かだろう。




「私、道明寺司は、この度、婚約を発表いたします。
かねてから好意を寄せておりました女性に婚約の承諾を得ましたので、ここに発表させて頂きます。
つきましては、来期より日本支社の…………」





その後、会見は原稿を読み上げて15分程度で終了した。
その原稿の最後には、ババァの直筆で、
『あなたには借りがありますから。』
と、一言付け加えられていた。


『借り』
何度かババァから聞いた言葉。
はじめは何のことを言っているのか分からなかったが、この間牧野と話していてやっと分かった。


4年前、ババァは俺をNYに来させるために嘘をついていた。
『牧野さんは英徳でもトップの成績で司法試験も現役で受かる実力だそうよ。
モタモタしてるとあなたの方が彼女に捨てられるかもしれないわ。』

実際は試験合格に3年もかかった牧野。
「おまえにしては時間がかかったな。
大学でもトップだったんだろ?」
そうベッドの上で聞く俺に、

「はぁー?道明寺バカじゃないの?
あたしなんかがトップになれるわけないでしょ!英徳の法学部って言ったら、どれだけレベル高いと思ってるのよ。
そこに入れただけまぐれだっつーのに、何がトップよ。」
そう話す牧野を見て、俺は悟った。

4年間、俺はババァのてのひらの上で踊らされていたってことか。






でも、『借り』は、ちゃんと返してもらった。
ババァのおかげで、少しはまともな男になってあいつを迎えに行くことが出来る。





牧野。
この先の未来は、限りない愛でおまえを守る。
だから、幸せになろうぜ。


さっきの電話での牧野の声が耳に残っている。

『俺とこの先ずっと一緒にいてくれるか?』

『道明寺じゃなきゃ、ダメみたい。』










『限りなくゼロ』Fin




ありがとうございました!









スポンサーサイト



 2015_03_19






4年前がどうのこうの言ってる訳じゃねぇ。
あの時だって、すげー感動した覚えがあるけど、
ただ、今日は……それ以上だった。

牧野のマンションで4年ぶりに愛し合った俺たち。
あの時より確実に雰囲気も身体も女らしさを増した牧野。
そんなこいつに、俺は勝手な想像をして不安が頭をよぎったが、
いざ、牧野の中に入ろうとしたとき、昔ほどではないにしてもかなりそこはキツくて、

両腕で顔を隠しながら、
「やっ……だって……あの時から……してないから。」
と、恥ずかしそうに言った牧野の言葉が強烈に俺を喜ばせた。





何度目かの行為の後、疲れてベッドに沈み混む牧野の頭をそっと撫でて、俺はキッチンへと向かった。

「道明寺?」
俺の気配で牧野が起きたらしい。

「わりぃ、起こしたか?喉乾いたから……」

「冷蔵庫に飲み物入ってるから好きなの飲んで。」

「おまえは?」

「……あたしも飲もうかな。」
そう言って起き上がろうとするこいつ。

「いいから寝てろ。そっちに持って行ってやる」

俺は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、戸棚にある二つのグラスに注いだ。
そして、一気に1杯をその場で飲み干すと、もう一度グラスに注ぐ。

その時、ふと冷蔵庫に航空会社の封筒が磁石で貼り付けられているのが目に入った。
軽く手でなぞると中にチケットが入ってるのがわかる。
俺はその封筒を手に取り、牧野のそばに戻った。


「おまえ、どこか行くのかよ。」
牧野にミネラルウォーターが入ったグラスを渡しながら、俺はその封筒をヒラヒラしてみせると、

「あっ!ちょっとっ!返して。」
慌ててベッドに起きるこいつ。
その慌てかたが、なにかまずいもんでも見つかったガキみてぇで、俺は面白くねえ。

「なんだよ、マジでどこか行くつもりなのかよ。しかも、俺には知られたくねーってことか?」

「いや、そーじゃなくてっ!」

そう言ってベッドの上に座り込む牧野は、胸まで引き寄せた布団で体を隠しているが、むき出しの肩が暗い部屋でも白く浮かび上がる。
俺は床に落ちたブランケットを引き寄せ、牧野の肩にそっとかけてやり、こいつの隣に座った。

「おまえが行きてーなら行ってこい。
けど、…………約束は約束だからな。
俺はおまえとちゃんと恋愛がしてーんだよ。
だから、戻ってきたら約束しろ。
俺の彼女になるって。」
俺はそう言ってチケットを牧野に渡してやる。

すると、
「道明寺、……それ、もう必要なくなったの。」
牧野はチケットを見てそう言った。

「あ?」

「だから、そのぉー、…………そのチケットは使わなくて済んじゃった。」
えへへ、とはにかんで笑う牧野を見て、俺はそのチケットの封筒を開けた。

それはNY行きのチケットだった。
日付は明日の午後の便。

「試験に受かったら、あんたに会いに行くつもりだった。
毎年、毎年、願掛けのように合格発表前にチケットも買ってたのに、2年もダメで……。
やっと今年は無駄にしなくて済みそうって思ったのに、今度はあんたが帰ってきちゃうんだもん!

それにしても、どうしてNYまではこんなに高いのよっ。試験が終わった後必死にバイトしてやっと買ったんだから。
無駄にした3年分のあたしの労働はどうしてくれるのよっ。」
そう話す牧野を俺は信じられねぇ思いで見つめる。

「おまえ、バイトしてたのは俺に会いに来るためだったのか?」

「……うん。」

「受かったらおまえから会いに来るつもりだったのか?」

「……うん。」

「それって、…………いやっもう、…………」

「道明寺?」





言葉にならないと言うのは、こういう時のことを言うんだろう。
どんなに言葉を並べても、足りない。
どんな表現をしても、伝えきれない。

だから、たぶんこうするしかない。









大切な宝物をそっと腕のなかに包み込む。
壊れないように、
……でも俺だけがしてもいい強さで。



「愛してる、牧野。」





ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願いいたします!



限りなくゼロ、楽しんで頂けてますでしょうか?
そろそろラストになってきました。
次回作、まだ決めかねております。
こんなの読みたいわ~がありましたらコメントでも拍手コメントでもいいので、殴り書きしてみてくださーい。
参考にさせていただきます!




 2015_03_18






二人とも無言のまま歩き続け、表通りから脇道に入ったところで牧野が口を開いた。

「いつ帰ってきたの?」

「今日だ。」

「そうなんだ。知らせてくれればよかったのに。仕事で?」

「いや。
…………さっきのあいつ誰だよ。」

「あー、さっきの人?バイト先の先輩。」

「ずいぶん親しそうだったな。」

「そう?お世話になったから。」

そう話す牧野は、何かを思い出してるのか少し微笑んでいて、俺はそれに無性に腹が立つ。

「あいつと付き合ってるのか?」

「えっ!違う、違う違うっ。そういう仲じゃないよ。」
必死で否定する牧野。

「おまえは、そういう仲じゃないやつとでも手を繋ぐのかよ。」

「…………手?」

「ああ、さっき手繋いでただろ。」

一瞬ポカンとしてた牧野だが、すぐに何を言われたのかを理解したようで、
「あれは、手を繋いだんじゃなくて、手を握ったのっ。握手っ!もぉー、相変わらずバカなんだから。ちゃんと見てた?お互い右手を握りあってたでしょ?どう考えたって恋人がそんな手の繋ぎかたしないでしょ。」
呆れたように言うこいつ。

「うるせー、っつーか、なんでおまえまだバイトしてんだよっ!
もうバイトは完全にやめて勉強に打ち込むって言ってなかったか?」

「いや、そのぉー…………ちょっと事情があってこの時期だけバイトしてたの。」

「事情?なんだよそれ。」

「…………ナイショ。」

「あー、どうせろくでもない事情だろ。
さっきのやつが誘ったからか?
ったく、相変わらずフラフラしやがって。
ふしだらな女だなおまえは。」

「ちょっと!何よその言い方っ!
あたしがいつフラフラしたっていうのよっ。
あんたにだけはそんなこと言われたくないっ!」

「あ?おまえは俺がフラフラしてるって言いたいのかよっ!いつだよ、いつしたか言ってみろよ」

「もういい!もう知らないっ!」





気が付けば、牧野のマンションの前まで来てた。
四年ぶりに会って言いたかったことは、
…………こんな言葉じゃなかったはずだ。

会って抱きしめて「おめでとう」と伝えたかったはずなのに、
実際は、こいつの顔すらまともに見ていない。

「……あたし、もう行くね。」

「……おう。」

お互い背中を向けて歩き出す俺たちは、
やっぱりもう無理なのか。









俺は牧野と別れてさっき来た道を一人歩く。
もう目の前は大通りで手を上げればすぐにでもタクシーをとめられる。
だが、歩みを進めれば進めるほど、胸が苦しくて切なくて…………あいつに会いたくて堪らない。

どうしたって、このまま帰ることなんて出来ねぇはずなのに。

そう思った俺は、牧野のマンションに向けて走り出した。
あいつが怒っていようが殴ってこようが構わねぇ。
俺はあいつに伝えたいことがあるんだよ。
だから、だからもう一度…………、

そう思って全速力で走る俺の目線の先に、
脇道の暗い電灯でもわかる、こっちに駆けてくる牧野の姿が写った。

「牧野っ!」

「っ、道明寺!」

俺は走ってきた牧野を腕に抱き止める。

「帰っ……ちゃっ……たかと……思った。
ご……めん。んっ、うっ…………ごめんね。」

「おまえっ、…………泣いてんのか?」

首をブンブン振っているが確かにこいつは泣いていた。

「道明寺、あたし、……んっ……受かったよ。」
俺の胸に抱きついて、ギュッと体を寄せながら言う牧野。

「ああ、知ってる。」
そんな牧野の頭を撫でながら優しく返す俺。

「頑張ったんだから。」

「ああ、知ってる。」

「ほんと、すごく頑張ったんだから。」

「ああ。」
駄々っ子みたいに言ってくるこいつが無茶苦茶かわいくて、抱きしめる腕に力を入れる。

「でも、3年もかかっちゃった。ごめんね。」

「ああ、すげー長かった。
待って待って待ちくたびれた。
…………だから、もう待ったはなしだ。
約束だよな?受かったら俺とちゃんと恋愛するって。」

返事の代わりに、俺にギュッと抱きつく牧野。






「いつむこうに帰るの?」

そう言って、やっと俺の方を向いた牧野は、赤い目をして心配そうに聞いてきた。


「4年も待ったんだ。
少しぐらい恋人らしいことさせろ。」







四年ぶりのキスは甘くて俺の全身をトロトロに溶かしていく。
そう、これが最高の蜜の味。




ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願いいたします!











 2015_03_17






いつもより二時間も早くオフィスに着いた俺を迎えたのは西田だった。

「おはようございます。
ジェットの用意は出来ております。」

早朝、理由も言わずただ『日本に行くから手配してくれ』と伝えた俺に、西田は忠実に動いてくれていた。

「サンキュ。
ババァはいつ出勤する?」

「もう、こちらに向かっております。」

俺が日本に行くということは、今日からのスケジュールに変更が出る。
一応、社会人としてババァに一言言っていく必要がある。

「ババァが着いたら知らせてくれ。」
西田にそう伝え、急ぎの仕事だけを片付けにかかった。








トントン。
「失礼します。」

「今日はずいぶん早い出勤ね。」
俺の顔を見るなりそう言ったババァ。

「社長、2、3日休みを貰えないでしょうか。」
無駄口をたたいてる時間はねぇ。

「…………。
何か急用かしら?」

「はい。」
迷わず即答する俺に、ババァは少しだけ顔を緩ませて、

「そう、わかりました。
あなたがいない間は私がカバーするわ。
あなたには借りがあるから…………。」
そう言って意味深に笑った後、内線の受話器を持ち上げ

「スケジュールの変更をしたいの。
ええ、…………ええそうよ…………」
秘書と打ち合わせに入った。

俺はそれを見て、静かにババァのオフィスを出ようとしたとき、
「司さん、牧野さんによろしく言ってちょうだい。
私からのお祝いは後日贈らせて頂くわ。」
それだけ言ってババァは再び書類に視線を戻した。












プライベートジェットで日本に向かった俺。
どんなに飛ばしても日本までの距離は遠く退屈なはずなのに、あいつとの再会を想像すると寝ることさえも出来ねぇ。

電話で日本に帰ることを伝えようかと思ったが、
直接あいつに会って言いたい。
「おめでとう」の言葉を。

だから俺ははやる気持ちを抑えて、牧野に会えることだけを思いひたすら時間が過ぎるのを待った。

もうすぐ会える。待ってろよ牧野。





それなのに…………。

「ったく、ほんといつも捕まらねぇ女だなあいつは。」

無事日本に着いて数時間。
すぐに牧野のマンションに行ったが、あいつはいねぇ。
しばらく待ってみたけど帰ってくる気配もなく、
俺は滋にあいつの居場所を聞いてみた。

「司!元気~?
……………………
つくしなら、今日がバイト最後の日だって言ってたから送別会開いてもらえるって言ってたはず。
携帯はあの子持ち歩かないから繋がらないかもね~キャハハー、司、ガンバっ!」

マジで、ムカツク。
携帯は携帯しねーと意味がねーんだよ!
昔も今も、どんだけ俺に追いかけさせれば気が済むんだよあのバカ女はっ。

マンションの前から最寄り駅の改札がある駅の通りまで移動した俺は、そこのガードレールに腰を掛け、あいつが帰ってくるのを待つことにした。
地下鉄を利用するなんて確信はねーけど、このままじっとマンションの前にいるのにもイライラの限界に達していた。


ガードレールに座り腕を組んで待つ俺を、通りすがりの女たちが熱い視線で見ていくが、俺はそれを完全に無視すること30分、
俺の視線の先に、四年ぶりのあいつが写った。

四年ぶりに会うこいつは、
おかっぱ頭だったのが肩にかかるほどのセミロングになり、いつもジーンズ姿だったのが女らしいスカートに変わり、化粧っけのない顔が、少しだけ大人の女の顔に変わっていたが、
紛れもなく、会いたかった牧野だった。

俺は牧野の存在を目に入れながら、そばに行こうと立ち上がりかけたその時、
牧野の後ろに一人の男がいるのが目に入った。
どう見ても仲のよい知り合いで、牧野はそいつと楽しそうに笑い合い、そしてあろうことかその男と…………手を繋いだのだ。


それを見て、俺は今日1日溜め込んでいた怒りが最高潮にまで達した。
目線の先に二人を捉えたまま、まっすぐと近くまで歩いていき、

「牧野。」
そう低く静かに呼んだ。


「…………道明寺っ!」
俺の顔を見て、信じらんねぇものでも見たかのように、目をでかくして叫ぶ牧野。
でも、その手はまだ奴と繋がれたままだ。

「取り込み中わりぃけど、牧野と話がある。」
相手の男を睨み付けながら、最大限丁寧に言ってやる。

「あっ、はい。
牧野さん、もしかして…………?」

「…………はい。」
そう俺の分からねぇ会話を二人でしたあと、

「じゃあ、僕はこれで。
牧野さん、ほんとにお疲れ様でした。
いつでも遊びにおいで。待ってるから。」

「はい。ありがとうございました。」

牧野がペコリと頭を下げて、男も俺に軽く会釈をして去っていった。





残されたのは、気まずい雰囲気の俺ら二人。
とりあえず、
「行くぞ。」
そう言って、俺らはマンションまでの道を歩き出した。





ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願いいたします!

甘い展開にならなかった…………です。



 2015_03_16






俺たちは、出会って5年目にして、
ようやく結ばれた。

俺の強引な片想いから始まったこの恋は、
いつしか実を結び互いを想うように変化したが、
ここまで来るのに、あまりにも長かった。

そして、やっと巡ってきたこの機会にも俺は躊躇せずにはいられなかった。
牧野の腰のこともあったが、それ以上に考えることは、もうすぐ離れ離れになる俺たちが関係を結んでいいのだろうかということ。

もちろん俺は、牧野しか考えらんねぇ。
それはこれからも揺るぎない想いだったが、
牧野にとっては…………。
そんな俺らしくもない弱気な考えが頭をよぎり、
約束の日に牧野の部屋を訪れた俺は、その時点でもまだ迷いがあった。

けど、そんな俺の迷いを一瞬にして吹き飛ばしたのは、やっぱり牧野の強烈な言葉だった。


「道明寺のはじめてをあたしにちょうだい。」


これから何年離れて過ごすか分からねぇ俺たち。
もしかしたら、違う未来が待っているかもしれない。
そんな風に牧野も俺と同じことを考えたらしい。

そして、自分の気持ちに正直になったとき、
俺と結ばれたいと思ってくれたと。

その結果があの言葉だ。
牧野らしい男前な言葉。
それを聞いて俺の迷いはなくなった。


「俺もおまえのはじめてが欲しい。」




そうして、俺たちは結ばれた。
実際、病み上がりの牧野を相手に、相当手加減してやったつもりだ。
暴走しそうな自分を必死に抑え、牧野のペースに合わせてやったが、それでも1回で満足出来るはずもなく、何度も求めて牧野を困らせた。

そして、何度も何度も囁いた。
「愛してる」と。












それから20日後。
俺はNYに飛び立った。
F3には牧野の安全を頼み、滋には二度とコンサートには連れて行くなと念を押し、桜子には牧野に悪い虫が付かないよう見張ってくれと香水の賄賂まで送った。


そして、最後に牧野には一番大事なことを伝えた。
「今度会うときは、俺と恋愛できるようにしておけよ。
おまえなら出来る。頑張れ。」







あれから4年がたった。
牧野は現役での司法試験合格は叶わなかった。
そして、2度目のトライでもその夢には届かず、
今回が3度目の挑戦だった。

この一年はバイトもほとんどせずに、勉強に明け暮れていたとあきらから聞いていた。
だから、なんとか今度こそあいつの喜ぶ顔がみたいと思った。

この4年、NYで生活してきた俺。
ババァの期待通り、必要な資格もスキルも身に付けてきた。
そしてただひたすら牧野のことを想ってきた。

俺が次に日本に帰るときは、あいつが合格したときだと必死に自分に言い聞かせ、俺が今出来るベストを尽くしてきた。



そして4年目。
まだ日が明けない薄暗い部屋に携帯の音が響いた。
そこには、久しぶりの類の文字。


「もしもし。」

「司?寝てた?」

「類か。…………どうしたこんな時間に。」

「司、受かったよ。」

「……あ?」

「牧野、試験に受かったよ。」

「…………マジかっ!」
ガバッとベッドに起き上がった俺は、かすれた声で聞き返す。

「うん。牧野、やったよ。
司もそろそろ帰ってくるんでしょ?」

「…………。」

「司?」

「…………あぁ。」

「もしかして、司、泣いてる?」

「うるせー、泣いてねーよっ。
でも、…………マジで…………よかった。」
全身から力が抜けていく。

「牧野から連絡させようか?
どうせ、牧野のことだから司と連絡取り合ってないんでしょ?」

この4年、ほとんど牧野とは話していない。
唯一、お互いの誕生日だけ、簡単なメールのやり取りをしてきた。
声を聞けば会いたくなるし、頑張ってるあいつに余計なことを言っちまいそうで、なんとか耐えてきた。

「いや、俺から連絡する。」

「うん。わかった。
じゃあね、司。」

「おう。
……類っ!サンキューなっ。」

「はいはい。じゃあね。」







牧野が試験に受かった。
あいつにとって、ここからが本当の正念場になるだろう。
でも、だからこそ、
俺はあいつの力になりたい。

って、かっこいいこと言ってるが、
本当は、
牧野に会いたくて会いたくて堪らない。




俺は再び携帯を手に取ると、
慣れた手つきでボタンを押した。


「おう、西田か。
朝からわりぃ。
すぐに日本に行けるよう手配してくれ。」


そう用件だけを伝えて、シャワー室に向かった。






ランキングに参加しています。
よろしければポチっとお願いいたします!


ラストに向けて動き出しました。
どんな風に再会するのかなー。
私にもわかりません(笑)






 2015_03_14




09  « 2019_10 »  11

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

プロフィール

司一筋

Author:司一筋
花より男子の二次小説サイトです。
CPはつかつくオンリーです。
司をこよなく愛する管理人の妄想サイト。

最新トラックバック

フリーエリア

お金がたまるポイントサイトモッピー

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR




PAGE
TOP.